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       【第六場】




天幕を包む影は、融けあい流される。


睥睨する俺と晒されるお前。
跪くのは俺。
差し伸べるのはお前。


告解する俺と贖罪するお前。
捕らわれたのは俺。
捕らえたのはお前。






崩れ落ちる混沌の果て、何かが残るのならば。





「俺が目をつけるってえのは、そういうことだ。」


何故、天上を羽ばたいていなかった。



俺は、愉悦を苦く味わう。
「いいのか、心残りは。」
お前は、崩折れそうに瞳を上げる。


「若い娘は、目をつけられやすい」
呪いは生臭く空気を蝕んでゆく。
手が牽かれるように、上がる。
瞳が色を増し俺の首に、絡む。


上着がふわりと、落ちた。


「特に、飢えたコサックどもには。」
震える羽根は、儚く翻る。
揺れる瞳は、俺を締め上げる。
俺は眼差しを、背けることすら叶わない。


サッシュが床に、流れる。


そして、天使の羽が地上を覆い尽くし。








救いを乞いに、俺は立ち上がる。
見開く瞳に、顔を寄せる。
凍えた唇に、口を重ねる。
強張る歯を、抉じ開ける。
開く瞳に、吸い込まれる。


屠られる天使の時が止まる。


厳かな祭壇のように、寝台を目で示す。
恭しくお前を抱き、豪奢な上掛けに横たえる。


髪は柔らかく羽根のように広がり、
瞳に張り詰めるのは、混迷と驚愕と。







「初めてか、男は」








喉元を押さえつける。
指を滑らせ唇に這わす。
逃れようと背が抗う。
抗いは恍惚を誘う。


もがく腕が、俺を拒む。
蹴り上がる脚が、俺を鞭打つ。
そして、撓る身体は、俺を誘い込む。


身体を抱き寄せる。
体温が流れ込む。
腕を捻り上げる。
首筋に齧り付く。


上がる脈を、飢えた口で含み。
沈む四肢を、俺は刻んでゆく。
堪え切れず、嗚咽が漏れて。
羽を毟るよう、容赦なく手を這わす。


血が染みる程、白い皮膚を吸い上げる。
いつしか、嗚咽は叫びに変わる。



吸い付くような唇が、身体の隅々を這い回る。
剥き出しの神経を、痛い程に刺激する。
抉られる臓腑が、苦痛にのた打ちまわる。
反り返る喉が、切り裂かれ叫びを上げる。


舌が舌に貪られ。
胸が胸に戒められ。
脚が脚に磔られ。
身体が身体に千切られる。


貫かれる火柱に、天幕が遠ざかる。
流れ込む吐息が、この世の響を奪う。
捻り込む苦痛に、身体は痺れ。


声が枯れる







吹雪の日が不意に思い出される。
息も出来ぬ程巻き上がる、嵐の只中。
耳が潰れる程吹き上がる、逆巻く竜巻。
飛ばされぬよう思わずしがみつく。







舞い上がる雪煙に、もう何も見えない。
荒れ狂う風の音に、もう何も聞こえない。















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