「セフィリアの使命Ⅱ」(5.裏切り)

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……これは……予想外でした……
 目覚めたセフィリアは,自分の状況に嘆息した。
 強力な睡眠薬を混入されたワインを差し出され,気付かないふりをして口を付けた後,しばらく不毛
な会話を続けたところまでは覚えている。
……眠っている間に,何かあることは分かってはいましたが……
 ベッドの上で,セフィリアは両手首に付けられた黒い拘束具を見つめる。
 ふと覚えた違和感に足下を見ると,足首にも拘束具が付けられていた。
 ただし,こちらは,両脚を閉じられないようにした上で足首を固定している。
 服は,昨夜着ていた公開演技の衣装のままで,脱がされてはいない。
……最初は,剣術の師範役という,派遣される体裁を整えてくれると思っていたのですが……
 溜息をつきながらセフィリアは,あらかじめ言い含められていた話を思い返した。


『今回の派遣では,なぜソフィ殿が……いや本当は,貴女がセフィリア殿であるという暗黙の了解が皆
にはあるのですが,私との関係をそれとなく聞かれるかと思います。罠にかかった結果なのか,取引な
のかという,セフィリア殿に対する詮索ですな。それに対しては,真相は「罠」ということにしながら
も,「何も答えない」ということでいきましょう』
『何も答えない…ですか』
『1つ答えても,また次の質問がくるものです。猜疑心が強く,疑問が尽きることがないのがあの連中
ですから……これは私も含めてですがね。そのような相手に対しては,答えることは何もプラスに働く
ばかりではありません。「何も答えない」ことで,ある程度こちらの意図した方向にコトを匂わせるこ
ともできるのです』
『なるほど,分かりました……要するに,せっかく上手く進んでいる取引なのに,余計な火の粉を飛ば
してくれるなということですね。確かに,私が何かを答えたとしても,その言葉の通りに受け取られる
ことはないでしょう。しかし,私がここにいるのは,真相も何も「罠」以外の何でもないと思いますが
…違っていたのでしょうか?』
『これは,痛いところを衝かれました。余計な知恵を出したばかりに,やぶ蛇でしたかな。まあここは,
単なる私とセフィリア殿との他愛もない話ということにしておきましょうか』
 口角を上げてニヤリと笑った市長は,それから蛇足ながらと続ける。
『派遣先候補の市長たちは,表だってはクロノスに剣を向けてはいませんが,裏では真っ黒,私と同じ
穴のムジナです。私がセフィリア殿の弱みを握って言うことを聞かせていること,そして性奴隷として
抗えない悦楽に溺れさせていること,そう思わせることでかなり油断をしていますが,とてもとても善
良な者たちではありませんので,ご注意を。妙な仏心を起こしたり,解任されたはずのクロノス根性を
出したりして,対応を見誤らないようお願いしますよ』
 ことさらに釘を刺してくるような言い方だが,重要な点を含んでいることをセフィリアは認めた。
……妙な仏心とか,クロノス根性とか……言ってくれますね……しかし……
 派遣先では,セフィリアでありながら,クロノスとは無関係のソフィとなる。
 この3週間,セフィリアは,媚薬を使って性奴隷としての調教を受け続けてきた。
 目も眩むような羞恥の数々……今まで知らなかった行為を,悦楽を体に教え込まれてきた。
 平静を装いながらも,思い出すだけで,女としての体が…芯部が熱くなってしまうほどに。
 派遣先での市長たちは,表面に見えるソフィという役柄を通して『調教を受けてきたセフィリア』の
状態を見てくるのに間違いない。
 クロノスのナンバーズ,セフィリアとしての危険性は,完全に黒である市長の言いなりにされている
現状が,『セフィリアも,媚薬には勝てなかった』と上手い具合に宣伝になってかなりの部分払拭され
ている。
 市長も明言はせぬまま,セフィリアを罠にはめ,性奴隷という立場を受け入れさせるほどコントロー
ルしていることを匂わせていることだろう。
 だからこそ,今回の市長の闇取引に,自分が加担したと思わせることは大きなプラスに働く。
……弱みを握られてではなく,自分の意志でクロノスから離れたと思わせること……
 そのために,あえて市長の思惑に乗ったのだ。
 このことを,上手く利用するならば……
 自分がここにいることを,「罠」だったと口にすることは市長に対する反抗心を表してしまう以上,
悪手になる。
 市長の言う通り,『微笑で何も答えない』のが最善手だ。
……確かに,それが一番よいようですね……結局は何から何まで,市長の考えた通りとは……
 市長の話に乗らない選択を一度はとりかけたのだが,結局は思い直すに至っている。
 まったく本意ではありませんが,とセフィリアは溜息をついた。
……あとは……
 セフィリアは,気持ちを切り替える。
 これからは,それなりの態度を取る必要がある。
 キルムベートの市長には,逆らえない立場になったことから始まった調教。
 それによって快楽に堕ち,身も心も調教されたのだと思わせること。
……あのようなコトを,この心の奥底では悦んでいる……そう見せかける………
 受けてきた恥辱を思い浮かべ,セフィリアは俯いたまま,両手に静かに力を込めた。
 あのようなこと,決して望んでなどいるはずもなかった…
 紛れもない恥辱だった……
 そう,否定の言葉で断じようとしたはずなのに。
……くっ……
 腰の奥が,ずくっと疼いた。
 自分が受けてきた淫戯を脳裏に浮かべた瞬間,小さくチロチロとした炎が,体の奥底を炙り始めるの
を感じる。
 官能の熱。
……見せかけなどではない…そういうことですか……
 セフィリアは嘆息した。
 快楽というものは……理性と頭では違うと思いたくても,体は欺くことができないらしい。
 確かに……そうなのだろう。
 自分は,市長から受ける淫猥な責めに抗しきることができなかった。
 毎夜,市長に貫かれながら,甘く喘ぎ乱れる姿を晒してしまった。
 ついには,汚される自分に陶酔を感じてしまった……
……そう…分かっています……
 セフィリアは唇を噛む。
 自分の体は,どうしようもなく女なのだと思い知らされた日々。
 分からないわけではなかった。
 しかし,それでもやらなければならない…
 それは,自分の存在意義に関わってくる使命なのだから…
……私は駒の一つ…自分のことなど,些事だと言ったはずです……自分で言ったはずです……
 迷いなど捨てなければ…
 セフィリアは,苦悩する柳眉を寄せ,両手を握り締めてそう呟く。
 迷いなど捨てなければ…
 そう決心したつもりでいながら,ままならない女としての自分を捨てきれないセフィリアの姿がそこ
にあった。


