怪獣至上主義カルト団体の偽聖女とラブコメ ~ちがう彼女はそういうのじゃないんだスゴく優しいし誰にでも笑顔の善い子だけどたまに弱いところがあるから僕が支えてあげないと以下略~ 作:余田 礼太郎
「しっかり掴まっててね!」
「は、はいっ……!」
僕はすかさずホバートライクをフライトモードに移行、アクセルをブチ上げて空高く舞い上がった。彼女:ミレヴィナ=ウェルーシファは僕の背中に顔を埋め、懸命にしがみついてくれている。細い腕がぎゅっと締め付けて、僕に勇気を与えてくれる。
銀の月が昇る空、ビルの谷間を、僕らを載せたホバートライクがブッ飛ばす。冷たい夜風が全身を撫で、風を切って空を飛ぶ心地よさを感じる。
その刹那、生温かい感触が僕らの頬を撫でた。
「うわっ、マジ気持ち悪っ……!」
思わず声が漏れた。振り返ると、背後からミレニアンの触手の群れがウネウネグネグネグチョグチョと、すんでのところにまで這い寄っていた。
アスファルトを剥がした地中から、電信柱から、挙句の果てはビルなど建物の中からまで、街中ありとあらゆるケーブルというケーブルが一斉に僕らへと襲いかかってきていた。あの触手野郎、プラズマカッターで刺身にしてやったのに、未だにミレヴィナちゃんを諦めていないらしい。
「こんにゃろーっ、ぶっちぎってやる!」
思わず舌打ちしながら僕はハンドルを切り、ホバートライクの機首を真横に傾けた。そのまま横滑りするように針路を変更し、ビルの谷間へと滑り込んでいく。
『AKIRA』でおなじみ、金田スライドブレーキの空中版だ。ビルとビルのわずかな隙間をギリッギリですり抜け方向転換、触手野郎を振り切ろうとする。
それでもミレニアンの触手どもは、しぶとく追い付いてきた。僕らの眼前へと立ちはだかり、行く手を阻んでくる。夜の街並みが暗闇に包まれ、僕らの視界には奴らの黒い影だけが映る。
「しつけーぞコノヤローッ!」
思わず悪態をついてしまう僕。少年兵時代の僕はホバーバイクに乗っていたけれど、こんなに沢山の追手から所狭しと追い立てられるのは初めてだ。
ホバートライクの速度を一時的に落とし、周囲の状況を冷静に見極める。
「ちっきしょー……!」
苛烈な猛攻撃の隙間をくぐり、合間を縫ってなんとか先へ進もうとするのだが、縦横無尽にのたくり打つミレニアンの触手包囲網は到底突破できそうにない。
その最中、僕の心臓は早鐘のように打ち、ハンドルを握る手のひらには汗が滲んでいた。だけど、背中にしがみつくミレヴィナちゃんの震えが、僕を奮い立たせる。彼女を守らなければならない、絶対に。
そんなとき、ホバートライクのコンソールからオムライザーが声をかけてきた。
「サトー元曹長! 僭越ながら、バルカンポッドの使用許可を!」
「許可したらどうなる?」
僕が訊ねると、オムライザーは意気揚々と答えた。
「行く手を邪魔するこのクソ触手どもに鉛玉しこたまぶちこんで、ハチの巣にしてやります!」
なるほど、そーかい!
