森裕子議員、台風でも残業“強制”で官僚ブチギレ…日頃から威張り散らし永田町で評判最悪

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 このたびの台風19号で被災されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。

落ち着くまでまだ時間がかかりそうで、心配ですね。

 さて、国会内もちょっとした「嵐」が吹き荒れております。まずは、台風19号で多くの犠牲者が出ているのに、自民党の二階俊博幹事長が「予測に比べると、まずまずに収まった感じ」と発言して大炎上しました。10月15日にようやく発言が撤回されましたが、まだ被害は拡大しそうで、発言も尾を引きそうです。安倍晋三首相もかばいきれない様子でしたね。

 自民党内では、この二階発言に対応するかのように、15日朝8時から非常災害対策本部をあわてて招集。本部長は二階氏という茶番のような人事に、秘書たちは笑ってしまいました。

 今回は50年に一度の規模の台風ともいわれ、この原稿を書いている16日も復旧のめどが立っていない地域がたくさんあります。永田町は11日から防災対策に奔走し、都内のJRや私鉄各社も計画運転や運休を早々に発表していましたね。また、各家庭でも準備をされていたようで、スーパーなど商店から食料や水、養生テープなどがほとんどなくなる事態が起きていました。

 こうした状況のなか、永田町と霞が関では11日から12日にかけて、15日朝から始まる参議院予算委員会の準備が行われていました。そこで、各省庁の職員たちによる「森裕子議員の質問通告が遅すぎる」というツイッター上のつぶやきが話題になりました。

「森議員の参院予算委員会の質問通告が遅れたため、台風が来ているのに11日深夜まで省庁職員が答弁の準備を強いられた」と、複数の官僚がSNSなどに書いてしまったのです。匿名とはいえ、永田町と霞が関では話題になっています。

 森裕子参議院議員(国民民主党)といえば“小沢ガールズ”として名を馳せた方でもありますが、自身のツイッターで「11日金曜日16時30分に通告済み」としています。通常の期限は17時なので、本来であれば22時頃には答弁予定者も含めて対応が済んでいると思います。とはいえ、それでもすごい残業ですけどね。

 おそらく、森議員は質問通告後も資料要求や答弁予定者への要求などを続け、職員たちをへとへとにさせたのでしょう。通常の手続きでは、国会議員から質問通告を受けた省庁の担当者は、各省庁に持ち帰って答弁をする人や内容などを詰めていきます。野党はだいたい大臣答弁を要求するのですが、省庁は専門家である局長対応にしたいので、人選が大変なのです。

 そして、職員たちは、答弁書を書いてからもさまざまな部署から決裁を受けなければなりません。すべての決裁が下りてから、ようやく委員会開始前に大臣または政府参考人の答弁者に原稿を見せ、内容をレクチャーするのです。簡単そうな質問であっても手続きは一緒で、大変な作業なのです。大臣によっては、原稿の漢字に読みがなをつけないといけないこともありますしね(笑)。

老眼がひどい大臣の場合は文字を大きくして印刷するなど、忖度も必要ですから、とっても胃が痛くなる作業なのです。

 まぁ、日頃から森議員や蓮舫議員はとにかく威張っていて省庁の職員たちから恨みを買っているので、投稿者は「よりによって台風が迫ってきているのに」とイライラが増したのだと思います。

 森議員は普段は明るくて親しみやすい方なのですが、目下の人間に冷たいんですね。台風が迫るなか、職員たちのオーバーワークすら“忖度”できないのでは、政治家としての手腕が問われてしまいます。まぁ、女性が怒るとすぐに「ヒステリーだ」「更年期だ」と決めつける男性陣にもうんざりしていますが。

茂木大臣の“トリセツ”が話題に

 忖度といえば、台風の少し前の10月4日に永田町で「茂木敏充外務大臣と菅原一秀経済産業大臣のスキャンダルが出るらしい」との話が流れ、ちょっとした騒ぎになりました。詳しい内容がわからなかったので関係者以外もあわてたのですが、結局、茂木大臣の件は永田町では以前から話題になっていたことでした。

 10月8日発売の「週刊朝日」(朝日新聞出版)が、「茂木敏充外相の“超忖度トリセツ”」というタイトルで、経産大臣時代から職員や秘書官に過剰サービスを求める異常な姿を暴露したのです。記事によると、茂木大臣は優秀なのにとにかく気難しく、些細なことで怒りだすので「詳細なトリセツ」があるとのことです。そんなものが存在するとは、すごい世界ですよね。

