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   11












白い壁が、歪む。
囁く声が、捩れる。
そして、まどろむ。


身体が、揺れる。
懐かしい、匂いがする。
まどろみが、解ける。




投げ出され、目が覚める。
ここは、何処だ。










何故、巡り合った。
どうして、舞い降りた。
そして、脚が竦む。


目を、閉じようとした。
耳を、塞ごうとした
俺は、囚われたくない。





投げ出して、心が覚める。
もう、手遅れかもしれない。














ケルベロスの声が、聞える。







乾いた瞳を開き。
乾いた喉を絞り。
白い陰が、目を過る。


「どうして、俺を庇った。」


唇を噛み締めて。
瞳が行き場を探し。
そして、こちらを向く。





「お前の為に来たんだろう。」
何故、俺は笑っている。
「こんな地獄の一丁目まで。」
瞳に、縛られたくない。


「お前に、言われたかないよ。」
顎が、上がる。


「よっぽど惚れてんだな。」
指が、引き寄せられる。
「もうヤラれちまったのか。」
頤を、捻上げる。



「そんなんじゃ、ねえ。」








頭が揺れる、目が眩む。
瞳は俺を、磔る。
もがく自分に無性に苛立つ。








ハーデスが手を、招く。






「じゃあ、どんなんだ。」



俺は、何故笑う。


ガウンの襟に、手を掛ける。
動かぬ腕で、引き千切る。
見開く瞳に、吸い込まれる。
艶めく唇に、誘い込まれる。


白い胸が上下する。
滑らかな腹に震えが繋がる。
閉じかけた傷が赤く燃え上がる。
その熱さに魅せられる。


喉が、乾く。


赤い傷が誘う。
喰らう様に屈み込む。
叫びが上がる。
貪る様に舌を伸ばす。


傷が、裂ける。







そして、こいつの心も。








「お前は、俺を選んだ.」
俺は、お前を選んでしまう。


「お前の欲しいものを、やる。」
俺は、何を求める。




求める彼方は、遥かに遠く。










喉が押さえられた。
唇が覆われる。
苦い味が広がる。
舌が捻込まれる。
息が、止まる。


底知れぬ淵に、投げ出された。
喉に、首に、肩に、唇が這う。
胸を、肘を、膝を、指が探る。
螺旋を巻く渦に、引き摺りこまれる。
囁きが耳を抉る。









「初めてか、男は。」











腕が掴み取られる。
翻筋斗り打って返される。
脚が押さえ込まれる。
背を掌が滑り。



そして、燃えるような痛みが貫いた。




泳ぐ様に腕を這わせる。
逃れ様と身を捩る。
肉体が戒められ、運命が回りだす。


思い切り引き寄せられる。


身体が刳り貫かれる。
深い痛みが背骨から駆け上がる。
苦い吐き気が鳩尾からせり上がる。


声が、背負う天に上がる。


幾度と無く引き裂かれた。
頬がシーツに擦れる。
唾液が糸を引く。
脚が沈み込む。
錆びた血が粘りつく。


背負う天が、砕け散る。


胸が押し潰される。
怒涛が堰を切る。
叫びが嗚咽となる。
嗚咽は咆哮に変わる。











魂を浚う様に、涙が止まらない。
包み込むりかの、身体が熱い。




激痛の底、何かが熱を持つ。
熱が疼く。
快感が、突き上がる。











何処か、に辿りつく。













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