【トランスジェンダー】“風呂問題”を弁護士が徹底解説「手術なしで性別変更」判決から約1年も「かみ合った議論がなされていない」
■“風呂問題”のカギ「法律上の性別」と「身体的特徴としての性別」
白川:つまり、法律上の性別というのは、いわゆる社会生活全般において、その法律上の性別で暮らすことを保証するものではないということですか?
仲岡:例えば典型例がお風呂屋さんです。お風呂屋さんって裸になるじゃないですか。そうすると不特定多数の第三者から見られる。
女性用のお風呂に男性の身体のままで入ったらどうなるかっていうと、当然「あの人は何なんですか?」と混乱が起きますよね。ですから厚労省の通知でも、公衆浴場とかそういった裸になる場では身体の特徴をもって振り分けるといった通知も出ていますので。
刑法の問題になるんですけれども、侵入罪という罪名があります。何かというと、施設管理者の管理しているスペースに違法に入ってはいけないというものです。
白川:つまりお風呂屋さんが建造物で、そこに違法に入ってはいけないと。
仲岡:管理者が「この場はだれ用の場です」ということを定めているわけですよ。その管理に違反して入るということは、建造物侵入罪になり得るわけですね。
■戸籍上男性でも“生理”がある…そのとき生理休暇は?
仲岡:これから、もしかしたら戸籍上の性別と身体の特徴がかい離していく可能性があるわけです。
そのためには、関連する法律を修正していかなきゃいけないと。
白川:つまり、今は戸籍の性別と身体の性別というのは一致している前提で、いろんな法律やルールが作られていると。これまでの性同一性障害特例法で性別変更されてきた当事者の方たちも基本的にはそこをクリアした方々が性別変更していたけれども、今後変わっていくにあたって整備が必要ということですよね。
仲岡:例えば、労働基準法という法律がありますね。そのなかに、女性の従業員の生理休暇の定めがあるわけですよね。
ところが、さっきの最高裁判決によって、生殖腺が除去されていないけれども、女性から男性に変わっている方もいるわけですよ。つまり戸籍上の男性で、「でも私は生理があります」という人が起こり得るということですよね。
労基法上は女性は生理休暇を取ることができるシステムだったんですけれども、今後は男性でも生理休暇が必要な人が出てくるわけです。ですから、これまでの「女性」か「男性」かという記載を少し修正していく必要性があると考えています。