TRICK 時遭し編   作:明暮10番

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停留所

 その山彦は神社にも届いたが、上田は聞き取れなかった。

 

 

 

 

「君の名は……!?」

 

 

 暫し膠着状態の少女と上田だったが、もう一人の声で時間が流れ出す。

 

 

 

 

「『梨花』〜! 早くしなければ負けてしまいますわよ〜!」

 

 

 ハッと上田は気が付くと、階下から「梨花」と呼ばれる少女と同い年ぐらいの少女が駆け登って来ていた。

 ショートカットを黒いカチューシャで固定した、活発そうな女の子だ。

 

 

「あ……『沙都子』……」

 

「祭具殿の鍵を閉め忘れるなんて、梨花らしくないミスですこと。ほぉーら、謎も解かない……と」

 

 

 見上げれば見知った友達と、見知らぬデカい男。

 やって来たもう一人の少女こと、「沙都子」もつい足を止めて状況の把握に努めた。

 

 

「……えと……その、そちらの殿方は……?」

 

「あ、や、あの。さ、沙都子ぉ〜!!」

 

「ちょ、ま、待ちなさい!」

 

 

 上田が呼び止めるのを聞かず、梨花は一目散に階段を下って沙都子の後ろに隠れた。

 

 

「り、梨花!? どうなさいましたの!?」

 

「危ないおじさんが来たのです!」

 

「危ないおじさん……」

 

 

 変質者扱いされ上田がショックを受けている内に、沙都子が梨花の前へ立ち塞がってキッと上田を睨む。

 

 

「子どもに手を出すなんて、サイテーな方ですわね!!」

 

「いや違う……私は通りすがりの物理学者で……!」

 

「みぃ……今、むっつり学者って言ったのです……」

 

「物理ぃッ!!」

 

 

 何とか弁明しようと上田も階段を一段降りる。

 しかしズッコケ、抱えていた次郎人形と共に階段をずり落ちた。

 

 

「ああああああ!!」

 

「きゃっ!」

 

 

 汚い物を避けるような感じで、滑り来る上田を回避した二人。

 そのまま上田は階段を滑り落ち、地面に倒れ伏す。あまりに派手な滑りっぷりに、沙都子は心配になってしまう。

 

 

「……もしかして……し、死んじゃいましたの……?」

 

「……ぷはぁ!?」

 

 

 上田は起き上がり、フラつきながらも立ち上がった。

 途端に心配の念は掻き消えて、彼に対する気味の悪さがまた舞い戻る。

 

 

「不気味で頑丈なのです……」

 

「い、家の電話から警察を呼びますわよ!!」

 

 

 颯爽と通報しようと階段を駆け上がる二人を、必死に上田は呼び止めた。

 

 

「ウェイトッ!? おじさんは怪しい人間じゃない!!」

 

「みぃ……自分と同じ格好の人形持っている人が怪しくない訳ないのです」

 

「腹を割って話そう!!」

 

 

 何とか必死に言葉を尽くし、通報だけは免れた。

 

 

 

 

 

 

 暫くして祭具殿の鍵を閉めた梨花が、拝殿前にいる沙都子の元へ駆け戻って来た。

 

 

「閉めて来たのです〜」

 

「何も盗られていなかったから良かったですけど……今度は徹底してくださいまし!」

 

「ごめんなさいなのです、沙都子……」

 

「はぁ……とにかく、謎解きを続けますわよ」

 

 

 チラッと、沙都子は後ろを見る。

 

 

 その先、上田は神社を隈なく観察していた。

 崩壊しかけだったハズが全て綺麗になっており、やはりここは過去の世界なのだと上田は実感する。

 

 

 

 

「俺は……時を超えた……!?」

 

 

 物理を学び、物理を極めた人間にとって、この状況は信じられない。タイムトラベルはSFの創作であり、現実には絶対に出来ないからだ。

 だがその不可能な創作の現象を、今自分がリアルに体験している。上田は暫し、拝殿を眺めながら呆然と立つ。

 

 

「いやいやいや待て待て待て……『一般相対性理論』と『ブラックホール理論』を適用するんだ。時空は質量の高い物体により、歪められる……つまり、祭具殿の中に何らかの磁場が発生し……待て。そうなると俺は光速で移動した事になる……だが、持っていた荷物があると言う事は、荷物も同様のスピードで……そもそも、時空を歪めるほどの質量を持つ存在など、惑星以外になにがあるんだ……」