 熱い…
 ベッド上のセフィリアは,ふっくらとした唇から熱い吐息を漏らす。
「…これは……っん…っ……はぁ……はぁ……ぁん…っ」
 体の中が,急激に火照ってくるのを感じていた。
 次第に……自分の声が,どれだけ漏れているのか定かには分からないほど,まともな思考ができにく
くなっていく。
 全身に,血管を通してじわじわと熱が広がっていくような感覚。
 それとともに,思考も塗り替えられていくようだった。
 頭の中が,淫らな熱で満たされ…
 胸の奥も……何より,腰の奥にウズウズとした灼けるような熱を感じ始める。
……っ…ぅ…これは……いつもより…強いかもしれない……んぅ………
 体から,思考から,余裕が消えていく。
 乳房を揉まれることを期待し,体の芯がズンと重さを感じるほどの火照りを帯びてくる。
 この3週間,毎日味わってきたこの感覚,眠っている内に媚薬を飲まされたのだと分かった。
……それも,私が起きる時間に合わせたように……服用は…カプセルでしょうか……
 カプセルの消化時間を計算した,遅効性の媚薬。
 そうだとするなら,間もなく市長は現れるのだろう。
 体の疼きに耐えかねさせて……満を持して来るのに違いない。
「…はぁ…はぁ……ぁっ…ん…ぅ…」
 ベッドの上で顎が上がり,戦慄く唇からは,切れ切れの小さな声が漏れる。
 自分の声が,甘く切ないものに変わるのが分かった。
……駄目…駄目です……変なことを考えては……望んでなどいなかったはず…です……
 そう思いながらも,頭の中では,キルムベートで市長の指や舌が体を這い回り,硬く強張った男根が
膣奥まで埋め込まれたときのことを思い浮かべてしまう。
 それとともに,脳天にまで届き閃いた……痺れるほどの快感。
 どうしようもなく,欲する気持ちが湧き出てしまう。
 体を触られ,気持ちよくされたい…
 乳房を揉まれたい…
 男の硬く強張ったペニスに,膣奥まで抉られたい…
 そんな体の欲求が,抑えようもなく噴き出してくる。
 しかし,それは今までの調教によって体が覚えた快楽だ。
……こんな…乱れてしまった思考まで,引きずり出されるとは……これが…求める調教の『成果』なの
だとすれば……恐らく…私を買った市長は…それを見て…確かめたいのでしょう……
 それならば,体が欲する通り,身を委ねればいい。
 セフィリアは両手首を拘束されたまま,体を,胸をベッドに押しつけた。
「んぅ…ぅっ……あっ…はぁ…っ…」
 押し潰される乳房に,甘い心地よさが広がる。
 ブラジャーの内側で,乳首が硬くなっているのが分かった。
 秘部は強く疼き,ショーツの中も,もうひどく濡れているのに違いない。
……どこかで…カメラを通して,この様子を見ているはず……媚薬に逆らえない女の姿を……
「あぁ……ん…うぅっ…」
 熱い吐息を漏らし,身をくねらせて喘ぐ。
 セフィリアは,ここまで懸命に押し殺していた欲情を,少しずつ蓋を開けて解き放っていく。
 早く,来るがいい…
 その裏切りの顔を,見て差し上げましょう…
 恨みと妖艶のない交ぜになった貌は,欲情の朱に染まり…
 腰の奥が重くなるほどの体の火照りは,炎となって燃え上がる時を期待して,チロチロとした情欲を
燻らせ続けていた。


「ソフィ殿,お目覚めかな?」
 部屋に入ったヴァルザーリは,ベッドの上で大きく目を見開く美貌のセフィリアに,ギラギラとした
欲望の笑みで応えた。
「あ…貴方は……」
「お初にお目にかかりますな。ヴァルザーリと言います。どうしましたかな? ワシの顔に,何か?」
 平静を努めようとしながらも,セフィリアの目の奥で,驚きの色が浮かんでいるのが分かる。
 信じられないモノを見る気持ちだろう…
 ヴァルザーリは,喉がくっくっと鳴るのを抑えられない。
……何しろ,今の立場はソフィ=マーカス。ワシを知っている素振りを見せれば,自分をセフィリアだ
と認めねばならんからな……ここは,空々しくても知らん振りをするしかなかろう?……
「お目覚めになったなら,起こして差し上げましょうか。ふふふっ…今日は,朝からソフィ殿と親交を
深めるつもりで,すべての予定をキャンセルしているのですよ」
 ヴァルザーリは,よりいっそう笑みを深くし,セフィリアの両手首を拘束しているロープを天井の方
へと引き上げていく。
 その何気ない自然な動作は,セフィリアにとって,ヴァルザーリがもはや味方ではないことを示すに
十分過ぎるものだった。
「昨夜は,快適にお眠りになったようですな。車の中で,私の横でお眠りになるソフィ殿は,もうそれ
はそれは魅力的で……くくくっ,我慢するのが大変でしたよ。そのおかげで,昨晩から体が熱く滾って
しまって,待ちきれない思いでした」
 機嫌のよい声と共に,ベッドの上で,セフィリアの姿勢が少しずつ高く吊り上げられていく。
 腕が上がり…
 体が引き上げられ…
 ベッドの上で膝をつき,両手首が頭の高さまできたところで,ロープが止まった。

 低く太い声が,上っ面だけの柔らかな言葉で,わざとらしい機嫌の良さを伝えてくる。
「楽しむにしても,立ち上がらせてしまうのはソフィ殿を疲れさせてしまいますからな……おお,この
位置が姿勢的に丁度よさそうです。ふむふむ…腰が軽く後ろに突き出されて……胸も前に突き出された
この感じ…何とも佳い女で…そそられる魅惑的な姿ですよ,ソフィ殿?」
 セフィリアは,邪悪そのものの表情で笑うヴァルザーリを,まじまじと見つめる。
 あり得ないとまでは言えないにしても,まさかヴァルザーリが来るとは思っていなかった。
……どうして……
 平静を装いながらも,動揺は抑えられない。
 しかし,問うても意味がないことは,分かっていた。
 セフィリアの救出という訳ではないこの雰囲気,自分のことを知らないはずがないヴァルザーリが,
このような所業に及ぶその意味とは………言うまでもない。
……貴方も……そうなのですか……
 胸に,哀しみが広がる。
 積極的な味方…とまでは言えなくても,敵にまではならないと思っていた。
 すべての市長が,クロノスに好意的なわけではなく,清らかであるわけでもない。
 このヴァルザーリも,清廉な人物では決してなかった……それは分かっていた。
 清廉ではないが,悪に染まっているわけでもない。
 清濁併せ持つのは人間の性…
 そう考えたからこそ,すぐに悪だと判断して例外なく切り捨てるようなやり方は,できるだけ避ける
ようにしてきた。
 だから,ヴァルザーリに対しても,悪行となりそうな事があっても何とか引き留めようと手を回し,
ブレーキをかけてきた……それは,一度や二度のことではない。
 自分よりも,ずっとずっと年上の人物であるだけに,気分を害すことがないようにと気を配り,声を
かけ,特に気にかけてきた。
 市長たちの中では,話をすることの多い……言ってみれば,馴染みの人物だと思っていた。
……それなのに……どうしてなのですか……
 ここまで,自分の敵側に回るなど…
 自分を辱める側に回るなど…
 自分は,どこかで間違えてしまったのだろうか。
 年下であるにも拘わらず,差し出がましいことをする自分の立場が,ヴァルザーリを不快にさせてし
まったのだろうか。
 もっと上手くサポートできていれば,また違った結果を生んでいたのだろうか。
 それとも……これが,あの市長が指摘した『妙な仏心』の一つなのだろうか。
……私の至らなさだったのでしょうか……残念です…とても……
 しかし……とセフィリアは顔を上げ,目に力を込めた。
 今は,ソフィとしての立場を崩すことはできないが…
 こうなった以上は,何とか,掴まなければならない。
 あの市長と取引した以上,何らかの形で薬物に関与している可能性が高い。
 もしかしたら,どこかでマフィアとの繋がりもあるのかもしれない。
 裏で結託している,他の市長や政治家たちも…
 セフィリアは,キッと表情を戻し,厳しく睨む。
「これは,いったいどういうことなのですか? 私は剣術の師範として派遣される者です。このような
扱いを受けるいわれはありません。早く外してください」
 苛烈な光を宿す瞳。
 それを見るヴァルザーリは,ゾクゾクとした興奮を感じた。
……相変わらず,綺麗ないい声だ。快楽にむせび泣かせてやるのが,楽しみになってくるわ。くくくっ,
味方のように思っていたワシが,こういうことをするとは思ってもみなかったか? 何とも可愛らしい
ものよ。ワシの方は,いつもお前を犯すことだけを考えていたというのにな? いつか罠にかけてやる
機をうかがっていたが,今まで我慢するのは辛かったぞ…どんなに強くなろうが,体は女であることを,
存分に思い知らせてやらねばならんなあ?……
 色と欲にまみれた思考は,セフィリアへの恩義など感じようもない。
 むしろ,セフィリアの美貌や強さ,気高さに触れるほどに,美しいものを淫らな色に染めて堕として
やりたいとする,ヴァルザーリの歪んだ劣情が激しく昂ぶっていく。
……ワシのモノで貫かれて,男の体には屈服するしかないことを思い知るがいい。生意気な態度が取れ
なくなるほど,乱れ果てさせてやろうて……
 ヴァルザーリの欲望は,長らく待ち望んだ満足を求めて,セフィリアの美しい体を如何にして悦楽に
堕とすかに向けられる。
 セフィリアには……到底,思い至ることも理解できるはずもないことだった。

