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丸亀製麺、元店長「休憩時間も働いていた」 国の審査会が一転、認定

志村亮 編集委員・沢路毅彦

 うどんチェーン「丸亀製麺」で働き、労災認定を受けた元店長が「休憩時間も働いていた」と労働時間などの再審査を求め、国の労働保険審査会が4月、主張を認めたことがわかった。店長就任後の休憩時間の急増など勤務記録の不自然さと「(記録を)改ざんした」との主張が一致するとして、労働基準監督署の判断を覆した。

 人手不足が続く飲食業界では、休憩と偽る「サービス残業」が問題化しているが、働き手側の証明は難しいとされる。記録の不自然さに着目した審査会の判断が明らかになり、業界は労務管理の適正化を迫られそうだ。

 元店長の20代男性は、東京都内の店舗で働いていた2019年6月にうつ病を発症。向島労基署(東京)が20年9月、過酷な業務の負荷が原因として労災認定した。

 ただ、労基署は「勤務記録の休憩中も実は働いていた」との男性の主張は証拠不十分として認めず、ほぼ会社作成の勤務記録をもとに労災補償額を算出。男性は不服として東京労働局や審査会に審査を求めていた。

 審査会の裁決書によると、店長就任(19年2月)以前は月20時間前後だった休憩時間が、19年6月は68時間になるなど、就任以降に急増する一方、時間外労働はあまり増えていないことなどを踏まえ、審査会は「記録を改ざんしていたという主張と勤務記録はおおむね符合する」と判断した。

 加えて、「休憩ボタンを押したまま働いていた」などとする同僚の証言や、会社側が「(上司らが)残業が月45時間を超えたら残業時間の記録ができないと認識させるようコミュニケーションを行った」と認めていることから、「会社作成の休憩時間の記録は採用できない」と認定。一方、男性の「全く休憩がなかった」「(改ざんは)上司の指示があった」という主張は退け、会社の就業規則に沿った休憩(労働時間が6時間超なら45分など)まで減らすのが相当とした。補償算出のもとになる発病前3カ月間の1日の平均賃金は当初の約1万円が1万2千円強に上がった。発症前3カ月の残業を試算すると月約80~100時間程度に増え、いわゆる「過労死ライン」の水準に達していた。

 丸亀製麺の親会社トリドールホールディングスは朝日新聞の取材に「裁決は承知しておらず、コメントは控えたい」と回答。男性とは慰謝料などをめぐる和解交渉を続けている。

 労災事案に詳しい玉木一成弁護士は「飲食業を中心に記録上は休憩時間をはさみ、労働時間を短くみせる例が増えている。裁決は、こうした企業に警鐘を鳴らす意義がある」と語った。

 審査会は、厚生労働大臣のもとに置かれた組織で、労基署や都道府県の労働局の決定を審査する機関。労災に関する裁決は23年度は560件あり、判断が覆ったケースは15件だった。

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この記事を書いた人
志村亮
長野総局
専門・関心分野
企業、地域経済
沢路毅彦
編集委員|労働
専門・関心分野
労働問題・雇用政策

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