オムライザーによる景気の良い台詞を受け、僕も俄然ノリ気になりながら答えた。
「オーライ、ド派手にぶちかましてやれ、オムライザー!」
「合点承知~!」
オムライザーが僕の返事に応えてからすぐにホバートライクが変形を始めた。車体の前部装甲パーツが展開し、中で折り畳まれていた銃砲がひょっこり顔を出した。
ジャキンッと左右一対、計二門のバルカン砲が現れる。
「バルカンポッド、オンライン。自動迎撃モード、アクティベート。照準目標を、進行を妨害するミレニアンの触手へ設定しますッ……!」
「オーライだぜっ、オムライザー!」
オムライザーのアラートを耳にしながら、僕は再びホバートライクのエンジンを唸らせる。プラズマエンジンフルスロットル、一気にブッ飛ばせる準備は万端だ。
「しっかり捕まっててねっ、ミレヴィナちゃんっ!!」
「は、はいっ……!」
そしてアクセル全開で踏み込み、急発進で再び進み出すホバートライク。
突っ込んでゆく先は、ミレニアンの触手で塞がれた行く手。そのど真ん中をホバートライクで突っ切りながら、僕らは力ずくで強行突破してゆく。
「ヒィィーッハアァァーッ!!」
バルカン砲を猛回転させ無数の弾幕をばらまきながら、オムライザーが咆哮を挙げた。
「オラオラッ、オージョーしやがれっ、卑猥なお下劣スライム淫獣触手どもがアア~ッ!! 人の恋路を邪魔するスッタコ野郎は、根こそぎまとめてくたばりやがれェェ~~ッ!!」
……いや、なんかキャラ変わってない?
一瞬不安になったけど、そんなのは杞憂だった。流石は最新のコパイロットAIだ。これだけ縦横無尽に撃ちまくっているのに運転する僕らには一発も当てず、それでいて迫りくるミレニアンの触手だけを正確に撃ち抜いてゆく。
「サンキュ、オムライザー!」
おかげで僕らはなんとか先へと進むことが出来た。僕らの乗ったホバートライクはビルとビルの谷間を駆け、月明かりの照らす夜を往く。
だけど、それでもミレニアンの追跡は執拗だった。あれだけバルカン砲を撃ち込まれてるのに、追ってくる勢いは一向に衰える気配がない。
「邪魔だぜ触手どもッ、どきやがれェェーッ!!」
行く手を遮られて立ち往生しながら僕は怒鳴りつけるけれど、ミレニアンの触手どもは一向に攻め手を緩めようとはしない。むしろ距離をみるみる詰めてくる。このままでは追いつかれるのも時間の問題だ。
その最中、またしてもオムライザーから提案が入る。
「サトー元曹長っ、誘導弾の使用許可をっ! あの卑猥な触手野郎どもをイカフライにしてやりましょう!」
えーい、めんどくせえ! 僕は声を張り上げた。
「無制限使用許可だッ! やりたいだけぶちこんでやれ!」
「大盤振る舞いですね、サトー元曹長っ! 了解です!」
そう答えるや否や、ホバートライクはすべての装甲を展開した。乗ってる僕らに影響しないありとあらゆる箇所の装甲が組み替わり、無数の砲口とミサイルポッドがハリネズミのように生えてきた。
「
こんなん、もはや戦車じゃねーか。僕が唖然とする中、オムライザーは盛大にぶっ放した。
「ヒャッハァァーッ!! 汚物は消毒だァァァ~~~~ッッ!!!!」
それ悪役の台詞だろ、しかも死亡フラグ!!
とはいえ、オムライザーの『処刑人モード』という台詞は伊達じゃあなかった。マイケル=ベイの爆破アクション映画もかくやとばかりの盛大な大爆発が巻き起こり、すぐ傍まで迫っていたミレニアンの触手は残らず消し飛んだ。
……なんちゅー威力だ。思わず呆気にとられていると、
「う、後ろですっ……!!」
「まだ来てるのかっ……!?」
ミレヴィナちゃんの声で我に返り、すぐさま背後を振り返る。
そこには新たな触手の大群が、ビルの谷間を埋め尽くすかの勢いで追ってきていた。オールウェポンであれだけ蹴散らしてやったってのに、ミレニアンの奴はまだ諦めていないらしい。
……こうなったら。僕は再びオムライザーに指示を下した。
「オムライザー、もう一回オールウェポンだっ! 奴らが諦めるまで撃ちまくれ!!」
ところが。
「それは出来ません、サトー元曹長! 残弾ゼロです!」
は、はあ!? 残弾ゼロってどーゆーこった!?
