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【OTCの話: 喘息治療薬の保険適用除外は適切か?】 喘息薬が将来的に保険適用除外されるかもしれないと話題です。この議論には実は誤解も含まれていそうなので、その点を説明しつつ、『チームみらい』の考える「テクノロジーを活用しながら患者さんの健康を守り、医療費を下げる」ための政策をご紹介します。 まず「喘息の薬が保険から外れるのはとんでもない」という議論が多いのですが、ここには誤解が含まれるかもしれません。喘息治療薬の中でも、サルブタモールという薬が外れるかどうかという議論をしているのであって、喘息治療のお薬すべてが保険から外れるわけではありません。 また、喘息の薬は「根本治療の薬」と、「暫定処置の薬」の2種類に大別されます。「根本治療の薬」は、使えば使うほど、その後の発作を長期的に予防できるので、患者さんの医療費の負担が最終的に7万円削減できるという試算すらあるのですが、使った瞬間に効果を実感するわけではないので人気がなく、治療をご自身の判断で中断されてしまう場合も珍しくないのが現状です。 一方「暫定処置の薬」は、使うとその直後は楽になりますが、根本治療にはなりません。発作のときにその薬だけ使い続けて、喘息の根本治療をせずに済ませていると、状況はどんどん悪化し、患者さんたちの生活が不自由になったり、患者さんたちが経済的に苦しくなったりしてしまいます。 そして今回、保険から外されて高くなると言われている「サルブタモール」は、暫定処置の薬の代表です。根本治療の薬が高くなるわけではないので、「喘息の薬が高くなるから患者さんが長い目で見て悪くなる」というわけではありません。むしろ根本治療の薬は安いままなので、相対的に「根本的な発作予防の方(患者さんにとってのメリットが大きい方)にインセンティブをつけている政策」ともいえます。 もちろん「根本治療をしていたにも関わらず発作が起きてしまって、サルブタモールが必要」というケースは発生しえます。そういったケースには当然、保険適用すべきです。つまり、「予防にベストを尽くしている(普段から根本治療の薬を使っている)にも関わらず、発作を起こしてしまった方には、保険で対応」し「予防を全くしていない(普段は根本治療をしていない)にも関わらず、発作を起こしたときにその場しのぎの薬をもらう方は保険で対応しない」ということが出来ると、患者さんにとっても、医療費を負担する国民にとっても、よい制度になると考えています。そしてこれは、現在の技術であれば実現が可能と考えています。 例えば、レセプト(医療機関の発行する請求書のようなもの)の算定で、マイナンバーを用いてその患者さんの過去のデータを取得し、根本治療の薬が同一患者に処方されているかどうかで自己負担割合を調整するようなイメージです。 数十年前に紙のレセプトを人間が逐一判断していた時代には、「病名と薬が対応しているか」というチェックをするので精一杯でしたが、今は「薬の組み合わせや、普段の処方に応じて、適切な人にだけ保険で対応する」という判断をできる土台が整ってきています。それが結果として「医療費の削減」と「患者さんの長期的なウェルビーイング」を両立させる解決策となりえます。 また、発作時の治療薬が薬局で買えることで、一時的に悪化した場合や出先で薬を切らした場合など医療機関に受診するまでの繋ぎとして対応できるのは患者さんから見てもメリットになりうると思います。 「喘息の薬」をひとくくりに論じるのではなく、どの薬がどのようなメリットを患者さんにもたらす薬なのか、どのような制度が最終的に患者さんおひとりおひとりの幸せに最も寄与し得るのか、ひとつひとつ吟味しつつ、制度を考えてゆくことが大切なのではないでしょうか。 チームみらいはテクノロジーを用いて、公平性を保った医療費削減と、患者さんの健康を両立できる医療制度を提案していきます。