怪獣至上主義カルト団体の偽聖女とラブコメ ~ちがう彼女はそういうのじゃないんだスゴく優しいし誰にでも笑顔の善い子だけどたまに弱いところがあるから僕が支えてあげないと以下略~ 作:余田 礼太郎
『ウサギとカメ』は地道なカメが勝つ、『アリとキリギリス』は真面目なアリが生き残る。
そういう御伽噺があるけれど、実際はそんなの嘘っぱちだと思う。実際のウサギは手を抜かないし、実際のキリギリスはきっと実家が太い。ウサギはカメなんか相手にせずアスリートとしてオリンピックでメダルを獲っているだろうし、キリギリスは有象無象のアリたちを感動させる素敵なラブソングを大ヒットさせて、もっと楽しく暮らしているだろう。
こんな作り話、真に受ける方がバカなのだ。
……本当の本当は僕だってわかってる。
ウサギやキリギリスだって頑張っているし、彼らなりに苦労していることだってきっとある。だいたい上手く走れるのだって、素敵なラブソングが歌えるのだって、当人たちの努力の賜物。その地道で真面目な積み重ねが彼らの成功を作り上げているのだ。
それに引き換え僕ときたらただバカなだけで、地道なカメでもなければ真面目なアリですらない。僕自身の努力も、工夫も、知恵も、その他ありとあらゆるものが足りてない。僕がダメなのは他ならぬ僕自身のせいなのだというのは、この現実が何よりの証左だった。
そんなことへ想いを馳せているうちに、いつものとおりスーパーの安い半額弁当を買いながら僕はふと呟いてしまった。
「人生、どうにも上手く行かないなあ」
僕がもうちょっと真面目で、努力が報われる世界だったら。そうでなくとも、せめて僕がもっと要領よく生きることができたなら。
いくらルサンチマンを炸裂させようが、酸っぱいブドウを吼えようが、やっぱりどうしてもそんなふうに思わざるを得ないのが僕の人生なのだった。
この僕、〈サトー=キヨシ〉の人生を思い起こせば、ケチの付けどころはあの『怪獣大戦争』が終わったときから始まっている。
世界中で怪獣が暴れ狂う、怪獣黙示録の時代。身寄りのない孤児だった僕はGフォースに徴兵され、最前線で怪獣と戦う少年兵として子供時代を過ごした。
そしてゴジラとキングギドラの覇権争いに端を発した世界大戦、『怪獣大戦争』。それが終わって18歳の誕生日を迎えたとき、僕はGフォースを辞めて日本へ帰国した。
……怪獣との戦いなんてもーイヤだ、血なまぐさい争い事なんてもー懲り懲り。これからはラブアンドピース、何より平和が一番だよな。戦争も終わった、これからはきちんと真面目に働いて、平和にのんびり暮らしたい……そう思ったのだ。
だけど、現実は厳しかった。
意気揚々と帰国した僕を待っていたのは、冷徹極まりない日本社会の残酷な態度である。
「それではサトー=キヨシさん。特技やスキルはなにかお持ちですか?」
……よしきたっ! 就職の面接にて、僕は威勢よく自分の特技を自己PRした。
「『怪獣大戦争』で、モゲラを操縦してましたっ!」
怪獣黙示録の時代に開発された対怪獣地底戦闘車、通称:モゲラ。
鋼鉄の200倍の強度を有するとされるミステロイド・スチールによる重装甲を誇り、さらに装備された鋼鉄のドリルとグラインダーでどんな硬い岩盤も貫き通す。地中を潜行する速度は驚くなかれ、驚異の時速60キロを叩き出す。この猛スピードで地下を掘り進んで奇襲を仕掛け、暴れる怪獣たちの足元を掬って打ち倒すのだ。
地底戦闘車モゲラは『怪獣大戦争』のみならず、この怪獣黙示録という時代を象徴する名機のひとつだ。こんなスーパーロボットに乗って戦えたのは、僕の人生における一番の誇りだった。
けれど。
「え、えっと、大戦でモゲラ、ですか?」
……なに、その反応。もっと驚いて、ぐいぐい話に乗ってくれると思ったのに。
あまりの反応の薄さで却って僕の方こそ面食らっていたのだけれど、面接官は気を取り直した様子でこんな質問をしてきた。
「それでサトーさんは、なにか資格などお持ちですか? たとえば、パワードスーツの免許とか、メーサー戦車のような特車免許とか……」
今にして思えばこれは思い遣り、世間知らずな僕への助け船だったのだろう。ここで僕の方も上手く取り繕うことが出来てさえいれば、あるいは面接の結果も少しは違っていたのかもしれない。
だけど当時の僕は今に輪をかけてバカだったので、そんな配慮なんてものにはちっとも気づきやしなかったのだ。
「いえ、勉強とかは特にしていませんっ! センスと経験で乗ってましたっ!!」
「そ、そうですか……では、選考の結果はまた後日メールか郵送ということで……」
このように面接の結果は僕の予想とは裏腹、僕の就活はまったくもって芳しくなかった。
僕が前線でどれほど勇敢に怪獣と戦ったか、どれだけモゲラや仲間たちと共に大活躍したか……僕の経験や実績をいくら一生懸命にアピールしても「あ、そうですか……」と冷ややかに流されるか、でなければこんな感じで戸惑った反応をされるだけだ。
挙句の果てには、
「……それで、その能力が我が社でどのように役立つとお考えですか?」
「えっ」
そんなこと、考えたこともなかった。
だってモゲラだぜ? スゴいじゃん。Gフォースの戦士だぜ? カッコいいじゃん。スーパーロボットに乗れるのだからきっと引っ張り凧に決まってる! ……なんてことばかり考えていたものだから。
こんな有様だったので内定なんて出るわけもなく、志望企業はことごとく全滅。世の中どうにかしてるねまったく!
