北米

2025.06.23 13:00

トランプの入国禁止令が「医療現場」を直撃、外国人の研修医が入国不能に

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カナダに住む医大の卒業生ハシバ・カリミは、数週間後には米国ペンシルベニア州の病院で働いているはずだった。彼女は、今夏からペンシルベニア州で初年度のレジデンシー(研修医プログラム)を始める予定だった、外国生まれの海外医大卒業生144人のひとりだ。彼女のような存在は、米国の深刻な医師不足問題に対する、解決策の一端を担っている。

しかし、彼女が米国に入国できるのは、当分先のことになりそうだ。なぜなら、カナダ在住でトルコで医学教育を受けたカリミは、アフガニスタン生まれだからだ。彼女のH-1Bビザの面接は6月9日に予定されていたが、その日は、19カ国からの入国を禁止する、トランプ大統領が署名した大統領令が発効した日でもあった。

この大統領令には一部の例外が設けられていたが、医師に対する例外は明記されていない。カリミは、長年の努力を重ねて米国での機会を勝ち取ったのだが、今はただ待つことしかできない。

米国の医療現場に不可欠な存在

「米国における小児科研修医の4人にひとりは、海外医大の卒業生だ。そして彼らは、米国人の卒業生が応募すらしない、最も医師が不足している地域のポジションを埋めている」と、ニューヨークのブルックデール大学病院医療センターの研修医で、海外医科大学卒業生の擁護者でもあるセバスチャン・アルアラナは語る。「この問題が解決されなければ、誰が私たちの子どもたちの面倒を見るのか?」。

毎年夏になると、外国生まれの医師の卵たち数千名が米国の病院のレジデンシーに参加する。米国の病院と医学生や研修医を結びつける全米研修医マッチングプログラム(NRMP)のデータによれば、今年3月には、海外医大の出身者で外国籍を持つ6653人が米国の病院のインターンシップに内定していた。さらに300人が、3月のマッチで埋まらなかったポジションにその後マッチした。外国人が米国で医師として働くにはレジデンシーの修了が必須であり、これらプログラムは医師の供給において極めて重要だ。

二重の障壁となる入国禁止令

トランプ政権は、アフガニスタンやイランを含む12カ国からの個人の入国を禁止し、アジアやアフリカ、中南米の7カ国からの入国に制限を加えた。この措置は、米国に渡航する医師研修生の大半が使用するJ-1ビザの面接予約停止と並ぶ、新たな障壁となっている(この面接予約の停止は、国務省が申請者のSNS審査方針を策定するための措置だった)。

この国別の入国制限が研修生にどれほどの影響を及ぼすのか、現時点では明確になっていない。「私たちは、対象13カ国に居住している、もしくは関係を持つIMG(海外医科大学の卒業生)からの少数の報告を確認したが、彼らの一部はすでに米国に滞在している可能性もあり、来月からレジデンシーに参加できるかどうかの判断が難しい状況だ」と、NRMPのドナ・ラムCEOは語る。

すでに米国にいる対象国出身の研修医は滞在を続けられるが、出国した後に再入国できなくなる可能性がある。レジデンシーの期間は、専門分野に応じて3〜7年となっている。

次ページ > ビザを待つ医師たちの声

編集=上田裕資

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2025.06.23 11:00

「動かす」データマネジメント──NECと共に進める新しい実践のカタチ

データがあっても、意思決定につながらない─。NECはその課題に直面し、模索と試行錯誤を重ねてきた。そこで蓄積した実践知をもとに、現在は企業ごとに最適化した“伴走支援”で、データマネジメントコンサルティングを展開している。

現場に根付く新しい実践のカタチとは。NEC コンサルティングサービス事業部門 データマネジメントグループ ディレクターの下條裕之(以下、下條)に話を聞いた。


DXによりシステムは整備されつつあるが、それが意思決定や現場の行動には結びついていない。こうしたジレンマを感じているビジネスパーソンは多いはずだ。ではなぜ組織は“動かない状態”に陥るのか。その背景には構造的なつまずきがある。

データマネジメントを阻害する「4つの壁」

 そもそもデータマネジメントとは何か。直訳すると「データ管理」という意味だが、下條は「それだけにとどまらない広範な活動であり、概念でもある」と話す。

「NECが定義するデータマネジメントとは、企業がデータに基づいて意思決定を行うデータドリブン経営を実現するための、あらゆる取り組みを指します。その実現には、データ活用文化の醸成、人材育成、制度設計、さらにはデータ基盤の構築に至るまで、包括的な視点でのアプローチが求められます」

