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I miss you too











おろしたてがまずかったのかしら。
足が痛いわ。



あたしはソファにひっくりかえり、
ミュールを思い切り放り出す。
がらんとした白い部屋。
リモコンでカーテンが開く。
パノラマのようにするすると広がる夜の空。
あたしは逆さまに、見上げてる。



ああ、携帯が鳴ってるわ。
開いて眺める、見慣れた番号。
でも、まだ出ないの。
なぜって、足が痛いから。
もうすこし夜空を見つめていたいから。
鳴りつづける小さな箱を、ベッドに放り出す。
ううん、とソファで伸びをして、
ああ、とつまらなさそうに立ち上がる。
服なんか投げ捨てるみたいに、脱ぎ捨てて、
思い切り強く、シャワーの栓をひねる。
水が足にしみる。






バスローブがざらざらする。
ドライヤーが熱すぎる。
何もかもが気に入らなくて、またぼんやりとソファに伸びる。







着信履歴を眺めてみる。
もう何回、かけてるの?
ねえ、嫌にならないの?
ねえ、不安にならないの?




吸い込まれそうな空に、ガラスに映るあたしが浮かぶ。
不安なのはあたしの顔。
この苛立ちを、どこかに転嫁したくて、
できなくて。
仕方なく空を見上げてる。




もうすぐ日付の変わる頃。
あなたのバースディも終わる頃。
だからなに?
流れてゆく日々の中の、同じ一日に過ぎないわ。
誤魔化して、下らない、
あたしのプライド。



携帯が鳴る。


「はい・・・・」
電話の向こうなのに、それとわかる程に安堵した吐息。
「あ、やっとつかまった。」
「あぁ、どしたの?」
なんて素っ気無い、大人気ない、あたし。
「今日は・・・・忙しかったの?」
言葉を選ばせてる、あなたに。
「まあ・・色々とね。」
慌てた声で畳みかけるように。
「あ・・だよね。」

「どしたの?」
あたしの声は低いまま。
「ん、どうもしないけど。」
じりじりする音が聞こえてくるみたい。
「ふうん。」
ううん、じりじりしてんのは、あたし。
「んと、ちょっと、声が聞きたいかなぁ、なんて。」
なんて酷いこと言わせてるのかしら。
「変なの。」
なんて酷いこと言ってるのかしら。
「りかさんには負けるもん。」
口を尖らせてるわね、それでも怒らないの?
「あたしは変じゃないわよ。」
なんであたしが怒った声になるの。
「じゃ、なに?」
ああ、こんな言葉しか浮かばない。
「オンリー・ワン、なだけ。」



電話の向こう、ちょっと深呼吸する音。
そしていきなり、真面目な声音。

「うん、そう、思う。」
そしてあたしは、ノックアウト。
こんな子供に、心は鷲掴み。
「あのね。」
愛してるわ、かおる。
「え?」






「お誕生日、おめでとう。」

















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