「……ったく、失礼しちゃうよなー。平和な世界があるのは、僕たちみたいなGフォースの戦士が怪獣大戦争で命懸けで戦ったおかげなのに『それ、わが社で役に立つんですか?』だなんて。役に立たないわけないじゃんねー」
っていう話を友人にしたのだが。
「アホか、オマエは」
と一蹴されてしまった。なんでや。
呆れたような目つきで見てくるその友人:シンジョウ=コージに、僕は自分の正当性を一生懸命に主張する。
「だ、だってモゲラだぜ!? モゲラと言やあ、オーバリーの特撮怪獣映画にも出てくるスーパーロボットで、しかも実際にゴジラやキングギドラとも戦ったんだぜ!? これ以上ないくらいの自己PRだろっ!? それを受け容れない日本社会に問題があるだろ、どー見てもっっ!!」
「……あのな、キヨ」
とにかく不満げな僕に、コージは眉をしかめた表情で言うのだった。
「今の世の中、メーサー戦車やパワードスーツの操縦だって免許が要るんだぞ。どこの世界に『無免許でスーパーロボットに乗ってました』なんて自己PRするバカがいるんだよ」
「あ……」
言われてみればご
けれど僕は素直に受け容れられず、ついつい反論してしまう。
「だ、だけど大戦のときは資格がどうのなんて言ってられなかったし……モゲラの免許なんて、合宿免許WA●のコースにも無かったし……」
「仮にそうでも無資格・無免許はマズいって。せめてパワードスーツの免許くらい取ればよかったじゃあないか。だいたいキヨ、職業訓練プログラムだってバックレたんだろ?」
「う、うぐっ、それは……」
コージの言うとおりだった。僕は退役後に受けられる職業訓練プログラムをバックレてしまい、パワードスーツの免許すら取れなかった。理由は簡単、僕が勉強が出来なかったからだ。パワードスーツの免許、皆いったいどうやって勉強してんだろうね。
「はあー……」
そんな僕を前に、深々と大きな溜息をつくコージ。僕に向けたその目線は、心の底から呆れかえっていた。
「キヨ、おまえがバカなのはわかってたつもりだが、よもやここまでバカだったとは……次のアテがなかったんだったら、Gフォースに残ればよかっただろうに……」
「だってよう……」
今さらそんなことを言われたところで、後の祭りである。
ちなみにコージの方は僕と同じ少年兵出身だけれど、僕と違ってGフォースに残る道を選んだ。詳しい話は軍事機密だろうから僕もあまり踏み込んで聞かないものの、コージの奴は昇進して今も怪獣と戦っているらしい。ちぇー、上手いことやってやんの。
そんなこんなで僕の就活戦線は初戦で見事に敗退、以来バイトで食い繋いで早4年。グズでトンマなりに一生懸命に生きてきた僕だけど、とうとう恋人にまでフラれてしまった。
場所はオシャレな街角、いつもよく行く喫茶店。客席の窓からは賑やかな街並みが見えていて、店内は穏やかなBGMと喧騒が織り成す和やかなムードで溢れている。
けれど、僕とその恋人カオルちゃんのテーブルだけはやけに重たい空気が漂っていた。
「…………。」
きっかけは些細な行き違い、『カオルちゃんが注文したパフェが来るのが遅い』とかいう話だった気がする。それどういうわけか僕との言い合いへ発展し、ついにはこんなふうに切り出された。
「……別れよ、サトーくん」
僕は一瞬、何を言われたのかわからなかった。
そして、それが別れ話であることに遅れて実感が湧き── すぐには受け入れられなかった。
元々、僕の一目惚れから始まった恋愛関係だった。夜のお店で出会ったカオルちゃんに、僕はフラれてもフラれても何度もアタックし続けた。最初は迷っていたカオルちゃんだけど、やがて僕の下手糞なアプローチをカオルちゃんが受け入れてくれて、僕たちの交際は一年ほどに及んだ。
そんな経緯でやっと手に入れた関係性だったから、僕はついつい縋りついてしまった。
「え、ちょ、ちょっと待ってよ、カオルちゃん!」
見苦しいのはわかっちゃあいるが、惚れた弱味という奴だ。こういうとき、具体的にはカオルちゃんの機嫌を損ねたとき、そういうときはいつも僕の方から折れるのが常だった。
外聞もへったくれもなく、僕はカオルちゃんに平身低頭へつらった。
「わかった、わかったよ、カオルちゃん。僕が悪かったよ、だからさ……」
「……『悪かった』?」
だけど、今回のカオルちゃんは一味違っていた。
いつもだったらここまでへりくだれば「まったく、しょうがないなあ~」なんて機嫌を直してくれるところなのだけれど、今日のカオルちゃんはなぜか心底不機嫌そうに目を細めて鋭く言うのだった。
「ねえサトーくん、『悪かった』って何が? 何が『悪かった』から謝ってるの?」