だが、こうした全体像を描いても実行段階でつまずく企業は少なくない。NECは自社でデータマネジメントを実践してきた経験から、その原因を「4つの壁」に集約して説明している。

1つ目は「意識の壁」。改革を進めようとすると、「本当にやる必要があるのか」と最初から拒絶する声が上がる。いわゆる“データアレルギー”と呼ばれる状態だ。2つ目が「スキルの壁」。意識が変わっても、活用に必要なスキルが伴わなければ行動にはつながらない。 

そして3つ目に「継続の壁」、4つ目に「活用の壁」と続く。データマネジメント組織を立ち上げても、他部署との兼務が多く、現業の忙しさにより継続や活用が停滞するケースは多い。

「経営側や現場など、一部の組織だけが改革に挑もうとしても、障壁を乗り越えることは難しいです。データマネジメントを実現するためには、まず、マネジメントの実行が可能な仕組みそのものを整えていく必要があります」

5つの柱で実現するNECのデータマネジメント支援

 データマネジメントにおいて、NECは「5本の柱」の構築が重要だと提唱している。

その柱とは、「組織/統制」「文化」「人材育成」「分析/AI」「基盤」。この5つの柱はそれぞれが相互に作用し、どれか一つが欠けても成果につながらないと下條は指摘する。

「例えデータ基盤が整っていても、データ活用を推進する文化が根付いていなければ、そのデータが使われることはありません。また人材育成だけを進めても、組織に統制がなければ、データの扱い方は部門ごとにばらつき、共有や連携が難しくなります。5つの柱は、それぞれが単独で機能するものではなく、“何を優先すべきか”を見極めながら、全体として設計する視点が重要です」

 NECのコンサルティングは、「5つの柱(組織/統制・文化・人材育成・分析/AI・基盤)」を軸に、現場の行動変容と経営層の意思決定を一体的に変えていくアプローチに強みを持つ。このアプローチは、NECが自社を“0番目のお客様=クライアントゼロ”と位置づけ、社内のデータマネジメント課題に真正面から向き合ってきた実践経験に基づいている。

「自社でダッシュボードを用いてデータ活用を進めようとしたところ、そもそもデータを見る文化がないという経営判断への活用以前の課題がありました。そのため、経営層が判断するポイントをしっかりと説明し、データの背後にある判断材料や行動の兆しを可視化してきたことで、経営層の意思決定に対する姿勢そのものが変化していきました」

データで組織を動かすには何が必要か。その問いへの答えを、NECは自らの歩みのなかで見出してきた。

小さな成功体験から始める変革のアプローチ

 データマネジメントで重要な5つの柱は、1つでも欠けてしまえば機能しない。だが下條は、「5つの柱を同時進行させるのは現実的ではない」と話す。

 「特に縦割り組織の大企業では、同時進行は難しい。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは踏み出すための小さな一歩でいい。手応えを感じられる体験が、継続や自走につながっていくと私たちは考えています」

 NECではこの考え方を「Small Start」「Quick Win」と呼び、小さな成功体験を積み重ねていくことで、データマネジメントの加速を図る手法として重視している。

この手法が成果を上げた例として、ある大手企業の支援事例がある。

その企業ではDX推進によりデータ基盤の整備は進んでいたが、組織の縦割り構造が強く、部門間のデータ共有が進まないという課題を抱えていた。現場との対話を重ねるなかで、下條はあえて部署間の壁に正面からぶつからず、まずはデータ分析をNECが代行するカタチでの支援を提案した。 

「他部署との共有が必要とわかっていても、関係性や立場のしがらみで動けない現場は少なくありません。そうしたとき、我々が中立的な立場でデータ活用を担うことで、現場が動きやすい環境が整います」

NECのコンサルタントは現場に入り込み、「今、何が課題なのか」「どうすれば前に進めるか」を共に考え、泥臭い取り組みを一緒に進めることでデータマネジメントを浸透させていった。その取り組みは徐々に社内に波及し、社内に賛同の輪が広がっていった。

開始から2年、データマネジメントの取り組みは大きく進歩した。まさに「Small Start」「Quick Win」が、組織の深層にある構造や文化の変化を引き出した、実践知による支援の好例と言えるだろう。

文化と現場を変える、泥臭さをいとわない支援とは

NECがDX戦略コンサルティング組織を立ち上げてから5年程が経過した。この間で企業のデータマネジメントに対する意識は急速に高まり、企業からの相談件数は3~4倍に増加しているという。背景には「AI技術の急速な進化と普及がある」と、下條は分析する。