 その内容も紹介されていて、ちょっとおもしろかったです。「ご飯より麺類」「メロンは嫌い(夕張メロンは除く)」などの食べ物の好みから、用意すべきミネラルウォーターや栄養ドリンクの銘柄、室温(!)、そして「喫煙場所の確保と消臭剤の携行は最優先」などなど、確かにとにかく細かいです。

 このトリセツ、永田町の一部では以前から出回っていたようですが、ほとんどパワハラですよね。こんなトリセツが表に出るというのは、それだけ関係していた職員や秘書官たちの不満が大きい証拠です。身内から嫌われる大臣では、諸外国の閣僚たちとうまくやっていけるわけはありません。外相としての手腕に期待していたのに、「こんな小さな器の人だったのか……」とがっかりした人も多かったと思います。

 即座に違法の案件ではないですが、周囲が大変な思いをしていることを茂木大臣はどのように考えているのでしょうか。柔軟性が求められる外交において、「小さなことでキレるから周囲が気を使いまくって大変な大臣」というレッテルを貼られるなんて、かなり不利ですよね。

“疑惑のデパート”でも菅原大臣の辞任なし?

 トリセツと比べると、“文春砲”で報じられた菅原大臣のパワハラぶりは、その何倍もインパクトがありました。「週刊文春」(文藝春秋)の公式サイトに出ていた広告文だけでもすごい内容で、おなかいっぱいな感じです。

「10月10日(木)発売の『週刊文春』では、秘書給与ピンハネ疑惑の他、有権者の買収が疑われる贈答品リスト、政治資金規正法違反につながる恐れのある菅原事務所の裏帳簿、菅原氏による運転手への暴行、事務所のブラック体質など、『令和版 疑惑のデパート』とも言うべき菅原大臣の素顔を、10人以上の元秘書、スタッフの証言を元に5ページにわたって詳報している」

 秘書へのパワハラも言語道断ですが、選挙区の有権者に対する寄付行為疑惑は、常に「選挙違反」を意識しながら活動している身としては驚きの大胆さです。しかも、贈答品リストなど証拠に残る形で届けていたなんて……。公職選挙法は複雑なので菅原大臣の行為にはグレーな部分もありますが、記事にあったように「カニを送る」のは明らかにアウトだと思います。

“文春砲”は第2弾が出るといわれており、辞めた秘書への脅迫文書が掲載されるとか。

内容もさることながら、告発者の数も「このハゲー!」の豊田真由子元議員以上で、こんなにも歴代の秘書たちに嫌われる議員も珍しいですね。ただ、官邸が守っているので大臣辞任まではいかないと思います。もう次の大臣のチャンスはなくなったと思いますが、今回の任期は全うできるでしょうね。

突如“年内解散”説が浮上した理由

 10月13日早朝、時事通信が「年内解散」がささやかれ始めたとの記事を配信しました。永田町ではすでに「年内解散はない」という雰囲気なので、引き締めを狙って官邸が書かせたのだと思います。その日は、議員も秘書も台風19号の被災対応で不眠不休で動いていたさなかだったので、さすがに与党の秘書たちも「そんな場合じゃないだろう」と怒っていました。

「今は総選挙よりも被害の全容の把握に努め、補正予算を早急に成立させて対応にあたらないと……」

「ほんと、選挙どころじゃない!」

 これは、与野党関係なく秘書たちはみんな同意見だと思います。ただ、安倍首相が常識的な感覚の持ち主なら「今は被災対応を最優先するのが政治の役割」と考えるでしょうが、私たち秘書にはとても理解できない言動を見せるときが多いので、選挙を含めて、今後についてはなんともいえないです。

 首相の公式ツイッターでも、しばらく台風19号に関する言及がなかったことが問題視されましたし、ますます国民の心は離れていきそうです。

(文=神澤志万/国会議員秘書)

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イオンの本気、コロナ感染防止策の全貌…極限まで除菌、スマホ事前注文・ロッカー受け取り  

 新型コロナウイルス感染拡大は人々の意識や行動に大きな影響を与え、購買行動も大きく変容し、小売業もその対応に迫られることになった。オール日本スーパーマーケット協会や日本ショッピングセンター協会など業界12団体が、感染予防のガイドラインを設けたり、個別の企業でも独自な取り組みが行われている。