「そ、それは……」
言えるわけがない。だってそうやって謝れば許してくれるからで……なんて。
咄嗟に答えられない僕を前に、カオルちゃんは呆れたように深々と溜息をついた。
「ほら、答えられないんでしょう? どうせいつもそーやって、『卑屈に謝れば事が済む』なんて思ってるんでしょう。そういうの、ホントマジムカつくんですけど」
「ち、違うって! そんなんじゃなくて……」
僕は必死に言い訳したけれど、僕のそんな態度がますますカオルちゃんの怒りに火を点けたらしい。むすっとした表情でカオルちゃんは言った。
「違わないよ。あたしにはわかるもん」
「……っ!!」
ずん、と心臓を串刺しにされた心地だった。別れを切り出されて謝ってるのは僕の方だ。謝って済むなら土下座だって厭わないつもりでいる。
だけど、そんな僕の卑屈な振る舞いこそがカオルちゃんは気に入らないのだという。じゃあどーすりゃいいのだ。僕にはもはや返せる言葉がない。
「サトーくん、自分のこと『優しすぎる』『不器用なだけ』『イイヤツ』だとでも思ってるんでしょ? それ、違うからね。サトーくんはいつだってそう。意地もプライドも無い、ただ傷つくのが怖くて逃げ出しているだけ。結局、自分のことしか考えてないんじゃん」
「…………っ」
いやもうオーバーキルだよ、カオルちゃん。そう思ったけど、あまりに図星すぎて僕には言い返す気力すら無かった。
もはや手も足も出ない、そんな僕の無様な姿を見下ろしながら、カオルちゃんは冷たく言い放った。
「……もう限界」
カオルちゃんは、いつぞやに僕が貯金をはたいて買ってあげた高級ブランドのハンドバッグを手に取り、すっと席を立つ。
「ま、待って……」
僕は懸命に引き止めようと手を伸ばすけれど、カオルちゃんはもはや完全に俺を見限っていた。
「じゃあね、サトーくん」
そしてカオルちゃんは迷いなく、独り茫然とする僕を置き去りに喫茶店を出て行ってしまった。
……聞くところによるとこのあとカオルちゃんは夜のお店を辞め、昔付き合ってた大企業の御曹司と復縁し、玉の輿で結婚した。
僕にとっては唯一のカノジョだったカオルちゃん。けれどカオルちゃんにとっての僕は、ただの『キープ君』に過ぎなかった。うだつの上がらないフリーターの僕と、大企業の御曹司になった元カレ。より好条件の相手が見つかったので僕とは別れるタイミングを見計らっていたらしい、というのは後から知った。
ちなみに、カオルちゃんが『来るのが遅い』とごねたパフェは後からちゃんと届いて、結局僕が喰った。フルーツとクリームがふんだんに盛られた豪勢なスペシャル・パフェは、ひどく甘ったるくて胃もたれした。
そんな自分の人生にちょっぴり嫌気が差した日々の中、僕は“彼女”と出会った。
バイトから上がり、いつものとおり行きつけのスーパーで半額弁当を買って帰る途中のことだ。
「……なーなー、そんな強情張らずにオレらと一緒に遊びに行こうよ~」
「や、やめてくださいっ……!」
裏通りの近道を歩いていた僕が出くわしたのは、ナンパ野郎の集団と、それに囲まれた一人の女の子。
女の子1人に対してナンパ野郎の数は3人、年齢はいずれも20も行ってない。脱色した髪に不健康そうな顔つき、耳にはピアスで派手な柄シャツ。なんかこう、僕に輪をかけて頭が悪そうな悪ガキどもである。
そんな奴らに囲まれながら、女の子は懸命に訴えかけていた。
「それは大事なものなんです! どうか返してください!」
女の子はそうやって必死に懇願しているのだけれど、ナンパ野郎の悪ガキどもはどこ吹く風でヘラヘラ笑って答えるだけだ。
「そんなに大事なものなら、ちゃぁんと肌身離さず持ってなくちゃあ~」
「それにそんなに大切なものだって言うならさぁ、それを拾ってあげたオレらに御礼の一つや二つしてくれたっていいもんじゃあないの~?」
そう言いながら悪ガキどもは、なんか高価そうなブレスレットを女の子に向かってひらひらと見せつけるのだった。そしてそれを必死に取り返そうと、懸命にお願いし続ける女の子。
「別に獲って喰おうなんて言ってるんじゃあない、ただ『ちょっとお茶しようよ』って言ってるだけなんだぜ? そうしてくれたら、ちゃあんと返してあげるからさ」
「ホラ一緒に行こうよ、君もきっと楽しいよ~?……」
「お願いですから、返してください!……」
……ははあ、なるほど。
女の子がブレスレットを落としたので、こいつらはそれを拾ってあげたことを恩に着せてナンパしようとしているわけか。そんな汚い手を使って遊んだとしても、全然楽しくないと思うんだけどな。
ま、それはともかく。
「……僕にはカンケーないか」
最初そう思った。
