「セフィリアの使命Ⅱ」(9.政治家たちの思惑)
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翌日。
「は…ぁ…」
唇から零れる吐息が,妙に艶めかしかった。
自室のセフィリアは,そんな自分を疎ましく思いながら,甘く痺れる裸身をゆっくりとベッドから起
こす。
未だ,昨夜の余韻覚めやらず,気怠さの残る体。
体中が,ベタベタとしていた。
素肌に指をやってみると,首や太腿……特に乳首周辺や,秘部,そして尻の狭間といった処がひどく
ベタついている。
……これは…あの男たちに,舐められた……跡…ですね……
そう思うと,なぜか胸がゾクッとした。
卑猥な言葉で嬲りながら,乳房を揉み,この乳首にむしゃぶりついてきた男たち…
快感だった…
全身に群がられ,何度もイクまで,執拗に舐め回されたときのことが思い出される。
ゴムを付けるという市長の命令は守ったらしく,精液の残滓は体にそれほど感じないが…
気持ち悪い…
胸に,言葉を浮かべかけたものの……本当にそう思うことはできなかった。
むしろ,蘇ってくるのは,体中を何人もの男たちに舐められ続けることへの妖しい心地よさと陶酔感。
思い出すだけで,腰の奥にゾクゾクと疼くような熱を覚えてしまう。
乳首が,再び甘い疼きを訴えてきてしまう。
……確かに……この体は…あの無数の舌が這う感触が…………嫌では…ありませんでした……
それは,女の官能を刺激するような,恍惚感にも似た興奮だった。
セフィリアは,唇を噛んで俯く。
悔しかった。
自分の体の女の箇所が,男たちの欲望を煽ったということ…
指に触れる,乳首や,秘部,アナルといった処に絡みついているこのベタつきが,貪るように激しく
舐められた跡なのだということ…
それが,あのときは…少しも嫌ではなかったのだ。
むしろ……凌辱されていながら,男たちの興奮を感じると,脳内にはカッと灼けるような熱が奔り,
どうしようもない強い快感が込み上げてしまった。
……出来事から言えば……昨日のことは…女の身としては屈辱だったはず…なのです……なのですが…
邪悪さと軽薄さを人の形にした男たちによる,あの騙し討ち。
あれは,ヴァルザーリの指示があったから従ったというだけのことであり,男たちを喜ばせる必要も,
自分が悦びを感じる必要もなかったはずだった。
それなのに,結果はそうはならなかった。
自分の意思で,そうしなかった。
……あのような低劣な男たちに…何度も何度も犯されたというのに……私は……もっと犯されたいと…
このまま求められ,もっと感じ続けたい……ずっとイカされ続けたいと…願ってしまいました……
そして…
数え切れないほど,膣内もアナルにも激しくえぐり刻み込まれた男根…
時の番人である強靱な肉体は,その男たちの欲望をすべて受けきるまで保ってしまった。
通常の女ならば,長時間に渡ってあの人数を相手にするなど到底無理だっただろう。
しかし自分の体は,脳内が灼き切れるような,あの大きな絶頂以外に気を失うこともできず,疲れ果
ててしまうこともなく,延々と続けられる凌辱をただひたすら悦楽として,最後まで味わわされ刻み込
まれてしまった。
背を弓なりに反らし,駄目,駄目と長い髪を振り乱しながら…
……屈辱なはずなのに……この体は快感として……あんなにも悦び…求めてしまった……
それは,任務のために『屈辱を悦びに感じる』ようにと,自分が望んだことではある。
ただ,懸念されることが,セフィリアの想定外に過ぎた。
男のモノを挿入される女の肉体そのものが,以前とは段違いと言えるほど,実際に強い快感を感じる
ようになっている事実。
女としての体はますます敏感になり,男根で腰を突き上げられてしまうと,そのあまりの快感に意識
はあっけなく跳んでしまう。
イヤらしい言葉を耳の中に囁かれながら,太いモノで膣内を深々と貫かれると,興奮は極限に達し,
あっという間に大きな絶頂に呑み込まれてしまう。
昨夜の,あの軽薄な態度のならず者たちの,休む暇もない淫蕩な責めにもまるで為す術がなかった。
『ソフィ先生のココ,俺のコイツにヌルヌルに絡みついてきて,メチャメチャ気持ちいいですよ。そら,
先生の気持ちいいオ○ンコ,もっともっと味わわせてもらいますよ』
『そんなにエロい声上げて,俺らを誘惑して,この突き上げがそんなにイイんですか? 駄目駄目なん
て言ってるけど,本当はもっと続けて欲しいんでしょう? じゃあここからは,奥までグリグリして,