 

 

 ぶつぶつ呟き、時間移動の推理を展開しようとする。

 二人からは何を言っているのか不明だが、難しい事を考えているとは分かった。沙都子は梨花に、ボソッと告げる。

 

 

「……学者先生と言うのは本当みたいですわね」

 

「頭の良い人は変わった人が多いのです。『入江』みたいに」

 

「あー……納得してしまいましたわ」

 

 

 二人の冷ややかな視線に気付き、上田は取り敢えず問題を後回しにして信頼感を勝ち取ろうと努めた。

 

 

「あぁ、すまない! 良い神社だから見てしまったよぉ。あの柱から屋根まで、黄金数1.618に近い! 数学的にも、最も美しい構造と言える!」

 

「……ま、まぁ……お気に召されたのでしたら……」

 

「おじさんはねぇ、建築学にも詳しいんだ。『内藤多仲』に東京タワーの作り方を教えたのも、私なのだよ! はっはっは!」

 

「やっぱり危ないおじさんなのです」

 

 

 梨花の言う通り、危ない事は言っていないようで言っているような。

 だが賢い学者とは思えたので、沙都子は謎を解いて貰おうと思案した。

 

 

「ええと……上田先生?」

 

「なんだね?」

 

「私たち、実は宝探しをしておりまして。宝の在り処を示したメモを持っているのですが……賢い先生なら、解いてくださります?」

 

「はっ! まっかせなさぁ〜い。この天っ才物理学者、上田次郎にかかれば、どんな問題も立ち所にズババッと解決可能だ!」

 

 

 早速沙都子は期待を込めて、持っていたメモを見せた。

 内容は魅音らの物と同じ、『19「2」4037「3」1238』。

 

 たかが子供の遊びと舐めてかかっている上田だが、数列を見て顔を顰めた。

 

 

「これはなんだ?」

 

「この数字が、この村のどこかを表しているそうですわ」

 

「一と九じゃ、どうなっても二にならない……フィボナッチ数列ではないか……しかし、なんで二と三だけ……数式に置き換え、どこかに代入しろと言う事か? いや、二次方程式と三次方程式を、それぞれ適用しろと言う事か?」

 

「あの、上田先生? 多分、そこまで難しく……」

 

「なんだとぅ……虚数だと……!? 宝物は存在しないと言う事なのか……!?」

 

「ひ、ヒントがありまして……ヒントは五十で……」

 

「座標の可能性もあるのか! 直交座標を使おう!『デカルト』の力、お借りします!! 我思う故に我ありーッ!!」

 

 

 一人暴走する上田を見て、不安そうに沙都子は梨花に問う。

 

 

「梨花……このお方、大丈夫ですの……?」

 

「だから言ったのです。危ないおじさんなのです」

 

 

 上田には結局、解けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 道なりに歩き、郊外に辿り着く。

 ひと気がなくなり、そこは森に囲まれた場所。

 寂しくポツンと立つ、木漏れ日を浴びた待合小屋と赤錆びたバスストップ。

 

 バスストップの標識には、「雛見沢村前」とある。

 謎解きの答えが示した場所だ。到着と同時に、圭一と魅音は張り切って辺りを捜索し始める。

 

 

「あそこが停留所っス! よっし! 探すぜぇー!」

 

「あるぇー? 梨花も沙都子もいないし……もしかして一番乗りだったり!? シャアッ!!」

 

「さすがは田舎……結構歩く……」

 

 

 反面まだまだ元気そうな二人を見ながら、疲労感を負う身体を引き摺る山田。四十路に入った自分の歳を自覚する。

 二人がお宝を探している間、疲れた顔で時刻表を眺めた。

 

 

「……バス、六時間中に四本って……一日に、八本? 少なっ!」

 

 

 その理由について、魅音が教えてくれた。

 

 

「利用する人いないからね〜。基本的に村の人みーんな車も免許も持ってるし。田舎じゃ大事なアシよ」

 

「さすが、田舎……」

 

「別にバスなくても良いよな! 歩いて街にいけるし! どーせたった一時間だ!」

 

「若者ってすげー……」

 

 

 圭一と魅音はベンチの下、屋根の上、近くの木の裏などを隈なく探していた。

 そして見つかったのは、待合小屋の後ろの雑草の中。

 

 

「あった!」

 

 

 魅音がそこから小物入れを取り出す。

 小物入れには名前シールが貼られ、そこに分かりやすく「レナの宝物」と書かれてあった。

 