僕が問い質すと、オムライザーは律儀に答えた。
「読んで字のごとくです。
「ちょ、おま……!」
もうちょっと後先考えて撃てよっ!! 僕は思わずキレかけたが、オムライザーはしれっと応えるのだった。
「お言葉ですが、『やりたいだけぶち込め』と仰ったのはサトー元曹長、あなたですが? ワタクシは仰せの通りにしただけですが〜??」
……あーなるほどな! コージが『クセ者』と評していたのはこういうことか! いくらなんでもクセが強すぎるぜコイツは!!
とはいえ、悪態ばっかりついてもしょうがない。オムライザーも出来るかぎりやってくれたんだ、あとは僕が頑張るしかない。
僕はホバートライクをさらに加速させた。これ以上スピードを出したら制御不能でビルに突っ込んでしまう、というまさにギリギリ限界までスピードを上げる。流れる風景がますます加速してゆき、冷たい向かい風が僕らの身体へ容赦なく浴びせかけられる。
けれど、それでも。
「くそっ、振り切れないっ……!」
僕の気合と根性による操縦でホバートライクは数多のビル群を縫うように高速飛行、触手からなんとか逃げ延びようと夜空を駆けまわる。しかし、ミレニアンが繰り出す触手はどんどん量を増していき、瞬く間にビル群はその禍々しい蠢きに呑み込まれてゆくばかりだ。
「…………っ」
そのとき僕は、後ろに乗ったミレヴィナちゃんのことを思った。僕の身体へ両腕を回し、ぎゅっと、懸命にしがみついているミレヴィナちゃん。
(うっひょう、ミレヴィナちゃんのおっぱい、めっちゃ柔らけえ!!!!)
……じゃなくてだな。
僕の背中越しに、ミレヴィナちゃんの小さな身体が健気に震えているのがわかる。可哀想に、きっと怖くてたまらないのだろう。
そんなミレヴィナちゃんを勇気づけようと、ホバートライクを運転しながら僕は声を張り上げた。
「頑張って、ミレヴィナちゃん! もう少しの辛抱だからね!」
「は、はい……」
そうやって、僕がミレヴィナちゃんを励まそうとしたとき。
――轟ッッ!!
ビル群の向こうから巨大な“機影”が現れ、僕らの頭上をすれ違っていった。最高速度はマッハ3。流線型にシルバーのスマートな機体が、音速を超えるスピードで触手の大群へと突っ込んでゆく。
あれは……。
「スターファルコン……!」
MOGERAからセパレーションした宇宙戦闘艇、スターファルコン。機首からメーサーバルカン機銃を展開したスターファルコンは触手の群れへ次々とメーサー光線を撃ち込み、破壊の嵐を巻き起こす。
さらに“増援”はもう一機、今度は地中から現れた。
――ギュイイインッッッ!!!!
