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   【第十七場】










ペテルブルグの空が高い。




査問委員会も終わった。
命を賭けた娘の嘆願で、背任の嫌疑は晴れた。
拝謁を済ませ、純白の第一礼装で宮殿の門を出る。




冷たく空気が、頬を掠める。



目を細め、遠い山並みを眺めた。
あの故郷で、娘と暮らす。
幾つもの冬が巡る中で、心は穏やかに氷を張る。
少しずつ嵩を増す氷の底、深く沈む澱みをなお沈め、俺は生きていく。
心を緩やかに押し潰す氷を、愛と呼び続けて。



そして、娘と暮らそう。









灰色の通りの向こうで、ざわめきが涌きあがる。
群集の怒号に紛れ、石つぶてが飛んでくる。
又一人、反乱軍が処刑される。



嘲り罵る人々の群れの中、轟然と頭が歩む。
投げられる石も、浴びせられる罵声も、全ては遠い幻のように。
縄に引かれた罪人は、真っ直ぐに広場を割って入る。





凍えるような風に、黒髪は乱れる。
笑みさえ浮かべ、歩を進める。
その歩みは、天への階を踏み締める。


山並みにきびすを返し、青年は走る。






「りか。」


耳の奥で木霊が破裂した。








ゆっくりと頭を回す。
純白の衣装が、陽を弾き。
あの日の天使が、降り立った。






風の音は遠く聖歌となり、響く。






潤む瞳が、震える睫が。
そして永遠に、胸に刻み込まれる。
燃え盛る煉獄に、男は引き摺り込まれる。






出迎えとしちゃあ、上等だ。



焼き尽くすような視線を黒い瞳に、据える。
遥かに葬った名残を込めて、一笑する。








「じゃあな、先生。」



















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