 12月4日にオープンした「イオンスタイル上尾」(埼玉県上尾市)では、最新技術を使ったさまざまな感染防止策が行われ、ニューノーマルに対応し、リアルとデジタルを融合した新しいショッピング体験も提供している。

「イオンネットスーパー」で商品を店舗で受け取れるサービス「ピックアップ!」や、店舗外に設置した冷蔵・冷凍・常温に対応したロッカーで完全非接触で受け取りができる「ロッカーピックアップ!」を新たに導入した。さらに、駐車場に車に乗ったまま商品を受け取ることができるピックアップレーンを設けた。利用客はインターホンで連絡し商品を運んでもらう。

 売場内のデジタルの総合窓口では専任の案内係を配置。ネットで購入した商品の受け渡しのほかに、デジタルショッピングの提案や説明を行い、アプリの登録をサポートする。また、ファッションやベビー・キッズ、寝具や家電・インテリアなど、イオンのオンラインショップ「イオンスタイルオンライン」で、注文・決済した商品を店舗で受け取れる「店舗受取りサービス」を展開している。

 スマホのアプリによるサービスも行っている。「モバイルオーダー」は、スマホで事前に総菜や弁当を注文・決済し、来店時にできたての商品をスムーズに受け取れるサービス。店舗でのショッピングでは、店舗入口付近に設置する貸出用の専用スマホで、客自身が商品のバーコードをスキャンしながら買い物し、専用端末でお支払いする「レジゴー」を導入した。精算時に従業員と接触せずに済み、レジに並ぶ必要もなくなる。

 こうしたサービスで非対面・非接触で利便性を向上しながら、新たな感染拡大防止策もスタートした。

買い物カゴの自動除菌装置「ジョキンザウルス」を店頭に設置し、積み重ねた買い物カゴを入れると1個ずつ自動で持ち上げ、紫外線で除菌する。従来は、使用済みのカゴを従業員が1個ずつアルコールで拭いていたが、作業時間を約4分の1に削減でき、今後開発中のショッピングカート用も導入していく計画だ。

 ちなみにイトーヨーカ堂では、光触媒コーティングによる、抗菌・抗ウイルス加工を施したショッピングカートや買い物カゴを導入している。新店から新たな対策も開始した。10月30日オープンした「新田店」(埼玉県草加市)で、検温、消毒、手洗いがセルフでできる「サニテーションカウンター」を設けた。非接触検温システムを導入、自動消毒スタンドを設置し、来店客自身が使用するセルフ方式。11月12日に出店した「朝霞店」(埼玉県朝霞市)では「安心カウンター」と名付けてよりわかりやすくした。

抗ウイルス建材や抗菌コーティングも導入

 ショッピングセンターにおいても、新たな感染防止策が取り入れられている。11月21日に開業した「イオンタウンふじみ野」(埼玉県ふじみ野市)では、カルテックの光触媒方式除菌機をフードコートや授乳室などを50台設置した。ダイキン工業が開発した、ウイルスを吸着するチタンアパタイトフィルターをショッピングセンターの共用部のエアコン全105台へ設置、菌やウイルスを吸着・抑制する。

 接触感染防止のため、テーブルやカウンターには、抗ウイルス建材を採用し、ドアノブや壁面には、ウイルスの繁殖を抑制する空気触媒コーティング、館内のすべてのエスカレーター手すりベルトには、EBC-500抗菌コーティングを施した。さらに混雑対策として今回初めてリリースした「イオンタウンアプリ」にて、混雑状況を知らせ、来館カウントシステムにより、常時在館人数を確認し状況により入場制限も実施する。

商業施設が運営するアプリ内の機能では初めて、専門店の商品を事前に注文・購入できるモバイルオーダー機能も装備した。

「イオンモール上尾」(埼玉県上尾市)では、スタッフとの接触を少なくするため、案内ロボットを導入した。

バーチャルの活用

 ネットの攻勢でリアル店舗はその存在意義が改めて問われている。新型コロナでリアルの強みのひとつであった接客サービスは感染防止という点から経営される傾向にある。そこで、バーチャルで代替する動きも活発化してきた。

