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「お前。本当に、いいのか。」
廊下にワタルが立ちはだかる。
「俺達が出なきゃあ、立ち消えになる話かもしれん。」
世の中そう単純にいけば、世話はないんだよ。
誰かがしなきゃあならない、ただそれだけのよくある話。
肩を掴む手を払い、執務室へ向かう。
背中に視線が絡みつく。
俺は気にもかけない。
皮張りの椅子で、轟が顔を上げる。
感情を殺した顔は、一際彫刻めいて。
いつもより乱暴に、葉巻をふかす。
言葉を促すように、俺を見つめる。
指示を出すのは、あんただろう。
「大和組の件。」
仕方なく俺は、口火を切る。
「組長の首と引き換えに、組をうちの一時預りにする。
向うも、大事にしたくは無いだろう。」
それでも、向うには充分大事だ。
跡形も無く潰されるより、一縷の望みに賭けたのだろう。
誇りを捨てて、首を繋ぐ。
お互い、事も無げに目を瞑る。
「何人か連れて乗り込みましょう、形だけでも。」
安堵したかのように、彼の肩は緩む。
葉巻の匂いに、もう息が詰まりそうだ。
切り上げようと、俺は席を立つ。
やけに喉が乾く。
「息子が、一人いる。」
扉に手をかけた背に、絞り出すような声がした。
「残して、いらん火種にはしたくない。」
そいつも、道連れか。
後味は良くなさそうだ。
「かといって、つまらん恨みも買いたくは無い。」
あんたなりに、情けをかけるって訳か.。
いいかげん解放してくれよ。
こみ上げる吐き気を抑えながら、扉を背にして首を回す。
「 どうします。 」
「見習でうちに置く。」
体のいい、人質か。
駄々をこねるような、餓鬼じゃなけりゃあいいが。
子守りは俺の趣味じゃない。
「連れて、帰って来い。」
「了解。」
いつのまにか、西日は夕闇へとその色を変え、
内臓の底に、鈍く痛みが走る。
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