「勘違いしないでいただきたいですな。キルムベートの市長からは,ソフィ殿は,澄ました顔で,実は
こうされるのが大好きなのだと聞いております。ならばと,歓迎の意味を込めてこうしているのですよ。
決して酷いことをしようなどとは思っておりません。ええ,神に誓って」
 セフィリアの背後に回ったヴァルザーリは,そらぞらしいことを臆面もなく言葉にしながら,両腕を
頭上に吊され無防備になっている左右の胸を,手の平にゆっくりと包み込んできた。
「はあっ…んっ!…うぅ…っっ…!…」
 背中から,乳房に柔らかく指が食い込んでくる。
 予想はしていたものの,上半身に奔った快感の……あまりの甘美さ。
 思わず声が漏れ,セフィリアの体が,わなわなと硬直する。
……揉まれるくらいで…体が……こんなに反応してしまうなんて…んう…ぅっ……
 胸を揉む,じんわりとしたイヤらしい手つき…
 今まで焦らされ,積もり続けた欲情が,一気に抉られるかのような心地よさだった。
「何を…勝手なことを…っ……こんなこと,好きな訳がありません………離してくださいっ」
「そうそう,ソフィ殿はそのように抗うと言われてましたな。しかし……実際は,無理やりされるのが
お好きだとか? そら,綺麗な貌をして,こういうことに興奮するのですかな? 何ともイヤらしい体
をしているのですな? ふふふっ,実に私好みです」
 ヴァルザーリは,身をよじって逃れようとする体にかまわず,大きな手に包み込んだ乳房を,持ち上
げるようにしながら,ゆっくりと揉み上げてくる。
 10本の指を,服の上から乳房に食い込ませ…
 強弱のリズムをつけて,奥底からの官能を引き出すような淫戯…
「これがソフィ殿のオッパイですか……公開演技のときから,この胸の膨らみが気になっていたところ
でしたが,思った通り…服の上からでも,形の良さがよく分かりますな。本当は,こんな風にして胸を
揉まれるのが好きなのでしょう? どうなんです?」
「あぁ…う,うぅ…っ…!……く…くだらないことです…っ……あり得ません…あぁ,んっ!」
 声が震えた。
 指が食い込む度に,どうにかなりそうなほどの気持ちよさが体中を駆け巡る。
 乳房を包む手に,身を委せてしまいたかった。
 胸を揉まれる感触に,声を揺らがせながらも,セフィリアは両手を握り締めて懸命に堪える。
 セフィリアは悔い,迷っていた。
……思わず,ヴァルザーリに対して,拒絶する態度を取ってしまうなど……失態でした……
 今まで,キルムベートの市長に調教され続けてきたことで,ある程度は受け容れる心構えができたと
思っていた。
 誰に抱かれようとも,覚悟を決めることができると思っていた。
 しかし……違っていた。
……相手が変わるだけで……こんなにも心が揺らぐなんて……私は…未熟でした……
 体を汚される覚悟はしていたものの,それが自分がよく知る者が裏切りの相手だったことで,思わず
拒絶する言葉をぶつけてしまった。
 心情的に,受け入れたくない。
 それが,この抗う態度に繋がってしまった。
 けれど……それでは,『従順』な態度を見せることができなくなってしまう。
……このような…っ…敵を相手にしているような態度では……駄目です………けれどっ………
 分かっていながら,抗わずにはいられなかった。
 葛藤しながらもセフィリアは,上体を左右に振って,胸を揉む手を拒絶しようとしてしまう。
 しかし…
 その反応は,まさにヴァルザーリの期待していた通りだった。
「くくくっ…まだこの程度で,随分といい反応ですな。これは滾りますわい」
 ヴァルザーリは,好色な表情で口角を上げた。

……くくくっ…すっかり従順になってしまった女だったら,興醒めだと思っていたところだ……媚薬の
せいで,体の方は十分すぎるほど火照っておるくせに……さすが強情なモノよ……
 ヴァルザーリは,ほくそ笑む。
 昨夜は,セフィリアを運び込ませた車の中で,媚薬を飲み込ませてやっていた。
 もちろん,口移しでだ。
 クロノス時代から,秘かに待ち望んでいたセフィリアを,ついに手に入れた興奮…
 至近距離で,伏せた長い睫毛に彩られたその美貌を見つめるだけで,獣のような欲望が沸き立つ。
 眠っているとはいえ,誘うように開く朱い唇の感触を味わいながらの口移しは,数え切れないほどの
女を思うがままにしてきたヴァルザーリにとっても,男根にギチギチとした痛みを感じるほどの昂ぶり
を呼んだ。
 そのまま,服を全て脱がせ,犯してしまいたいほどだった。
……しかし……それではもったいではないか……
 楽しむための時間は,十分にある。
 あの高潔なセフィリアならば,キルムベートの市長に調教され続けたとしても,そう簡単に誰にでも
喜んで脚を開くような,品性もない淫乱女に成り下がっている可能性は低いと思っていた。
 どんなに,男根の味を体に教え込まれたとしても,気持ちだけは気高くあろうとするだろう。
 それは,公開演技を観ただけでも分かった。
 凜とした立ち姿,雰囲気…
 清らかに澄んだ瞳…
 剣を振る美しさ…
 とても,2~3週間にも渡って,連日連夜に及ぶ調教を受け続けている女の姿ではなかった。
……キルムベートのヤツは,堕とした堕としたと自慢げに強調しておったが…ふん,あのセフィリアが
そう簡単に堕ちるはずもなかろうて。逆らうことができないようにしてくれたのは上々だが……今回の
公開演技会に間に合わそうと,何とか調教の体裁だけは整えた…そういうところかの……
 恐らく,未だに性奴隷として調教を受けることに対して,精神的な抵抗は続けているのだろう……と
ヴァルザーリは,考える。
……体はとっくに快楽に溺れているだろうが,な………しかし,そういう女だからこそ,楽しみがいが
あるというものよ……
 ヴァルザーリの頭の中では,太い男根を膣奥深くまで埋め込まれて,歯を食いしばりながらも,込み
上げる快感を堪えようとするセフィリアの姿が浮かぶ。
 焦らされ,我慢の限界を超え,ついに『イカせてください』と懇願する貌…
 それは,セフィリアにしてみれば,暴力的に犯されるよりも遙かに……この上ない屈辱となるのに違
いない。
 そして,そのような自分の姿を自覚させることでこそ,この女は堕とすことができる。
……それをしてやるのは,このワシだ……見た目こそ高潔な貌をしたセフィリア殿よ…ワシのモノが,
その仮面を剥ぎ取ってくれるわ……
 下卑た妄想に浸りながら,ヴァルザーリはじゅるりと大きく舌舐めずりをした。
 ヴァルザーリのねらいは,単にセフィリアの体を楽しむことだけに留まらない。
 セフィリアを,身も心も屈服させ,自分のモノにすることにあった。
 セフィリア自身に,体の淫らさを自覚させ,認めさせてやりながら。

