怪獣至上主義カルト団体の偽聖女とラブコメ ~ちがう彼女はそういうのじゃないんだスゴく優しいし誰にでも笑顔の善い子だけどたまに弱いところがあるから僕が支えてあげないと以下略~ 作:余田 礼太郎
シキシマたちとの一件以来、僕は『団体』の活動に顔を出していない。
完全な意気沮喪。日々の生活があるからバイトには行くけど、出掛けることと言えばそれだけだ。あれだけ情熱を燃やしていた『団体』の物販も活動も、僕はなんだかすっかりやる気を無くしてしまった。
最初のうち『団体』の人たちは何度か連絡をくれたけど、シキシマたちに対する態度や仕打ちを考えるとなんだか関わりたくなくなってしまった。僕がいるところでは決して口には出さないだろうけど、僕がいないところであればきっと僕の悪口を言っているだろう。特に根拠は無いけれど、そんな確信があった。
そうこうしているうちに『団体』からの連絡はまばらになってゆき、やがてぴたりと来なくなった。
……『団体』みたいな親切な人の集まりでも上手くやれないのか、僕は。自分の社会不適合ダメ人間っぷりに、なんだか深めの溜め息が出てしまう。
「はぁ……」
そんな鬱々した日々を送っていたときのこと。いつものとおりバイトが終わって自宅のアパートに帰りついたとき、僕はそこで思わぬ人と出くわした。
「こんばんわ~、サトーさん」
「ミレヴィナちゃん……!?」
僕のアパート、その入口の前で待っていたのはなんと『団体』の聖女様、ミレヴィナ=ウェルーシファだった。
ミレヴィナちゃんとは街で何度かデートもしていたけれど、僕はミレヴィナちゃんの自宅を知らない。ミレヴィナちゃんも同様に、僕の家のことなど知らないはずだった。
「どうやってこのアパートを……?」
「聖女の神通力……と言ったらどうします?」
えっ、ホントに……??
思わず信じてしまいそうな僕に、ミレヴィナちゃんはいつもどおりニコニコ微笑みながら答えた。
「……なーんてね、冗談です。サトーさん、『団体』に初めて来ていただいたとき名簿へ連絡先を書いていただいたじゃあないですか。それを教えてもらっただけですよ」
「あ、なーんだ、そっかあ……」
言われてみればたしかにそうだ。そもそも『団体』の人たちが連絡をくれたのだって、僕が入った最初に連絡先を伝えていたからだ。ミレヴィナちゃんだって同じように、連絡先を確認して訪ねてきてくれたのだろう。
そんなことにも思い至らなかった間抜けな僕に、ミレヴィナちゃんは至極楽しそうに微笑みかけた。
「本気にしたんですか? フフ、まったく、サトーさんって本当に面白い人ですね」
そうやって悪戯っぽくクスクス笑うミレヴィナちゃんは、本当に可愛くて素敵な女の子。まさに僕の聖女様、いいや天使様だねもはや!
