7月7日に投開票となる東京都知事選挙。史上最多となる56人が立候補し、さまざまな話題を呼んでいる。
今回は、政治ジャーナリストの青山和弘氏、経済評論家の上念司氏、前東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏をゲストに招き、それぞれの見解を語ってもらった。
※収録日:2024年6月24日(月)
:経済評論家。チャンネル登録者数60万人のYouTube「ニュースの虎側」も運営。
:政治ジャーナリスト。日本テレビで国会官邸キャップ、ワシントン支局長、解説委員を歴任した後、フリー。
56人が立候補、混沌とする都知事選
青山 楽待チャンネルをご覧の皆様こんにちは。政治ジャーナリストの青山和弘です。今回の楽待トークのテーマは、7月7日に投開票となる東京都知事選挙です。
早速ですけれども、今回の都知事選、史上最多の56人の立候補者ということなんですが、東京都事選挙経験者の舛添さんはどうご覧になってますか。
舛添 ちょっと異常です。しかも、絶対通るぞと思って出てない方もおられるので、ちょっとこれはいかがかなと思います。
青山 そうですね。上念さんはどのようにご覧になってますか。
上念 このカオスを招いた最大の責任は、私は舛添さんだと思うんですよ。舛添さんがいま知事やってればこんなことならなかった。なんであんなことになっちゃったんですか!
舛添 いやもう不徳の致すところです…。政治家的に答えるしかない。まあ経理のミスはあるんですけども、あそこまで炎上するともうちょっと消しようがなかったっていう感じですね。すみません。
上念 ちょっと(番組が)始まる前に舛添さんにお伺いしたんですけど、いま裏金問題で騒いでる金額あるじゃないですか、例えば4000万円とか5000万円とか。舛添さんは年に6万円ぐらいでやられちゃったんですよ。年に6万円で都知事辞めさせられて今この様ですよ。残念です本当に。
青山 舛添さんがちゃんとやっていればこうはならなかった、というのは前提としてね。ただこの56人のうち、「NHKから国民を守る党」の関係者が24人出ていて、実はこのスタジオの近くの掲示板も同じポスターがその24枠のところベタっと貼ってあって。
すごいことになってますが、これは林官房長官がやはり候補者が当然使用するものだという見解を出しましたけど、法律的にはこれ問題ないということになるんでしょうか。
舛添 公職選挙法上のきちんとした禁止条項がないんです。ですから、次の国会でみんなで議論して、例えば候補者以外のポスターをそこに貼ることはまかりならぬというようにすべきですよね。
そうすると、番号を決めるわけですから24人いて24枠同じ顔じゃダメなはずなんです。何番は誰さん、何番は誰さんっていくはずなんで。
それをやっぱりちょっと金儲けビジネスみたいにするのもいかがなものかなという風に思います。
青山 そうですよね、アテンションエコノミーって言われ方をしてますけれども、これをN国党は売ってお金を稼ぐというやり方をしてるんですよね。上念さんいかがですか。
上念 まずこの近所の掲示板見ましたけど、キックボクサーのぱんちゃん璃奈さんの写真があって、「あ、ぱんちゃんが載ってる」と思って。でも彼女が立候補したわけじゃないんですよね。
あとその「ポスター買いませんか」っていう営業は、立花さんとLINEつながってる人は多分全員来たと思うんですよ。僕のとこ来たんですよ「この枠どうですか、買いませんか」かと。さすがにこれはまずいなと。
何がまずいかと言うと、選挙なのに選挙以外の法律での介入を招いてますよね。例えばセクシーポスター貼っちゃって、警察から風営法でやられたりとか。でも選挙って本来、公職選挙法で、まあ候補者の自治・モラルで保ってるもので、それをああいう選挙ハックやることによって、逆に権力の介入を招くってあまり良くないんですよね。
このポスターは良くて、このポスターダメ、とか言うと、究極はこの候補者は出ていいけどこの候補者はダメみたいな、イランの選挙みたいになっちゃうんですよ。
青山 究極に言うとそうですね。
上念 選挙ハックするのもいいんですけど、立花さん選挙ハックお得意なんですけど、やりすぎると自分自身の首締めることになっちゃう。もう立法措置を検討することになったんで。これはちょっとまずかったかなと思いますね。
青山 実は前回の参議院選挙もあのガーシーさんが出たりとかして、いろんな政見放送があって、基本的に無編集なんで、どんな誹謗中傷でも基本的にオッケーなんですよね。まあこれはね、恐ろしい時代になったなと。やっぱり法律が時代に追いついてないなと、そう思いますね。
注目の候補者たち、どう見る?
