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【トランスジェンダー】“風呂問題”を弁護士が徹底解説「手術なしで性別変更」判決から約1年も「かみ合った議論がなされていない」

2025年6月24日 11:00

■「トイレが、風呂が、トイレが、風呂が」かみ合った議論がなされていない

白川:個別のケースについて課題を見てきましたが、広く社会全体として、当事者の方とそれを取り巻く周囲の方、社会全体がどうやったら摩擦とか衝突なくやっていけるのか。これからの社会での課題の解決のためには、どういったことが大事だと思いますか?

仲岡:2つありますね。まず1つ目。ちゃんと議論をすることですね。今話がかみ合ってないんですよ。片一方では手術要件をなくせと。

白川:違憲にならなかった方の手術要件である外観要件もなくしてほしいと。

仲岡:そういう意見もある。もう片一方で「トイレが、風呂が、トイレが、風呂が」。

ちゃんとかみ合った議論がなされていないわけです。しかし、私が申し上げたように、身体の特徴で分ける場だとか、身体的特徴によって起こる生理現象だとか、そういったところをちゃんと話がかみ合うような形で実務的な議論をしていかなきゃいけない段階に入っていると思います。

白川:手術なしでの性別変更を割とハードルなく広く認めるべきだという考えと、極端なことを言えば、生まれた時の戸籍の性別で分けようという考えの両極端なところが対話すらなされていないというのが、仲岡さんが見る現状ということですかね。

仲岡:やっぱりどっちもね、私は不十分だと思っていて。要件だけなくして、その後の運用を考えないのはおかしいと思うんですよね。法律が変わるということは、その後修正を入れなきゃいけない部分というのは必ず出てくるわけです。どんな法律でもそうですが。

他方で風呂の問題ばっかり取り上げて、トランスジェンダーへの偏見とかヘイトをあおる、これもおかしいんです。

ですから私みたいな法律の専門家とか、研究者、実務家が知恵を出し合いながら、合理的な修正の必要性がどこにあるのかよく議論しながら、必要なルールやガイドラインを作っていく。これが今必要なことじゃないかと考えています。
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■仲岡弁護士がトランスジェンダー当事者に求めること
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