「つかさの冬」1.幸福の終わり
◇トップに戻る◇
第1回
・・や・・やだ・・淳平くん・・
スクリーン画面の光しか届かない映画館内で,真中の手がつかさの脚に触れる。
つかさは,言葉の代わりに体を緊張させた。
さっきまで,つかさの膝の上で手を握っていてくれていた真中の手は,プリーツスカートを掻き
分けて中に入ってこようとしていた。
もともと,二人で手を繋いでいる時間は大好きだった。
映画館の座席でハーフコートを自分の膝に置き,その上で真中の手を握る。
真中の手の平から温かな体温が伝わってくると,つかさは安らかな気分になっていく。
そうして映画を観ているときが,つかさには幸せなひとときだった。
今回,少し,濃厚なラブシーンがあるのは知っていた。
「ちょっと・・その・・エッチなシーンが・・・あるんだけどさ・・」
しどろもどろで誘ってくる真中を見ると,つかさは意地悪したくなってしまう。
「へーぇ・・・淳平くんは,そういうシーンが目的なわけ?」
「い,いや! 違うって!」
「じゃあ,いいじゃない。愛し合っている二人なんだったら,当然じゃない?」
「と,当然・・って・・・」
顔を赤くして俯く真中を,背中越しに振り返り,つかさは腰に手を当てて軽く睨んだ。
「こら,淳平くんっ。早くしないとおいていくぞっ」
真中には,もう少し自分に自信を持って引っ張っていってもらいたいと思う。
・・あたしは,もう好きになっちゃったんだから,淳平くんの世界にどんどん連れて行ってくれ
たらいいのにな・・
軽く溜め息をつきながら,つかさは真中の腕に自分の腕を絡めた。
冬になりかけた風が,一際強く首筋や頬を撫でていく。
つかさは真中の腕をぎゅっと握り締めた。
「に,西野・・・?」
どうしたんだと言わんばかりの真中の目は,やっぱりどこまでも自分のことを気遣っていた。
・・もぅ・・分かってくれればいいのに・・・
そう思いながら,つかさの胸の中には温かなものが広がってくる。
「ふふっ・・・こうしていると温かいね。淳平くん」
「お,おぅ・・・」
真中は目が離せなかった。
それほど,つかさの笑顔は幸せそうで,蕩けそうなほどに柔らかく,またこの上なく眩しかった。
寒空の中に立ちながら,ほんのりと頬を赤らめて腕を絡めているつかさの姿は,真中にとって
堪らなく魅力的だった。
初めて結ばれたあの夏の日から,もう数カ月が経とうとしている。
何度も抱き,愛し合ったにもかかわらず,未だに,つかさの姿を見るとドキドキと心臓が高鳴っ
てしまう。
まるで,初めて知り合い,一目惚れをしてしまった男の心境になってしまうのだ。
「はぁ・・・・」
可愛すぎて,息苦しい。
真中にしてみれば,自分のペースでつかさを引っ張っていけないのには,それなりの理由がある
のだった。
・・ここまで・・凄いシーンだったなんて・・・
つかさは,想像を遙かに超えたシーンに,息を呑んで画面を見つめていた。
・・愛し合っている二人なら・・確かに自然だと思ったけど・・・
しかし・・・そう思うのと,実際に映像で観るのとはまるで違っていた。
恋人のモノを,口に咥える女性の唇の生々しさ。
暗がりのベッドの上で,汗まみれで体をくねらせる姿が浮かび上がっている。
狂おしく,そして激しく体を求められる女性の喘ぎが館内に響く。
観ているこちらの方が,恥ずかしくなるような映像と音声。
あまりの恥ずかしさに視線を落とすも,切ない喘ぎ声はつかさの耳に入ってくる。
それは,見ている真中にとっても同じだったらしい。
ごくっ・・・
シーンと静まりかえった館内で,真中はつかさの手を握ったまま,緊張に身動きすることが出来
ないでいた。
真中の手の平が,熱くなり,じっとりと汗ばんできたのが分かる。
・・淳平くん・・・
真中の緊張を解きほぐそうと,つかさは軽く笑いかけた。
「ふふっ・・・思っていたより,ちょっと凄いね・・」
そのときのことだった。
淫蕩ともいえる恋人同士の行為は,真中にとっては劇薬だった。
・・西野も・・あんな顔を・・・あんな風にされると・・西野も・・・
スクリーンで,裸身を晒して男と絡み合っている美しい女が,いつしか西野と重なってくる。