「拘束されながら,オッパイを揉まれるのは興奮ものでしょう? では,もっと気持ちよくして差し上
げましょうか。お強い姿を見せた,この近衛服姿で……ふふふっ」
 ヴァルザーリの手が,近衛服の襟にかかり,ボタンを外し始めた。
「や…やめっ………っ…!」
 拒絶の声を上げようとしたところで,セフィリアは,ハッとして思わず顔を上げる。
 膝立ちの姿勢で軽く後ろに突き出した尻に,セフィリアの胸を背後から抱き締めながら,ヴァルザー
リの股間が密着していた。
 硬く強張った,太い男根……生き物のように,ドクドクと脈まで打つ様子が伝わってくる。
「な,何を…っ……んぅ…っ」
「そら,分かっていただけますかな? あんまり,ソフィ殿がワシを興奮させるので,こんなに滾って
しまいましたわい。今まで,何度も男のコイツを味わってきたのでしょう? まさか,コレが何なのか,
ソフィ殿とて知らない訳はありますまい? ふふふっ……そら,こうやって柔らかなお尻に押しつけて
やるとよく分かるでしょう? 頭の中には,形とか大きさまで浮かんでくるのではありませんかな? 
しっかりと,覚えておいてもらいましょうか。コイツが,後でソフィ殿をたっぷりと可愛がってくれる
モノですからな」
「く…っ……そのような汚らわしいモノ…私の体に……押しつけないでください……っんぅ…」
「おやおや…そんなに嫌ったモノでもないでしょう? この数週間,あの市長のコイツには,毎夜毎夜,
何度もイカされてきたのでしょう? 淫猥なコイツの味は,とてもとても気持ちのイイものだと,イヤ
らしくも散々に味わわされてきたのでしょう? なら分かるはずです。私のモノにも,どうぞよろしく
お願いしますと,歓迎の言葉をかけてくれてもよいのではありませんかな?」
 愉悦に酔うヴァルザーリは,抵抗のできないセフィリアの体をぐっと抱き寄せ,ことさらに恥辱を与
えるように,胸のボタンを外していきながら,股間の強張りをグリグリと尻に押しつけた。
「このように,自由を奪って……体を弄ぶなど……ん…ん,ぅっ……ぁ」
「それがよいのでしょう? ほら,どうです? しかし…ソフィ殿の柔らかなお尻もオッパイも,男を
気持ちよくするためにあるようですなあ? ふふふっ…」
 先日まで,味方にしていた者から与えられる恥辱の悔しさに,セフィリアの頬が紅潮する。
 しかし,それだけではないことも,ヴァルザーリは見透かしていた。
 媚薬と調教を受け続けた体は,望むと望まざるとに拘わらず,悦楽というものを覚えてしまう。
 悦楽を覚えた体は,淫らな行為を受ければ,その先に与えられるより強い快感を期待して,勝手に欲
情を始めてしまうものだ。
 それを抑えることはできない。
 だからこそ,『媚薬』というのだ。
 そして……期待して欲情する体は,男の責めを欲してその肌を敏感にしてしまう。
……例外などなく,な……
 どれほど強く,どれほど気高い精神をもつセフィリアであろうと,人間の身であり女の体である以上,
何ら変わりがないことは言うまでもない。
「いい声じゃないか。嫌がる振りをしながら,男を誘う可愛い声が抑えきれないか? 我慢などやめて,
体の声に素直になったらどうだ? ふふふっ,男の硬くなったモノを押しつけられて,腰の奥が切なく
て辛いのだろう? もう挿れて欲しくなってきたんじゃないか? それとも,もっと違う処も触って欲
しいか? おっと………これは失礼,口調が思わず変わってしまったようですな」
 しかし,ヴァルザーリは少しも悪びれることなく,ニヤニヤとした笑みを絶やさない。
「ふふふ……だが,澄ました顔をしている佳い女ほど,実はスケベな体をしていると言うが,ソフィは
果たしてどうなのかな? こういうのも,満更ではないのだろう? いやいや,返事はいらんぞ。この
体に直接聞いてやるとするからな。なに,こういうプレイも,ベッドの上だけのこと……ここは,お互
い楽しむとしようではないかね? くくくっ…」
「何を勝手に…っく!……ぅうぅっ!…耳を…あっ…んんっ!」
 耳元で囁かれ,熱い舌をねじ込まれたセフィリアは,ついにビクビクと上体を反らせた。
 それと同時,ヴァルザーリは,くびれた腰の前へと片手を回し,スカートの丈が短くなった前方部分
から手を内側に差し込み,白い太腿へと押し当ててくる。
「しかし……せっかくの,この体。弱い処など,いろいろと探ってやるのも楽しそうだの。ワシのモノ
にしてやる前に,もう少し時間をかけて遊んでやるとしよう…ふふふっ,ソフィの可愛い声をたくさん
聞かせてもらおうか」
 今までの慇懃な態度すらも豹変させ,露骨に本性を表し始めたヴァルザーリ…
 乳房を揉み,耳の中を舌で犯しながら,囁いてくるその低い声。
 淫猥な言葉。
 到底,善人のものではない。
 いや,はっきりと言えば,敵であるマフィアと何の変わりもない邪悪そのものだった。
……やはり…これが……ヴァルザーリの本性なのですか……私の期待は…期待していたことは間違って
いたのでしょうか……
 セフィリアの胸には,味方のように感じていた相手から裏切られる悔しさ,悔恨の気持ちが込み上げ
ていた。

「ほぅ,ソフィは耳が弱いのか? 何とも可愛らしいものよな。ならば奥まで舐めてやろう。くくくっ,
イヤと言うほど感じさせてやるぞ。ソフィは,舌責めが好きなのかな? では,この太腿はどうだ? 
白く美しく,清らかそうに見せながら……男を誘う,イヤらしい太腿だ。触られるのと,舐め回される
のと…どちらが好きかな?」
 スカートの中へ侵入した手が,閉じることができない太腿の内側へと回されてきた。
 じわじわと太腿を撫で回す,欲情した男の熱い手に素肌が粟立つ。
「そんなところ…触らないでください……どちらも…好きなはずが…んぅう…っ…」
 淫らな触手が太腿を這うような,ぞわっとした感触が膣奥に奔った。
 体の芯を刺激する,ぞくぞくとした快感。
 しかしそれは,紛れもない快感でありながら,更にその先を望もうとする欲求を,一層強く引き出し
てくる。
「イ…イヤらしい触り方…です……やめてください……っあ,ぁぅ…」
 思わず,凜とした声が揺らいだ。
 ベッドについた両膝を左右に動かし,何とか振り払おうとするも,男の手はピッタリと内腿に貼り付
いたまま,どうしても離すことができない。
「ふふふっ…そうか,そうか。ならば,この辺りなどどうだ? それとも……この脚の付け根を…こう
やって,なぞられるのはどうかな? それにしても…撫でてやるだけでビクビクと気持ちよさげに反応
してしまっているのは……ふふふっ,どういうことなのかな?」
「あ…あぁ……」
 敏感な神経が,無防備にざらざらと撫でさすられる。
 まとわりつく快感が振り払えない。
 セフィリアは観念するように,首を左右に振り,長い睫毛を切なく揺らした。
 太腿から脚の付け根という,秘部に近い性感帯を這う指に,腰の奥には熱い苦悶が渦巻いてくる。
 敏感な神経を淫らに刺激され,堪らない快感を感じさせられてしまう。
 しかし…
 それ以上に,押し寄せてくるのは,狂おしいほどの焦燥感だった。
「そら,本当はここの奥,触って欲しかろう? どうだ? この指の動き…堪らんだろう?」
「そんなこと……ありません…っ……気持ち悪い…だけです……ぅぅっ」
 声と共に,敏感な脚の付け根の周囲を,ゆっくりとなぞり回す無遠慮な太い指に,脚がぶるぶると震
える。
……あぁ…指が……来そう…っ……
 セフィリアは,襲い来る何かを振り払おうとするかのように,首を左右に振った。
 あと数センチ……ただそれだけ指が動くだけで,濡れた女のソコに触れられてしまう。
 しかし,指の動きは際どい処をギリギリでかわし,掠めるだけで触れてくることはない。
 触られそうで触られない…
 その焦らし責めは,媚薬に冒されたセフィリアの性感を極限にまで高め,鋭く敏感なものにしていく。
「そうか,そうか。その気持ち悪さは,実は快感と同じなのだがな? まあ,もう少し味わってみろ。
意外とイイかもしれんぞ。その代わり,後で…今度はワシの舌で……じっくりと舐め上げてやろうな。
膝から付け根に至るまで…この色っぽい太腿を何度も…何度もな」
「そんな……貴方に…舐められるなど…嫌です…っ……んんうぅっ」
 性感の高まる肌は,ヴァルザーリの淫戯に恐ろしいほどの敏感さを示していくようだった。
 熱い雫は止めどなく溢れ,今やショーツをぐっしょりと濡らしている。
 性感の密集した際どい部分を刺激されるその度,子宮がキュウッと疼き,強い快感を欲してしまう。
……あぁ……ヴァルザーリ……このような所業…絶対に許しません…っ……
 体に沸き起こる,淫らな反応の強烈さ。忌まわしさ。
 セフィリアは悔しげに喘いだ。
 気を許せば,自ら腰を動かし激しく疼く秘部を……脚の付け根を焦らしながら触る,男の指に押しつ
けてしまいそうになる。
 いや,それどころか頭の中では,ヴァルザーリの指が,熱く火照った秘部を掻き回すところを思い浮
かべてしまう。
 その快感を期待し,想像してしまう。
「この脚,公開演技で見せつけてくれたな。観客どもの目が,この長い脚に惹きつけられるのは気分が
よかったか? ふふふっ,無骨な剣士なぞやっているわりに,白くてスベスベとした手触りのいい太腿
をしているじゃないか。どうだ,太腿を触られるのはイヤらしくて…感じるだろう? おねだりすれば,
もっと奥の方まで触ってやってもいいんだぞ?」
「そんなこと……っあ…ぁあ,んっ…け…結構です…っん……うぅっ…あぁぁっ」
 淫らな反応を引き出そうと,敏感な処を探ってくる手指…
………く,くぅ…っん……感じて…しまうっ……こんな下劣な男の手で…っ……
 強烈に押し寄せる体の疼き。
 セフィリアは,自分の精神力が尽き欠けていることを感じていた。

