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 §3








デザートに蝋燭を頼んでおいた。
「誕生日」だからと。
何考えてたんだ、自分。
りかの眉が上がるのが怖かった。
「つけて。」
テーブルから急いでマッチを取る。
緊張してニ本折った。
頬杖をつくりかが笑って、ほっとする。
ムースにスプーンを入れる。



「シャーベット、好きだよね。」
いきなりスプーンが差し出される。
「口開けて。」
蝋燭の火を受けて、グロスが光る唇がそっと開く。
「外じゃ、出来ないでしょ。」
ものすごい言い訳だと思いながら、シャーベットを食べさせた。
親鳥にはなれない、こんなに脈が上がるようじゃあ。







ルームサービスのテーブルを廊下に放り出す。
りかがソファに倒れこむ。
今のうちにシャワー浴びちゃおう。
「どこいくの。」
「え、お風呂。」
「やだ。」


酒がまわった自分に、酔ってしまおう。
「こっち、きて。」
手を掴み、引き寄せる。
グロスを舐めとるように、口付ける。
「目あいて・・」
「いいの、顔見たいから。」
そのまま舌を差し入れる。
おずおず絡める舌はシャーベットより甘い。
味わうように舌を回すと、マスカラが震え眉間にしわが寄る。
シャツのボタンに指を這わせる。
「お風呂に。」
「だめ、あたしもう入ったし。」




絶対、埃っぽいし汗臭い。
来てくれるか心配で、間際まで何も手につかなかった。
こういうところ、本当に段取り悪すぎる。
りかがシャツをふわりと脱がせる。
「あの、シャワー。」
「だめ、匂いが好き。」
聞いた事の無い言葉に舞い上がりそうになる自分を、押さえる。
絶対、酔ってる、この人。
首筋から、肩へ、胸へ、遠慮無く舌が遊ぶ。
そして、時折唇をふさぐ。
バスローブをそっと開いてみた。
ちょっと驚いたように、手のひらで頬が包まれる。
そのまま引き寄せられ、滑らかな胸に唇が触れた。


ふわふわの髪が顎を擦るのが、心地良い。
一生懸命な唇に、しばらく漂ってみる。
右手を掴み自分達のように絡めてみる。
手首から、手のひらを、そして指の間に舌を這わす。
瞳が辛そうにこちらを向く。
「まだ酔いが足りない、ね」
テーブルにおいたグラスを取り、口移しで流し込む。
溢れて顎に伝う、シャンパンが艶やかに光る。


アルコ-ルと唾液で喉が焼けついてしまいそうだ。
テーブルのリモコンを手で探る。
「何。」
「え、ライト。」
長い指が巻きつき、ぬめる指の間を刺激する。


「消さない。」


又、血が上る。




服が散らばり抱え込まれる頃には、グロスはもう跡形も無くなった。
座らない頭を肩に凭たせている自分に気がつく余裕は、とうに無い。
「折角、綺麗にしてきてくれたのにね。」
人差し指が唇を撫で回し、そのまま口に差し込まれる。
指に弄ばれているのが、どこか違うところのように背中に電気が走る。
瞳が溶ける。



自分もこんな風だったのか、ふと我に返る。
夢中になられると、醒めた目でつい見てしまった。
取り乱す姿は見たくなかったから、静かに蓋をしてしまった。
だから皆、今でも会えば事も無げに話せる。
こんな風になれない、そして、取り乱すあの人達になりたくない。
思いなんか伝わって欲しくない。
でも、酔い潰れたい。
汗が睫に溜まり、目に染みる。






唇を塞がれて、手が胸の曲線をなぞりながら下がるのが分かる。
冷たくて優しい手の感触に、火照る自分の身体が悲しくなる。
柔らかく戒められた身体は、何もいうことをきいてくれない。
りかを探る指に、滑らかな肌が吸い付くように絡まる。
舌と指の動きが纏わり合い、気づかぬうちに口が開く。
「かおる、どうしたい?」
煙るような睫が微笑む。
容赦ない指が鋭く粘る。
溢れる気持ちを掬い取るように。


「いこう。」



背中が反り上がる、もう、声なんて出ない。





絞る声はやわらかく、部屋の明かりに溶ける。













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