空気を切り裂く高音と共に大地を揺らし、アスファルトを打ち破りながら、巨大な穿孔機:バスタードリルの舳先が現れた。力強く頼もしい勇猛果敢なブルーダイヤのシルエット、その車体上部に据えられた地対空レーザーキャノンの砲塔が旋回する。
その矛先で狙った先はミレニアンの触手ども。そうだ、こいつは。
「ランドモゲラー……っ!」
スターファルコンとランドモゲラー、空と地表からの両面攻撃。メーサーとレーザーとドリルの猛攻撃が触手どもを撃ち抜き、切り刻み、ミレニアンの侵攻を食い止めてゆく。
弾ける閃光、炸裂する爆音、そして吹っ飛ぶ触手ども。みるみるうちにミレニアンの触手どもは破壊され、辺り一帯に半透明の体液を撒き散らした。
その最中、ホバートライクの通信コンソールから声がした。
〈触手は任せろって言ったろうが、サトー!〉
〈待たせてすまんっ、キヨ!〉
ユウキのおっさんとシンジョウ=コージ、二人が助けに来てくれたのだ。
スターファルコンとランドモゲラーに援護されながらミレヴィナちゃんを避難所へ送り届けたあと、僕は合体したMOGERAの操縦席へと戻った。
戻って早々、僕は頭をひっぱたかれた。
「遅いぞサトー、いつまで待たせやがるんだっ!!」
「さーせんした!!」
遅れた僕を叱り飛ばすユウキのおっさんと、ソッコーで頭を下げる僕。だけどユウキのおっさんは、続いてこんなことを訊いてきた。
「……ところでサトー、さっきの可愛いお嬢さんは誰だ。『どーしても助けに行かなきゃいけない人』ってのはあの
え、ああ、まあ……。
咄嗟に口籠った僕をユウキのおっさんはじっと見ていたけれど、やがてニッと笑んだ。
「今度紹介しろよ。おまえみたいなバカ正直のバカがそこまで入れ込むんだ、さぞやイイ子なんだろう?」
「…………!」
そんなユウキのおっさんの言葉に、僕は胸を張って答える。
「ええ、もちろんですっ!」
自信満々に答える僕を見届けたあと、ユウキのおっさんはこうも言った。
「……まぁ、まずは生き延びねえとな、この戦いを」
そう、ユウキのおっさんの言うとおり、僕らは生き延びなければならない。そして取り戻すんだ、平和な世界と生活を。
僕らは再び前を向いた。スーパーロボットMOGERAを駆る僕ら、その見据える視線の先にいるのはセントラルシティタワーとその頂点に座する巨大宇宙円盤怪獣、ミレニアンだ。
他方、ミレニアンも僕らのMOGERAが強敵だと理解したらしい。触手をくねらせ、こちらをじっと警戒している様子だった。
「…………。」
「…………。」
スーパーロボットMOGERAと、高次元の侵略者ミレニアン。都心のど真ん中で火花を散らして睨み合う僕ら。その静寂の中では、街の騒音さえも一瞬の間に消え去ったみたいだった。風が止まり、時間が凍りつく。
その一瞬が、やがて破られる。
「野郎どもっ、スパイラルグレネードミサイルだッ!!」
「「了解ッ!!」」
ユウキのおっさんが命令し、僕らの操作でMOGERAが動き出す。左右両腕を繰り出すと同時にハッチが傘のように展開、中から現れたのは強力な高速回転式誘導弾頭:スパイラルグレネードミサイル。
ドリルとミサイルの性質を併せ持つスパイラルグレネードミサイルはゴジラの皮膚をも抉り、内側から吹っ飛ばしてしまう威力を誇る。並大抵の怪獣で耐えられる代物じゃねえのである。
そんな強力無比のミサイルが、いっせいに撃ち出された。左右一対、計二発、高速回転する鋼鉄の弾頭が、空を突っ切り撃ち出される。向かう先はもちろんビル群の中心に座する高次元宇宙怪獣、ミレニアン。これならさしものミレニアンだってひとたまりもない。
……そう思ったのだが。
「ま、曲がった……っ!?」
真っ直ぐミレニアンを狙ったはずのスパイラルグレネードミサイルだが、直撃する直前でその軌道がねじ曲がった。まるで途中ではたき落とされたみたいだ。
弾かれたミサイルはそのまま制御を失い明後日の方向へ墜落、既に避難の終わった空きビルを吹っ飛ばしてしまった。