「これまでは、DX推進の文脈で社内のデータ整備や共有の必要性が叫ばれていながらも、実行には至らず、先送りされるケースが多く見受けられました。しかしAIの進化は、企業にとってもはや“待ったなし”の状況を突きつけています。自社でも本格的に取り組まなければ、取り残される。そんな危機感が、ようやく現場と経営層の双方に芽生え始めたと感じています」

特に大企業のように組織が複雑になるほど、全社的なデータマネジメントを動かす難易度は格段に上がる。

下條はNEC に参画する以前、大手通信会社において SE 部門の研究開発やDX 推進の責任者を務めていた。その際、全社横断的なプロジェクトを推進するなかで「現場にいかに意欲があっても、部門を越えた設計やマネジメントの仕組みがなければ変革は進まない」という実体験を得たという。だからこそ下條は、NECの泥臭さをいとわない伴走支援の価値を訴える。

NEC コンサルティングサービス事業部門  データマネジメントグループ ディレクター 下條裕之
NEC コンサルティングサービス事業部門 データマネジメントグループ ディレクター 下條裕之

「規模の大きな企業では、経営層によるトップダウン型のアプローチを取る企業もありますが、その手法が最適とは限りません。むしろ大企業においてはNECがクライアントゼロで実践してきたように、現場主導で意識変革を積み重ね、小さな変革を横展開しながら広げていく取り組みが効果的なケースが多く存在します。それぞれの企業文化や風土に応じた推進のあり方を、対話を重ねながら伴走していくことが我々の強みです。

日本企業の多くは、いまだデータマネジメントの文化が定着しているとは言えません。まずはその土台を整えること。そして将来的には、次世代のAI技術にも対応し得る高度なデータマネジメント体制を構築し、グローバルな競争に挑む企業を支えていきたいと考えています」

下條はNECが実践する伴走支援のカタチを「『動かす』データマネジメント」と表現する。データマネジメントの文化を醸成し、経営層や現場の意識を変化させることは容易ではない。小さな成功事例を着実に積み重ね、それを横展開しながら大きな変革へとつなげていくことが鍵となる。

こうした取り組みが、やがて企業全体の意識変容と文化の定着へとつながっていくことに期待したい。

※資料は「My NEC」のページからご覧いただけます
※資料はリンク先の「My NEC」からご覧いただけます


しもじょう・ひろゆき◎NEC コンサルティングサービス事業部門 データマネジメントグループ ディレクター。大手通信会社でSE部門の研究開発、DX推進の責任者などを歴任したのち、2022年NECに参画。コンサルティング部門に在籍し、多くの企業のデータマネジメント推進およびデータマネジメントオフィス(DMO)の立ち上げなどを支援。

Promoted by NEC corporation | text by Tetsujiro Kawai | photographs by Daichi Saito | edited by Aya Ohtou (CRAING)

北米

2025.05.19 09:00

米国で「回避可能な死」が増加、銃や交通事故など 他の先進国との差が歴然

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米国で「回避可能な死」が増加している。一方、他の高所得国では同様の死亡が減少の一途をたどっている。回避可能な死とは、予防を含む迅速で効果的な医療があれば起こり得ない死亡事故を指す。これは憂慮すべき事態であり、米国と諸外国との平均寿命の差の拡大の一因にもなっている。

新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっていた頃、米国の平均寿命は他の国々より大きな打撃を受けた。また、他の先進国とは異なり、米国の平均寿命は2010年以降、伸び悩んでいる。要因は複数考えられるが、そのひとつは、米国では他国と比べて回避可能な死者数が多いことだ。回避可能な死亡とは、予防を含め、適切なタイミングおよび効果的な医療が存在すれば発生すべきでない死亡を指す。

死因を調査する臨床医は、何らかの対策によって死を回避できたかどうかを判断することがよくある。世界の高所得国の多くでは、回避可能な死者数が減少している。それとは対照的に、米国では回避可能な死が過去10年以上にわたって増加していることが、米ブラウン大学と米ハーバード大学による新たな調査から示された。調査結果は2025年3月、医学誌「米医師会紀要(JAMA)」に掲載された。調査では、全米50州と経済的に豊かな40カ国の死亡率の傾向を分析した。それによると、米国の回避可能な死亡率は2009~21年の間に上昇していた。一方、他の国々では新型コロナウイルスの流行が続いた20~21年の期間を除くと、同様の死亡率は低下していたことが明らかになった。