イヤと言うほどイカせ続けて上げますから,覚悟してもらいましょうか』
そんな言葉と,文字通りの怒濤の男根の責めを受け,冷静になってみれば羞恥を感じるほどの乱れ方
をしてしまった。
噴き出る汗。
群がる舌と指の愛撫に,そして男根の責めに,狂おしく快楽を訴え悶え続けた体。
悦楽に囚われた嬌声。
男たちに求められるがまま達した,数え切れないほどの絶頂。
あの光景を思い出せば,あれは『凌辱』だったなど,とても口にできるものではない。
……私は………悦んでいました……この時間が,ずっと続いてもいいと……
市長の指示だからと,仕方なく犯されるという体裁を取れたのは最初だけだった。
これが男たちの言う,体を開発されているということなのだろうか。
……私は……男の……舌や指の責めにも…あの硬いモノが入ってくるときの感覚にも……もう耐えきれ
ない……
感じるのは,女としての体への絶望だった。
コントロールすることもできない。
セックスを受け容れる女の体がどうなるのか……甘く見すぎていたことを,セフィリアは痛感する。
想定外だった敵,侮ることができない敵とは,意外にも自分だった。
……この状態で,明日………議員たちの護衛をすることになるとは……
セフィリアは,議員たちが自分に特に関心を抱くことなく,任務が終わることを期待する。
しかし,その期待は,恐らく破られるのだろう。
ヴァルザーリが欲に満ちた取引のために,自分を利用するだろうことは避けようがない。
……私は……やはり,この体を報酬として…好きなようにされるのでしょうか……
知らず知らずのうちに,イヤらしく体を弄ばれ犯される自分の姿態を頭に浮かべてしまう。
昨日の男たちのように,激しく犯されるのだろうか…
それとも,根元まで挿れられたまま,焦らされ続けるのだろうか…
そうなったとき,自分はきっともう我慢できないだろう。
執拗な前戯で,体中が欲情させられた上で男根を挿入されたら,どこまで堕ち求めてしまうことか…
女としての自分の体は,もうそれほどまでに浅ましい。
こんな自分を,ヴァルザーリは求めているというのだろうか。
「はぁ…ぁっ…」
熱い吐息が漏れた。
駄目だと思いつつも,敏感さを取り戻し始めた体は,もう次を求めようとしている。
……毎日毎日,延々と好きなようにされているというのに……私の体は……
そう自戒しようとしても駄目だった。
火照る体の奥で,秘肉の奥が熱くなってくる。
ずくずくと疼く。
男根の味を教えられてきた体の反応は,理性で止めることなどできそうもなかった。
衝撃だった。
「初めまして,ソフィ殿。よろしくお願いしますぞ」
にこやかに近付いてきた2名の議員に,セフィリアは心臓が大きな鼓動を打つのを覚える。
議員は議員でも,ヴァルザーリに招待されてきたのは,あの高官たちだった。
ダリル事件で,恐らくは犯人たちと手を組み,人質の立場を装いながら自分の体を弄んだ男たち。
ゾルダートとガルガロフ。
よく覚えている。
……忘れるわけがありません……やはり…そうでしたか……
あの後の顛末の繋がりを見れば,この2人は証拠こそないものの限りなく黒に近い。
前回の事件といい,今回も『たまたま』であるとはとても考えにくい。
今回の邪悪な取引の中にも絡んでいることは,ほぼ確実であろうことが感じられた。
……大きな権力を持ったこの2人が,諸悪の根源とすれば……
真の敵は,マフィアよりもこちらの方なのかもしれない…
今この場で,斬って捨ててしまいたいほどの感情が巻き起こるのを,セフィリアは静かに抑えた。
「ようこそ,おいでくださいました。護衛を仰せつかりました,ソフィと申します」
……斬るだけなら,いつでもできるのです……
セフィリアは,平静を装い凜と一礼をする。
議員たちは好色な笑みを浮かべ,無遠慮な視線を……一度は存分に味わった美しい貌に,胸の膨らみ
に,形のよい尻に向けて舐めるように這わせた。
「では,案内致します。どうぞ到着まで,おくつろぎください」
4台の車に他の護衛たちが分乗し,その中心の車にセフィリアと議員2名が乗り込む。
議員の護衛とは言っても,ただの形式的なことであり,特に危険があるわけではない。
このまま,宿泊地のホテルに送り,何事もなく任務も終了するかと思われた。
いや,セフィリアはそう期待していた。
だが……やはりと言うべきか,そうはならなかった。
「しかし,ヴァルザーリ市長も気が利いている。こんなサービスをやってくれるとは」