ユウキのおっさんが怒鳴り声を上げた。
「おいAI、ミサイルが曲がったぞっ! どうなってやがるっ!?」
「偏光フィルタで可視化、少々お待ちを~……解析完了しました。ミレニアンは不可視の触手によるバリアーでミサイルを弾いたようです~!」
「見えない触手だとォ~?」
オムライザーがMOGERAのカメラを切り替えると、そこにはたしかにミレニアンの胴体から透明の触手が無数に伸びていて、しっかり根を張っているのが映っていた。まるで巨大なタコのお化け、でなければ古いSF映画の火星人だ。あるいは先に地上で戦ったケーブルやパイプの触手も、この透明の触手を使って操っていたのかもしれなかった。
ユウキのおっさんは忌々しげに唸ったが、即座に判断を切り替えた。
「なら接近戦だっ、シンジョウ、サトー、ドリルアタックでヤツの土手っ腹に風穴を開けてやれッ!」
「「了解っ!」」
そうやってMOGERAの鼻先、クラッシャードリルを猛回転させながらミレニアンへ突進しようとした時のことだった。
ミレニアンの形が変わり始めた。
まずトロトロとした不定形の姿から、角ばった姿へと変わった。均等な六面、完全な直角、シンプルな形。どこかしら安心感を覚える、基本的な立方体だ。
けれど変化はそれだけにとどまらなかった。立方体になったミレニアン、その中央に小さな穴が開いたかと思うと、その穴は瞬く間に立方体全体を貫通するトンネルとなった。さらに穴は他の面にも広がり、立方体の表面に対称的な九つの小さな穴を形作ってゆく。
「あのヤロー、何をする気だ……?」
ユウキのおっさんが怪訝に呟くと同時、データを観測していたオムライザーが報告を上げてきた。
「ミレニアンの周囲で重力波変動、次元の揺らぎと高エネルギー反応を観測! ミレニアンを構成する高次元量子流体の体積が減少する一方、その表面積は無制限に拡大を続けています!」
「まさか核……質量はっ!?」
「質量に変化はみられません。よって、核融合や核分裂反応とは異なる現象と推定されます」
質量は変わらないまま体積が減っているのに表面積は増えている、それも果てしなく。これが矛盾だってのは僕みたいなアホにもわかる、どう考えても有り得ない。
立方体と化したミレニアンの空洞はどんどん広がり、次第に中空の複雑な構造を露わにしていった。穴はさらに細分化され、小さな立方体の各中央にも同様の穴が開き、それがまた次の小さな立方体を創り上げてゆく。
……前にSFアニメかなんかで聞いたことがあるのだけれど、同じパターンを延々と繰り返し続ける構造のことを『フラクタル』と呼ぶのだという。
ならば今のミレニアンはまさに、フラクタル異次元立体だ。異次元フラクタルと化したミレニアンは高速運動しながら、まばゆく光り輝いてゆく。
「ありゃまさか、『メンガーのスポンジ』か……っ!?」
「ミレニアンを中心とした非整数次元の特異点、そして熱エネルギーの凝縮を観測しました。大至急、回避行動をとることを推奨します!」
オムライザーの進言を受け、ユウキのおっさんは即断した。
「シンジョウっ、サトーっ、緊急
「「了解っ!!」」
そしてMOGERAは歩みを止めて、即座に変形。地底戦闘車ランドモゲラーと宇宙戦闘艇スターファルコンへと緊急分離し、それぞれ地下と天上へ身を翻す。
そしてその直後、
強烈な爆熱が迸った。
異次元フラクタルと化したミレニアンが撃ち放ったのは膨大な光の渦、強力なビーム光線だ。
視界を焼くほどの光熱と、耳を貫くような重爆音が世界を揺るがす。間一髪、僕らのMOGERAはすんでのところで身を躱したけれど、その背後にあったビル群は根こそぎ丸ごと吹っ飛んでしまった。
あっという間に火の海と化した地上の街。それらを目の当たりにしながらコージが叫んだ。
「なんだ、あの馬鹿げた威力のビーム光線は!? シン・ゴジラの放射線流だってあんな破壊力は出なかったぞ!?」
ランドモゲラーを必死に操縦しながらコージが怒鳴るように問い質すと、オムライザーが解説を始めた。