「はぁ…はぁ……は…っぁ…ん……駄目…っ…」
 セフィリアは,切れ長の瞳を切なく潤ませ,紅潮した頬で荒い呼吸を繰り返す。
 凜とした近衛服の中では,左右から潜り込んだ大きな手が,その素肌を探り這い回っていた。
 はだけられた胸元から…
 捲り上げられた,短いスカートの裾から…
 敏感な神経に触れられるその度に,拒絶する言葉を吐き,手を振り払おうと体を左右に揺らしながら
も,揉まれる乳房に快感を抑えきれず,身悶えしてくねる女性美に満ちた胸や腰。
 ふっくらとした唇から堪らなそうに零れる,艶やかな声。吐息。
 あと少し,背中を押してやるだけで,為す術もなく堕ちてしまうことが分かる様相だった。
 およそ男と呼べる者にとっては,そのどれもが扇情的な誘惑そのものだろう。
……どうだ,セフィリア…ワシのような悪党に,体を好きにされて感じさせられる気分は? 悔しいか?
この胸も,尻も,濡れたソコも…このワシが,直々に味わってくれよう。くくくっ…最高ではないか。
あのセフィリアを,ついにワシがこの手にしてやっているのだ……
 室内を漂う,甘い香り。
 セフィリアの匂い立つ色気は,数多の女を権力にものを言わせて自由にしてきたヴァルザーリをも,
かつてないほどの興奮に沸き立たせていた。
……セフィリアめ,すっかり『女』の貌をしおって……簡単には堕ちない素振りを見せておったが,
もう限界のようだの。くくくっ…もう乳房を揉まれるだけなのも,脚ばかり触られるのも焦れったくて
嫌なのだろう? ならば……
 泣かせてやろう…
 焦らされた末の,肉欲の快感に涙を流させてやろう…
 体を抱き寄せるヴァルザーリは,べろりと白い首筋を舐め上げた。
「ふふふ…今日は1日かけて,この体を楽しませてもらおうか。たっぷりと蕩けさせてやったところで,
ワシのモノをぶち込んで女の悦びというヤツを味わわせてやろう……おお,そうだな。さっきのソフィ
の言葉が本当ならば…そうじゃな…ワシの責めに,まったく悦びを感じないようであれば,明日にでも
希望通りに自由にすることは約束してやらんでもないぞ? 時の番人No1,セフィリアもどきの剣士
ソフィとして,果たしてどこまで頑張れるのか見せてもらおうかの?」
 ヴァルザーリの言葉と共に,太い指先がショーツの縁を乗り越えて中心と這い進む。
「では……そろそろ,別の処も触ってやるとしようか? たとえば……奥のココとか,な」
「は…っ……ま,待っ……くっ!」
 ショーツ越しの,熱く濡れた秘裂の中心に,じんわりと食い込む指。
 セフィリアの甘く痺れた体では,もはや堪えることも抗うこともできなかった。
「あっ,あ,あ……んうぅっっ!」
 びりびりと背中から脳内を駆け巡った快感に,セフィリアは腰をビクンと大きく跳ね上げる。
 それと同時…
「この中も,拝ませてもらうぞ……どういう姿をしているのかな」
「あぁ…っ!」
 ボタンを全て外された胸元の襟が,大きく開かれた。
 白い素肌を際立たせて,黒いブラジャーに包まれた丸い乳房が露わになる。
「ほぅ…ブラジャーは,黒か。しかも,洒落たレースが何とも色っぽいじゃないか。強い剣士様であり
ながら,随分とお洒落な下着を着けているんだな? あの市長の見立てか? 自分の好みか? まさに,
男をそそるための下着だな」
「んっ!…待っ…っあ,あぁ…っ!…」
 ヴァルザーリは薄ら笑いを浮かべながら,抵抗をものともせずブラジャーの中央部分をナイフで切断
した。
 ぷるんと零れ出た,白く丸い乳房。
 お椀型の形のよい乳房に,小さな突起が果実のように硬くその存在を主張している様子が,ヴァルザ
ーリの好色な目に晒される。
「強い剣士様も,オッパイは可愛らしい女そのものだな。乳首も乳輪も,実に綺麗な桜色だ。ふふふっ,
しかし……どうやら,揉まれるだけでは満足できなかったようだのう? この硬く敏感になった乳首,
早く触って欲しくて堪らなかったか?」
「あ…ぁっ…ん…っ…ち…違いますっ……んんっう…!」
 再び伸びてきた大きな手に,直接乳房が掴まれ,乳首が指先に摘ままれる。
 その瞬間,胸の奥に…いや,子宮にまで響くような快感が乳首に奔った。
「っうぅんんんっ…!」
 ただそれだけで,絶頂に追いやられてしまうかと思うほどの甘い痺れ。
 抑えることもできず,セフィリアはビクン,ビクンと背中を反らせて声を上げる。
 執拗に焦らされ,積もる焦げ付きに驚くほどの敏感さを呈していた乳首は,ヴァルザーリの指の愛撫
に,想像以上の快感を感じてしまっていた。
……乳首が…っ……ぁ,あぁっ…駄目っ…こんなに感じさせられてしまっては…っ……
 この3週間,キルムベートの市長の調教によって,散々味わわされてきたことが頭をよぎる。
 言葉で感じさせられ…
 羞恥と熱い視線で感じさせられ…
 男の手に,体を撫でられれば……胸や尻,女のソコといった処はおろか,背中や脚,首筋,肩など,
体のどこもかしこもが性感帯と化してしまっていた。
 執拗に乳首を弄られ続け,ついに我慢できず腰を振って男根の快楽を求めてしまった。
……私の体は……あの市長の手で…っ……
 こんなにも,感じやすくなってしまっていた…
 自分の体が,どのような責めを受けると崩れてしまうのか,散々思い知らされてしまった…
……あぁ…っ……ヴァルザーリにも……私は…このまま…乱されてしまうの…ですか…っ……
 セフィリアの全身が,ぶるぶると震える。
 渾身の精神で耐えてきたモノが……外れていく。
 相手が,ヴァルザーリであることすら,意識から薄れていく。
「ソフィは,耳だけではなく乳首も弱いのだな? ふふふ…ほれ,ちょっと転がしてやるだけで,こん
なに可愛い反応をしおって……それとも,ワシにずっと触って欲しくて堪らなくなっていたのかな? 
そらそら,乳首とココと…一緒に責められるのはイイだろう?」
「あっ,んっ…そんなっ…あ,あ…っああぁぁ…っ!」
 乳首への責めと同時に,開かれた股間の真下からも,ショーツ越しに突き立てられた指が前後に蠢き
始めた。
 思わず,ビクンと反応する。
 腰を後ろへと跳ね上げ,逃がしかけようとするものの,尻に密着したヴァルザーリの下腹部がそれを
許さない。
「何だ。こんなにヌルヌルにして感じておるくせに,まだ逃げようとするのか? 可愛いヤツだの? 
ほれほれ,どこにも逃げられはせんぞ? されるがまま,たっぷりと感じるがよい」
「あぁあっ! や…やめてっ……ください…ソコ…っ……触らないで…んんうぅーーっ!」
 どこにも逃げることもできないまま,脚を閉じることすらできない無防備な秘裂は,ヌルヌルと這い
動く指先によって,好き放題に前後に擦り上げられる。
 熱い泉の中心に,指を沈められ…
 秘裂を更に広げるかのように,グルグルと指を回され…
 最も敏感な珠を,布越しの爪に軽く引っ掻かれ…
 狂おしいほど疼き続けた乳首と秘部が,一転して痺れる快楽に包まれるのは,あっという間だった。
「あっ,あっ,っん,あぁあぁぁっ…!」
 セフィリアは宙を見る。
 押し寄せる,逃れようのない大きな絶頂の予感。
 転がされる乳首が,恍惚とするほど気持ちよかった。
 薄布に指が食い込み,浅く前後に混ぜられる秘裂が,びりびりと痺れるほど気持ちよかった。
 その甘美さに,体が硬直を始める。
……嫌,駄目っ…イカないっ……イカないっ!……あっ,あ,あぁぁぁっ…!……
 秘裂をなぞる指が,トドメとばかりに,最も敏感な珠を前後に捏ねた。
 その瞬間,背筋を駆け巡り,脳内にまで閃いた峻烈な痺れ…
 セフィリアは,顎を天に向けて声を上げ,堪えきれない腰をガクガクと痙攣させた。

