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  16















明かりもつけず、ベッドに倒れこむ。
頭の裏に、残像は残る。




なぜこれほどに、心がざわつく。
待ち受けるものに感じるものは、ありがちな恐怖ではない。
この閉塞のベールが、無理やりに剥ぎ取られるかのような、
不思議な期待がかすかに蠢く。














額に指が触れる。
鋭利な刃物のようなそれ。


「まだ起きてたのか・・・」



唇が覆われる。
「よせ、今日はそんな気分じゃない。」
引き離そうともがく身体が、押さえつけられる。
言葉など聞こえないかのように、服が引き剥がされてゆく。
「やめろ・・・って !!」
俺は思い切り、ユウヒを押し返す。
「どうしたんだ、いきなり。」
言葉のないままに、又組み伏せられる。
翳る顔は凍りついたかのように、ただ俺を見つめるばかり。
まだ琥珀の残像が残る。
身体が強張る。
ユウヒの瞳は、ただ見つめつづける。
切裂くような眼光は、なにを言いたいのか、
それすらも俺にはわからない。






剥き出しにされた下肢は、引きずり上げられる。
触れる身体は、冷たく感情を押し殺したように。
ただ、打ち込むような痛みだけが俺を蹂躙する。


繰り返す。
快感からではない苦痛に、俺は身を捩り。
逃れようとする肉体は、固く押さえつけられ。
上げる声は、波の音に紛れ。
混乱する知覚に、過去と現在が交錯する。



不協和音が頭を埋め尽くす。




これは、ユウヒの声なのだろうか。


「何故・・・・あの日に留まっていなかった。」
「な・・・にが。」
訳もわからず、問い返す。
「全てが・・・何故・・・・・・・いきなり回りだす?」
「一体、なにを。」
苦痛と残響の中、俺はもう言葉を発しているのかすら定かではないままに。
「あの時から、もう決まっていたことなのか。」
「あの・・・・・と・・」


そして意識は消えてゆく。
波音が薄れゆく。













リカが横たわる。
蒼白の貌、蹂躙された身体。
俺は一体、なにを期待していたというのか。
迫り来る贖罪。
俺たちの絆など、本当にあったのだろうか。
俺はその脆さを無意識に感じつづけ、
それでも気づかないふりでやり過ごし。
演じ続けられると、思っていた。
膨れ上がる自らへの嫌悪を、喰っていけると信じていた。





あの遠いパリの日々。
軽やかなまでに、才能が開花してゆくお前。
自由なボヘミアンであろうとしながらも、
ブルー・ブラッドに絡み取られた不器用なまでの高貴。
そして、ブラック・アウト。
行き場を無くし埋葬された才能は、
俺の中だけで、花開く。


それが喜びだった。




それほどの彼への執着にすら、気がつかぬほど執着していた。
ドンファンブランドの俺、リカに映る俺、
そして俺を巣食う俺。 
危ういバランスに、心地よくたゆたって。
静かな亀裂は、あの青年の面差し。
そうと気づかぬままに、奴は魅かれてゆく。
揺らいでゆく足元。



崩れるのは、お前じゃない。


















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