 化粧品は美容部員によるコンサルティング販売が行われ、メイクなどを施して出来栄えを確かめられるが、バーチャルでメイク体験できる機器の導入も進んでいる。イオンリテールのヘルス&ビューティー「グラムビューティーク」では、コーセーの「ユーカムメイク」を「イオンスタイル上尾」の売場から導入を開始、リアルなメイクをしたような状態がバーチャルで簡単に再現できる。

 コロナの感染が収まっても、こうした新しいショッピング体験や感染防止策はニュースタンダードとなり、定着していくことが予想される。安全・安心を担保する施策はコスト増となるが、顧客の信頼を得、従業員の健康を守ることにもつながり、今後も新たな取り組みや展開が続々登場すると思われる。

(文=西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー)

派遣化する大学教員の悲劇…来春に国立大で雇い止め3000人超えの大量発生?

 大学の教員といえば知的専門職として今でも人気があるが、その実態は厳しい職場環境になっている。10月下旬の朝日新聞ネットニュースでは『東大教授、成果あげても雇い止め 研究者殺す「毒まんじゅう」の罠』というタイトルで、10年間の任期が終わる東京大学特任教授の悲劇を報じている。

 2013年に改正労働契約法が施行されてから10年が経つ2023年は、研究系にとっても任期完了で雇い止めになる最初の年だ。

 いわゆる有期雇用者の無期転換ルールは、民主党政権下の2012年8月に成立した。有期雇用は通算5年で無期雇用への切り替えを求める無期転換申込権が発生するという決まりだ。ところが2013年に、2012年末に政権交代した自民党・公明党の議員立法で、特例として研究者の無期転換申込権の発生を10年に延ばした。このため、研究者の場合は有期雇用の期間が10年になると無期転換を申し込めるようになった。大学教員もそれに当てはまる。

 現在、有期雇用者の多い大学や研究所は、もし無期転換の教員が増えると長期的に人件費増を覚悟しなければならない。大学や研究機関では、有期雇用の研究者らを無期雇用に転換する経営体制が整っていないケースも多い。

 有期雇用の教員が多い大学には、科学研究費の採択件数や文部科学省などのプロジェクトで採用された競争的資金が多い有力大学が少なくない。科学研究費などの競争的資金は期限付きのため、その期間の教育研究を担う有期雇用の教員が必要となるからである。

 2004年に法人化されてから18年、国立大学にとって安定財源である運営費交付金は、2015年度までの11年間に総額で1割以上削られている。今でも財政は好転していない。

各大学などは人件費増につながる無期雇用のポストの数を増やさず、任期付き教員を増やして何とか教育研究活動を続けてきた。

 前述の東大特任教授も任期付き教員で雇い止めになり、多くの転職先を当たっているが、苦闘して25番目にやっと決まった。今年度末で有期雇用の契約が10年となる研究者は国立大学だけで3099人に上るという(朝日新聞11月2日より)。就職希望者が多いだけに、雇い止めになると厳しい。大学教員の公募でも、実際にはコネ採用が多く、公募は建前だけという話もよく聞く。

 ポスドクなど若手研究者の中には、このような期限付きの教員雇用がキャリアアップになると、積極的に取り組むケースもある。しかし、有期雇用の教員は任期明けで無期雇用に転換できないと、高齢化しており、大学間を渡り歩く不安定なポジションになることも多い。

客員や特任など大学教員の多様化が進む

 今の大学設置基準では、一つの大学で教育研究に従事する「専任教員」の配置を求めている。主要科目を担当して、学部教育や運営面での柱となる。他の大学で授業を担当したとしても、その大学の専任教員にはなれないため、授業のみを担当し、学部運営などには携わらない。

 専任教員は学部の規模や種類で必要最低人数が決められているため、大学がどんどん新学部・新学科をつくるわけにはいかない。それだけの専任教員を配置しなければいけないからだ。

 大学の情報公開努力義務には教員数も含まれるので、原則どの大学でも専任教員数は公表している。一般の人から見れば、専任教員とは、その大学の教育研究に専従している無期雇用の常勤教員を指すものであろう。ところが、現在の大学設置基準には「大学は、教育研究上特に必要があり、当該大学における教育研究の遂行に支障がないと認められる場合には、当該大学における教育研究以外の業務に従事する者を、当該大学の専任教員とすることができる」とある。他の業務を持っていても、専任教員になることができるのだ。