 

「間違いなくレナのもんだな。んで、これがここって事は……」

 

「おじさん達が一番乗りって事だねぇ! はっはっはっ! 勝った!」

 

「私が解いたんだけどな……ああ、なるほど」

 

 

 山田はもう一度、時刻表を見る。

 

 

「ヒントのメモが数字だけだったのは、『バスの時刻表』を表現していたんですよ」

 

「え?」

 

「ほら、バスとか電車の時刻表って、数列だけで到着時間の何時何分を表しているじゃないですか。二桁の数字でゼロから五十九の間……六十に行かないから、五十音順にした方が都合が良かったんですね」

 

 

 時刻表とメモを見ながら圭一も魅音も感心。

 

 

「ほ、ホントだ……レナすげぇ……!」

 

「山田さんも良く分かったねぇ……」

 

 

 謎解きの隠されたヒントはともかくとして、お宝である小物入れが開かれた。

 魅音から聞いた宝探しのルールは、中身の宝物を持って学校に戻る事。

 

 

 

 

 箱を開けると、中に入っていたのは折れた孫の手の持ち手。

 先端の方ならともかく、孫の手のアイデンティティのない持ち手の方だ。

 

 

 

 唖然とする山田に対して、それを見た魅音と圭一はケタケタと笑う。

 

 

「あはは! レナらしいお宝だね!」

 

「だと思ったぜ……レナっぽいな」

 

 

 レナを知らない山田だが、二人の会話からしてかなりアクの強い人間ではないかと想像出来た。

 

 

 

 

 そのまま山田たちは、お宝を先に見つけたので学校に戻る事にした。

 道中、色々な事を話した。例えば魅音ら園崎家は、村での有力者である事など。

 

 

「へぇ〜。園崎さん、お嬢様なんですね」

 

「あーあー、そう言う堅苦しいの無し無し。どう見てもおじさん、お嬢様って柄じゃないし」

 

 

 圭一がそんな彼女を茶化す。

 

 

「妹はお淑やかなのになぁ」

 

「あ、言ったなぁ? んまぁこれでも私、書道に生け花、何でも出来るよ! 実は超有能ガールだったり?」

 

「書道か……」

 

 

 そう言えば母親は書道家だったなと思い出す山田。久しく帰省していないが元気にしているかなと、ふと考えた。

 母の事とは別に、気になった事を一つ聞く。

 

 

「……二人とも、中学生でしたっけ」

 

「あ、はい。俺が中二で、魅音が中三。まぁ、田舎の学校ですから、学年とかあまり意識しないですけど」

 

「本来なら先輩は敬うもんだぞ〜?」

 

 

 魅音が圭一をデコピンし、それに圭一は怒る。

 二人の和やかな様子を後ろで見ていた山田だが、その視線は時折、魅音のある一点に注がれたりする。

 

 

 

「……中三……D? E?」

 

 

 胸だ。

 中学三年生と言えば思春期を迎え、子供から成人へと身体が出来上がる時期だが、それにしたって大きいのではと気になっていた。

 

 

「中三で……E……中三? なに食べてんだ……? やっぱお金持ちは食べる物が違うのか……?」

 

 

 敗北感と羨望でカオスになる胸中。

 ぼんやりしている内に、学校に辿り着いた。田舎らしい木造の建物だ。

 

 

 校庭に誰かいると気付いた圭一。

 

 

「あれ? 梨花ちゃんと沙都子がいるぞ」

 

「宝物はこっちが持っているし……あっはー、なるほど! ギブアップ宣言だね!」

 

「『知恵先生』と……アレ? 見た事ない人が……」

 

 

 校庭に入り、俯き気味だった山田は顔を上げる。

 どんよりしていた表情は、カッと愕然模様に様変わり。

 

 

 

 

 視界の先、幼女二人に呆れた目を向けられながら、知恵と呼ばれた女教師と会話する上田次郎の姿があった。

 

 

「へぇ! 東京の学者さんなんですか!」

 

「えぇ! 今、壮大な計画がありましてねぇ! 下町でロケットを作り、宇宙へ出発する計画を立てております! 目指すは火星への有人着陸!」

 

「なかなか立派な夢ですね!」

 

「知恵留美子さん……でしたね。何とも知的な名前だぁ……是非、同じ教育者として、私の本を読んで見てください……そして、感想を伺いたいところです」

 

 

