ディモルフォセカ

「キバくん、お花ありがとうね。」
アブラムシのたくさんついた黄色い花は、いのが選んでくれたものだった。
キバはその花の名前なんて全く知らなかったが、素直にその花を綺麗だと思った。
2人は、1時間ほど何てことはない話をした。
「俺、そろそろ帰らないと・・・お?」
ヒナタは、話しているうちに眠りについてしまった。
「俺、どうすればいいんだよ・・・。」
キバが帰ろうか迷っていると、突然ドアが開いた。
そこには、予想外の人物が立っていた。

「・・・ネジ!」
その人物は、まずは黙ってヒナタを見下ろした。
「・・・いつもなら、ヒナタ様はこの時間は昼寝をしていると聞いて来たんだが・・。
お前がいるとは思わなかった。」
「・・・俺も、お前が来るとは思わなかったよ。」
お互い「・・・・・」が多い会話がつづく。
「・・・ヒナタ様の症状は、・・・悪いのか?」
「そんなこと・・・見ればわかるだろう・・・・。ていうか、やったの、お前だし。」
そう答えてから、キバは、しまった、と思った。
だけどもう言ってしまったものは手遅れだ。
ネジの表情がだんだん暗くなっていくのがわかった。
(だからこいつ、苦手なんだよな・・・。)
キバは心の中でそう思いながらも、話を続けた。
「・・・で、お前は何で今日ここに?」
「・・・・・・・・・わからない。」
「はあ!?わからないって、お前。」
「・・・ヒナタ様の・・・顔が見たくなった。寝顔くらいは・・・いいと思って。」
キバは驚いた。
もう何ていうかディズニーでいうと頭をシンバルに挟まれるくらいに驚いた。
「何・・?おま、え、・・・ヒナタのこと・・・き、嫌いじゃなかったのか?」
「・・・・・・そんなことは一度も言っていない。」
「・・・・マジかよ。」
ここにも、彼女を想うひとがいたのだ。
キバは、ベットの上で眠っているヒナタに目をやった。

「・・・ディモルフォセカ」
沈黙が続いていた中、ネジが突然口を開いた。
「は?何て?」
「この花の名前だ。お前が持ってきたのだろう?」
「そうだけど・・・選んだの、俺じゃないし。そんな名前なのかよ。」
「花言葉を知っているか?」
「知るかよ。興味ねえ。」
「・・・調べておけ。宿題だ。」
「はあ!?」
ネジがドアへと向かう。
キバはとっさに呼び止めた。
「・・・おい!お前、いいのかよ?言わなきゃ、一生ヒナタに誤解されてるぞ?」
「・・・俺は・・・別に下心があってここに来たんじゃあない。」
「だけど・・・!」
「・・・別に好かれるなんて望んではいない。むしろ、俺は好かれてはいけないのだ。
お前にはわかるまい。俺は見守るだけだ。
これ以上、彼女の温度が、俺によって下がったりしないように・・・。」
「お前の言ってること、わかんねえ・・・。」
ネジは微笑した。
「キバ・・・俺はお前が羨ましいよ。」
ネジはそのまま部屋を出て行こうとした。
しかし、キバはもう一度ネジを呼び止め、言った。
「先に帰るんじゃねえよ!俺、今から用事あるからさ・・・。ヒナタの傍に、ついていて欲しい。」
「・・・俺にそんな権利があると思うのか?」
「権利じゃない。義務だ。・・・誰だって、具合が悪いときに、目が覚めると誰もいなかったら、
寂しいだろう?だから・・・。」
ネジは一瞬渋い顔をしたが、承諾した。
「・・・わかった。」
「よっしゃ!」
今度はネジでなく、キバがドアへ向かっていった。
キバは廊下へ出ると、走り出した。
看護婦が走るキバを罵る声が聞こえる。
「おせっかいな奴だ・・・。」
ネジは今までキバが座っていたパイプ椅子に腰をかけ、読みかけだった書物を読み始めた。
ヒナタは、まぶたを震わせて、起きるタイミングに悩んでいた。


病院を出た後、キバは里に一つだけある図書館に行き、人目を気にしながらも自分に全く
似合わない花言葉の本を棚から取り出した。
「ディモルフォセカ・・・と。」
キバは、タ行のページに来ると、すぐにその花の名前を発見した。

「・・・忍ぶ恋。」

ネジの気持ちを察するとともに、
いのがどうしてその花を自分に持たせたのかわかった気がした。










長いね。
この話は、一応「ボーイ・フレンド・イズ・ベター」の続きですが、同人誌用に考えた話です。
もしかすると、この本出すかも。漫画で。話は少し変わってるかもしれないけど。
ディモルフォセカは、いろんな花の色があるので、黄色と限ってはいないものです。
しかも、アブラムシなんてつくのか・・・?ごめんなさい。嘘書いてるかも。
本当はネジ視点で書きたかったんだけど、前作の「ボーイ~」が一人称の文章でなかった
ので、諦めました。ネジ視点で書くと、詩が入ったりしたし。
『大切に 大切に あなたの温度守るため 触れられない この悲しみを
泳いで 泳いで 凌いで』
っていう詩。誰の歌かはふせておこう。どうせマイナーです。
たまたまこの歌が合ってるなあ~って書いてる時思い出したので書いてみただけ。





















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