2025-06-22

ショウユ男の末路

「男はやっぱ醤油でしょ」が口癖だった

「女ってすぐマヨネーズかけたがるよな」もよく言ってた

コンビニ弁当の蓋を開ける前から、鞄からポケットサイズ醤油を取り出す

実家から送られてくる「地元醤油」が世界一だと思っていた

ラーメン醤油一択

味噌は甘ったるい

塩は薄い

豚骨は「なんか汚い」

それを言うと職場若い子に引かれたが、彼は「今どきの子は薄味に慣れてるからな」と納得したふりをした

女と付き合うたび、料理ケチをつけた

煮物は甘すぎる

パスタは味がぼやけてる

「これ、ちょっと醤油垂らしたらうまくなるよ」と言う

料理を褒めたことは一度もなかった

全部「惜しい」だった

そのうち誰も彼のために料理を作らなくなった

ある年の正月実家に帰ると、母親が亡くなった後、父親はすっかり塩分を控えるようになっていた

味噌汁が薄い

煮しめ醤油のコクがない

彼はこっそり自分醤油を足した

でもなんだか、もう戻れない気がした

「みんな、薄味になっちまったな」と呟いて、父には聞こえなかった

年をとるにつれて、友達も減った

まりに顔を出しても、誰も彼の味の話を聞きたがらない

そのうち呼ばれなくなった

醤油けが残った

冷蔵庫には10種類の醤油

だし醤油刺身用、関東風、関西風、生醤油、再仕込み

ベルを眺めながら、彼は満足そうに笑う

だが、誰もその笑顔を見ていない

最期病院のベッドの上だった

塩分過多

医者に言われた制限食に手をつけず、看護師が見てない隙に、持ち込んだミニボトル醤油をちょろりとかけた

味は「ちょうどよかった」

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