 目からキラキラ星を出しながら、知恵に対して鼻の下を伸ばす上田。

 ふと隣に立っていた梨花と沙都子も、圭一らの帰還に気が付いた。

 

 

「あ。圭一たちも帰って来たのですよ」

 

「……あちらも知らない方を連れて来ましたわね」

 

 

 二人の声を聞き、上田は誰か来たのかと振り返る。

 

 

 

 

 視線の先に、少年少女と並び立つ、山田奈緒子。

 二人はほぼ同時に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんだ上田ぁッ!!」

 

「貧乳ッ!?」

 

 

 山田に助走をつけて殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして、再び知恵と会話をしている上田。

 

 

「上田教授はこの村へは何しに?」

 

「私ですか? 私は物理学に飽き足らず、民俗学をも極めようと思いましてね! ここ雛見沢村の地質の調査も兼ねて、観察研究に来たんですよ!」

 

「知的好奇心の強い方で感心します! 必ず御本は読ませていただきますね」

 

「是非是非! 時間があればまた伺いに上がりますよ!」

 

 

 目からキラキラ星をずっと放出しながら、上田は話していた。山田に殴られた左頬は、焼いた餅のように膨れている。

 ふと知恵は山田の方を見やる。

 

 

「ところで、そちらの方は?」

 

「あぁ、こいつですか? こいつは私の、99.9人目の助手です」

 

「……アルコール除菌かっ!」

 

 

 ボソッとツッコむ山田。

 とにかく美人に弱い上田はひたすら、知恵に良いところを見せようと、ベラベラ嘘を交えながら身の上を話す。

 雑に扱われ、更にこの状況でも何も変わらない上田にも呆れ果て、山田はブスッと不機嫌顔。

 

 

 

 横から、山田とは初めて会った梨花と沙都子が自己紹介をする。

 

 

「初めまして。私、『北条 沙都子』と申し上げますわ」

 

「みぃ。ボクは『古手 梨花』なのです」

 

 

 古手梨花、と言う名前に、山田は反応する。

 確か祭具殿で見た習字と同じ名前だったなと思い出す。

 

 

「古手梨花って……もしかして、神社の?」

 

「その通りなのです。古手神社はボクの神社なのですよ。にぱ〜☆」

 

 

 無邪気で可愛い笑顔を見せる梨花。

 すると将来の、場合によれば現役の巫女さんなのかと、山田は素直に関心を示す。

 

 

 

 二人の自己紹介が終わった辺りで、魅音が意地悪な笑みを浮かべて横槍入れる。

 

 

「はいは〜い。それよりオヌシら、お宝は見つかりましたかのぉ〜?」

 

「うう〜……その様子では、私たちの負けのようですわね……」

 

「むっつり学者に関わったのが運の尽きなのです」

 

「物理だ!!」

 

 

 上田が梨花に突っかかる。さっきまでキラキラ星を送っていた知恵は、仕事に戻ってしまったようだ。

 どうやら上田も謎解きゲームをやらされたのかと、山田は気付く。

 

 

「上田さんも解かされたんですか」

 

「バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想を証明した時ほどの難問だった……まぁ、この世のあらゆる公式を使えば、めちゃんこ楽に」

 

「公式とか計算はいりませんよ。あれ、五十音順を番号にしただけなんですから」

 

「……おぉう?」

 

 

 山田の話を聞いた沙都子が、ジトっと圭一と魅音を睨む。

 

 

「……お二人も山田さんに解いて貰ったようですわね?」

 

 

 指摘を受けた二人だが、一切悪怯れる様子もなく、揃って得意げなしてやったり顔を見せ付ける。

 

 

「へん! そっちだってその学者さんに解いて貰ってんじゃねーかよぉ?」

 

「そう! 答えを出せる人に頼るのも、宝探しの内!」

 

 

 くぅ〜!、と頰を膨らまして悔しがる沙都子を、横から肩を叩いて梨花が宥めてやる。

 

 

「そうなのです。とんだポンコツに頼ってしまったボクらの敗北なのです」

 

「俺はポンコツじゃねぇッ!」」

 

 

 大人げなく突っかかる上田。

 これからどうするかを皆が考える前に、もう一人、少女が手を振ってやって来た。

 

 

 

 

 

「みんな〜! お宝見つけられたかな? かな?」

 

 

 振り向くと、制服姿の、赤髪が印象的な少女が駆け寄って来ていた。

 お淑やかそうで可愛いらしい、美少女とも表現して差し支えない子だ。

 

