人工知能(AI)はいつ人知と並ぶのか。幅広い領域で人間並みの知能を持つ「汎用人工知能(AGI)」の実現は――。業界を代表する有識者の見解は、事業家ほど楽観的で研究者ほど慎重論が根強い傾向がある。各氏の声をまとめた。
2026~
ダリオ・アモデイ
アンソロピックCEO
ほとんどの分野でノーベル賞受賞者よりも賢い「強力なAI」は早ければ2026年に実現する
2026~
ロイター
周鴻禕
中国セキュリティー大手の三六零安全科技CEO
AGIの実現は今後10〜20年の話ではなく、1〜2年のうちに実現する
2027
本人のXアカウント
レオポルド・アッシェンブレナー
元オープンAI安全対策チーム社員
2027年までに、研究者やエンジニアの仕事をAIモデルがこなすようになる
2027
ダニエル・ココタイロ
元オープンAI社員
人間はAIが仕事をし、AIがより高度なAIシステムを開発していく様子をただ傍観する
~2027
孫正義
ソフトバンクグループ会長兼社長
「2~3年以内」よりさらに早まるだろう。個人ではなく大企業で導入が始まる。中核をなすのがソフトバンクグループのサービスとなる
2027~35
ヨシュア・ベンジオ
モントリオール大教授
AIの問題解決能力は7カ月ごとに倍増している。タイムラインは正確にはわかっていないが、進展が早かった場合に備えるべきだ
2027
金井良太
アラヤCEO
AGIを達成するのは、「xAI・テスラ・X」のイーロン・マスク企業連合だ
2027~28
カール・フレイ
オックスフォード大学准教授
人間の知性の柔軟性までを持つAIの実現にはまだ数十年かかる。達成するのは、まだ無名の米国企業だろう
~2028
曽根岡侑也
ELYZA・CEO
AGIを「ほぼすべての業務で優秀な人間を上回る」と定義すれば3年以内に達成する可能性が高い。本命はオープンAIかグーグルだろう
2028~30
ロイター
デミス・ハサビス
グーグルディープマインド共同創業者兼CEO
実現にはおそらく3~5年はかかる。現時点の性能は、創造的・発明的な能力にはまだ遠い
2028~35
松尾豊
東京大学教授
AGIは早ければ3年、遅くても10年で到来する。達成主体の本命はビッグテックだが、対抗馬は中国だ
~2029
SimonSimard撮影
レイ・カーツワイル
発明家
誰が達成するかは予測していない
~2029
サム・アルトマン
オープンAI・CEO
AGI達成の時期より、我々が考えるAGIをはるかに超えて進化が続くという認識を持つべきだ。どうすればいいか分かっているのは我々オープンAIだ
~2030
李開復
「中国AIの父」と呼ばれる起業家
定義を「人間がやることの90%を、90%の人間より上手にこなせる」とするなら、5年以内には実現するだろう
2030~
ジェンスン・ファン
エヌビディアCEO
AGIの定義次第だが、5年後にはビジネススクールの入学試験などの全ての難関試験に合格できるAIは実現できる
2030~45
田中克佳撮影
ジェフリー・ヒントン
トロント大名誉教授
人間よりも賢くなり、我々を支配しようとするAIが20年以内に到来する確率は約50%だ。早ければ5年後かもしれない
2034~37
ヤン・ルカン
メタ・チーフAIサイエンティスト
3〜5年後には基盤技術の方向性が見える。すべてが順調ならその6〜7年後にたどり着くかもしれない。オープンソース陣営が開発競争に勝つ
2035
理化学研究所
甘利俊一
東京大学名誉教授
2035年にはAGIに近いものが実用化されているだろう。大手IT企業が主導するが、研究者個人の核心的な理論が大きな役割を果たす
ロイター
ジェームズ・キャメロン
映画監督
AGIは巨額の研究開発費を拠出するテック大手から生まれる。実現すると、あなたは自分が投票すらしていない世界に暮らすことになる
北野宏明
ソニーグループ・チーフテクノロジーフェロー
AGIは能力の定義によるが3年から10年程度が必要。達成するのはAGI開発に特化した新興、または巨大テック企業
ユヴァル・ノア・ハラリ
歴史学者
AGIの議論全体が誤解を招いている。世界に革命を起こすためにAGIは必要ない。今のAIは世界を完全に変革するのに十分なものだ
サティア・ナデラ
マイクロソフトCEO
AGIの過剰な期待が先走りすぎている。私にとってAIの(革新の)真の判断基準は世界が10%成長した時だ
トーマス・クリアン
グーグルクラウドCEO
革新的な研究は進むものの、期待過剰な面もある。「AGIは来年実現する」といった一部の主張は誤解や混乱を引き起こす
ニック・ボストロム
哲学者
実現時期は定義次第。今後数年で弱点を克服する可能性はかなり高い。人間とAIの協働によって達成される
アービンド・クリシュナ
IBM・CEO
時間軸の予測は難しい。我々は知識と現行のAIを組み合わせる方法をまだ見つけていないのだから
人類の向き合い方、課題に
発明家のレイ・カーツワイルは2000年前後に、人間の知能をしのぐAGIが29年に登場し、AIが加速度的な進化を始める技術的特異点「シンギュラリティー」は45年に到来すると予測し議論を呼んだ。多くの賢人たちもAGIは20年代や30年代での到来を予見しており、「超知能」実現が目前に迫る。
現在のところ、AGIに明確な定義はない。その実現主体も様々な予測が語られる。しかし、超知能研究の先頭に立つ賢人の多くが、人知を超えるAIはもはや夢物語ではないと考えているのは確かだ。
人類は「超知能」とどう向き合うべきか――。それはもはや未来の論題ではなく、明日に差し迫った私たちの課題となる。(敬称略)
日本経済新聞の取材のほか、各氏の発言・発信内容を集計した
関連するトピック
超知能 人智を越えるAI
人間の知性を上回る人工知能(AI)の出現は、もはや絵空事とは言い切れなくなった。 連載企画「超知能」の第1部「迫る大転換」では、AIが文明にもたらすインパクトを展望する。
2025~26
ロイター
イーロン・マスク
xAI創業者、テスラCEO
人類の誰よりも賢いAIの誕生時期は2025年末か26年。電力供給の課題はあるが、急速に発展する