MMT論者への反論
まず、債務残高だけをみるのは、会計的にみてもおかしい。冒頭に掲げた金融機関の債務の例を見てもわかるだろう。ついでに、会計的には、単体のBSをみるのではなく、連結されたグループ全体でみる。それを国に当てはめれば、IMFのPublic Sector Balance Sheet、本コラムでいうところの「統合政府BS」というわけだ。
財務省の図のように、対象をOECD諸国に絞り、分析期間も同様な期間とすると、以下のようになる。
グロス債務残高が悪くなると経済成長率が落ちるのではなく、ネット債務残高が悪くなると経済成長率が落ちる。しかし、日本はネット債務残高はそれほど悪くないので、緊縮財政する必要はないとなる。
なお、冒頭の債務残高が大きいと財政状況が悪くなるという報道に対し、筆者と似て非なる意見もネットでしばしば見受けられる。
いわゆるMMT論者の意見だ。これについて一言言っておこう。
従来の経済理論や会計、ファイナンス論を使って数量的にマクロ経済政策を説明するが、政府与党幹部から、しばしば「高橋さんは、MMT論者ですか」と聞かれる。そのたびに「私はMMT批判論者です。MMT論者は、数値で話すことができない思想者ですよ。しかも、MMTは、クルーグマンなどアメリカ経済学会のノーベル賞受賞などからはまったく相手にされていない、政治的なプロパガンダです。もし私がMMTを賛成したら、恩師であるバーナンキに叱られてしまいます」と説明している。
筆者は、安倍首相の「政府と日銀連合軍」発言の解説でもわかるように、数量的かつ従来基本理論で話している。日本でMMTが流行っているかのようにいう識者は、おそらく経済理論がわかっていない人だろう。なお、MMTについて、筆者と田中秀臣氏は『日本経済再起動』の中で理論的批判を行っているので、是非参照していただきたい。