美しくも,淫らに感じて喘ぐ女性。それはそのまま,西野の姿に変わった。
ベッドの上で,可愛い声を上げる西野の姿が,はっきりと脳裏に浮かんでくる。
しかし,テクニックにおいても精神的な余裕においても,まだまだ未熟な真中は,つかさをあの
ように反応させたことがない。
また,女の体をあのように求めたこともない。
・・西野もあんな声を・・・あんな風に悶えるのか・・西野に触れたい・・あんな風に感じさせて
みたい・・
恋人であるつかさを求める欲望は,当然のように膨れ上がってくる。
・・俺の彼女なんだ・・恋人なんだ・・・だから・・・
ブレーキは感じなかった。
罪悪感らしいものもなかった。
真中は,握っていたつかさの手を離し,可愛いチェックのプリーツスカートを捲り上げ,つかさ
の素肌に直接触れた。
そっと触れた手の平に,つかさの肌がぴくんと震えるのが分かった。
膝の上に置いたハーフコートに隠れるように,真中の手がスカートの中に入ってくる。
ミニのプリーツスカートは,いとも簡単に真中の手の侵入を許し,温かく這い回る感触を伝えて
きていた。
・・じゅ・・淳平くん!?・・
素肌に直接触れる真中の手は,とても熱かった。
そろりそろりと這い進む『男』の熱が,つかさの太腿を包み込んでくる。
・・や・・やだ・・淳平くん・・
つかさは,緊張に身を固くした。
真中の緊張と興奮が,つかさに息苦しいほど伝わってくる。
・・あぁ・・だめ・・こんなところで・・・
つかさは,何とか真中の気持ちを鎮めようと,スカートの上から真中の手を制して押しとどめよう
とした。
しかし,あの画面の恋人たちほどではないにしろ,自分たちも何度も求め合った2人である以上,
あからさまに拒絶するのも変だと思う。
そんな,強い気持ちで拒否しているわけではない以上,その抵抗は抵抗になっていなかった。
・・くく・・っ・・・じ,淳平くん・・・
真中の手が,スカート越しのつかさの手の隙間からすり抜けて,敏感な内腿に触れた。
緊張に震えるつかさもまた,次第に汗を滲ませ始めていた。
真中は,興奮に我を忘れていた。
手に吸い付くような,瑞々しくしっとりした素肌。
・・西野・・・西野の太腿・・・何て柔らかいんだ・・・
今まで何度も,その手で・・押しつけた唇で・・伸ばした舌で味わったにもかかわらず,触れる
度に新鮮な感動と興奮が駆け巡ってくる。
スカートの上から,軽く手を押さえようとする恥じらいの仕草までが,真中の興奮を高めていた。
・・西野・・ここも・・・敏感だったよな・・・
太腿の内側に手を滑り込ませ,指先を蠢かせると,きゅっと脚に力が入るのが分かる。
さわさわと太腿を撫でながら,奥の方に手を進めていくと,ビクビクと脚が震え出す。
真中の予想通りの反応だった。
・・西野・・奥の方に近くなるほど・・こんな風に触られると・・強く感じるんだよな・・・
今まで何度も抱いた西野の体は,真中の指に思い通りの反応を返してくる。
・・感じているんだ・・・西野・・こんなことされて・・・こんなに可愛い西野が・・・
「はぁ・・はぁ・・・」
真中は,自分の息が荒くなっていることに気づかない。
可愛すぎるほど可愛い西野に,抵抗できないような状況でイヤらしいことをしているという,この
上ない興奮に真中はすっかり囚われていた。
「くう・・・ぅぅっ・・」
真中の指が,下着越しに押しつけられたのを感じて,つかさは奥歯を噛み締めた。
ビクンと跳ね上がりそうになる体を,辛うじて抑える。
「だ・・だめ・・・淳平・・くん・・・お願い・・・やめて・・・」
つかさは,脚を閉じてスカートを押さえ,小さな声で訴える。
しかし,いくら脚を閉じても,脚の付け根の隙間には,数本の指が自由に股間を弄るだけの余裕
があった。
押しつけられた指は,つかさの下着越しに浅く沈み込み,周囲をぐにゅぐにゅとこね回してくる。
「はぁ・・っ・・ぁぁ・・っ・・」
つかさは顎を上げて,声を殺し,熱い吐息を漏らした。
・・西野・・やっぱり感じているんだ・・・ココをこんな風に触られて・・・