青山 さて、そんな中でいま情勢がだんだん分かってきました。まだ投票まで2週間弱あるんですけれども、今週になって各紙の情勢調査も出てきましたが、私もですねまあの内々に取材していくと、大体小池さんがリード。これはもう全紙同じですね。
続いて蓮舫さん、石丸さんという順番なんですが、大体10%ずつぐらい離れてるっていうのが情勢のようです。この現状ですね、まず舛添さんはどのように分析されてますでしょうか。
舛添 まあ順当っていうか、大体私も予想した通りなんですが、ただそれは始まったばかりの調査であって、17日間ありますから、途中で誰かが失言するかもしれない。何か大きな事件が起こるかもしれない。
だからまだまだやっぱり選挙ってのは、結果が出るまでは分からないと思ってます。
青山 どうですか上念さん。
上念 私はちょっと申し訳ないんですけれども、お2人(舛添・青山)とも地上波慣れてるんでね、そうやって「まだわかんない」みたいなおっしゃいますけど、私はもう「北斗の拳」ですね。「もう選挙はもう終わってる」って感じです。まあこれ小池さんでしょ、っていうか。
上念 蓮舫さんが唯一、勝てそうな候補ではあったんですけど、蓮舫さんが下手打ちまくったんですよね。
青山 例えばどんな?
上念 例えばね、まあ政策論争っていう、ちょっと真面目なテーマで考えると、これね橋本徹さんがもう完璧に論評されてんですけど、蓮舫さんはチャレンジャーなわけですよ。こうすればもっと良かったよと、私にはこうすることができます、こういうアイデアがあります、小池さんどう思います? って感じで政策論争に最初に引きずり込まなきゃいけなかった。
それなのに「政策先出ししたらパクられる」とか訳のわからないこと言って、後出しした政策がスカスカだったじゃないですか。もうこの時点でちょっと政策論争では詰んじゃったんですよ。
次に選挙の運動論的に言うと、小池さんは川上作戦やりましたよね。多分舛添さんもやられたと思うんですけど、島しょ部行ったり、奥多摩行ったり。その次は青梅でやったんですよ。私実は青梅出身なんですけど、青梅でやったって聞いたら「あっ」てちょっとやっぱ胸熱くなっちゃうんですよ。うまいなこいつって思いましたね。
青山 なるほどね。あとやっぱりその小池さんが現職であると。やはり現職が強いっていうのは舛添さん、否定しがたいところありますよね?
舛添 そうですね、はい。現職ですからデータもいっぱい持ってますし、相手を言いくるめるといえば言葉は悪いんですけれど、反撃することもできる。そういう面は強いと思いますね。
それとね、蓮舫さんの演説なんか見たり聞いたりしてると、ちょっと声が悪い。声が悪いっていうか、ゆとりがないんです。始まったばっかりなのに、選挙の最終日みたいな、もうへとへとになった声を出してるんです。私に言わせれば。
非常に演説っていうの大事ですから、小池さんは落ち着いて、しらしらと喋ってるわけですから、向こうが横綱相撲になっちゃって、せめて小結びぐらいの力がないといけないんだけど。演説を見てると、もう前頭何枚目かになっちゃってる。
青山 なるほどね。まあ私実は蓮舫さんが出馬する時の裏側を取材したんですけれども、出馬表明する前から大体小池さんと10ポイント差だ、という風に立憲の調査であったんですね。
立候補表明する前から10ポイント差なら、立候補表明したらもう追いつけるんじゃないかって蓮舫さんサイドが思ったんですが、今でも10ポイント差ってことは結局伸びてないっていうことなんですよね。
石丸陣営にいる「選挙の神様」
青山 一方で、伸ばしてきてるという意味では石丸さんなんですよね。石丸さんは大体蓮舫さんの10ポイントぐらい下なんですが、元々はもっともっと知られていなかった。だけどいま伸ばして来ている。この状況は上念さん、どのように見ますか。
上念 石丸さんにはですね、藤川晋之助さんがついてるんですよ。維新の選挙参謀をやってた人。藤川さんと私は浅からぬ縁がございまして、あの人は元々小沢一郎さんの周りにいた人で、でもあの維新の府議会議員として、確か1人会派で頑張ってらっしゃった方です。
上念 で、演説の勉強会みたいなことをやってる人がいるんですよ。元々田中派の秘書会長だった森洋一郎さんという方なんですが、中央大学辞達学会というですね、僕がいた弁論部の大先輩でして。
その勉強会で藤川さんに出会ったんですよ。もう10何年か前。その頃、名古屋市長の河村たかしさんを結構やってて、河村たかし政治塾の講師やってくれって言われて、僕1回から6回やってるんですよ。
それぐらいのお付き合いでずっとやってて。で、東京維新のアドバイザーやってるって聞いて、参議院議員の音喜多駿さんなんか勝った選挙は藤川さんだったんですよね。
その人が東京維新とちょっと割れて、今は石丸さんについてると。「藤川さんどうやってやってんですか」とかメールするんですけど、返事ないので分かんないですけど、布石はずっと打ってました。なんかずっと来てたんで。
青山 その藤川さんがついてるってことは、やはり石丸さんにとってかなりプラスだと見ていい?