「ところでミレヴィナちゃん、今日はどうしたの? それにその手提げ袋は……?」
僕が訊ねたのは、ミレヴィナちゃんが片手に提げている大きなエコバッグ、買い物袋のことだ。僕もよく行く最寄りのスーパーで買える奴で、袋の口からはスーパーで買ってきたとおぼしき食材がいくらか垣間見えた。
ミレヴィナちゃんは手にしたエコバッグを、僕へ見せつけるように持ち上げながら答えた。
「今日はちょうどスケジュールが空いていたもので、サトーさんのところへお邪魔しようと思っていたんです。あそこのスーパー、なかなか品揃えが良いのですね」
それって、ひょっとして……僕が聞くよりも先にミレヴィナちゃんが答えた。
「よろしければ御夕飯、御一緒させていただいてもよろしいでしょうか? 今日はわたし、作りますから」
「夕飯……って夕飯!? ミレヴィナちゃんが作ってくれるの!?」
思わず僕が聞き返すと、ミレヴィナちゃんはニッコリ笑った。
「ええ……サトーさんがよければ、ですけど」
「もちろん!」
ミレヴィナちゃんが作ってくれるという晩御飯。僕としては願ってもない話、まったくもってサイコー、大歓迎である。さっそく部屋に上がってもらおう……と思って僕は立ち止まった。
「……あ、ごめん、5分だけ待ってくれる? 部屋散らかってて」
「ええ、いいですよ」
そして僕はミレヴィナちゃんから室内を見られないよう素早く部屋に入り、惨憺たる現状の自室の片付けをした。
万年床のカビが生えかけてる煎餅布団を丸めて押し入れにぶちこみ、脱ぎっぱなしの下着とか散らかしっぱなしのゴミとか通販サイトで買ったとっておきのエロ本*1とか見られちゃ困るものを全部押し入れにぶちこんで、干しっぱなしだったバイト先の制服もまとめて押し入れにぶちこんだ。
という具合で、ほぼきっかり5分後。
「ここが、サトーさんの部屋……」
「ご、ごめんね部屋片付けてなくてさ普段はこんなごみ溜めみたいじゃなくて今ちょうど大掃除で片付けてる真っ最中でいやゴメン嘘普段からこんな感」
「い、いえ、わたしこそ急に押し掛けてしまってごめんなさいねサトーさん……」
そして僕も手伝ったりしつつ、1時間後。
出来上がったミレヴィナちゃんの手料理は、鍋で炊いた異国風炊き込みご飯だった。いわゆるインディカ米と呼ばれる細長いお米を使ったもので、鼻に抜ける特製スパイスの匂いがなんとも好い香り。
「いただきまーす……!」
僕とミレヴィナちゃん、二人で狭い食卓を囲みながら手を合わせてからさっそくスプーンで一掬い、そして口へと運ぶ。
「……うん、美味しい!」
味はちょっとピリ辛、だけど辛すぎて舌が痺れるほどでもない。まさにミレヴィナちゃんらしい、とても優しい味付けだった。
しかしこれまで食べたことのない味だ。ねえミレヴィナちゃん、これどこの国の料理なの?
「ビリヤニって言うんですよ。わたしの故郷の村で、特別なお祝いのときによく食べられていました」
「へー……」
……なかなか意外だ。僕はミレヴィナちゃんについててっきり『料理はしない』、したとしても金髪美少女の風体からしてなんかもっと『ハイソで高級なフランス料理』とか、そういうのだろうと勝手に思っていた。
そのことを言うと、ミレヴィナちゃんはいつものニコニコ聖女スマイルで、だけどどこか得意気にこう答えた。
「こう見えてわたし、料理得意なんですよ。母が教えてくれたんです」
……ミレヴィナちゃんのお母さんかあ。そういえばミレヴィナちゃんの家族関係について、僕は何も聞いたことがない。
ミレヴィナちゃんの家族、いったいどんな人たちなのだろう。何の気も無く僕が訊ねると、
「わたしの家族、ですか……亡くなりました。『怪獣大戦争』のときに」
そう答えるミレヴィナちゃん。表情はいつものとおりの微笑、だけどなんだか寂しげだった。
「あ、そうなんだ……ごめんね、踏み込んだこと聞いて」
「いえ、大丈夫です。もう、ずっと昔のことですから……」
気まずい雰囲気に耐えかねて、僕は話題を変えた。
「それにしても、ビリヤニだっけ? とっても美味しかったね! なんかスパイスとかこだわってるの?」
「ええ、わたしの“とっておき”。秘伝の調合を組み合わせた、秘密のスパイスがあるんです。今度教えますね……」
楽しい団欒のひととき。
『男やもめに蛆がわき、女やもめに花が咲く』なんて言葉もあるけどさ、日頃の僕の夕食といえば最寄りのスーパーで買うタイムセールの半額弁当。そこへ女の子の手料理ってのはやっぱり嬉しいものだ。しかも作ってくれるのが、ミレヴィナちゃんのような素敵な女性だというなら猶更である。
まあそこで出てくるのが『異国風炊き込みご飯のビリヤニ』ってのがなかなかユニークだけど、かえって趣深いといえば趣があるかもしれないよね。
美味しいビリヤニを平らげて食器その他片付けたあと、僕はミレヴィナちゃんとゲームをした。
「ねえねえ、ミレヴィナちゃん。『ブラックジャック』やろうぜ!」
「ぶらっくじゃっく、ですか?」
「そう。知らない?」
「ええ、初めて聞きました。どんなゲームなんですか?」
興味深げにきょとん、と首を傾げるミレヴィナちゃん。ああ、可愛いなあ、もう!