同論文の筆頭著者であるブラウン大学公衆衛生学部のイレーネ・パパニコラス教授は、医学誌メディカルエクスプレスの取材に対し、今回の研究結果は米国の医療制度の問題を浮き彫りにしていると指摘した。例えば、米国では2010年代初頭から交通事故による死者数が増加しており(他の先進国では減少傾向にある)、銃や違法薬物の過剰摂取による死亡も依然として非常に高い確率で発生しているほか、自殺率や妊産婦死亡率、乳児死亡率も上昇している。また、子宮頸がんや虚血性心疾患など、早期発見で予防可能な病気も増加している。

研究者らは、米国の各州でさまざまな原因による死亡が増加しているが、州ごとにかなりのばらつきがあることも発見した。米国の回避可能な死者数は2009年時点では10万人当たり約20人だったが、21年には同44人と倍以上に増加していたことが判明した。一方、他の先進国では、回避可能な死者数が米国より10万人当たり約14人少なかった。欧州連合(EU)加盟国では同種の死者数はさらに少なく、平均して米国より10万人当たり約24人少なかった。

次ページ > 米国では歴代政権下で回避可能な死を巡る数多くの議論が行われてきたが……

翻訳・編集=安藤清香

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2025.06.23 09:30

トランプ政権、米政府系報道機関VOAの数百人を一斉解雇へ

Algi Febri Sugita / Shutterstock.com

Algi Febri Sugita / Shutterstock.com

トランプ政権は米国時間6月20日、米国政府が所有する報道機関「Voice of America」(VOA)のスタッフ数百人を解雇すると発表した。これはトランプ政権下の連邦政府全体で行われている大規模な人員削減の一環だ。

USAGMおよびVOA職員639人に解雇通知、組織の大幅縮小へ

米国グローバル・メディア庁(USAGM)を長官として率いるカリ・レイクは声明で、米国時間6月20日付でUSAGMおよびVOAの職員639名に解雇通知を送付したと発表した。これはUSAGMの人員を85%削減する大規模計画の一環だ。

レイクの声明によると、今回の解雇後、USAGM、VOA、キューバ放送局(Office of Cuba Broadcasting)で現在も残るのは250人の職員のみで、同庁の幹部は最終的に81人のみが残る計画を承認したという。

VOAは米国政府が資金を援助する報道機関で、世界40以上の言語でニュースや情報を放送し、検閲が厳しい国々に正確なニュースを届けている。

今回の解雇は、レイクとトランプ政権がUSAGMを解体する取り組みの一環だ。レイクは3月、USAGMは「立て直し不可能で、法律で義務付けられた最小限の存在と機能にまで大幅に縮小する」と主張していた。

「83年間の独立したジャーナリズムの死」と非難する訴訟も

VOAの解体に対して訴訟を起こしている原告らは、NPR(米公共ラジオ)への声明で、金曜日の解雇は「世界中で米国の民主主義と自由の理想を支持する83年間の独立したジャーナリズムの死を意味する」と述べた。

トランプ政権とVOAをめぐる訴訟は継続中だが、裁判所は一時的にトランプ政権が従業員を解雇することを認めている。今後、訴訟がどれだけ長期化するかは不明で、最終的な判決もわからない。

イラン報道強化の直後に解雇発表

今回の解雇発表は、VOAがイスラエル・イラン紛争の報道強化のため、行政休職中だった多数のファルシ語(イラン標準ペルシア語)話者職員を復帰させてからわずか数日後に行われた。VOAはイラン向け放送について「イラン政権の偽情報と検閲に対抗し、イラン国民および世界のペルシャ語話者の離散民族に直接語りかける米国の取り組みを強化する」と説明してきた。原告団によれば、今回の解雇通知には復帰したばかりの職員も多く含まれており、彼らは9月1日までVOAで勤務を続ける予定である。

連邦政府全体で進行中の大規模な人員削減の一部

VOAでの解雇は、連邦政府全体で進行中の大規模な人員削減の一部である。トランプ政権と、かつてイーロン・マスクが率いた政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)は「無駄な政府支出」の削減を掲げ、内国歳入庁(Internal Revenue Service)、社会保障庁(Social Security Administration)、教育省(Department of Education)、保健福祉省(Department of Health and Human Services)、国務省(Department of State)、国防総省(Department of Defense)など多くの機関で数千人規模のレイオフを実施してきた。

USAGMは、米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development、USAID)や教育省と並び、人員削減を超えて組織そのものと業務が解体の対象となっている機関のひとつである。こうした措置は各所で提訴されており、結果はまちまちだが係争は続いている。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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