スルガ銀が“新たな支援策”債務者側は「責任逃れ」と酷評

今沢真 / 客員編集委員 2025年6月24日
「スルガ銀行は交渉を引き延ばしてきた」と記者会見で激しく批判する河合弘之・スルガ銀行不正融資被害弁護団共同団長(中央)。右は同じく共同団長の山口広氏=東京都千代田区で2025年5月14日、今沢真撮影
「スルガ銀行は交渉を引き延ばしてきた」と記者会見で激しく批判する河合弘之・スルガ銀行不正融資被害弁護団共同団長(中央)。右は同じく共同団長の山口広氏=東京都千代田区で2025年5月14日、今沢真撮影

 不正融資問題が続くスルガ銀行が、不動産物件を購入した際の借金を返済できなくなっている債務者に対し「新たな支援策」と位置づける対応策を提示した。同行は返済できなくなった期間の利息や遅延損害金も支払いを求めてきたが、免除して返済再開を促すことが柱。債務者側は「不正で高値づかみをさせられた」として求めた損害賠償が盛り込まれておらず、「返済を再開させたい銀行にだけ都合よい内容だ」と反発を強めている。

報告徴求命令を受け

 スルガ銀行は投資用不動産購入者への融資で不正が多数見つかり、金融庁から2018年に業務改善命令を受けた。同行から数億円の融資を受けてアパート・マンション物件を購入し、想定した家賃が入らず返済できなくなった債務者約400人が「被害者同盟」を結成し弁護団に依頼。東京地裁で民事調停を続けている。

 協議が長引くなか、債務者への適切な対応を求めた業務改善命令は6年8カ月たつ今も解除されていない。金融庁は5月、同行に改善策を示すよう異例の報告徴求命令を出した。これを受け、スルガ銀行は同月末に同庁に報告書を提出し「新たな支援策」を盛り込んだ。

 「新たな支援策」は債務者が返済を停止し、延滞となっている期間の利息と遅延金をカットする。停止期間に入居者から受け取った家賃など自己資金を、修繕や固定資産税といった分を別として元本返済に充てるよう求める。こうして毎月の返済額を圧縮したうえで、返済再開と調停取り下げを条件に金利を1%を下限として引き下げる。最終的には物件売却により、残金返済に充てることを想定している。

「新たな支援策」でも残る借金

 債務者や弁護団はこの案を「借金を取りっぱぐれないようにする提案にすぎない」と切り捨てる。約400人の債務者は、家賃収支表や通帳、源泉徴収票など融資審査資料が偽造・改ざんされ多額の融資をされたとして、民事調停で損害賠償を求めてきた。

 弁護団による…

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客員編集委員  1983年毎日新聞入社。89年経済部。日銀・財研キャップ、副部長を経て論説委員(財政担当)。15年経済プレミア編集長。24年6月退職し、客員編集委員。16年に出版した「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版)がビジネス部門ベストセラーに。ほかに「東芝 終わりなき危機」「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」など。16~18年度城西大非常勤講師。

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