……じゃなくて、僕は説明してあげることにした。
「ブラックジャックはトランプのゲームだよ。お互いにカードを引いて、合計が21に近くなったところでスタンド。お互いにスタンドしたら勝負して、21に近い方が勝ち、っていうルール。絵札は10、エースは11で数えるんだ」
ブラックジャックは昔、僕が『怪獣大戦争』の前線にいた頃、少年兵の仲間同士でよく遊んでいたゲームだ。最初は仲間内の他愛ない遊びだったのだが娯楽の少ない前線でのこと、やがて所持金やら身の回りの装備品まで賭け始めて、僕などは身ぐるみ全部を剥がされてパンツ一枚の素寒貧にされてしまった。そしてそれが上官たちにバレて、こっぴどく叱られて禁止令を言い渡されたこともあったっけ。
そんなバカ全開ながらも懐かしい思い出が僕の脳裏で過ぎる一方、ミレヴィナちゃんはブラックジャックのルールに興味津々だ。
「楽しそうなゲームですね。手札が21を超えたらどうなるのですか?」
「その時点でバースト、その人の負けだよ。だから延々とカードを引き続ければいいってもんでもなくて、ほどよいところでスタンドする必要があるのさ」
「ははあ、なるほど……」
「それじゃあディーラー、親は僕ね。本当はチップとしてお金を賭けるんだけど、本物のお金を賭けるわけにもいかないからオモチャのコインを使おっか」
「わかりました~」
「ふっふっふっ……こう見えても僕、トランプ強いんだぜ~?」
「あらまあ! どうぞお手柔らかに……」
そんなわけで始まった、ミレヴィナちゃんとのブラックジャック。最初は経験者である僕が勝っていたのだが……
「……はい、全額いただきますね~♪」
「ま、また負けた……!?」
初戦ではたしかに僕が勝ったけど、山札を切り直した二戦目以降はミレヴィナちゃんに負けっぱなしだった。それからは何度やっても、最後は手持ちのチップを根こそぎ巻き上げられてしまうのだ。
……ミレヴィナちゃん、ひょっとしてブラックジャック初めてじゃないのかな? 僕がちょっとした疑いの目線を向けると、ミレヴィナちゃんは首を左右に振ってこう答えた。
「いいえ、初めてです。でも、正直に言うとちょっとだけ“ずる”をしました」
「“ずる”?」
「ええ。簡単な統計ですよ」
そう言ってミレヴィナちゃんは可愛らしく舌を出しながら、“ずる”のタネを明かしてくれた。
「まず自分の引いた手札に、個別で点数をつけるんです。カードの2から6のカードが出たら、プラス1点。10や絵札、エースが出たらマイナス1点。7から9はゼロ点とします」
「ふむふむ?」
「これでスタンドするときに合計点を出すんです。こうすれば残りの山札のカードがある程度予測できるので、それに応じて賭け金を調整してゆけば有利になるんですよ」
「ふーむ……」
そう説明されて、僕はふと思い出した。
「つまりそれって『カウンティング』……?」
「カウンティング、というんですか?」
僕の言葉にそう聞き返すミレヴィナちゃん。どうやら本当に知らないらしいので、僕は説明することにした。
「うん、カウンティング。本場のカジノでギャンブラーがそう呼んでる裏ワザでね。昔、僕もこれ教えてもらう前はボロ負けしまくったんだよなあ……」
「それじゃあやっぱり、ズルなんじゃあ……?」
途端にミレヴィナちゃんが心配そうな顔をしたので、慌てて僕は訂正する。
「いや、ズルやイカサマってことはないよ。何のルール違反もしてない、ミレヴィナちゃんの言うとおりの『簡単な統計を使ったテクニック』さ。まあ、本場のカジノでやるとゲームにならないから、マジで怒られて出禁を喰らったりするらしいけど」
「へぇ~……」
僕の説明に感心してみせるミレヴィナちゃんだけれど、本当に驚いたのは僕の方だ。
ミレヴィナちゃんは、ブラックジャックで遊んだのは今日が初めてだと言った。だけど本当にそうなら、熟練のギャンブラーでも使いこなすのが難しいカウンティングをミレヴィナちゃんは独力で、しかも初めて遊びながら思いついたことになる。
内心でブッたまげている僕に、ミレヴィナちゃんはニコニコ笑いながら言った。
「まあ、ゲームが長引かないと使えない手ですけどね。手札を引く回数が少ないとランダム性が強くなって、統計になりませんから」
「なるほどなあ~……」
……しかし、ミレヴィナちゃんがゲーム中にこんな複雑な計算をしていたなんて、すぐ目の前で対戦していたのに僕はちっとも気付かなかった。
独力でカウンティングの裏ワザを思いついたことと言い、ミレヴィナちゃんって天然ゆるふわに見えて実はめちゃくちゃ頭がいいのでは……?
