• HOME
  • MAGAZINE
  • SERIES
  • WORLD REPORT「ニューヨーク」:パンデミックがもたらした創造的…

WORLD REPORT「ニューヨーク」:パンデミックがもたらした創造的対応と変わりつつある個人と共同体の関係

雑誌『美術手帖』の「WORLD REPORT」では、世界の各都市のアートシーンや話題の展覧会を紹介。2022年7月号の「ニューヨーク」は、パンデミック以降の市民の心理的変化を反映した活動を取り上げる。

文=國上直子

「デザイン・アンド・ヒーリング:伝染病への創造的対応」展(クーパー・ヒューイット・スミソニアン国立デザイン博物館)の展示風景 Photo by Matt Flynn © Smithsonian Institution.

パンデミックがもたらした創造的対応と変わりつつある個人と共同体の関係

 現在NYでは新型コロナウイルス感染症対策が緩和され、マスクなしの人を見る機会が増えた。2021年末から始まった感染の波においては、パンデミック当初をはるかに上回る感染者が記録されたが、初期のようなパニック状態にはならず、ウイルスとの共生は進んでいるようだ。その流れのなかでよく目にするようになったのが「ニュー・ノーマル」「グレート・リセット」「グレート・リシグネーション(大量離職)」といった言葉だ。これまでの生活とはなんだったのか、自分にとって大事なことはなんだったのかという「内省」が時代の精神性になりつつあるサインのように見える。

デザインの変化と共同復活の願い

「デザイン・アンド・ヒーリング:伝染病への創造的対応」展より 店内の密を避けるため路上に食事のスペースを出すNYのレストラン Photo by Jennifer Tobias

 NY市内では、パンデミックを振り返るような企画展が複数開催されている。クーパー・ヒューイット・スミソニアン国立デザイン博物館で開かれている「デザイン・アンド・ヒーリング:伝染病への創造的対応」展は、数々のパンデミックを契機に生まれたデザインを紹介し、危機的状況のなかでデザインが果たす役割を考えるもの。個人用防護具、人工呼吸器、野外病院などの近年のデザインを見ると、緊急時の時間、物資、資金の不足が、現地調達可能な材料や3Dプリンタの活用で克服されてきたことがわかる。サプライチェーン問題や露宇の国際問題が長期化する可能性を考えると、「現地調達」はこれからのデザインの前提となっていくのかもしれない。

「デザイン・アンド・ヒーリング:伝染病への創造的対応」展より 聴覚障害を持つ人や第二言語話者など、コミュニケーション時に口の動きを読み取る必要がある人々を想定したリバース・ガーメンツ社のマスク Photo by Colectivo Multipolar

Latest News

これは買いたい! 編集部が選ぶベストミュージアムグッズ(ベネッセハウス)

日本全国にあるミュージアムが販売するオリジナルのミュージアムグッズ。編集部がとくに気になるものを館ごとにピックアップしてご紹介する。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

ヴォルフガング・ティルマンス、パリ公共情報図書館での大規模展開幕──いまここで学べる自由を尊び、不確定な世界でイメージをつくり続ける

5年間の改修工事に入ったポンピドゥー・センター。完全閉館前にヴォルフガング・ティルマンスが招かれ、同館内にある大型図書館での展示を企画した。臨時移転先が整う予定の9月まで、アーティストの約40年にわたる多様な制作を振り返りながら、束の間の学びと思考が可能な場となっている。

文=飯田真実

ヴォルフガング・ティルマンス、公共情報図書館、2025年1月 © Centre Pompidou

「すべては彫刻だ」。アムステルダム国立美術館がイサム・ノグチの問いに迫る

アムステルダム国立美術館が2013年以降毎年開催している庭園彫刻展。その第12回目を飾るのが、イサム・ノグチの展覧会だ。

文=貝谷若菜

「AKARI」シリーズ ©The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum New York, c/o Pictoright Amsterdam 2025. Photo: Rijksmuseum/Kelly Schenk

Exhibition Ranking

見附正康

2025.05.24 - 07.06
ARTRO
京都