13
「 ――――― 夢の中にしか、現実は存在しない。」
背にかかるユウヒの重みを受けながら、
それを快感にすりえようと、俺は呟いてみる。
「誰だ?」
「ボードレール。」
「賛同はしかねる・・・・・ か。」
「そうでもない」
とられたぬかるみは、いつしか悪い夢となり。
グロテスクなリアリティから、俺は少しだけ脚を踏み外す。
薄い虚脱の中でなら、なだらかに息をつけるから。
『アントワーヌと別れろ。
さもないとお前の秘密をばらす。
お前はヴィスコンティの子供じゃない。
お前の父親は・・ 』
街が冬に色を変えた。
突然の、ブラックメイル。
ブルー・ブラッド。
それは天秤にかけるには重過ぎて。
俺の内にどれほどのアイディンティティを占めていたのか、
今となっては、もう思い出せはしない。
現実がどれほどに、重くそして脆いものか、
俺は欠片も分かっていなかった。
「もう、会えない。」
遠いどこかから響くような声。
名残の枯葉が、石畳に吹上げられる。
乾いた陽射しは、空気を切り裂き。
琥珀の瞳は、静かに伏せられた。
そしてブラック・アウト。
悪い夢のピリオドは、いつも人の肌。
それは女だったり男だったり。
人としてのありったけの弱さを、
曝け出していることにすら、もう麻痺してしまった。
馴染む前に、自ら心を引き剥がす。
重ねあう素肌が、温かさを伝えることは、
もう叶わない。
『 リカ・ヴィスコンティへの第二の通告。
復讐の時は近づいた。
人の憎しみは刃となって其の身を貫き、
女の涙は大海となり其の身を溺れさせる。
最後の通告を待て。』
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