「おそらくミレニアンは、この次元を歪めることでエネルギーを取り出すことのできる技術を有しているのでしょう。高次元量子流体で構成された自分自身の身体を高次元操作で“次元の井戸”へと転換し、この次元の歪みそのものから莫大なエネルギーを取り出しているものと推測されます」
「なんだそりゃ……!?」
「そんなんありかよ……!」
まさに『宇宙の法則が乱れる!』って奴だ。
無学な僕には理系用語の説明なんてちんぷんかんぷんだが、つまるところミレニアンは僕たち地球人なんか到底かなわない、そんな物凄い技術を持った侵略者ってことである。
そんな中、コージの奴は何か思い当たったように訊ねた。
「……おい、ちょっと待て。あのままミレニアンにあの重力波ビームを撃ちまくらせていたらどうなる?」
コージの問い掛けに、オムライザーは答える。
「はい、ミレニアンの重力波ビーム発射は、この次元における次元界面抵抗から生じる弾性復元力からエネルギーを略取することによって行使されています。ミレニアンのエネルギー収奪によって、本来釣り合うはずの復元力は減衰しているでしょう。一発あたりの影響は微弱なものですが、このまま事態が進行すればこの宇宙に歪みが少しずつ蓄積され、ひいては次元レベルでの破局が引き起こされるものと推測されます」
「……もうちょいわかりやすく」
「つまり『ミレニアンのビームで宇宙がヤバイ』ってことです。このまま撃ち続けさせれば、この次元は崩壊してしまうでしょう……!」
「なんてこった……!!」
こんな化け物、ゴジラどころの脅威じゃない。
ミレニアンはさらに形を変え、今度は美しい二十面体――僕は知らなかったけれど、このときの姿は『シェルピンスキーのギャスケット』と呼ばれる三角形を基本にしたフラクタル異次元立体だった――へと変形、再び重力波ビームをぶっ放した。
今度は数発同時発射、四方八方、縦横無尽に重力波ビームが駆け巡る。線状光が降り注ぎ、激烈な猛火が広がる最中、僕らはそれらの隙間を縫ってなんとか身を躱してゆく。
「ったく、ミレニアンめ! ウルトラマンレオだかピンク・レディーだか、円盤の化け物風情が図に乗ってんじゃあねー!」
「どっちも例えが古いですよ、ユウキさん」
「うるせえ!」
コージのツッコミにキレ返しつつ、ユウキのおっさんは次の指示を下した。
「やられっぱなしも癪だっ、こちらからも打って出るぞっ! 合体だっ!!」
「「了解っっ!!」」
ミレニアンがビームを撃ち尽くした隙を見計らい、僕らは再び合体した。
ランドモゲラーは飛び上がって上半身へ、スターファルコンは大地へ着地し下半身へ。それぞれの部品が組み替わりながら上下へと組み合わさり、大地を揺るがす重音と共に一体となる。
そして鋼の守護神、MOGERAが勇壮に大地に立ち上がる。ユウキのおっさんが言った。
「ミサイルがダメならメーサーだ! あのナマコ野郎をこんがり焼いてやれっ!」
「「了解っっ!!」」
僕らの操作でMOGERAの胸部装甲が裏返り、パラボラ状の特大光線砲塔が姿を現した。原子熱線プラズマメーサーキャノン、最大出力なら怪獣一匹消し飛ばすMOGERAの必殺技である。
「荷電……
僕らの操作でチャージは速攻で完了、MOGERAがメーサー砲を撃ち出した。膨大な稲妻の奔流、ゴジラでさえもこんがり丸焼きに出来そうな雷光の洪水がミレニアンへと押し寄せる。
ミレニアンも反撃してきた。触手のバリアでいったん凌ぎながら無数に重なる五角形、ペンタフレークのフラクタルを素早く形成。すかさず放った重力波ビームで、MOGERAのプラズマメーサーを真正面から迎え撃つ。
MOGERAのメーサーと、ミレニアンの重力波ビーム。両者の激突とその余波が、MOGERAの左腕を吹き飛ばした。
「ぐっ、レフトアーム破損っ!」
「構わんっ、このまま撃ち続けろっ!!」
僕らは歯を食い縛って衝撃に耐えたけれど、ミレニアンのエネルギー量はまるで底無し、無尽蔵に溢れ出てくるかのようだった。