 全身を包む,甘い痺れは容易には引いていかない。
……あ…あぁ…ヴァルザーリに……ヴァルザーリなどに…イカされてしまうなんて……
 絶頂の余韻に,全身をピクピクと小刻みに痙攣させながら,セフィリアはぐったりと呟く。
 一度,絶頂に追いやられた体は,もう歯止めが効きそうにはなかった。
 焦げ付く疼きに耐え続け,ようやく迎えた絶頂の快感は,それほどまでに甘美だった。
……私は………
 セフィリアには,この後の自分の痴態が目に浮かぶ。
 この後……自分は,ヴァルザーリに犯されながらも,自ら腰を振り立てるのだろうか。
 抵抗を忘れ…
 嫌悪感も忘れ…
 きっと,杭のように打ち込まれる男根に我を忘れ,自分を抱く男の体にしがみ付くのだろう。
 恋人にするかのように…
 何度も,何度もイカされるまで…
 それは,今までの夜が事実として示している。
……ヴァルザーリに…私の体が好きなようにされるなど……本当は,認めたくないのに………
 力を失いながらも僅かに残った理性は,未だ堕ちることを拒否している。
 それでもセフィリアは,自らの体を包む絶頂の快感を,もう振り払うことができなかった。
 拒絶し続けた…
 待ち望んでいた…
 残酷なほど,甘い快感だった。


 涼やかで静かな瞳…
 スラリとした肢体でありながら,細い腰から描かれる柔らかな曲線…
 凜とした佇まいの,美貌のセフィリア…
 いつか,あの服を剥ぎ取り,澄ました顔を羞恥に染めてやりたいと思っていた。
 露わになった乳房を,好きなだけ揉みしだいてやると思っていた。
 両膝の中に手を差し込み,下着越しの恥ずかしい処を弄び,イカせてやると思っていた。
……あのセフィリアを,ワシが感じさせ,ついに絶頂に追い落としてやったわ……
 ヴァルザーリもまた,興奮の絶頂にあった。
 セフィリアは今,格下の部下のようなものの筈だった自分に,為す術もなくイカされてしまった敗北
感に打ちのめされていることだろう。
 そう考えるだけで,体が熱くなってくる。
 このまま……今すぐにでも,ガチガチに昂ぶった男根で犯してやりたかった。
 精神力を消耗したセフィリアは,もう自分を抑えることなどできず,期待通りに乱れる姿を晒すこと
だろう。
 そそり立つ男根を咥え込み,快感にむせび泣く姿を見せることだろう。
……しかし,まだだ……セフィリアには,体だけでなく,心まで屈服させてやらねばな……
 市長であるワシに対し,自分が上司だとでも言うかのように,あれこれと指示をしてきた女。
 数々のミッションを部下を率いて解決してきたくらいだ,多少は頭もよいのだろうが,ただクロノス
の後ろ盾と,剣の腕があるだけの小娘ではないか。
……そんな女には,存分に思い知らせてやる……
 麗しい女の肢体を見せつけ,自分の上に立った女に,自分の立場を教えてやるのだ。
……お前のような女は,男どもの欲望を満たすためにあるのだとな……そうでなければ,せっかく女に
生まれた幸せを味わえまい? どんなに強かろうが,抱かれてしまえば男の体には勝てないことを思い
知るがよい……お前という女は,ワシのモノになっていればよいのだ……
 ヴァルザーリは,吊られた手首を拘束されたまま,荒い息を吐いてぐったりとしているセフィリアを
舐めるように見つめる。
 カップの中央を切断された黒く洒落たブラジャーが,魅惑的な乳房を隠すことも体から外れることも
できないまま,申しわけ程度にまとわりついているのが無残だった。


