トランプ氏「イスラエル・イラン完全停戦で合意」 イランは攻撃停止示唆
【ワシントン=飛田臨太郎】トランプ米大統領は23日、イスラエルとイランが「完全な停戦で合意した」と自身のSNSに投稿した。イスラエルとイランの両国が「12日間の戦争を終わらせるための持久力や勇気、知性を示したことに、心から感謝する」と書き込んだ。
停戦の手続きは6時間後に開始するとしている。「24時間」でイスラエルとイランが段階的に停戦を実行していく。停戦の取り組みが終了した時点で「戦争は終わる」と記した。
米東部時間23日午後6時(日本時間24日午前7時)すぎに発信した。停戦手続きが始まるのは日本時間24日午後1時ごろとみられる。トランプ氏の投稿によると、まずイランから停戦の手続きを始め、イスラエルがその後に続く順番になる。
イラン外相「応酬する意図はない」
ロイター通信によると、イランのアラグチ外相は「イスラエルがテヘラン時間(24日)午前4時(日本時間同日午前9時30分)までに攻撃を止めれば、イランは応酬する意図はない」と述べた。トランプ氏が主張した停戦合意については「我々の軍事作戦の終了についての最終決定は今後なされる」とした。
イランはこれに先立ち23日、カタールの米軍基地をミサイルで攻撃した。米軍のイラン核施設への空爆の報復措置としての位置づけで、イランは事前に米側に通告した。トランプ氏は「非常に弱い」「平和の時が来た」と主張していた。
イスラエル軍は13日にイランへの軍事作戦を始めた。イランの軍事関連施設や軍幹部・核関連の科学者などを対象に広範囲に空爆を実施し、イランもイスラエルにミサイル攻撃で対抗した。
トランプ氏はイスラエルの求めに応じて、米東部時間の21日に米軍によるイランの核施設の爆撃を決断した。イラン中部フォルドゥの地下核施設など3カ所を空爆した。
米軍がイラン本土を直接攻撃したのは初めてで、中東の大国・イランの報復次第では、中東全域に戦火が及ぶ紛争に発展する懸念が生じていた。
カタールが仲介か
トランプ政権は米軍の軍事行動はあくまでイランの核開発放棄を目的にしたと強調してきた。政権転覆は狙っていないとしたことで、イラン側に歩み寄りの余地が生まれた可能性がある。
ロイター通信は当局者の話として、カタールのムハンマド首相兼外相はイラン側から米国の停戦案に対する合意を得たと報じた。これに先立ちトランプ氏がムハンマド氏に、イスラエルも停戦案に合意したと伝えたという。
ロイター通信は、トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相と電話で話して、停戦をまとめたとも報じた。イランとはバンス副大統領とルビオ国務長官が交渉したとしている。
イスラエルのネタニヤフ首相は米軍によるイラン攻撃後の22日に「イランの核の脅威排除」などの軍事目標達成まで攻撃を続けると表明した。
トランプ氏は23日、米軍が空爆したイランの核施設は「完全に破壊された」と改めて主張した。米国内では部分的な損傷にとどまったとの見方もある。トランプ氏は空爆が成功だったと繰り返し訴えている。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
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(更新)- 田中道昭日本工業大学大学院技術経営研究科教授ひとこと解説
トランプ氏は、イスラエルとイランが停戦に合意し、それが両国間の戦争の終結につながる可能性があるとTruth Socialで発言。バンス氏もFOX で「大統領は本当にリセットボタンを押して『いいか、実際にこの地域に長期的な平和をもたらそう』と言った」と発言。イランの代理勢力が沈黙する保証、イスラエル内政の強硬姿勢、核開発再開問題等への対応は気になるが、発言が実現すれば、戦術的な成功に加え、エスカレーションの泥沼化を回避する戦略的な成功をもたらした「戦争を終わらせた大統領=力で平和を勝ち取る大統領」となる。一時的な停戦ではなく、持続的な秩序構築、ロシアへの停戦圧力にもなることを期待したい。
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(更新) - 今村卓丸紅 執行役員 丸紅経済研究所社長・CSO補佐分析・考察
イランの弱体化がポイントでは。昨夜WSJはイスラエルが戦闘の早期終結を目指していると報道。数日内に軍事目的を達成して戦闘終結が視野に入ったとのこと。 https://www.wsj.com/livecoverage/iran-israel-us-latest-news/card/israel-seeks-an-end-to-fighting-with-iran-soon-bijK6KrvRZnWxiwhlQ6Z 弱体化したイランへのイスラエルと米国の攻撃が想定以上の戦果を上げ、早期の目的達成が可能になったのでしょう。同報道後のイランのカタールの米軍基地への報復攻撃も予告付きの小規模、明らかに苦肉の策。イスラエルの休戦を目指す動きは変わらず米国も協力、イランも応じる流れだと思います。ネタニヤフ氏は体制転換にも言及しましたが、今の弱いイランでも拒否、反発して泥沼の長期戦が待つだけ。大きな戦果と早期休戦の好機が同氏を野望から現実的判断に導いたと思います。
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(更新) - 滝田洋一日本経済新聞社 客員編集委員ひとこと解説
①狐につままれたような、歌舞伎十八番を観ているような感じです。1962年のキューバ危機ではケネディ大統領は海上封鎖でミサイル撤去を実現しましたが、今回のトランプ大統領は限定的な核施設攻撃でイランとイスラエルを停戦手続きへ。 ②イランが事前通知の上で米軍基地に反撃したのも、自らのメンツを守るため。圧倒的な軍事力を見せつけ、ディールを実現するトランプ流の瀬戸際外交、畏るべし。焦土回避のためのイランのリアリズム、侮りがたし。焦点は実際の停戦手続きがスンナリ進むか。 ③トランプ氏の発表を受けて、原油WTIは急落し65㌦割れに。株式市場でまずは”トランプ株”が急上昇しましたが、中東の火種はまだ燻ります。
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(更新) - 慎泰俊五常・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役分析・考察
停戦合意が事実であればそれは喜ばしいことですが、ここで生まれた恨みの種は決して失われないと思います。イスラエルの目的である自国の安全保障は達成されないでしょうし、暴力の連鎖はまだまだ続くだろうなと思っています。
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(更新)
2023年10月にイスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの衝突が始まって以降、中東情勢が大きく揺れ動いています。地域大国イランとイスラエルが直接、交戦する事態に発展。2025年6月21日(米東部時間)にはアメリカがイラン領内を初めて攻撃する事態となりました。最新ニュースと解説記事をまとめました。
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