そうとも。僕は別に
そんなことを考えている僕の耳に、女の子の心から困っている声が届く。
「どうか返してください! どうか、どうかお願いですから……!」
そーだとも、こんなの僕にはカンケーない。ここで僕は何も見なかったし、何にも聞いちゃいない、そういうことにしよう。せっかく温めた半額弁当も冷めちゃうし、ここは何にも知らないフリしてしれっと通り過ぎちゃおーっと。
……って、思ってたはずなんだけどねぇ。
「まーまーいいから行こ「あ、おまたせ~!」
気づいたら体が勝手に動いてた。
……いや、ホントにホントよ? ホントにそのまま通り過ぎようと思ってたし、今もそうだし。だって相手は三人よ? 喧嘩になったら敵うわけないじゃん。
そのはずだったんだけど、僕の口と体は理性に反して勝手に動き、その“一歩”を踏み出してしまったのだった。
「いやーごめんごめん、電車が遅れちゃってさー! 久しぶり、元気してた? 仕事はどう、順調? あ、それともガッコーだったカナ……?」
「……!?」
そんなふうにベラベラとデタラメをしゃべくりながら、僕は悪ガキどもと女の子のあいだにさりげなく割って入った。そしてそのまま女の子の手を取り、その場から連れ出そうとする。
そうやってナンパの獲物を横獲りしてゆこうとする僕に、悪ガキどもは噛みついてきた。
「おいおいおいおい、ちと待てやコラ!」
「なんだぁ、テメェ!?」
「オレらが先に遊ぼうとしてたんだぞ、邪魔するんじゃねえや!」
……本当に僕より頭悪そうだな、こいつら。
ったく、せっかくここまでしてやってんだからいい加減察しろよ。僕とこの子は前からの知り合い、今ちょうど待ち合わせていたところなのがわからないのカナ? ……まあ実際は今日この場で初めて会ったんだけどさ。
つまり、おまえらの悪辣なナンパはこれにて失敗。さあ善い子の皆はおうちに帰った帰った、こっからはオトナの時間だぜ~い。
……という算段だったのだが、ここで女の子の方が思わぬことを口にした。
「……えっと、どなたですか?」
えっ。
一同唖然、僕も茫然。思わず悪ガキの一人が女の子に訊ねた。
「……なにコイツ、知り合いじゃあないの?」
「え、ええ……今日この場で初めて……」
……く、くそう! この女の子の方も察しが悪いクチか! さては天然か!? “天然ボケ”って奴なのかい!?
このやり取りで、僕のパーフェクトなプランは敢え無くご破算。僕の正体が割れた途端に、悪ガキどもは一斉にいきり立った。
「なんだよ、オマエ、この子の知り合いじゃあねーじゃん!」
「じゃあ何なんだよオメーは!?」
「この子はオレらが先に見つけたんだぞっ、さては横取りする気かっ!?……」
いやおまえらも知り合いじゃないし、そもそもこの子はおまえらのもんじゃあないだろ。そんなツッコミも湧いたけど、そんなことよりまず先に。
「……仕方ない、やるしかないか」
言うや否や、僕は女の子を背に庇いながら悪ガキどもへと向き直った。着ていたジャンパーをバサッと脱ぎ捨て、拳を握り、ジュードーの構えをとりながら悪ガキどもを真正面から睨みつける。
そんな僕の堂々とした態度に、悪ガキどもは意気地を挫かれたようだった。
「な、なんだこいつ……!?」
「まるで歴戦の猛者みたいなスゴ味……!」
「さてはこいつ、デキるな……!!」
……ふっふっふ。かの大戦で名の知れた『魔犬のサトー』とは僕のこと。あの苛酷な『怪獣大戦争』を生き抜いたこのド根性タフネスを見せつけてやるぜ!! ……まぁ『魔犬のサトー』はウソだけど。
そうこうするうち僕らの中で、試合開始のゴングが鳴り響く。先手必勝、まずは僕から打って出た。
「喰らえ必殺北斗柔破z「うるせえ!!」ひでぶっ!!」
すかさず返ってきたカウンターパンチ。悪ガキ数名VS僕。死闘は、僕の惜敗で終わった。
女の子に良いとこ見せようと勇んで飛びかかったはいいが、所詮は多勢に無勢、僕はあっという間に袋叩きにされ、文字通り顔面がめり込むんじゃあないかというくらいタコ殴りにされてしまった。
「なんだこいつ、ハッタリじゃねーか!!」
「チョーシのってんじゃあねー!!」
「オラッ、カッコつけやがって!!」
ガシッ、ボカッ、ゴスッ……。
……瞬殺、フルボッコじゃねーかって? いやいやいや、惜敗でしたよ? あそこでたまさか偶然不運なことに、持病の癪による差し込みでお腹が痛くならなければ、Gフォースの少年兵時代に身につけた宇宙CQCエンハンサーでそりゃもう無双っすよ。あんな北斗のモヒカンみたいな連中なんか指先一つでダウンさ。いやぁ、あそこで持病の癪さえなけりゃあなー。持病の癪さえなけりゃあなー!