 このような項目があるために、他の大学に仕事を持っていても、その大学の教育研究に必要かつ支障がなければ専任教員にカウントしてもよいわけで、どこで線引きするか曖昧だ。

 有名私大では、全教員に占める専任教員の比率は平均30%前後と3分の1以下である。中堅私大の中には、常勤教員は専任、非常勤教員は非専任とカウントし、教員が有期か無期かを問わないところもある。要するに、大学教員の雇用は実に多様化しているのだ。教授でも客員、特任とか、いろいろと冠詞がついてくる。

大学教員の「専任教員」は「基幹教員」へ

 大学教員の雇用に関して、注目されているのが、2023年から導入される基幹教員制度だ。雇い止めに遭う可能性のある有期雇用の大学教員や研究者にとって吉と出るか凶と出るか、読みは難しい。

 文科省は2023年から現在の「専任教員」を新たに「基幹教員」に衣替えし、一つの大学に縛られず、複数の大学や学部で基幹教員になれるよう基準を改正することにした。

この基幹教員は、複数の大学で学部運営に参加し、新分野に対応した先進的な教育プログラムの開発などに携われる点が、一つの大学に限定する専任教員との主な違いだ。

 狙いとしては、先端技術の学びや文理横断教育の推進、学部・学科の再編も期待されている。学生にとっては、他大学の教授らの専門的知識を学ぶことができるようになる。

 非常勤の立場のままでも年8単位(週2コマ)以上の授業を持てば基幹教員になれるので、他大学の教員だけでなく、民間企業の現役の実務家や研究者の登用も視野に入れている。2023年度から本格的に運用が始まる予定である。

 原則として1大学限定とする「専任教員」規定を変えるのだから、大学教員の働き方も変わる。「○○大学教授」という誇らしげな肩書も、あまり意味がなくなるかもしれない。

 現実的には、これまでのように多くが自分の母校である大学や大学院に足場を置きつつも、一人の教員がいろいろな大学に派遣されるようなケースが増えるかもしれない。大学教員にとっては働く場が多様化するので歓迎すべきようであるが、現状から見ると懸念すべき点も多い。

新制度は実質リストラ策なのか?

 文科省の資料では「教員が十分に養成されていない成長分野等において、民間企業からの実務家教員の登用の促進や、複数大学等でのクロスアポイント等の進展が期待」とある。実務家教員とは産業界や自治体などでの実務経験を生かした教員のことで、今でも増えている。

 クロスアポイントメント制度とは、複数機関の相互の協定により、大学教員などがそれぞれの機関で「常勤職員」としての身分を有し、両機関の責任の下で必要な従事比率(エフォート)で業務を行うものである。

給与や社会保険料などについては両機関のいずれかが一括して研究者に支払うなど、基本的な枠組みを整備することにより、研究者本人も不利益を受けることなく、それぞれの機関で業務に従事することが可能となるはずである。

 この実務家教員やクロスアポイントメント制度と基幹教員制度が相性が良いのは、一目瞭然だ。ただ、教員が複数の大学に在籍できるというこの仕組みが、若手研究者にとって本当にプラスになるのか。すでに大学内のポジションに就いている正規教員がこのようなダブルポストを占めると、ポスドクの任期付き職員や非常勤の教員は、ますます正規のポジションに就く可能性を失うことになるのではないか、という疑問が当然生まれる。

 大学経営としては、人件費の分担を狙ったリストラ策とも考えられる。しかし、たとえ各大学にとって経営的なプラスの面があるとしても、若手研究者の希望をくじく実質リストラ策になってはならない。

 基幹教員制度の本来の狙いからいって、埼玉工業大学の准教授が福島県奥会津の只見線活性化のサポーターをしている事例なども参考になる。たとえば地域振興の専門家が多い岐阜大学地域科学部や鳥取大学地域学部の教員が他の地方大学の基幹教員になるなど、いろいろな連携も考えられるからだ。

 このように、さまざまな大学間連携によって基幹教員ネットワークの活性化が充実していけば、大学に対する社会の期待も膨らむであろう。長い目で見ると、そのような若手研究者の育成こそが日本の研究力を高めることになる。

 20年後に日本の大学には基幹教員である実務家教員と非常勤講師しかいない、ということになれば、世界水準の研究などは遠い夢となるであろう。

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