「のう,ソフィ殿。いや……セフィリア殿?」
「あの…いえ…確かに,私はセフィリア殿に似ていることをウリにしてはいますが……」
「分かっていますよ。えぇ,えぇ,貴女はソフィであり,これはそういうプレイです。そういうことで,
話を合わせてくださればよいのです。よろしいでしょう? では,と……セフィリア殿を,私たちが忘
れるわけがないでしょう。ずっと,心待ちにしていたのですから」
「再び,相見えて……貴女の立場を利用して,こうして楽しませてもらうことをね…ふふふっ」
車が動き出すやいなや,後部座席の左右から伸びてきた手が,セフィリアの太腿に置かれる。
……やはり……こうするために…私を中央座席にしたのですね……
残念ながら,予想はしていた。
護衛は中央に座るべきではなく,自分は助手席に座るというセフィリアの主張を覆し,強引に2人で
挟む形にしたのは,やはりこのような思惑だったのだろう。
「あの…申し訳ありませんが,何かあったときに私の対応が遅れます。もう少し,体を離していただき
ませんと…」
「まあ,まあ,よいではありませんか。これくらいのことで,セフィリア殿の腕が発揮されないと言う
ことはないでしょう? それとも……むさ苦しい男の側は嫌だと?」
「いえ,そう言うわけではなく……私は,お二人の安全を担う護衛ですので…」
「なら,問題はありますまい。この車は,しっかり防弾仕様にもなっている。他の車にも,優秀な護衛
が乗り込んでいるのでしょう? であれば,途中で何かあっても,この車がドアを開けることはない。
対処は他の2~3台が行い,この車はそのまま現地を離れればよい。そういう手筈だと思いますが?」
「そうですが……」
その部分だけを言えば,正論だった。
ここまで外堀を埋められては,拒否し続けることはできない。
言葉を続けられないセフィリアを合意と捉えたのか,議員の手が太腿を這い進んでくる。
その淫らな手つき……セフィリアの敏感な性感が,ゾクッと刺激された。
「それよりも……」
耳元で低く囁くゾルダートの声が,不気味な色を匂わせる。
「市長から,セフィリア殿を明日まで,我々の部屋に配置するという申し出があるのですよ」
「護衛のため,それこそ食事も風呂も離れないようにと,そういうことらしくてですな。ここはヴァル
ザーリ市長のご厚意に甘えて,いっそう我々の仲を深めようではありませんか?」
左右からの手が,スーツのスカートに覆われていた両脚をグッと開いた。
タイトなスカートが太腿まで捲り上がり,露わになったショーツの中心に突き立った指が,ゆっくり
と上下に這う。
「つ……ぅっ…く…」
ぴくんと,セフィリアの背が軽く反った。
ただ表面をなぞるような,いたぶるような指の動き。
しかし,それだけで,腰にはヒクヒクと小さな痙攣の細波が立つ。
「お,お待ち…ください…っ……」
思わず,その手を掴んで抑えようとするも,男たちの太い腕を引き離すまでには至らない。
セフィリアに手を掴まれたまま,意に介することもなく悠々と伸びてくる太い指は,薄布越しの柔ら
かな秘肉の形をなぞり,何度も上下にと往復させてくる。
「ん,ぅぅ……っ」
触れられる秘肉に奔る感触に,セフィリアは喉を上げて耐えた。
「いけません……このようなことを…されるとっ……護衛が…ん,んんぅ……ぁ…」
股間に蛇のように群がる左右からの2本の手を抑え,セフィリアは冷静に制止しようと懸命に努めた。
だが……
体の芯部にまで届く,ぞくぞくと甘く痺れる快感。
男たちの指は,秘肉の柔らかさを愛でるように探ってくる。
……く…くっ……そんな…触り方…っ……
開発され,自分では解消できない欲情をこもらせた体にとって,その淫戯は劇物も同然に,かえって
激しい炎を上げさせるものだった。
堪えようとすれば,堪えようとするほど……刺激を受ける秘肉を,自ら強く押しつけたいとする欲求
が,どうしようもなく込み上げる。
抑えようとする手が震え,力が抜け落ちていく。
「綺麗な貌をして,イヤらしくココを触られるのが好きなのですかな? あのときと同じですな。いや,
更に感じやすくなりましたか? セフィリア殿のココ,だんだんと熱くなって,ヌルヌルとしたのが指
に伝わってきましたぞ? 熱いモノが,奥から溢れているのでしょう?」
「そんなに期待されては,セフィリア殿のイイ処を隅々まで探って,存分に期待に応えて差し上げたく
なりますな? ふふふ,どうです? こんな風に触られると,女としての体が堪らなくなるのでしょう?
