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 Dead End 4











ふたりで雫を拭い合う。
たった一枚のバスタオル。





抱き合うように、縺れるように、
わたしたちはそのままダブルのベットに倒れ込む。
身体中の力なんか、とっくに抜けちゃってるのに、
わたしは陸に上がった人魚を押さえ込む。



「 ・・・・・・さっきはへたばってたくせに。」
言葉を無くしそうなほど、ふらふらの物憂げな声。
上目使いの人魚の瞳が、深い海の底みたいにきらきらと光ってる。
「わたしばっか、ずるい。」


「ずるくないわ。」
「聞かない。」
バスタオルもリネンも剥ぎとって、鳩尾に沈むみたいなあなた。
あたしはもう恥ずかしがる気力も残っちゃいない。
ただ力の抜けたままぐったりとあなたの唇に身を委ねる。
首筋から、なんて定石を踏んだりしない。
丁寧なつもりでも、剥き出しの肌に爪が引っ掛かるわ。




仕返しのつもりなの?キスマークが見えない処に片っ端から跡をつけていく。
人が変わったみたいに性急な仕草なんだけど。
だけど、あたしは幸せになってゆく。





りかさんの身体が仰け反って、鰭がぱたぱたいうようで。
掠れた声なんかを楽しむ余裕はまるでないけれど、
だけど、わたしは幸せになってゆく。





あたしたちはお互いをお互いで、幸せにする。















小さな冷蔵庫から取り出した、ミネラルウォーターの瓶が汗をかいてる。
ひんやりとした水を、唇から唇へ。
これもこの人が教えてくれたこと、
こうやって飲むのが一番美味しいの、こういう時にはね、ってね。



「 ・・・・ねえ・・・行き止まりとかになったら、どうする・・・・?」
もう、ふっくらと張りの戻った唇で眠るみたいにこの人が呟く。
「ほら、目の前にいきなりおっきな塀とか出てきちゃったら・・・」
声は吐息に混ざるように、冷蔵庫の微かな唸りに重なるように消えてゆく。





暗い路地で追いかけられてる、みたいなもんかな。
いろんなものに追いかけられて、追いかけられてるわたしたち。
浮かんだのは遥か昔の芝居。
「よじ登って逃げちゃう、Aーラヴなら。」
おっきな枕を抱え込むようにして、
りかさんはすこしだけ、だけどふんわりと微笑んだ。






柔らかいリネンの中で、柔らかい感触に包まれて、
あたしは久しぶりに幸せな眠りに落ちてゆく。



高い高い塀の前。
ベルナルドとAーラヴが手を繋ぎよじ登り。
天辺から二人、息を合わせて飛び降りる。








その刹那、いきなり世界が開けるってこともある。



















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