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高速に上がると、冬の空が冴え冴えと広がる。
こんな日に限り、道は空いている。
ベンツが滑らかに揺れ、頭と身体を弛緩させる。
後続のバンを顎でさして、尋ねる。
「面子は。」
「越乃と月船、あと北翔、未来を連れてきてますが。」
冬の日差しが、冷たくガラスに反射する。
対向車が流れてゆく。
聞きたくも無いが尋ねてみる。
「何持たせた。」
「取り合えず、ウージーSMGとスコーピオンを。」
シートに深く、俺は沈み込む。
「他の組がビビる程度には、やっとかねえとな。」
「実戦経験はまだない連中ですが、虚仮脅しには丁度いいかと。」
なるようになるさ、サングラスを掛け目を閉じた。
網膜に、忘れていた組長の顔が何故か浮かぶ。
ゆうひが携帯で打ち合わせる、声が低く流れてくる。
カーステレオから流れる、弦の響きに心を浸す。
AMGの加速は、滑るように追越をかける。
やがて車は出口ランプにさしかかった。
乾いた道に砂を跳ね、車は静かに止まる。
時代錯誤もいい処の日本家屋が、幻のように浮かび上がる。
要塞のような土塀が、ぐるりと回り、
訪れたのは、もう思い出せない程に遠い昔。
そして、今日は招かれざる客か。
うんざりするほど車のドアが重い。
コートを引っかけ、足を下ろす。
若手を従えたゆうひが来る。
「どうします。」
「塀に一斉射撃だ。」
「手榴弾もつけますか。」
その位なら、轟も揉み消せる。
悠然と座る姿が浮かんだ。
少しは苦労してもらうのもいいだろう。
「人間は撃つな、後が面倒だ。」
緊張した面持ちで若い奴等が頷く。
塀に一斉に土煙が上がる。
轟音に驚いた鳥達が彼方で飛び立った。
足元から振動が伝わる。
硝煙弾雨の一景を、遠い世界のように眺めた。
一本残った煙草に、火をつける。
あらかた撃って体裁も立った頃、ゆうひが右手を挙げた。
サブマシンガンを左に持ち替え、手榴弾のピンを抜く。
土塀が崩れ落ちる。
煙草を踏みつけ、重い脚を踏み出す。
足元でカートリッジが鈍く冬の陽を弾いた。
土埃が静まり口を開けた塀の向う、屋敷を背に男が立っていた。
「お出迎えが遅くなりまして、失礼致しました。」
相変わらず慇懃なのか無礼なのか掴めない。
屋敷の奥から、くぐもった銃声が響く。
男の顔は心持ち白くなり。
表情は微動だにしないまま、口だけが開く。
「只今より、大和組組長代行を勤めさせて頂きます。」
「幸さんっ。」
屋敷からえらく元気なのが飛び出してくる。
組長は始末をつけたらしい。
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