ホテルのベッドが待ち遠しくなってきましたかな,セフィリア殿?」
真綿で首を絞めるように,じわじわと追い詰めてくるような男たちの淫戯。
淫らな言葉を耳元に囁かれ,セフィリアは上体をぶるぶると震わせた。
「そんなことは…っ……け,結構…ですっ……んうぅ…あぁっ…」
ヒルのように貼り付いた指が,グネグネとした動きで,強く弱くゆっくりとソコを捏ね回す。
セフィリアは頭を左右に振り,上擦る声で懸命に拒絶した。
この男たちは,あのときの凌辱劇を,楽しみながら再現するつもりなのだ。
そんなことをされれば,昨夜の自分をまた繰り返してしまうことになる。
頭の中で,2人がかりで体を嬲られている自分の姿が浮かんだ。
ダリル事件での,あのときのように。
……たったこれだけで…もう……私はこんなに感じて……欲しくて堪らない……
できればこの場から逃げ,避けたい。
しかし,ヴァルザーリがそれを指示するのならば,従うしかないのだろう。
逡巡する間にも責める手は増え,太腿を撫で上げてくる手や,胸元にも伸びてくる手に為す術もなく,
更に強い疼きを快感とともに送り込まれてくる。
「こうしていると,あのときのことを思い出しますな,セフィリア殿?」
「どういう……こと…でしょうか……っん…あぁ…」
ゾルダートはニヤニヤとした邪悪な笑みを浮かべた。
「いいですなあ,その貌。あのときの凜としたセフィリア殿を,またこうして見ることができようとは。
体中を舐め回されるときの貴女の反応,本当ならば嫌で仕方がないはずの私のモノを挿れられて,淫ら
に喘ぐ貴女の美しい姿態がどうにも忘れられませんでな。羞恥と戸惑い,そして込み上げる快楽に自分
がどうしてよいのか分からない……くくくっ,ヴァルザーリ市長の思惑はどうでもよかったのですが,
そんなセフィリア殿をまた味わいたくて,わざわざこうして名乗りまで上げて来たのですよ。今宵は,
あの夜のことを思い出しながら,じっくりと時間をかけて,熱い再会の喜びといきたいものですな?」
セフィリアの素肌に,悪寒が込み上げる。
あのとき,人質を救うためと言われ,自分から絶頂を求めなければならなかった屈辱。
体中を這い回る指と舌に感じさせられ,火照った秘部を太い男根で犯され,意にそわない絶頂に追い
上げられた悔しさ……蘇ってくる。
この議員たちがここに来たのは,ヴァルザーリとの癒着ゆえのことではなく,自分の体が目的だった
というのだろうか。
それは,本当なのだろうか。
議員ともあろう権力者が,たかだか自分という女一人を抱くために,ここまで執着を見せるものなの
だろうか。
セフィリアは,釈然としない。
「そのようなことを…言われて,悦びを感じる女性は皆無だと思いますが……それよりも,セフィリア
としての私に…貴方方は…何か目的があるのですか…」
セフィリアの言葉に,ゾルダートは楽しそうに笑う。
まるで,期待通りだと言わんばかりに。
「ふふふっ,このプレイに乗っていただけるようで,嬉しいですな。いいですよ。その調子でお願いし
ます。では,あらためて……セフィリア殿,貴女に会いに来たのは本当なのですよ。貴女はどうも,私
たちの目的が他に何かあるのではないかと考えておられるようですが,いえいえ,とんでもありません。
私たちの目的は,貴女自身にしかないのですよ。セフィリア殿に魅了されたという,男ならば誰でも分
かる話なのですが……よいでしょう,単刀直入に申せば,私たちの力で貴女をこれからも支援しようと
いう話なのです。まあ,そうしたくなった……或いは,そうしてでも貴女が欲しくなったということな
のですがね」
「貴方たちのような……権力を笠に着た方とは…交渉も取引もする余地はありません…」
「ふむ。ますます,いい……流石はセフィリア殿ですな。しかし,何か誤解があるようですが,誓って
私たちは,犯罪などに手を染めたことはないのですよ。一度たりともね」
正面から,目を逸らさずに見つめ返してくるゾルダート。
とても,嘘を言っている目ではない。
嘘を嘘とも思わないような,下衆なのか。
或いは,法のギリギリを渡っていると言うことなのか。
しかし……とセフィリアは考える。
今まで,常々考えてきたこと。