人に悟られないよう,声を殺して息を漏らすつかさの様子に,真中はたとえようもない昂ぶりを
感じていた。
ベッドの上で体に触れるときとは,まるで別の興奮が込み上げてくる。
・・こんな・・痴漢みたいなことをされて・・・西野は・・・
パンティ越しに,つかさの秘裂を自由に指先で探り,刺激する。
抱き合っているわけでもないのに,股間を弄ばれて感じてしまっているつかさの反応は,真中の
『男』をひどく昂ぶらせた。
・・西野・・・パンティの中は,もう・・・
指で,パンティの脇を横にずらし,露出させた部分に触れる。
くちゅっ・・・
熔けるほどの熱さで濡れたソコに,指先が触れたのをつかさは感じた。
高められてしまった性感は,秘裂を直接なぞられる刺激に,ビリビリとした痺れをつかさにもた
らした。
あまりの刺激。
「くうぅぅんっ! いやっ」
思わず,つかさは声を上げた。
・・しまった・・・調子に乗りすぎた・・・
真中は,はっと我に返った。
慌てて,スカートの中から手を抜き,引っ込める。
「ご・・ごめん・・西野・・・お,俺・・・」
つかさは羞恥に俯き,何も答えられないでいた。
その様子は,真中には,自分のすべてを拒絶しているようにしか見えない。
真中は,つかさのそんな様子に,一瞬にして打ちのめされた。
欲望だけで突っ走ってしまった後悔が,込み上げてくる。
・・お,俺は・・西野の気持ちも考えずに・・・
とても,いたたまれない。
何と言って,許してもらえばいいのかも思いつかなかった。
「俺,頭を冷やしてくる」
「え・・!?」
驚いたつかさが,何かを言う暇もない。
つかさを後に残し,駆けるように真中はドアを出て行った。
「本当に,もう・・・」
つかさは,独り,映画館の座席で大きく溜め息をついていた。
・・また,勝手に一人で暴走して・・淳平くんったら・・・悪い癖だよ・・・本当にイヤだったわけ
じゃないのに・・・
今までも何度も繰り返された,真中の思い込みと行動は,つかさの望む方向とはまったく逆なこと
の方が多い。
・・ホント,淳平くんたら,女心が分からないんだから・・・感じすぎて・・・ちょっと驚いただけ
だったのに・・・
もともと,真中の手を感じているのが好きだから,手を握っていたのだ。
映画館という中ではあっても,真中の指に触れられるのがイヤなわけがない。
真中に触れられていると・・・言葉はなくともそれだけで,たくさんの気持ちが伝わってくるよう
な気が,つかさにはする。
そんな手に触れられれば,女としての喜びで感じてしまうのは,ごく自然なことだった。
・・あたしだって,淳平くんに触られて・・感じていたんだから・・・イヤじゃないってことぐらい
分かってくれてもいいのに・・・
つかさは,先ほどの,自分の脚に触れてきた真中の指を思い出していた。
スカートの中に,おずおずと入ってきた手。
太腿を撫でながら奧へ奧へと入ってきた手は,触られているこちらの方が心配になるほど汗ばんで
いた。
・・熱かったな・・淳平くんの手・・・
真中は,今ごろ自分に対する申し訳なさでいっぱいになっていることだろう。
いったい何を言われるかと,ドキドキしながら戻って来るに違いない。
「ふふっ・・・淳平くん」
つかさは小さく笑った。
急に,悪戯心が首をもたげてくる。
・・戻ってきたら・・・今度はあたしの方から・・淳平くんの手をスカートの中に・・・はっ・・
あたしったら,何てことを考えてるのっ・・・
不意に心に浮かんだ,思わぬ自分の想像に,つかさは顔を真っ赤にした。
・・でも・・・
とつかさは考える。
・・本当にそんなことをしたら・・淳平くん・・どんな顔をするのかな・・・
驚きに口を開けたままの真中が,目に浮かぶようだった。
もともと真中は,女性からの『押し』には弱い。
さっきまでとは違って,真っ赤になってしどろもどろになってしまうことだろう。
「うふふっ・・淳平くん,簡単には許して上げないよ・・」
悪戯っぽく呟くつかさの胸には,次第に甘いものが広がっていく。
そのとき,つかさの耳に,背後から真中が戻ってきたような足音が聞こえる。
「あ,淳平くんっ,もう,遅いぞっ・・・?」
