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聖夜なんて知らない(後)









この子に会う時って、どうしてあたしこういう格好しちゃうのかしら。


わざとセクシー。
わざと挑発的。
わざと困らせて。
反応がたのしみで。
それってかなり、屈折してない?




いつのまにかあたしはあなたとソファに挟まれる。
窮屈だけど心地よい。
ちょっとテンパってる瞳。
なのに、困ったように手が泳いでる。
すれすれのあなたの胸元から、ちょっとムスクな香り。
ちょっと生意気。
だけど可愛い。



「で、どしたいの?」
固まった体勢のまま聞いてみる。
意地悪なのは承知の上で。
「このまま、ずうっとこうしてる。」
かおるの目が困った風にあたしを見つめる。
「それは・・・・・困る・・かも。」
「じゃあ、なんかしましょ。」
わたしは極上の挑発的な笑みを浮かべる。
「なんか・・って、
 ・・・・・なんかだよね。」
「そう、なんか。」
かおるのシャツの釦に手をかける。
ゆっくりゆっくり外してゆくの。
時間をかけて、あなたが昂まるように。
あなたを見つめ、わたしが昂まるように。






はだけた胸元、そっと丸みに手を伸ばす。
触れるとあなたは小さく動く。
「感じる?」
「わかんない。」
「不感症?」
「んなことない。」
下着に手を差し込んで、ゆっくりとまあるく、
あたしの愛おしさが伝わるかしら。
そのまま唇を重ねあう。
眉間に皺が寄る、頬が染まる。


あたしは堪らない幸せに包まれる。







あなたの手があたしの胸に重なって、
あたしたちは互いを伝え合うように、胸を触れ合って。
互いをむさぼり会うように、キスを重ねる。
柔らかに滑る掌。
激しく絡む舌。
身体だけじゃない、心ものぼりつめてゆく。







ジーンズもなにもかも、ほっぽり出す。
あたしたち、動物みたいね。
それは剥き出しのあなたに触れたいから。
剥き出しのあなたを知りたいから。
狭いソファで、密着する身体。
舌とおんなじくらい、脚が絡みあう。
重ねあった胸から、心臓の鼓動が響いてくる。
あなたの一番暖かな処に、あたしは入ってゆく。
小さな叫びが洩れる。
遠慮の無い、あたし。
火をつけたのは、あなただもの。
ゆっくりと、そして激しく、
気まぐれなあたしの指はあなたを探ってゆく。






あたしの上の綺麗な顔は、苦痛とも見紛うほどに辛そうで。
小さく開いた口からは、吐息に混ざる言葉にならない言葉。
あなたが呼んでいるのは、いまはあたしの名前だけ。
あなたの頭の中には、いまはあたしだけ。
それは震える程の、幸福。



睫に涙が滲んでる。
だけどあたしは、あなたを求め続ける。
身体が崩折れそうに揺れている。
可愛くて、綺麗で、大好きなかおる。
だから、あなたを崩してしまいたい。
あなたの何もかもが崩れたら、きっとあたしは安心できるから。
なんて自分勝手。
傲慢。
エゴイスト。


それは、臆病の裏返し。
虚勢。
ペシミスト。



頭を振り切る。








辛そうに、それでもあたしを受け入れ続ける、あなた。
全身で、あたしを感じようとする、あなた。
あたしは、何を望めばいいのだろう。
何を得れば、この焦燥感から逃れられるのだろう。
あなたにぶつけているのは、何なのだろう。





大きく息を吸う。
あたしはまだ、大丈夫。







「かおる、いきたい?」
耳元を舐めるようにして、囁く。
「りかさ・・・・ん。
 い・・・じわる・・だ。」
「そうよ、知らなかった。」
「ん。」
尖らせた舌を耳朶に。




「あん・・・っ」




小さな叫びに、あたしはきつく締め上げられる。
震える数だけ、あたしを愛してる?


あなたの身体に、徐々に凪が戻ってくる。
ゆっくりとあたしの身体にあなたがしなだれかかる。
薄い汗の香りに、あたしは包まれて。
ふたりで小船に揺られるように、
密やかにいだきあう。






頬を摺り寄せて、掠めるようなキスをかわしあう。
お互いの与えたものを、お互いに慈しむ。












「終わっちゃったね。」
かおるが目を開く。
「なにが?」
「クリスマス。」


今まで忘れていたわ、あたし。
街がざわめいて。
イルミネーションが派手になって。
人の波も浮かれ出す。
そんな季節も分からないほど、走っていたあたし。
それが性分なんじゃない。
追いたてられる焦燥感。
巻きこまれた波に、まだ居場所が見つからない。



「どうしたの?りかさん?」
気づいたら、覗きこまれてた。
「・・・・・なんでもない。」
「ん・・・ならいいや。」
長い睫が伏せられる。
睫に軽く、キス。
「やぁん、くすぐったい。」
相好を崩す、あなた。
抱きしめる、あたし。




仄かな光に包まれて、こうしてるのが一番好き。
あなたと一緒ならば、それがあたしの聖なる夜。















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