「ウィッチウォッチ」第11話より

「週刊少年ジャンプ」にて連載中の篠原健太による漫画「ウィッチウォッチ」。同作のアニメが、現在連続2クールで放送中(毎週日曜夜17:00〜、MBS・TBS全国28局ネットにて／ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Lemino・TVerほかで配信)。魔女の若月ニコ(以下、ニコ)が幼馴染みで鬼の力を持つ乙木守仁(以下、モリヒト)と6年ぶりに再会、高校生活＆一つ屋根の下を過ごすところから始まる物語。一年以内にニコに災いが降りかかるという予言を防ぐため、彼女を守るモリヒトたちのバトルあり、ふたりのラブコメあり、個性的なキャラのギャグありで人気沸騰中。現在1クール目にして「神回続き」と話題に。今回は、本作ほか「ダンダダン」などのヒット作を手掛ける、アニメプロデューサー・青井宏之氏に「ウィッチウォッチ」の人気の理由を聞いた。 【写真】自身を「魔女」と名乗る、宮尾音夢 ■ジェットコースターみたいな作りを心がけている ――アニメ化までの経緯を教えてください。 もともと原作を読んでいて、その頃からアニメ化したい！と思っていました。その後、バイブリーアニメーションスタジオさん、原作サイドとお話を進める中で、篠原健太先生がこだわっていたのはお話が一つのギャグストーリーとして完結していることでした。もちろん繋げるべきエピソードはしっかりと繋げていますが、ギャグストーリー回は、サブタイトルを２、３に分けて、どのエピソード単体で見ても楽しめるようになっています。あと、篠原先生からキャラクターを魅力的に描いてほしいともおっしゃって頂き、そこは博史池畠監督とお話しして丁寧に進めています。 ――脚本やシリーズ構成についてはどんな点を大切に？ 先ほどお話しさせていただきましたが、各話のエピソードをきっちり立たせること、もう一つは、原作既読の方はご存知かと思うのですが、第1巻、2巻、3巻と順に話を追うのではなく、エピソードを組み替ている点ですね。物語の先を把握しているので、先の要素うまく拾い上げて、再構成している箇所もあります。例えば、4話でカンシがニコたちの仲間になるところなどの構成も話数の順番を組み替えています。また、「犬と雨滴が災いをもたらす」というニコの母による予言がありましたが、この「犬と雨滴」のシリーズを1クール目のクライマックスに持っていくように構成しました。あるキャラクターの関係値をニコたちと深めたかった狙いもあります。 ――また、オープニング、エンディングともに映像が素敵です。 OPに関しては、YOASOBIさんの楽曲が決まったあとに、「ONE PIECE」のOPも手掛けられた石谷恵さんにコンテ・演出して頂きました。石谷さんも原作をお好きとのことでその愛情が詰まったものになっていますよね。私も初見時から声が出ないほど見入ってしまいました。実際、いろんな魔法、話数のエピソードを綺麗に盛り込んで、最初はわからなかった部分も最終話まで観ると、様々な発見のあるOPです。今放送中のところで見れば、要素が盛りだくさんなので是非楽しんでください。 EDに関しても、Aoooさんの楽曲が素晴らしいです。私からは、原作コミックの装丁の色やデザインが綺麗なので、あのニュアンスを入れ込めないかというご相談を制作プロデューサーにオーダーしました。結果、OPはたくさんの枚数を使って動かしていますが、EDは装丁を思わせる美しい止め画で見せていくかたちで、気持ち良く観終わることのできるものになっています。対極でありながら、いつまでも「ウィッチウォッチ」の世界に浸っていたくなる素敵なOP＆EDになりました。 ■アニメーションを彩る、声優陣の魅力 ――まだ1クール目ですが、ギャグシーンを中心に実験精神たっぷりですよね。 第8話のカンシがヒーローショーや内職のバイトを始める回は監督も手応えを感じていました。私も「夫マン」のくだりは何回観ても笑ってしまいます(笑)。実際、放送時の反響もすごく良かったので嬉しかったです。一方11、12話は本格的に“災い”が襲ってくるので、そこにニコやモリヒトがどう立ち向かうのか、一つの見どころかなと。 ――その中でも青井Pが特に素晴らしいと感じている話数は？ 7話のカンニコチャンネルの回ですね。ニコとカンシが動画配信者になる話数ですが、素人感がリアルで、可愛いらしい(笑)。同じ回で出てくる、「スライムローションゲルアメーバー」というゲームも音がシュールで(笑)。あとはモリヒトがプロデューサー気質で、動画制作に凝り出したら極めちゃうキャラでもあるんですが、そこも面白かったです。 ――「スライム〜」は狂気を感じました(笑)。また、今回ニコ役の川口莉奈さん、モリヒト役の鈴木崚汰さんのどんなところに魅力を感じていますか。 監督もおっしゃってますが、ニコはやはり無垢で天真爛漫。彼女自体、どこにも何にも染まってない感じなんですよね。そのときに声が幼すぎりたり、可愛すぎてもちょっと違うなと思っていて。そこはオーディションから川口さんがイメージしていたニコと近くて、すごくハマっていました。 かたや、モリヒト役はツッコミのうまさが大事だと思っていて、鈴木さんはそれが際立っていました。10話が顕著ですが、ツッコミが天才的だと思いました。モリヒトの低音のイケメンボイスだけでなく、表現のバリエーションも豊富なんです。鈴木さん自身もモリヒトのこだわりすぎてしまう“厄介オタク”なところにシンパシーを感じるとおっしゃっていました。本当にモリヒトは鈴木さん以外ありえないですね。 ■パロディは「やれるだけぜんぶやる」 ――ところで本作には「ジャンプ」作品のみならず、様々なパロディが盛り込まれていて、その攻めの姿勢にも驚くばかりです。 やれるだけやろうという意気込みです(笑)。もちろん、放送できるものや、やっていいもの、避けたほうがいいもの、変更する場合はどうすれば作品が良くなるのかという議論は制作陣で厳密にやっています。原作でどこまでやっているのかというのも指標の一つです。視聴者の方に楽しんでもらえるのが一番なので、楽しんでいただけるよう最大限の努力をしています。例えば、漫画作品以外では3話の「すしざんまい」など名前を出させていただいているものもありますし、“パロディは避けよう！”みたいな感覚では原作と違うものになる危惧がありました。そこは、できる限り全力で楽しんで作るというのが、今の私たちの進め方です。 ――まさに映像から伝わります。今後の見どころをお聞かせいただけますでしょうか。 この1クール目で「犬と雨滴」の予言がクライマックスになって、ニコにどんな災厄が降りかかり、どんな展開になるのか、注目して頂きたいです。そして、どんどん個性的な仲間も登場して物語にブーストがかかるので、そこも楽しんで頂きたいですね。 ――最後に本作のアニメーション作りの中で、喜びを感じる瞬間を教えてください。 アニメーションに携わって長い年月が経っているのですが、正直こんなに笑えるアフレコ現場は経験がありませんでした。そのあと、ダビング作業の時も笑えて、最後の色がついた編集の時も、何回見ても笑える作品です。大変なことも多いですが、やはりそれは幸せだな、と。 また、やっぱり監督のイメージに沿ってそれを叶えるべく、キャスティングやスタッフィングなどが僕らの仕事ですが、色んなピースがどんどん化学反応を起こして、素敵なアニメーションが出来上がっていくのはやり甲斐です。2クール目でプロデューサーとして非常に“仕掛けた”話数もあります。素敵なサプライズになっているかと思います。楽しみにしてほしいですね！ ■取材・文＝河内文博