……とまぁ、我ながらみっともない敗残者の弁を脳内で展開していると。
「あの……」
満身創痍、顔面陥没、そんな僕の目の前へとそっと差し出されたのは、一枚のハンカチ。
「大丈夫、ですか……?」
顔を上げれば、手を差しのべてくれていたのは先ほどの女の子だった。なんだ、道端で喧嘩するバカヤローどもなんかなんかほっといて、とっとと逃げても良かったのに。
まぁ、僕が殴られたおかげで悪ガキどもは興が醒めたらしく、どこかへ行ってしまった。何はともあれ女の子は難を逃れられたし、ここは良しとするか!
……あ、そうそう。僕はハンカチを受け取る前に、女の子に渡すものがあるのだった。
「はい、これ」
「こ、これはっ……!?」
目を見開いた女の子。その目の前に僕が差し出したのは、女の子が落としたはずのブレスレットだった。
「ほら、この御守り。大切なモノだったんでしょう?」
べ、別に取り返してあげたんじゃないんだからねっ。乱闘のどさくさに紛れていつの間にか僕の手の中にあっただけなんだからねっっ。
そのことを説明した途端、女の子は今にも泣き出しそうな顔をして深々と頭を下げまくっていた。
「あ、ありがとうございますっ、本当に大事なものだったんですッ……!」
……まあ、よかった。
それから改めて、僕と女の子は顔を突き合わせて挨拶をした。
「このたびは助けていただき、ありがとうございました」
そう言って、僕に深々と頭を下げる女の子。最初に盛大な天然ボケをかましていたけど、事ここに至れば流石に僕がやろうとしていた意図を理解してくれたらしい。
それから女の子は、僕に指摘した。
「あの、お弁当が……」
言われて、僕もようやく気づく。
もう片方の手に提げていたはずのスーパーの半額弁当、それが乱闘するうちに中身が散々シェイクされて、ビニール袋の中でぐちゃぐちゃの混ぜご飯みたいになっていた。おかしいよな、元はただの焼肉弁当だったはずなのに。
でもまあいいや。僕は答えた。
「いや、いいんだ」
「で、でも……」
「どうせ半額弁当だし、食べちゃえば味は変わんないよ。結果オーライさ」
「そ、そうですか……」
それから女の子は、僕へ丁寧に名乗った。
「〈ミレヴィナ=ウェルーシファ〉と言います。このたびは本当にご迷惑をおかけしました……」
ミレヴィナちゃん、かあ……。その名を心の中で反芻する。ミレヴィナ=ウェルーシファ。ふーむ、どこの国でも聞いたことが無い、随分変わった名前だ。
そういえば戦うのに必死であんまり気にしてなかったけれど、ミレヴィナちゃんの髪は長い金髪、瞳の色も宝石みたいに綺麗な紫だ。どこの国かは知らないけれど、きっと外国人に間違いない。
そんでもってなにより、
「……可愛い」
思わず言葉が零れたとおりだった。
目の前にいるカノジョの背丈は抱きしめたくなるほど小柄かつ華奢で、年齢はきっと僕より年下の
僕のことを上目遣いに見上げてくるその瞳は鮮やかな紫色、磨き抜かれたアメジストのようにつぶらで大きい。鼻筋は真っ直ぐ通っているけど、儚げかつ清楚で整った顔立ち。小柄だけれどよく見ればスタイルも良いし、全体的になんだか守ってあげたくなるような雰囲気がある。
うーん、見れば見るほど可愛い。見ているだけで聖なる後光が差し込んできそうな、まさに超絶美少女じゃないか。
そしてこれまた透き通りそうなほど清純な声で、ミレヴィナ=ウェルーシファは言葉を紡ぐ。
「あの……?」
そう呼び掛けられて、僕はようやく我に返った。
……やっべ、ミレヴィナちゃんのあまりの超絶美少女っぷりにどうやら見惚れていたらしい。これじゃあさっきのナンパ悪ガキどもと変わんねーじゃん。
「あ、いや、ごめんね、つい……」
慌てて誤魔化そうとする僕だけれど、ミレヴィナちゃんはニコニコ笑ってこう答えてくれたのだった。
「……ちょっとお茶でもしませんか? 御礼をさせてほしいんです」
それからというもの、僕とミレヴィナちゃんはときどき会って遊ぶようになった。
ある日の休日。
「ねーねーミレヴィナちゃん、映画、観に行かない?」
「映画ですか?」
聞き返すミレヴィナちゃんに、僕は近場のシネコン映画の券を見せた。
「そーそー。ちょっと前に流行ったアニメ映画。今リバイバル上映してて安いんだ」
「なるほど、楽しそうですね! 行きましょうか、サトーさん!……」