あのダリル事件で,この2名の政治家たちはどう見てもクロだった。
証拠はないにしても,限りなく黒に近いグレー……そうセフィリアは考えていた。
だが,クロノスは未だにこの2名の政治家について,排除も警戒の指示も出していない。
……この2名の議員……
いったい,何があるというのだろうか。
「ふふふ……ようやく,話を聞いてもらえそうですな」
ボタンを外したブラウスの内側で乳房を揉み,剥き出しのショーツ越しに火照った秘裂をゆっくりと
なぞりながら,議員たちは満足そうな笑みを浮かべた。
「1つお聞きますが,もし行きたい市にすぐに行けて,会いたい人物に身の危険もなくすぐに会えると
いうのであれば,それは貴女にとっては魅力のある話になりますかな? 私が支援できるというのは,
そういう話です」
ゾルダートの話は,かなりオブラートに包んでいるが,大きなことだった。
「そんなことですか……それならば,クロノスを通せば…」
嘘である。
クロノスを通せば,どこにでも行けるというのは,まずあり得ない。
クロノスに対して,懐疑的な姿勢を見せている市は,許可などしてはくれないだろう。
「果たして,そのように簡単なことですかな? セフィリア殿は,どうやってここに来たのですか?」
「それは……キルムベートへの観光で」
「そのようにしなければ,キルムベートにすら入れなかったのでしょう? クロノスから解任されたと
いう体裁を整えてね。つまり,クロノスという肩書きがない方が,セフィリア殿は動きやすい。しかも,
セフィリア殿が行きたいところは,どうしてもその様なところが多くなる。例えば,いくつかの疑惑を
抱えた市,場合によっては犯罪者集団の場とか……違いますかな?」
その通りだった。
どうにか潜入して情報や証拠を集める必要がある市とは,クロノスの力を持った者が何の障害もなく
入れるところではない。
ましてや,犯罪者集団の場となれば,通常の方法で入れるはずもない。
それこそ,身分を偽らなければ…
「セフィリア殿お一人の力で,ここまで辿り着くのは大変だったことでしょう。クロノスという力は,
正面からぶつかるにはよいが,今の貴女に必要な力は,そういう類いのものではない。静かに潜入して,
臨機応変に動き情報を得る……そういう力でしょう」
「そうだとして…それが貴方ならば可能だということにはならないでしょう……セフィリアという正体
を知って…それでも受け入れ,対象となる人物が会おうとするなど……あり得ません」
「それが,私ならば可能なのです……ふふふっ,それが私の存在価値,利用価値なのですよ。政治家と
呼ばれる方々にとってね」
それは,意外と言えば,意外過ぎる話だった。
そのような都合のよい話など,普通ならばあり得ない。
しかし,それでも尚,政治の力で『ある』と言いきるゾルダートの話……セフィリアは,身構えなが
らも魅力を感じずにはいられない。
本当に,あるとするならば…
「どういうこと……ですか」
セフィリアは,懐疑的な姿勢を崩さずに,ゾルダートの続きを待つ。
果たしてゾルダートは,我が意を得たりとばかりに,邪悪な笑みでセフィリアをじっと見つめた。
「世の中に,正義と悪という大きな力が2つあるとして,果たしてその2つのくくりしかないものなの
でしょうか?」
「それは…つまり……貴方方は…どちらにも属していないと……そう言いたいのですか…」
「正解です」
自信たっぷりの言い方だった。
「そのような…コウモリのような立場では…逆に…どちらからも信頼をされることはないはず」
セフィリアの,ごく当然の疑問にも,ゾルダートは悠然とした態度を崩さない。
「ふむ。それが当然の,一般的な考え方ですな。しかし,実際は違うものなのですよ。正義と悪,それ
ぞれに分かれていながら,徹底的にぶつかり合うことは双方ともに望んでいないものです。ああ,これ
は貴女たち,力をもって戦う側の論理ではありません。あくまで政治的な話です。相手の考え方を知り
たい,摩擦が起きないようにできればよい,ギリギリの落とし処を探りたい……そう言った部分はある
のですよ。相手と,表沙汰にすることなく極秘裏に取引をしたいというときもあります。そして,そこ