ミレニアンの重力波ビームの前にMOGERA自慢のプラズマメーサーもついには押し負けて、怒涛の破壊力がMOGERAへと襲い掛かった。
「ぐ、ぐわぁぁーッッ!!」
MOGERAも踏ん張って堪えたのだけれど、とうとう引っ繰り返ってしまった。そのダメージはコックピット内にも及び、噴水のような火花があちこちから巻き起こる。
「ダメージはどうだ、報告しろっ!」
「MOGERA損傷率30%、大破相当のダメージです! 自立回復シークエンスへ移行、再起動完了まで240秒っ!」
「240秒だあ!? 四分も寝てられるかバカヤローっ!」
僕らがしっちゃかめっちゃかやっているうちにも、ミレニアンは次の手へ打って出てきていた。
次にミレニアンが形成したのは、ジュリア集合と呼ばれる渦巻きフラクタル。まったくもって容赦無し、今度こそ僕らを焼き尽くそうというのだろう。
「ミレニアン重力波ビーム、第四射発射の予兆を検知! 本機はターゲットとして捕捉されていますっ!」
「おいコージ、だんだん発射間隔が短くなってないか? 威力も上がってるし!?」
「ミレニアンのヤローも『適応』してるってことか……編み出した“武器”を使うための、最適な形態へと……!!」
「感心してる場合かっ、早く機体を動かせっ、吹っ飛ばされるぞ!!」
僕らのヤケクソな操縦でなんとか立ち上がろうとするMOGERA、だけどその動きはとてもぎこちなかった。ボロボロに焼け焦げた合金製のボディが音を立てて軋み、足取りはよろけていて今にも倒れてしまいそう。こんなんじゃあ、ミレニアンの次なる攻撃にはとても耐えられそうにない。
……悔しいけれど、完敗だ。思わず言葉が漏れる。
「くそっ、ここまでかっ……!」
僕らが“覚悟”を決めそうになったその時。
青白い奔流が、空を裂いた。
途上にあるビルをすべて焼き切りながら、暗い夜空を突っ切って、暗闇となった都市の夜景を煌々と燃やす。光の柱が闇を貫き、一直線に目指すはミレニアンだ。
「ッ!?」
ミレニアンは咄嗟に触手のバリアーで防いだけれど、防ぎきれなかった。青白い光は四散、爆炎と火花が四方八方へと飛び散って周りのビルへと延焼させて火の海と沈んでゆく。
……いったいなにが起こった? 僕らは光の発射元へと振り返り、そして驚愕した。
そこにいたのは黒い巨体。
身長50メートル、体重1万トン、それは巨大な山のようだった。三列の背鰭に、長い尻尾、その総身は黒く焦げ、口元を中心に真っ黒で膨大な硝煙が溢れ出ている。
大地を揺らしながら現れた“そいつ”が、雄叫びを挙げた。
「―――――――ッ!!」
それはまさに号砲。はるか遠くからのはずなのに、まるで骨身まで揺るがすかの大迫力。
“そいつ”の威嚇の咆哮が響き渡る中、MOGERAのAIオムライザーが報告を上げてきた。
「ミレニアンのハッキングによって混乱していた、各種通信システムが回復しました! 各種戦況を同期……東京湾の防衛線は突破、
……オムライザーに言われるまでもない。
僕らは、現れたそいつの名前を知っていた。
「ゴジラ……ッ!!」
好きなキャラクター
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サトー=キヨシ
-
ミレヴィナ=ウェルーシファ
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シンジョウ=コージ
-
サエグサ=ミキ
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マルメス=オオクボ
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シキシマ=コウイチ
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ユウキ=アキラ
-
ミレニアン
-
ゴジラ=スカーフェイス
-
オムライザー
-
弁護士
-
マリ=カエラ