 

 上田も彼女の声に気が付き、振り返る。

 

 

「……おう?」

 

 

 途端に表情が曇る。その変化に驚いた山田が横から聞いた。

 

 

「どうしました上田さん?」

 

「……あの子……」

 

「彼女欲しいからってさすがに中学生はマズイんじゃ……」

 

「そんなんじゃない!……いやな? どこかで見た事が……」

 

「え? 何言ってんですか。ここ昭和五十八年ですよ?」

 

「…………いや待て。まさか……」

 

 

 上田が結論に至る前に、少女はメンバーの元へ。

 見知らぬ二人を視認し、笑顔だった表情はキョトンと、不思議そうなものを見る様に変わる。

 

 

「ええと……魅ぃちゃん、こちらの方々は?」

 

「ああ。山田さんと上田さん。お宝探しを手伝ってくれたんだ。東京から来た学者さんだって!」

 

 

 コロコロ表情の良く変わる子で、次には好奇の篭った目を向けられた。

 

 

「ええ!? 大都会から!? あ〜果てしない〜♪……だねっ!」

 

「クリスタルキング……渋いな」

 

 

 なかなかエキセントリックな子だなと、山田は察する。

 改めて少女は二人に向き直り、自己紹介をした。

 

 

 

 

 

「初めまして! 『竜宮レナ』って言います!」

 

「…………え?」

 

「レナって呼んでください!」

 

「…………竜宮……レ、ナ……」

 

 

 上田は確信に至り、笑顔で「ちょっと失礼するねぇ?」と断りを入れてから、山田を連れてメンバーから離れる。

 

 

「なんですか!? どうしたんです……!?」

 

「間違いない……! あの子だ……!」

 

「あの子って……レナちゃんって子?」

 

「名前はお前に教えていなかったな……」

 

「は?」

 

「二○一八年に、ここの調査を依頼した……『依頼人の名前』だよ……!」

 

 

 山田は驚き、振り返ってからレナを一瞥した。

 皆、怪訝な表情でこっちを見ていたので、笑顔で会釈してからまた背を向ける。

 

 

「あの子がですか……!? あの大人しそうな子が……!?」

 

「ああ、間違いない! 依頼人、『竜宮礼奈』……本にもサインしたから覚えているし……なにより面影がある……!」

 

「……金属バットで男子を滅多打ちにした、あの?」

 

 

 もう一度レナを見るが、そんな事をしそうには見えない。

 彼女は手を組み、不思議そうに小首を傾げている。

 

 

「……上田さん、やっぱ間違っているんじゃないですか?」

 

「そんな事はないハズだが……」

 

「どう見てもバット持ちそうには……」

 

「とにかくだ! (うさぎ)(つの)だ!!……雛見沢村に災害が訪れた時、彼女だけが村の生存者の一人だった……もしかすれば、俺たちのこの状況の原因である可能性が高い……」

 

「……そう言えば私たち、タイムスキャットしたんでしたよね」

 

「スリットッ!……ひとまず今後、あの子に注意を払っておくんだ。いいな? ドューユーアンダースタン?」

 

「ど、どおーゆぅーあんたぁー……スタローン? ロッキー?」

 

「お前無理やり間違えてないか?」

 

 

 上田と山田は振り返り、笑顔で会釈しながら「お待たせ〜」と言って戻る。

 

 

「みぃ。なに話していたのですか?」

 

「いやぁ、なに。ついさっき君たちの先生と話していてね! 放課後で生徒たちの信頼も得ているから、是非遊び相手になってくれって言われたもんで、コイツにお前もどうだと誘ったんだ」

 

「ボクは上田を全然信頼してないのですよ?」

 

「……………………」

 

 

 梨花の言葉で泣きそうになる上田に代わり、山田が話しかけた。

 

 

「お宝探しの他にも、何かしているんですか?」

 

 

 魅音は誇らしげにニッコリ笑いながら、一歩前に出て答えた。

 

 

 

 

「『部活動』! みんなでゲームをして遊ぶんだ! そしておじさんが、部長って訳!」

 

 

 胸を張る魅音。

 なぜか前のめりになった上田。その爪先を、山田は踏ん付けた。




時系列について指摘される方が多いので先に述べておきますが、この作品は原作と、少しアレンジを加えております。
理由付けと展開も考えておりますので、どうかご理解をいただけたらなと思います。
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