 ヴァルザーリの責めは,終わりを見せることもなく,更にレベルを上げて続けられる。
「どうだ,気持ちイイだろう? もうワシに,抱かれたくなってきたのではないか?」
「くぅ…ううぅっ!…っあぁ…っ!…そんなことは…っうぅんんんっ!…く,首はっ…」
 ヴァルザーリは,気持ち悪く猫撫で声で囁きながら,白く細い首筋に舌を這わせてくる。
 首筋に,ヌメヌメとした温かな舌が這う感触に,ぞくぞくとした快感が込み上げた。
 同時に,乳首を摘まむ指が,その丸い先端を円を描くようになぞり回してくる。
「そうか,そうか。首も耳も舐められるのが好きか? それ,乳首もたっぷりと味わうがいい」
「あぁっ,もう……駄目…あ,あ,あっ……ん,んうぅっ…!」
 身悶えするセフィリアは,もう我慢できないというように腰を前後に揺り動かし,股間を弄ぶヴァル
ザーリの指に,自ら秘肉を擦りつける。
 一度,絶頂を味わわされてしまった体は,満足するどころか,更なる絶頂を求めて激しく燃え上がろ
うとしていた。
 しかし…
……ああ……堪らない…っ……
 セフィリアは,苦悶の喘ぎを漏らす。
 元凶は,両脚の中心に潜り込み,火照った秘裂を弄り続けるヴァルザーリの手にあった。
 ショーツの中心に,軽く貼り付いた指先…
 それは,先ほどから強い圧力を感じさせることもなく,内側からの熱いヌルみで溢れる秘肉の表面を,
ただ形を確かめるようにだけ,さわさわと滑り動く。
 先ほど,イカせてきたときから更に一転し…ゆっくり,軽くとしか言いようのない指の動き。
 もどかしくて堪らない。
……くっ…あ,ああっ…体が…こんなに燃え上がっているのに…っ……どうしてっ……
 強い刺激を求めようと,自ら腰を動かし,秘部を指に擦りつけても駄目だった。
 ヴァルザーリの声がイヤらしく耳に響いてくる。
「乳首を触られると,ココが疼くか? 乳首をなぞってやる度に,ソフィの腰が動いて……ワシの指に
擦りつけてくるぞ? そぉら…この柔らかい処を触って欲しいか…どうだ,ん?」
「あ…くっ!…っ……っくううぅぅ…んっ!」
 再び始まった,執拗な焦らし責め…
 熱くヌルヌルとした涎を,太腿に垂らすまでに濡れたソコは,数倍もの感度を上げた敏感さで,少し
の指の刺激でさえもビリビリとした快感を閃かせる。
 しかし……そんな指の動きに合わせて,腰を動かしてみても,そこまでだった。
 絶頂の大きな波はやってこない。
 絶頂には,あと少し足りないのだ。
……あ…あ…っ……もう少し…っ…イ,イキ…そうっ……
 瀬戸際を際どく超えそうで,決して超えないヴァルザーリの指。
 その度に,体の芯に痺れるような快感が奔り,秘部がズクズクとした疼きを強くする。
 一度イッたにも拘わらず…
 いや,一度イカされたがために……ますます激しく強くなる,膣奥の疼き。
 それは,セフィリアにとって,地獄のような時間の始まりだった。


 目も眩むような長い時間が,過ぎていく。
 イカされることのないまま,秘肉を捏ねられ続ける数時間は,セフィリアから抗う意思を削り取って
しまっていた。
「くくくっ…いい眺めだわい。ソフィの,お洒落な黒いパンティが目の前だぞ……どれ,先ほどの言葉
の通り,今度は太腿から脚の付け根まで,ワシの舌で舐めてやろう…」
 真上に広がる,秘部を覆い隠す三角形のショーツ…
 ヴァルザーリは意地悪く,今度は近衛服のスカート部分に顔を潜らせ,仰向けの姿勢で目の前に広が
る,魅惑的な光景に舌舐めずりをした。
……あぁ……ヴァルザーリに…そのような処を見られるなんて……
 ヴァルザーリの,痛いほどの熱い視線をソコに感じる。
 しかし…セフィリアは,羞恥に震える吐息を漏らすものの,もう拒絶する気力はなかった。
「ほれ,舐めてやるから,少し腰を下げろ。べろべろと,脚の付け根まで舐めてやるからな」
 イヤらしく命令してくる声にも,腰を掴むように下から伸びてきた両手が,ぐっと引き寄せてくるの
にも,ただされるがままに受け容れる。
「あぁ…」
 セフィリアは,もう何度目かの溜息を漏らした。
 ヴァルザーリの舌が,太腿を舐め始めるのを……ただ,じっと待つ。
 早く,ソコを責められたい…
 早く,イカされたい…
 声にできない声が,体中に満ちている。
 絶頂を求めて燃え上がる体は,もう他に何も考えられない状態にまで追い詰められていた。

 ヴァルザーリの舌が,膝を舐め始めた。
「く…っ…!……う,ぅっ…あぁ…んんっ!」
 太腿を這う舌の感触が……とても感じてしまう。
 這い上がってくる舌が,次第に…脚の付け根へと近付いてくるのが……堪らない。
……あ,ああ…っ…脚が舐められているっ…き,気持ち…いいっ……舌が…奥に来る…っ……
 抗わなければと思うものの,胸に込み上げてくるのは,堪らないほど淫らな快感だけだった。
 目を瞑ると……目の奥に浮かんでくる,くねくねと這い動く舌の動きがイヤらしかった。
 その生温かく濡れた感触。
 淫らであればあるほど…
 イヤらしければ,イヤらしいほど…
 その指,その舌は,セフィリアの体を感じさせてくる。
「あぁ…っ……だ,駄目……っうぅんんっ」
 スカートの中で,舌が……ついに,脚の付け根を舐め回すのを感じた。
 思わず,口をついて零れそうになった気持ちいいという言葉を呑み込み,かろうじて『駄目』と押し
留まる。
 けれど……
 脚の付け根という敏感な処に,温かな舌がまとわりつき,その周囲をジュルジュルと舐め回されると,
快感に耐えようとする脚が震え,肩が震える。
「っぁ…んんっ…!…ぅ…駄目…駄目…っ……あ,あぁ…っ!」
 唇からそんな言葉を出していても,その声はどこまでも切なく甘く,悦楽を切望するほど焦れて囚わ
れてしまっていることを隠すこともできない。
「どうした? もう抵抗しないのか? ワシなどより,遙かにお強い剣士様が,こんな処をいいように
弄ばれて,悔しくはないのか?」
 そんな言葉にも,もう答えるほどの気力はなかった。
 ただ…セフィリアは願う。
 強く…
 もっと…もっと強く…
 鳥肌が立つほど敏感になった体を弄ばれ,セフィリアは切れ切れの切ない声を上げるだけの人形と化
していた。

「くくくっ,もう言葉も出せないか。出てくるのは,イヤらしい声ばかりではないか。そんなに気持ち
いいのは,この脚か? それとも,こっちのイヤらしく濡れたソフィのココか?」
 声と同時に,ヌルヌルと濡れたショーツの中心に,ヴァルザーリの顔が埋められた。
 セフィリアにとっては,本当であれば,受け容れがたい羞恥と快感だったのには違いない。
「ん,んううぅ…っ!」
 布越しとはいえ,秘裂の中心を抉る舌に,鋭く閃く峻烈な快感が背筋を駆け巡った。
 背中が,弓なりに反り返る。
「あ,あ,あぁ…っ…駄目…も,もぅ……」
 わなわなと震える声を漏らしながらも,セフィリアは秘裂を探り動く舌から,腰を逃がそうとはしな
かった。
……あ,あっ…ヴァルザーリの舌が…っ……私のソコをっ……んっ,ん,んうぅっ!……
 短いスカートの中で,ビクビクと反応する腰をしっかりと掴み押さえ込んだまま,薄いショーツ越し
のソコを嬲るように舌が這う。
 秘裂の形に沿って,じんわりと周囲をなぞっていく,突き立った舌…
 サラサラとした薄い生地でできたショーツは,ヴァルザーリの舌の感触を,生々しく伝えてくる。
 ヴァルザーリの舌遣いは,恐ろしいほど巧みだった。
「どうだ,ワシの舌の味は……感じるじゃろう? そら,ソフィの柔らかなココ,舌でなぞってやると,
形がはっきりと分かってくるようだの? ふふふっ,こんなにヌルヌルにしおって…直接,舐めてやっ
たら,ソフィはどうなってしまうのかの? ふふふふっ…」
 女の性感を,余すところなく隅々まで探りながら,ゆっくりと引き出してくるその手練れ。
 軽く…軽く……時おり強く…
 ゆっくりと楽しみ…味わうように…
 その淫戯は,快感と苦悶に翻弄されるセフィリアの精神を,千々に掻き乱した。
「やっ……ん…んぅっ……はっ…はあっ!……はあ…んん…っ…!」
 決して,弱い快感ではない。
 さりとて,絶頂に到達できるものでもない。
「あ,あぁっん…っ……はっ,はぁっ…んあぁっ,あ,あんっ…っうぅぅぅん…っ!」
 舌が秘裂を前後になぞる度,ヴァルザーリに捉えられた股間はビクビクと震え,セフィリアの唇から
は押し殺す切ない声が漏れる。
 舌が這い回る秘部全体に,灼けるような痺れが広がった。
 腰の奥からの焦げ付きに,脳までが熱く灼けてくるようだった。
 挿れられたい…
 熱くなったソコを犯され,グチャグチャに嬲られたい…
 それなのに…
「ぁああっ……んんうぅっ……くっ,あっ,んっううぅぅっ!」
 秘裂の中心が,軟らかな舌に何度も抉られる。
 最も敏感な小さな珠が,唇に吸い付かれる。
 何度も,何度も……びりびりとした電流が奔った。
 しかし,イクことができない。
 ショーツの中心部分に顔を埋めながら,決してイカせない程度に嬲り続けるヴァルザーリの舌が恨め
しい。
……あ,あぁ……こんなの…っ……く,狂いそう…っ…………
 いつの間にか……セフィリアは感泣の声を上げていた。
 涙を浮かべ,長く尾を引く高い声を上げる。
「随分と,堪らなそうな声を出すじゃないか。ふふふ…屈強な男どもを圧倒したソフィの,そういう声
を聞けるとはな」
 満足そうなヴァルザーリの声も,霞がかかったように遠くに聞こえるだけだった。