つかさは振り返り,少し怒ったように軽く睨んだ。
無論,それはポーズだった。
・・最初は,すこーしだけ,脅かしておいてあげるね・・・でも,その後では・・・仲よく楽しく
過ごそうね・・・
映画が終わるまでのあと1時間半,二人でたっぷりと甘い時間を過ごせるはずだった。
「え・・・?」
しかし,その人影は真中ではなかった。
「だ・・・誰?」
「こんにちは,つかさちゃん」
暗い館内で笑ったその顔には,見覚えがある。
「あ・・あなたは・・・?」
座席の反対側からも声がかけられる。
「ひどいなぁ,つかさちゃん。親衛隊の顔を忘れるなんてさぁ」
「えっ・・?」
振り返ると,空席だった左側の座席には男が座っていた。
「そうそう,俺たち親衛隊は,どこまでも『つかさちゃん命』だったのにさぁ」
「あんな,真中なんていうヤツとくっついてしまうなんてよ」
「俺たちに対する裏切りと一緒だぜ」
つかさを取り囲むように,座席の両側,前,後ろには親衛隊の男たちが次々と座ってくる。
「な,何よ,あんたたち・・・あたしは,親衛隊になってなんて頼んだ覚えなんてないんだから」
男たちに構わず立ち上がったつかさは,手首を掴んだ男たちにあっという間に引き戻された。
「きゃっ」
両腕を取られたつかさに,男の顔が間近に迫ってくる。
薄気味悪くニヤニヤと,つかさの細い顎に指をかけて囁く。
「少しは分かってんのかな,つかさちゃん? 今日は,責任取ってもらう日になるんだぜ」
周囲からたくさんの手が伸びてくる。
つかさの両腕,両脚は完全に絡め取られていた。
「ちょ,ちょっと!」
大声を出そうとしたつかさの抵抗を封じたのは,囁かれた信じられない一言だった。
「オレたち,知ってるんだぜ」
その一言は,つかさの心臓を鷲づかみにした。
冷たい手が,体の内側に忍び込んできたように,つかさは身震いをする。
思い出されるのは,心の奥底に封印していた,一年前のあの忌まわしい出来事。
・・何を言っているの・・まさか・・・親衛隊があのことを・・・そんなことって・・・
全身から血の気が引いてくる。
手足が震え,苦しさに喘ぐ。
「な,何を・・」
必死で取り繕おうとする,つかさの顔は引きつっていた。
「なぁ,オレたちにも,つかさちゃんの体を味わう権利があると思うんだけどな」
「つかさちゃんの処女を奪った奴らよりも,オレたちの方がずっと優しくシテやれるぜ」
決定的だった。
・・あぁ・・・そんな・・・あの事を・・こんな奴らに知られるなんて・・・
頭の中が,真っ白になっていく。
「さぁ,行こうぜ」
つかさは,男たちに促されるままに,ふらふらと立ち上がった。
真中が戻ってきたとき,つかさはもうそこにいなかった。
つかさが先ほどまで座っていた空席には,小さな紙が貼り付けてある。
何気なくそれを手に取った,真中の表情がサッと変わる。
親衛隊からの,行き先を示した紙だった。
「西野・・・しまった!」
手に持った紙を握り潰し,真中は映画館を飛び出した。
「アイツら! ちくしょうっ!」
外へ飛び出したものの,つかさの姿はもうどこにもなかった。
歯ぎしりする真中は,近くにあった公衆電話に飛びついた。
・・だ,誰か・・そうだ,外村ならどうするといいか分かるはず!・・・
ダイヤルする時間がもどかしい。
・・早く・・早く出てくれっ・・
ガチャ。
「はい,外村です」
「外村っ!?」
しかし,真中に言葉を続けることはできなかった。
「ぐっ・・・」
後頭部に激しい一撃を受けて,崩れ落ちる。
「ん? その声は真中なんだろ? 何か用?」
ガチャ。
気を失った真中に話しかける受話器を元に戻し,男がやれやれといった声を漏らした。
「間に合ったな。大したことは喋ってないみたいだぜ」
「しかし・・・コイツを担がなきゃならんとはなぁ・・疲れる仕事だぜ」
「コイツがいた方が,何かと便利らしいからな。まあ,その後はお楽しみがあるんだからよ。さっ
さと行こうぜ」
「そうだな。つかさちゃんと,いよいよ・・だな」
「へへへ,楽しみだな・・・」
男たちは,真中の両腕を引っ張り上げ,引き摺って歩き始めた。
続く
動画 アダルト動画 ライブチャット