「ボールは遅い」という中日・松葉がなぜ勝っているのか あえて追い求める“非再現性” ボールの傷や歪みを武器に
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って ◇22日 交流戦 中日4―1日本ハム(バンテリン) ◆これぞ「デコルテ松葉」!【写真】 誰もがやることを、松葉は時としてやらない。それは誰もが追い求めることを、彼は求めていないからだ。普通はアウトになったりヒットが確定すると、スコアブックに記入するために目線を切る。だけど松葉の登板日だけは、その後もボールの行方を追い続けることにしている。理由は簡単だ。彼が審判にボール交換を要求するかどうかを確かめるためだ。 ファウルやワンバウンドはもちろん、前に打球が飛べばボール交換するのは義務ではないが暗黙の了解事項だ。バットに当たり、地面を転がれば、ボールには多少の傷がつき、わずかでもゆがむ。そのまま投げると不規則な変化をする可能性があり、投手は嫌う。だからニューボールへの交換を願い出る。ところが松葉はそうではない。この日もそうだった。1回の五十幡の二ゴロ、2回の上川畑の遊ゴロ併殺打、4回の清宮幸の右前打にレイエスの遊飛…。野手から戻ってきたボールを確認し、そのまま使っていた。その理由を聞いたことがある。 「ここ何年かはある程度の状態なら変えずに投げていますね。確かに自分が思い描いたのと違う変化をすることはあるんですが、それもありなんじゃないかと思って」 傷やゆがみをネガティブなものではなく、自分の武器として利用しているのだ。つまり大多数の投手が追い求める「再現性」よりも、彼はあえて「非再現性」で勝負しているということだ。 「それは僕が低めに集める自信があるからなんです。低めにさえ間違えずに投げておけば、予想外の変化をしても大けが(長打)はしない」 同じ球種を同じように投げ続ける再現性に意味はあるが、果たして自分にとってもそうなのか…。「ボールは遅い」という松葉がなぜ抑え、勝っているのか。それは己を知り、常識を疑い、そして変化を恐れないからだ。彼の姿には学ぶべきヒントがたくさん詰まっている。
中日スポーツ