で必要になってくるのは,どちらにも属していない者のパイプなのです」
「しかし,それだけでは…」
「力がなければ,無論そうです。私は,双方の話を繋げる仲介役をしているだけなのですがね,仲介役
として重要なのは何なのか,お分かりでしょう?」
「信用……ですか」
「その通りです。私は,今までどちらかだけに加担したことは一度としてありません。どんなに正しい
と言われることでも,どんなに悪だと言われることでもね。双方に誠実であれと…申しますでしょう?
ふふふっ…まあ,こうして甘い汁を吸わせていただく程度には,便宜を図って差し上げるのが,私ども
の仕事というわけです。最初の頃は,私もクロノスや時の番人に対しては嫌っていたこともありました
がね,今ではそういうこともないのですよ。むしろ,同志といえるかもしれませんな。さてこの姿勢は,
セフィリア殿の価値観で言えば,限りなくクロに近いグレーですかな? しかしながら,私自身が犯罪
行為をしなければ,また加担しなければ罰することもできません。私は橋渡しをするだけですからな。
そして,裏切ることをしなければ報復されることもありません。秘密は守りますからな。むしろ,私の
便宜を得ようとして,逆に護ってくれたり,こうして甘い汁を送ってくれたりすることもありますな。
今回のようにね。これが,私の政治力です」
「……」
セフィリアは,驚きを禁じ得ない。
正直,侮っていた。
自分の欲望だけの下劣な政治家……そう思っていた。
……これは……恐ろしい力…ですね……
マフィアという大きな勢力を倒すために,自分はクロノスに所属しているが,大きな力とは決してこ
の2つだけのものではなかったのかもしれない。
クロノスが,この政治家たちに対して,排除も警戒の指示も出さなかったのは,こういう繋がりと事
情が存在していた故のことだろう。
この政治家たちは,口ぶりから言って間違いなくクロノスとも繋がっている…
双方の陣営に幾つもの有力なパイプを持ち,便宜を図ることを双方から期待される存在…
表舞台に出てこないのも,当然と言える。
これが,恐れるべきものではないというのなら,いったい何だというのだろう。
……このような力もあるということ……今まで私は…何を見ていたのでしょうか……
クロノスを,絶対的な存在と考えてきた自分。
しかし,世の中は,逆にその『正義』が障害となることもある。
それは,セフィリアが今までの経験の中で痛感していたことでもあった。
「多少は,お分かりいただけましたかな?」
「…っ…く…」
耳朶に舌を這わせながら,ゆっくりと,諭すような口調でゾルダートが続ける。
「今後,セフィリア殿が行きたい市,会いたい人物がいれば,クロノスを経由するよりも遙かに容易に,
私が叶えて差し上げることができるのですよ。場合によっては,マフィアや犯罪者に繋がりのあるとこ
ろでも,幾つかは可能……そういう話です。どうですかな?」
とても甘い,危険な香りのする話だった。
しかし,一笑に付して切り捨ててしまうことなど,とてもできない。
「見返りは……条件は…何ですか」
セフィリアは,覚悟を決める目で静かに問う。
もはや,ソフィの仮面を捨てて,セフィリアとしての立場を認めることも厭わない。
万難を排してでも受ける価値はある,そう思える話だった。
セフィリアは,決してこの話を蹴ることができない…
ゾルダートの話は,それを見越していたような要領のよさで進む。
「条件としては,全部で3つあります。1つには,紹介をする私の面子を潰さない……つまり,そこに
いる間は,戦闘をするなど騒動を起こさないことです。その限りであれば,客人とも交渉人ともご希望
の立場で扱われることが可能です。安全は保証しますよ。私の面子を潰さないというのは相手側も同じ
で,貴女を危険に晒さず無事に帰すという約束がありますからな」
騙し討ちは許されない……当然と言えば当然なのだが,実際はそれが一番難しい。
普通は,安全が保証されない。
相手の出方や思惑が信頼できないからこそ,交渉にならないのだ。
どちらの側も,『相手は約束など守るわけがない』と思っている。
そうやって交渉にならないからこそ,潜入して探るしかないのである。