 しかし…
「流石は,剣士ソフィだ。体は,こんなにグチャグチャに感じているくせに,なかなか堕ちぬとはな。
ますます気に入ったぞ。しかしどうだ,そろそろ『イカせてください』とおねだりしてもいいんだぞ? 
好きなだけイカせてやろう。全てが,どうでもよくなるくらいの快感を味わわせてやる。ワシのコイツ
でな」
「け…結構……です……」
 決断を迫る声。
 頷きそうになる体を懸命に抑え,渾身の精神力を込めて,セフィリアは息も絶え絶えに答えた。
 相手がヴァルザーリでなければ,頷いていたかもしれない。
 そもそも,これほどまでに耐え抗うこともなかったかもしれない。
 絶頂に達するか,達しないか……
 その瀬戸際で苦悶させられながらも,いざ決断を迫られると…それほどまでに,ヴァルザーリは受け
容れがたい。
 だが,ヴァルザーリは,不気味なほどニヤリとする笑みを浮かべた。
「そうか,いいだろう。では,約束だからな。これで終わりにしてやる。明日にでもという話だったが,
今日の内にもう服を整えて帰ってもいいぞ」
 不意に投げ込まれた,ヴァルザーリのあっさりとした言葉。
 セフィリアは,一瞬,意味を理解できなかった。
……終わり?…このまま帰ってもいい?……
 セフィリアは,ハッとして我に返る。
 それは,あり得ない言葉だった。
 本当に,何もなければ…
 その必要もなければ…このまま解放されるのであれば,どんなにかよいことだったろう。
 しかし,そうではない。
 そうではなかった。
 決して,ヴァルザーリのもとを去ることは,セフィリアの目的に沿うことではない。
……このままでは…私は……何も達成できない……
 今更ながら,セフィリアは自分の浅慮な言動を悔いる。
 覚悟が未熟だったばかりに,このような事態を招いてしまった。
……このまま……何もできずに,帰ることはできない……
「ヴァルザーリ市長……」
 セフィリアは,うな垂れた。

「どうした。帰ってもいいんだぞ?」
 意地悪く,ヴァルザーリは自らの衣服を整え始める。
「それとも……本当は堪らないくらい感じていたのか? もっと触って欲しかったか? そうであれば,
これから派遣されている間,ずっと可愛がってやってもいいんだがな…?」
 返答を促してくる。
 うな垂れたセフィリアの貌を,唇を舐めながら見下ろすヴァルザーリは余裕だった。
 この不遜な態度……解放するつもりが無いことは,明らかだった。
 ここまで来て,ヴァルザーリが引くなどあり得ない。
……私が……絶対に,そうできないことを知っていて………
 セフィリアは,悟らずにはいられなかった。
 ここまで,ヴァルザーリが余裕を見せる態度の意味…
 恐らく,ヴァルザーリは,自分の目的を分かっているのだ。
 他の市長ならばいざ知らず,自分と事件解決のために話し合うことが多かったヴァルザーリならば,
自分が派遣先で何をしようとしていたのかも想像がつくだろう。
 調教によって,堕ちた振りをしようとしていたことも…
 もしかしたら,思わず拒絶してしまった自分の心理も…
 すべて見通していたとしても,不思議ではない。
……甘く見ていました……相手が…ヴァルザーリだと,あらかじめ知っていたならば……
 両手を握り締めたところで,最早どうすることもできなかった。
「はい……その通りです……申し訳…ありません」
 セフィリアは答える。
 自分の未熟さを悔いるのならば,言葉で『肯定』しなければならない…
 ヴァルザーリの言葉は,セフィリアの耐え続けた心を深く抉っていた。
「本当は…とても感じていました……申し訳ありません……本当は…もっと触って…欲しいです…」
 小さな声が零れるまでに,時間はかからなかった。

「どうか…私の……火照ったソコを……直接…触って…ください」
 しっとりと濡れた,静かな……羞恥に満ちた声。
 流麗な眉は切なく寄せられ,長い睫毛が潤んだ瞳を美しく飾っている。
 ヴァルザーリを見上げ,哀願するセフィリアの表情は,これからの行為を考えて憂いに満ちているも
のの,上擦る声には『女』としての色気が匂い立つ。
 初めて見る,セフィリアの『女』としての貌…
……ワシに従うか……ようやく準備が整ったな……
 後は,セックス漬けにして,女の悦びを徹底的に教えてやればいい…
 そうなれば,屈服させるのは時間の問題だ…
 ヴァルザーリは,股間が興奮で熱く滾り,痛いほどガチガチに硬く強張るのを感じた。
「それは,イカせてくださいということか? ならば,ソフィもワシを悦ばせるように応えてみせるの
だな。それから,ワシのことはヴァルザーリと名前で呼べ。市長とか様とか敬称はいらん。ただヴァル
ザーリと呼び捨てで呼べ」
 鷹揚に服を脱ぎ捨てながら,ヴァルザーリはセフィリアを見下ろして命じる。
 セフィリアに,『ヴァルザーリ様』や『ご主人様』と呼ばせることも考えた。
 それはそれで,征服欲を満たすものには違いなかったが…
……セフィリアにとっては,どうなのだろうな……
 『ヴァルザーリ』と,ただ呼び捨てで呼ばせる…
 それは,以前の関係そのままの呼び方だ。
 ソフィを演じようとするセフィリアにとっては,以前の関係を思い出させる呼び方の方が,より屈服
感が出ることだろう……ヴァルザーリは考える。
 あたかも,クロノスのセフィリアが,市長のヴァルザーリの女になったかのような…
 果たして……セフィリアは,歯を食いしばるように唇を歪めた。
 一瞬の沈黙。
 漏れる,小さな吐息。
 次いで,唇から零れるように発せられた声は,隷従を誓うものだった。
「……はい…応えます………どうか,イカせて…ください………ヴァルザーリ……」
 その目。その声。
 全身の血液が,興奮に沸騰するのをヴァルザーリは感じた。
「そうか,そうか。いいだろう。やはり,ソフィは可愛い女だの。好きなだけイカせてやるぞ。では…
まずは,濡れたソコを,たっぷりと触ってやろう」
「はい……お願い……します……」
 セフィリアはうな垂れ,ヴァルザーリの手がショーツの上から潜り込もうとする動きに,腰を後ろへ
と突き出して協力する。
 それは,期せずして……
 あれほど葛藤していた『従順』な態度を,ついに表すことができた瞬間だった。

     続く

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