米欧32カ国で構成する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が24日、オランダ西部ハーグで2日間の日程で始まった。トランプ米大統領の要求を踏まえ、加盟国の防衛費目標を現行の国内総生産(GDP)比2%から5%に引き上げる案で最終合意を目指す。ルッテ事務総長が直前の記者会見で、米軍のイラン核施設攻撃は「国際法違反ではない」と述べるなど、NATOの「盟主」である米国への配慮が目立つ展開となっている。
NATO首脳会議は重要事項を協議する際に不定期に開かれるが、ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻した後は毎年行われている。今回は直前に米軍がイランを攻撃し、中東情勢にメディアの関心が集まっている。
23日のルッテ氏の会見でも中東情勢を巡る質問が相次いだ。米軍の攻撃は国際法違反ではないかとの質問に対して、ルッテ氏は「国際法違反だとの意見には同意できない」と色をなして反論した。ルッテ氏が米国の攻撃に理解を示した背景には、トランプ氏の反感を買わずに会議を円滑に進めたい思惑もありそうだ。
そのうえで、ルッテ氏はウクライナ情勢を念頭に「今はNATO域内自体が脅威にさらされている。我々は(域内に)集中しないといけない」と力説。防衛費増額やウクライナ支援が「今回の焦点だ」と説明した。
首脳会議では防衛費を3・5%に上げ、インフラ整備などの防衛関連費と合わせて5%とする新目標案で最終合意を目指す。5日の国防相会合で大枠合意していたが、直前になってスペインが「福祉国家の世界観とは合わない」などと主張し、新目標から自国を除外するよう要求した。
これに対して、ルッテ氏は、29年にスペインの防衛費の推移や、兵力・装備の増強方針を定めた「軍事力目標」の達成状況を検証した上で、新目標の対象からの除外の是非を判断する考えを示した。
ただ、トランプ氏が要求したのと同じ「5%」を新目標とすることに関しては「トランプ氏の懐柔と米国のNATOへのつなぎ留め以外に実質的な根拠がない」との見方が加盟国の一部から出ている。一方で、防衛費目標に例外を設けるとトランプ氏の反発を招く恐れもあり、ルッテ氏は調整に苦慮している。
今回の首脳会議に日本からは岩屋毅外相が出席する。当初は石破茂首相が出席予定だったが、トランプ氏が日韓豪などとの関連会合を欠席すると通告したことなどを受けて取りやめた。【宮川裕章、岡大介(ハーグ)、田所柳子】