それから僕とミレヴィナちゃんは映画館に行って、二人でアニメ映画を観た。
その映画の主人公は、大災害から生き残って心に傷を負った女の子。彼女は、呪いで小さな椅子に変えられてしまった祈祷師の青年と出会い、日本列島を横断するような旅をして、各地で恐ろしい地震を引き起こすミミズの怪獣を封印しながら自身のトラウマと向き合うことになるのだ。
大迫力の映像美に、超ド級の大音響。ちょっとハードな描写もあったけれど全編通してハラハラドキドキ、スッキリ泣けて、そしてとても楽しい大冒険ストーリーだった。
「映画、楽しかったねー、ミレヴィナちゃん!」
「ええ、そうですね。サトーさんと一緒に観ると楽しさも格別です!」
映画が終わったあとはご飯タイム。
場所は近場のファミレス。お互いに映画の感想を言ったり、日頃の雑談をしてみたり。
「この映画はねぇ、『魔女の宅急便』っていう名作のオマージュなんだよ!」
「そうなんですか?」
「途中クルマに乗りながら音楽をかけるシーンがあるでしょ? あのシーンはねえ、その『魔女の宅急便』の冒頭で、ヒロインの魔女の子が空を飛ぶシーンからオマージュしてるんだ!」
「なるほど~、そういう要素もあるのですね~」
ミレヴィナちゃんはとっても聞き上手だ。僕のしょーもないお喋りをいつもニコニコしながら聞いてくれて、適切なタイミングで相槌を打って続きを促してくれる。
もちろん僕ばっかり喋るのも難だから、ミレヴィナちゃんの話にもちゃんと耳を傾ける。
「あの映画のクライマックス、一度閉じてしまった扉を『敢えて開く』という行為は、古来からの伝承における『結界破り』や『異界への扉』を思い起こさせますよね。日本の伝奇では、結界は人間界と異界を隔てる役割を持ち、それを破ることで異界の存在が人間界に影響を及ぼすとされているんです」
「へぇー、ミレヴィナちゃんは本当に物知りだなあ……」
「いえいえ。単なるトリヴィア、雑学ですよ~」
実際に話してみるとミレヴィナ=ウェルーシファという人は天然ゆるふわのようでいて、実は意外としっかりした性格のようだった。博学で自分の意見も持っているし、それでいて鼻にかかった自慢げなところもない。
まさに才色兼備。僕みたいなボンクラ風情には勿体無い、最高のガールフレンドだ。
「……おっと、もうこんな時間か」
光陰矢の如し、ミレヴィナちゃんと過ごしていると時間があっという間に過ぎてしまうなあ。
大戦が終わってから数年経つけど、世の中いまだに物騒だ。特にミレヴィナちゃんは素敵な女の子だからもうそろそろ帰してあげないと、また不逞の輩に絡まれてしまうかもしれない。
そんなふうに僕はそろそろ帰る算段を付け始めたのだけれど、ここで不意にミレヴィナちゃんが口を開いた。
「……あの、サトーさん」
なあに、ミレヴィナちゃん。僕が何気なく聞き返すと、ミレヴィナちゃんは真剣な面持ちでこんなことを言い出した。
「サトーさんは『怪獣大戦争』についてどう思いますか?」
「……怪獣大戦争?」
数年前に終息したばかりの世界大戦、『怪獣大戦争』。怪獣王ゴジラと宇宙超ドラゴン怪獣キングギドラの覇権争いに端を発したこの戦いは、世界中の怪獣たちが二手に分かれて争い、『怪獣黙示録』史上最大の決戦になったと言われている。
その大戦が、どうかした? 僕が聞き返すとミレヴィナちゃんは話を続けた。
「ええ。サトーさんはあの大戦、『怪獣大戦争』で少年兵として戦っていたんですよね? そのことについてお話を聞いてみたいんです」
「うん、まあ、いいけど……」
答えながら、僕は発ちかけた席へと再び戻る。
たしかにミレヴィナちゃんの言うとおり、あの大戦では少年兵だった僕も数多の怪獣と戦った。ラドン、ガイガン、そしてキングギドラ……どいつもこいつも恐るべき強敵で、二度とお目にかかりたくはない奴らばっかりだ。
そして今の現状はどうだ。日本へ帰国したあとたしかに僕は落ちこぼれてしまったけれど、少なくとも恐ろしい怪獣どもの猛威とは無縁に暮らせている。それは、とっても幸せなことだと思うんだよなあ……。
僕はそう伝えたのだけれど、ミレヴィナちゃんはいつになく真剣な面持ちで口を開いた。
「……本当に、そう思っていますか?」
本当に、って……どういうこと?
