国民は知らない現実
根本的な児童買春の問題解決に向けては、国民が問題を認識することが重要だが、一党独裁体制で情報が制限される中で、問題自体がそもそも知られていないという課題もある。
ラオス人男性のビーさん(仮名、18歳)はこう語る。
「日本の友人に教えてもらうまで、児童売春についてあまり考えたことがありませんでした。ラオスでは家族や友人の間で、政治批判につながるような話題はタブーなのです。でも、この問題は本当に解決するべきだと思います」
さらにビーさんは、貧困の悪循環から抜け出せない社会構造にも疑問を感じているという。
「ラオスでは都市と農村で教育に大きな格差があります。農村ではまだ、子供を学校に行かせるより、働かせたほうがいいという考えが根強いんです。だけどそれによって、大人になってから選べる仕事も限られてしまう。貧しい人は貧しいままです」
こうした貧困層を食い物にする闇社会の存在にも懸念が広がる。国境を接する中国からは近年、犯罪組織の流入が増え、ラオスでの薬物の蔓延やオンライン詐欺拠点の増加による人身売買の拡大が懸念されているのだ。
後編記事『ラオスの「人身売買」はなぜなくならないのか…「経済特区」で悪行三昧のギャングたちと、腐敗した警察組織の実態』では、人身売買拡大の背景となっているラオスの闇社会に迫る。