信頼とは,心の部分という目に見えないものだからこそ,最も難しい。
……そうであるのに,交渉の場に『信頼』と『安全』を成立させているとは……ゾルダートの力とは,
それほどのものということなのでしょうか……
また暗に,セフィリアが表立った敵対行動をとるのでなければ問題なく,それとなく情報収集をする
程度は,織り込まれているようにも思われる。
「それで,後日…何か不都合が起きたとして…貴方の面子は潰れないのですか?」
直接の言葉ではなく,含んだ言い方……それでも,十分に伝わる。
「戻られた後ですか? あぁ,それくらいは,相手方も了承済みです」
あっさりとした言い方に,セフィリアは少なからず驚いた。
後日,持ち帰った情報で,踏み込んでもかまわないということか。
客人という立場で,内部を探られ,情報を持ち帰られる可能性があるにも拘わらず…
相手にとって,それはリスクが大きすぎるのではないか。
それでは,敵対することが前提でもかまわないということになる。
そこまで許されるのならば,よほどの旨味が必要なのではないか。
セフィリアの怪訝な顔に,ゾルダートは何でもないことのように,ごく当然といった顔で答えた。
「だからこそ,セフィリア殿,これは貴女だけの話。貴女ならではの,話なのですよ」
「………」
セフィリアは一瞬,意味が分からない表情を見せる。
ゾルダートは,顔を左右に振って小さく笑った。
「いやはや……セフィリア殿らしいと言えばその通りですが,セフィリア殿は,どうやらご自分のこと
について,あまり理解されていないようです。よいですかな? これは,キルムベートの市長や,ヴァ
ルザーリ市長がセフィリア殿を懐に入れた理由と同じです。美貌の時の番人セフィリアと言えば,チャ
ンスさえあれば何としてもその体を存分に味わいたい,数日もかけて自分のモノにしたいと,邪な欲望
を思わぬ男などいないのですよ。彼等が,セフィリア殿を囚われの身にしたのは,『自由にできる女性
を求めて』などという,そんな程度ではありません。セフィリアという女を,自分のモノにしたいとい
う,男の強い欲望あってのことなのです。貴女は,ご自分を他の一般女性と同列にしか考えていないよ
うですが,ええ,とんでもないことです。貴女の美貌が,どれだけ男どもの羨望の眼差しと情欲を集め
ているのか,どんな欲望の目で見られているのか……ふふふっ,このこと,セフィリア殿自身はあまり
自覚がなかったようですが,もう少しご自分の女としての価値を理解した方がよいようですな」
「金と権力を持った者の欲望は,だいたいにおいて肥大していくものでしてな。美しい貴女を我がモノ
にすることは,男どもにとって最大の旨味なのですよ」
「私に,女としての価値ですか…」
セフィリアは呟く。
ゾルダートの言う通り,女性に向ける男の目や情欲というものは理解していたが,自分に向けられる
目というのも,つまりは世間一般的なものと大差ないものと感じていた。
キルムベートで囚われになったことも,ヴァルザーリの裏切りも,そもそも金がらみの犯罪的な原因
が根底にあり,クロノスとしての自分に自由に動かれては邪魔であるからなのだと考えていた。
自分が凌辱の日々を送ったのも,男たちの溜まった性欲の発散にちょうどよかった,或いは慰みもの
にして恥辱・屈辱を与えるという意味以上のものはないと考えていた。
……それが根本的に違っていたと……彼等が,私の体を好きなように…自分のモノにしたいと強い欲望
を持っていたからなのだと……
考えたことなどなかった。
愕然とする思いが,セフィリアを包む。
戦闘人たる自分は,了見の狭さで,何かいろいろと読み違いをしていたのだろうか…
ゾルダートは,話を続ける。
「ええ。ですから,相手方にとっては,多少のリスクがあってもそれを含めて受け入れられる…いや,
むしろ歓迎されて熱烈なオファーさえくるでしょうな。今回の件は,剣士としての派遣のようですが,
そのような体面を整えて私から紹介をすることができます。もうお分かりの通り,実際は派遣されてい
る間,体の危険がない限り相手方の求めに応じること……これが,2つ目の条件です。いかがですか?