僕が怪訝に聞き返すと、ミレヴィナちゃんはここぞとばかりに畳みかけてきた。
「サトーさんはあの『怪獣大戦争』で本当に頑張ったんですよね。銃をとって、モゲラに乗って、血と泥にまみれて世界平和のために一生懸命、それこそ身命を懸けて死に物狂いで戦い抜いた……そうですよね?」
……まるで、僕の心の中まで見透かしたかのような言葉だった。
そうだ。僕は『怪獣大戦争』では命懸けで戦った。スーパーロボットのモゲラに乗って、信頼できる仲間たちに囲まれて、そして怪獣どもの猛威へ勇敢に立ち向かって。あのとき僕らはたしかに戦士で英雄、まさに本当のヒーロー。日本に帰ってもそうやって迎え入れてもらえると信じてたんだ。
けれど、現実は違った。
「サトーさん、本当は自分を受け入れてくれないこの社会に不満を抱いているんじゃあないんですか」
「そんなことは……」
そんなことは、ない。
そう答えようと思ったのだけれど、いざそのときになって僕ははっきり断言しきれない自分もどこかにいることに気づいた。この社会に不満なんかこれっぽっちもない……本当に? カノジョにはフラれたし、就活だって上手くいかなかったのに??
咄嗟に言い淀んでしまった僕へ、ミレヴィナちゃんはなおも続ける。
「サトーさんたちが戦った『怪獣大戦争』。その経験と勇気を、今の社会はまるで無かったかのように扱っているとは思いませんか。誰もサトーさんたちの苦労や犠牲、『献身』を理解していない。そんな現実が悔しくはありませんか」
「…………。」
ミレヴィナちゃんによる質問攻めに対し、僕は何も答えられなかった。
……僕と一緒にGフォースを辞めて日本へ帰国した元少年兵の仲間は、実はほかにも何人かいた。
田舎にメル友の恋人がいるんだ、と言っていたノボルは再会した恋人に怯えられて逃げられた。もらった退役手当で東京に行って会社を興すんだ、と張り切っていたモリシマは悪い詐欺に騙されて重い借金を背負うことになった。戦場で仲間がメガヌロンに八つ裂きにされるところを目の当たりにしたタカキは、心を病んでそのまま首を吊った。
考えてみれば、Gフォースを辞めて日本に帰った元少年兵の仲間のほとんどが社会に馴染めなかった。その中で
「サトーさんは、立派です」
そんな僕らの報われない悲しみに、ミレヴィナちゃんはそっと寄り添ってくれた。
「サトーさんが『怪獣大戦争』で経験したことは並大抵のことじゃなかった。それをわかってくれない世の中は本当に酷いです。だけどサトーさんはそれでも周りを憎まず、恨まず、一生懸命まじめに生きている。平和に暮らしたい、その姿勢は本当に立派だと思います」
そう語るミレヴィナちゃんの言葉で、僕は長年抑え込んできたものが溢れ出てくるような心地がした。なんだろう、目頭がとても熱い。
……この人は、ミレヴィナちゃんは、どうしてここまで僕の気持ちを分かってくれるんだろう。どうしてここまで僕に優しくしてくれるんだろう。世の中の連中は僕らみたいな負け犬たちのことなんて、何一つ気にかけてはくれなかったのに。
「でも、もういいんですよ、サトーさん。もう我慢しなくたって、いいんです」
ミレヴィナちゃんはそう言いながら僕の隣の席へと移り、僕の体をそっとハグしてくれた。その体は小さくて柔らかくて、あったかくて、心地よくて……。
ああ、もうだめだ。これ以上我慢なんかできるもんか。僕はその場に泣き崩れてしまった。
「う、うう、ううう……!」
「頑張ったんですよね、サトーさんは。もう大丈夫、大丈夫ですからね……」
僕はおんおん泣いた、それこそ鼻水もぐちゃぐちゃにして泣いた。心の中に溜まっていたものがすべて溢れ出してゆくような感覚。周りの目線なんか全然気にもしなかった。
そんな僕に対し、ミレヴィナちゃんはそのまま優しく抱き留めてくれたのだった。
「……ありがとね、ミレヴィナちゃん」
「いいえ、わたしで御力になれるなら」
ミレヴィナちゃんの胸の中でボロボロ泣きまくったあと、僕は少しだけ心が軽くなった気がした。彼女の優しい温もりに包まれて、ずっと抱えていた心の靄をすっかり吐き出して、なんだかスッキリした気分だ。
そうして意識が少しずつ現実に戻ってくると、ミレヴィナちゃんは僕の顔をじっと見つめていた。
「ところでサトーさん、少しお話ししたいことがあるんです」
なあに、ミレヴィナちゃん。
涙目を擦りながら僕が聞き返すと、ミレヴィナちゃんも意を決した様子で口を開いた。
「……サトーさんは『社会活動』に興味はありませんか?」
シャカイカツドー。最初何のことだろうと思い、次いで『社会活動』という字面が連想された。
……社会活動。ゴミ拾いとか、募金活動とか、ボランティアとか、そういうのだろうか。赤い羽根の募金くらいなら小銭を入れたこともあるけれど、ミレヴィナちゃんも募金活動とかするんだろうか。
怪訝に思っている僕に、ミレヴィナちゃんは続けた。
「実はわたし、ある『団体』に所属しているんです」
団体……?