「……すごいなあ、ミレヴィナちゃんは」
「いえ、ちょっと計算が得意なだけですよ……」
そうやって謙遜するミレヴィナちゃんだけれど、やっぱり褒められれば素直に嬉しいのが人情で、僕にはなんだかミレヴィナちゃんが得意気にも思えた。
……ああ、こんな素敵な子とオトモダチになれるなんて、僕は本当に幸せだなあ。ミレヴィナちゃんの素敵な笑顔を眺めてるだけで、なんだか救われる気がする。
そんなキモ野郎全開の僕のことを、ミレヴィナちゃんはイヤな顔一つせずに眺めていたけれど、トランプを片付けてから口を開いた。
「……サトーさん。なにかあったのですか?」
「なにか、って、なにが?」
聞き返す僕に、ミレヴィナちゃんはやがて意を決した様子で続けた。
「サトーさん、なんだか落ち込んでいらっしゃるように思ったものですから。『団体』にも最近来てませんし、なにか嫌なことでもあったのでないかと」
……なるほど。ここまで言われれば、いくら唐変木のバカでも流石に察する。
スケジュールが空いていたというのはきっと嘘。ミレヴィナちゃんはこの僕、サトー=キヨシのことが心配でわざわざ様子を見に来てくれたのだ。
言われてみれば、ここしばらくスポーツサークルや自己啓発セミナーも含めて『団体』の活動とはご無沙汰だ。かつての熱心さと裏腹の疎遠な現状を考えれば、ミレヴィナちゃんから心配されてしまうのも無理からぬ話だった。
「…………。」
そして、そんなミレヴィナちゃんの優しい思い遣りを嬉しく思うとともに、僕は自分の有り様を心の中で恥じた。こんな女の子にまで心配をかけてしまうとは、まったく僕と来たらつくづく本当に情けないクズである。
「……あのね、ミレヴィナちゃん」
『バイトが忙しかった』とか『そんなことないよ、たまたまだよ』とか、それらしく取り繕うことならきっといくらでも出来ただろう。
だけどここで嘘を吐いて誤魔化してしまうのも、なんだか不誠実な気がしてイヤだった。せっかくミレヴィナちゃんが家まで来てくれたのだ。その真心に応えるためにも、ここは正直に行こう。
「……なんか、わからなくなっちゃってさ」
「わからない、とは?」
ここでもちょっと迷ったけど、ミレヴィナちゃんの真摯な目線を受けて、僕は洗いざらい話してしまうことにした。
先日の『活動』におけるシキシマとのこと。そこで『団体』でやっていることに違和感を覚えたこと。そして、その違和感が未だに消えないままなのだということも。
要領を得ないし取り留めも無い、だらだら話しただけの僕のつたない話ぶり。それに対してミレヴィナちゃんは真剣な面持ちで聞いてくれていたけれど、やがて一言。
「……迷っていらっしゃるのですね」
……ああ、やっぱりミレヴィナちゃんは凄いや。
いつだったかもそうだけど、ミレヴィナちゃんはまるで僕の心の中が読めるみたいに僕の悩みをずばり言語化してくれていた。本当に聞き上手だし、本当に賢い人なんだろうな。
それに引き換え、僕と来たら。
「つまんない悩みだよネ。ごめんね……」
そうやってつい卑屈になる僕だけど、ミレヴィナちゃんは真摯に接してくれるのだった。
「いいえ、迷うのは知性ある故。サトーさんがそれだけ、わたしたちのことを真剣に考えてくださっている証拠ですよ」
そうか……ありがとう、ミレヴィナちゃん。
ミレヴィナちゃんからそう言ってもらえると、なんだか心が救われる気がする。