セフィリア殿に受け容れられますかな?」
「………なるほど。理解しました。そんなことでよいのならば,問題などありません」
表情を崩さず,セフィリアは内心の葛藤を抑えて何でもないことのように答えた。
しかし,そんな冷たく見えるセフィリアの反応さえ,ゾルダートは嬉しそうに微笑む。
「流石は,時の番人NO1,セフィリア殿。最後は,私たちの見返りですよ。くくくっ,別に私たちは,
志の高い清廉潔白な政治家ではないものでね。むしろ,俗な欲望にまみれた分かりやすい男なのですよ…
…分かりますか? 貴女の依頼を叶えるときと,帰還したときと…私たちのモノになってもらいましょう。
どのように,男に抱かれてきたかという話を肴に,私たちのモノを咥え込んでもらいます……いかがで
すか?」
「下衆…な…」
セフィリアが嫌悪の目で睨むのを,ゾルダートは薄笑いで流す。
「そう,だから言ったでしょう。これは,セフィリア殿だけの話なのです。セフィリア殿だからこそ,
ここまでの条件を提示しているのです。私が,そして貴女を求める男たちが,どれだけセフィリア殿の
女性としての価値を高く見ているかという証ですよ。それにね……実際,私は下衆な人間なのです。し
かし,だからこそ同種の者たちには,信用を得られるということもあるのですよ」
確かにそうなのかも知れない…
セフィリアは目を伏せ,嘆息する。
……この体で済むのならば……拒む理由がありません……
言ってみれば,相手に抱かれるという代償はあるものの,驚くほどリスクが存在しない方法だった。
これに並ぶような,それ以外の方法など考えることもできようがない。
「ふふふ……取引成立,ですかな?」
否定しないのを見て,男たちの指が,ショーツを掻い潜って内側へと潜り込んでくる。
振り払いたい衝動が込み上げるが,抗うことはできなかった。
黙って,いや望んで受け容れるしかない。
「…お願いします………んっ,あ,ああぁっ…」
クチュッという水音とともに,太い指が熱く濡れた秘裂をえぐった。
「んっ,あ…あっ…あぁあっ…」
セフィリアは,両手を握り締める。
ショーツの中で,小さな秘孔を押し広げ…
ヌルヌルと,内部へと侵入してくる指…
指が根元まで侵入してくる蠢きに,電気のような甘く強烈な快感が閃き,セフィリアは腰をビクビク
と大きく反応させた。
一気に,体が燃え上がってくるのが分かる。
しかし,それは決して,絶頂にまで追い詰めてくるようなものではない。
……この触り方…っ…私の欲求を引き出そうとしてくる…卑劣な…触り方…っ…
決して激しさはなく,あくまでゆっくりとした指が,火照った膣内をぐるぐると掻き混ぜる。
とても,絶頂には届きそうにないながらの,歯がゆいほど甘美な快感だった。
自ら腰を動かして,男たちの指に強く秘裂を擦りつけたい衝動が大きく込み上げてくる。
「あ,あっ……んんうっ……く,く…っ…」
欲情しきった体は,疼きに耐えきれるはずもなく,ほどなく限界を迎えた。
……もう……我慢できない……もっと,触られたい……
セフィリアは,首筋を這うゾルダートの舌を,更に誘うように喉を上げて快感を訴える。
抑えが外れた腰は,秘裂をえぐる太い指の動きに合わせて,今までの我慢は何だったのかと思うほど,
何のブレーキもなくあっさりと悩ましくくねり始めた。
「今夜は,たっぷりと楽しみましょう。あの日のことを思い出しながら,ね……」
「はい……んっ,ううぅん…」
迫ってくる唇に応え,自らも唇を開き,舌を小さく差し出す。
力強く絡みつかれ,吸い上げられ,下半身では腰を自ら動かしながら……
セフィリアは,男たちの腕にしがみ付き,身悶えする声を甘く漏らした。
続く
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