僕が思わず聞き返すと、ミレヴィナちゃんは頷いて答える。
「ええ。サトーさんのように、『怪獣大戦争』で苦しんだ人たちを救いたいと思っている『団体』です。人間と怪獣が争い合うだけじゃあない、両者の平和的共存を目指して活動しています」
「人間と怪獣との平和的共存、だって……!?」
その言葉に、僕は一瞬耳を疑った。
人間と怪獣との平和的共存? だって怪獣といえば僕たちにとって破壊と恐怖の象徴、共存なんてできっこない。悪い冗談みたいな話じゃないか。
そんな僕の当惑を、ミレヴィナちゃんはちゃんと見抜いていた。
「そう、人間と怪獣の平和的共存。冗談みたいだと思っていますよね、きっと」
しかし、ミレヴィナちゃんの目つきは真剣そのもの。とても冗談なんか言ってる顔じゃあなかった。
「けれど怪獣もまたこの星で生まれた命、そんな彼らと平和的に共生するための方法を考える。それがわたしたち『団体』の最終目標なんです。サトーさんが『怪獣大戦争』で戦った勇気と経験は、きっとこの世界にとって大きな力になると思うんです」
そこまで言われてじっくりと噛み締めてみて、僕は腑に落ちるものがあった。ミレヴィナちゃんみたいな優しくて、賢くて、世の中についても真剣に考えているような立派な人なら、あるいはそういう『団体』に所属していることもあるかもしれない。
「……無理に、とは言いません」
そしてミレヴィナちゃんの勧誘は飽く迄も優しく、決して無理強いなんてしなかった。
「けれど一度サトーさんも、わたしたち『団体』の集まりに参加してみませんか? サトーさんの想い、寂しさ、苦しさ、そういうものをわたしたちの『団体』なら分かち合える、きっとそう思うんです」
「し、しかし……」
人間と怪獣の平和的共存だなんて、とんだ夢物語だ。はじめはそう思った。
……だけど、このときのミレヴィナちゃんの言葉にはたしかに力があった。その夢物語が現実になることを心の底から信じて疑っていないかのような、そんな心惹かれるものがあった。
「わたしたち皆、あの大戦で何かを失ってしまったけれど、それでも前に進むためにお互いを支え合っています。そしてサトーさん、あなたにもこの活動に参加してほしい。サトーさんの経験と勇気があれば、きっと多くの人たちの力になれるはずなんです」
「…………。」
ミレヴィナちゃんからの言葉に、思わず心が震えた。
思いもよらなかった。社会の底辺、爪弾き、ムシケラ。そんなふうに思っていた自分に、こんな大きな役割や可能性があるかもしれないなんて。自分の経験が無意味ではなく、新たな形で役立つかもしれない。そんな希望を見せられて、僕は思わず心が躍った。
……けれど、すぐに思い直す。僕なんてただのフリーターで、ただの社会の落ちこぼれだ。そんな奴に何ができるというんだろう。
「ごめんよ、ミレヴィナちゃん。僕なんかにはやっぱり……」
「サトーさん」
そんな弱さが過ぎったそのとき、ミレヴィナちゃんはすかさず僕の手をとった。そして温かく柔らかい手つきでしっかりと握り込み、天使みたいに優しい目つきでまっすぐに見つめてくれるのだ。
「……大丈夫ですよ、サトーさん。あなたには充分な力があります」
だって、とミレヴィナちゃんは言う。
「あなたはわたしのヒーローですから、サトーさん」
……そうやってにっこり微笑むミレヴィナちゃんは、まさに僕の聖女様だったんだ。
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