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2.






アレンジした軍歌にのって、
少年兵達はコミカルに歌い踊る。



軍服の客席は沸きあがる、
彼らにとっては好もしい余興の一幕なのだ。
それがどれほどに呪わしい、この時代を飾り立てる旋律であっても。


酔った軍人が舞台に上がる。
ひときわ愛らしい少年兵の帽子に、手を伸ばす。
少年兵は消えそうな笑窪を、必死に保とうと口の端を上げる。
「どうだ、本物の帽子だぞ。」
無理やりに帽子を被せられ、酒臭い息が鼻にかかる。
肩に手がかかり、少年の笑窪が消える。





「たに ・・・ っ !」

ゆうひが舞台に駆け上がったときには、酔っ払いは腹を抑えて蹲る。


「貴っ様あっ!」

客席は静まり返り、蒼白になった軍人たちが立ち上がる。
たにと呼ばれた少年兵は、肩で荒く息をして。
呆然としたように、振り下ろした銃を見る。
空気が張り詰める。
虚飾の煉瓦の壁は破れ、
時代の剥き出しの闇が、流れ込んできたように。






地の底のタンゴ・クラブ。
享楽と快楽に満ち溢れているようで。
だがその境目は、これほどに薄く脆いものなのだと。



群集を操るのは、理性ではなく、客観でもなく。
怒涛のように押し寄せる、束の間の勝利、
熱に浮かされた、選民意識。
選ばれし者と、そして・・・・








ゆうひが銃を取り上げる。
「馬鹿、きちんとお詫び申し上げろ!」
怒鳴りつけるゆうひの声に、我に返ったように、
少年は顔を上げる。
優しげな面差しに似つかわしくない、静かな怒りが瞳に燻る。
薄く唇を引き結び、強張ったまま立ち尽くす。
酔っ払いの周りに、お仲間の軍人たちが集まりだす。
やれやれこのままでは、とんでもない事に飛び火しかねない。






「たには私の弟分だ、見てもいいが手は出すな。」

「何だと!」



驚いたようにこちらを少年が見上げ、
戸惑うように瞳が揺れて。
そして帽子を投げ出し、楽屋に走り去る。
苦い顔の軍人たち。
動きかねるゆうひ。
そして、割ってはいった酔狂な亡命貴族。

やれやれ、下手な寸劇より余程に面白い。





「御免なさい、たにが生意気な子で。」



女主人が隊長の機嫌を取る。
ここは突撃隊御用達のクラブ、酔っ払いだろうとなんだろうと、
ここではこいつらが貴族だ。


「隊長、部下の躾を宜しく。」




俺は落としていった帽子を拾い、
俺も退場するとしよう。
苦虫を噛み潰したような、軍人どもの舌打ちを後にして。








タンゴの調べがざわつきを吸い、
虚飾の闇を塗り始める。
影絵のように踊り続けるホールを後にする。




















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