上念 だと思いますね。藤川さん非常に選挙上手なんで。だから「誰が後ろで回してんだ」みたいなこと言われてたんですけど、その藤川さんって方ですよ。僕はよく知ってる方なんで。もう10年以上の付き合いなんで。
青山 いや結構ね、石丸さんってそういう選挙アドバイザーとか選挙関係のプロの人が後ろについてたりするんですよね。
舛添 やっぱ若い人の支持が多いですね。そして地域によっては、蓮舫さんより上にも来てると。
青山 いや実はね自民党の調査でも、これサンプル数が少ないって説はあるんだけど、港区だとトップは石丸さんらしいです。小池さんよりも上なんです。
上念 YouTube見てる人が多いんじゃないですか。
青山 そうかもしれないし、やっぱり全然住民の層がまた違うのかもしれないですけどね。
舛添 それとね、あの田母神さんって航空幕僚長だった方出られてますね。10年前の私の選挙の時は私が200万票以上取ったんだけども、弁護士の宇都宮健児さんと細川護熙元総理がそれぞれ90万票ぐらいなんですよ。しかし田母神さんも60万票取ってるんです。
舛添 ということは、保守票の一部が彼に行けば、今回何万票なるか分かりませんけれども、その分小池さんの票が失われるという感じがする。
それから、石丸さんはじゃあ誰の票を食うかで、私はおそらく蓮舫さんの票を少し食うんじゃないかなと思っている。
だから、そういう要素もあるんで、まあ選挙は終わってるのかもしれないけれども、あえて「わからない」ということを申し上げた。
さまざまなバッググラウンドを持つ候補者
青山 そんな中で、いま田母神さんの名前も出ましたけれども、さらに今の世論情勢調査では数字は低いかもしれませんけども、それ以外何人か注目の候補もいらっしゃると思います。
「あのねのね」の清水国明さんとか、AIエンジニアの安野さんとかね。こうした、何か注目されている候補者もいますよね。選挙はもう終わってるんじゃないかという方に聞くのもあれなんですけども、上念さんいかがですか。
上念 それ以外の候補だと、ひまそらあかねさんが出てますね。1人で住民訴訟頑張ってやっててね、今回は都知事選に出るということで。彼はなんかすごい石丸さんに「あいつはダメだ」みたいな感じで言ってるんですよね。それで出られてるみたいですけど。
あとその安野さんの件はですね、私も他のところでも論評してるんですけど、安野さんがそんな天才エンジニアだったら、多分ね、AIでボロ儲けして、それこそ青梅市とかの市長になっちゃうんですよ。
もう議会とかも全部固めて、AI行政マジでやって大成功して「真似させてください」ってくれば、もうそんなん都知事どころか総理大臣になれると思います。
こんな若いうちに選挙なんかやっても時間の無駄じゃない? って思っちゃうんですよね。どうせ落ちるの分かってるしね。
政策として掲げるべき「災害対策」
青山 あとやっぱり田母神さんとか清水国明さんは、災害に強いってことを2人揃っておっしゃっていて、災害と言えば、舛添さんも都知事のとき結構力を入れてらっしゃったと思うんですけど、この「災害に強い」っていうアピールっていうのは一定の訴求力はあるとご覧になってますか。
舛添 あります。特にですね、蓮舫さんと小池さんがきちんと言ってないんですよ。
青山 そうですよね。なんか少子化とかばかりがちょっと目立ってる感じがします。
舛添 いや、防災の中でも地震しか言ってないんです。東京にとってもっと大事なのは大洪水なんです。荒川、江戸川が決壊したら、下町の250万人が水没しちゃうんです。これ何にも2人とも触れてない。
だから東京で防災やるなら250万人あなた見殺しすんのかと。千葉に逃がすしかないんですよ。そしたら千葉県との県境に橋がないんです。10キロ歩かないと。10キロ歩けますか? 神奈川の方は多摩川との県境は3キロごとにあるんです。
青山 ああ、そうなんですね。
舛添 だから私が都知事の時に、森田健作さんが向こうの知事だったから、それやるぞって言ってて辞めちゃったんで。その後聞いたら一切動いてない。
青山 つまり江戸川に、東京と千葉の間にもっと橋をかけなきゃいけない。
舛添 かけなきゃだめです。ところが問題はね、50/50で千葉と東京の半分ずつなんです。金ないんです千葉ね。そしたら、こっちから逃げるんだから6:4とか7:3でやるっていうのは政治決断すりゃいい話なんですよ。
上念 やっぱり舛添さんが知事やってた方が良かったかもしんないですね~!
:前東京都知事・国際政治学者。参議院議員、厚生労働大臣を歴任。