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  5 min. before








やあねえ、眠れやしない。
蒸し暑いから、苛々するのよ。
よくこんな時期に生まれて来たもんだわ。
ううん、暑いから苛ついてるだけ。
暑いから眠れないだけ。


誕生日だからじゃない。
一緒じゃないからじゃない。


いいトシしてるくせにって、あの子が言うわけない。
うざったいって、あの子が思うわけない。
思ってるのはあたし。
携帯があるじゃないよ。
まだ、寝てなんかいないでしょ。


甘い言葉を言ったなら。
あなたの蕩ける声が聞きたいの?


微笑む顔が見たい。
はにかむ笑窪が見たい。
抱きしめて、頬を寄せて、唇で触れたい。
離れてると少し、素直なあたし。
だけど素直なあたしは、すごくしんどい。












  賑わいとざわめきと、慌しく過ぎる夜の中。
  わたしははしゃいで、だけど少し肩は凝ったまま。
  倒れこんだホテルの部屋。
  ベッドに仰向けて携帯を確認して。
  おめでとうメールの受信は二桁。


  一人で笑いながら次々と開けていく。
  あの人のメールはまだこない。


  だから子供なのよって、思われてたらどうしよう。
  くっついていればいいってもんじゃないでしょなんて、言わないよね。
  もしかばっかが頭を回る。
  わたしからかけてみようかな。
  疲れてるからもう寝ちゃったかな。


  甘えた風で話してみたら。
  笑って軽くいなされそう。


  大きくて眠たげな瞳を思い出す。
  抱きつくと、ちょっと強張るあの人の身体。
  ぶつかればいいってもんじゃないけれど。
  ぶつからないと始まらない事もある。






もうすこしだけ、考えよう。

  もうすこしだけ、待ってみよう。

シャワー浴びて、頭冷やそう。
 
  洋服整理して、落ち着こう。





温い飛沫を浴びながら。
甘い言葉を反芻する。



  クロゼットを開きながら。
  携帯は側に置いたまま。



この暑さだから、眠れないから、
理由なんかどうでもいいってことに、きっと気が付くわ。
離れてるから、年下だから、
理由なんか下らないってことに、多分落ち着くわ。



  はしゃいだけど、楽しかったけど、
  だけどそれだけじゃ足りないなんて、わたしって贅沢だ。
  近づきたいから、こどもだから、
  なんていわれても、だけど魅かれっぱなし。








あと、もうちょっと待てるよね。


   あと、もうちょっと待ってみよう。 



 あと、五分だけ。






  





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