「ごめんね、自分勝手な話で。こういう人間関係のトラブルも、ミレヴィナちゃんみたいな素晴らしい聖女様だったらきっと上手い具合に収められるんだろうけどね」
「……………………。」
締め括りに何の気もなく僕がそう言うと、ミレヴィナちゃんは困ったような顔をした。いや、表情そのものはいつもの聖女のニコニコスマイルなのだけれど、なんだかとても困っているように僕には思えたのだ。
やがてミレヴィナちゃんが口を開いた。
「……サトーさん」
そう告げるミレヴィナちゃんの目つきは、いつになく真剣で。
「わたし、本当はそんな素晴らしい人なんかじゃありません。『団体』の皆さんはわたしのことを“聖女様”だなんて言っていますけど、そんなのホントは上辺だけ。サトーさんや他の皆さんが思っているような、清らかで立派な聖人君子でもなんでもない。わたしなんて他の人よりちょっと賢いだけの、ただのちっぽけで卑しい小娘に過ぎないんですよ」
いつになく自虐的なミレヴィナちゃんに、今度は僕の方が困惑してしまった。謙虚なのは素晴らしいことだけれど、それにしたって程度ってものがある。
僕は即座に否定した。
「そんなことないよ、ミレヴィナちゃん! ミレヴィナちゃんがちっぽけで卑しい小娘だってんなら、僕なんかろくでなしのムシケラだよ!」
僕の言葉に、すかさずミレヴィナちゃんが言い返した。
「サトーさんはムシケラなんかじゃありません、とても素晴らしい人です。サトーさんこそ、卑屈なのはいけません!」
いつになく熱弁を振るってくれるミレヴィナちゃん。そんな彼女の姿を見て、僕はちょっと反省した。
……たしかに卑屈なのはいけない。謙虚なのと卑屈なのは違う。僕がミレヴィナちゃんの自虐がイヤだったのと同様に、ミレヴィナちゃんだって僕が卑屈になるのはイヤなんだろう。
「なんてったってサトーさんは、わたしのヒーローなんですから」
……本当にありがとね、ミレヴィナちゃん。君は、僕みたいなどうしようもないバカのことまで思い遣ってくれる。『団体』の人たちが言うとおり、ミレヴィナちゃんは本当に聖女様だ。
「……でも、そんなことを言ってくれるのはミレヴィナちゃんだけだよ」
言いながら、僕は視線を床に落とした。ミレヴィナちゃんの優しさが痛いほど身に染みる一方で、自分の弱さに嫌気が差す。部屋の静けさがやけに重く感じられ、僕の心の中がなんだか空っぽになったような心地になる。
……ああ、そうだろうとも。僕は言う。
「……ミレヴィナちゃんがいくらそんなふうに優しく言ってくれたとしても、僕にはちゃんとわかってるんだ。僕なんか人間のクズ、本当はミレヴィナちゃんに釣り合わない低レベルな底辺男なんだってことくらい」
そんな言葉を口にするたび、胸の奥に針が刺さるような痛みが走るような気がする。ミレヴィナちゃんの表情は優しいままだったけれど、目を伏せるのを見て、僕はさらに自分がイヤになった。自分で自分を責めて、自己嫌悪しながら自己憐憫。ああ、僕ってなんて嫌な奴なんだろう。
そんな僕の答えに、ミレヴィナちゃんはしばらく考え込んでから口を開いた。
「……そうですか」
やがて、ミレヴィナちゃんが顔を上げた。
「それなら明日、『団体』の本部に来てください。わたしの“とっておき”を見せてあげますから。」
そう告げながら、僕をじっと見つめるミレヴィナちゃん。アメジストの宝石みたいなその目線には、力強い決意の光が灯っているように思えた。
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