BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”
10%の不良率をどう解決するか――日本人と中国人の違い
電池関係の展示会では、電池本体や性能・品質を評価する技術などだけでなく、製造装置も出展されていた。 電池を生産するための装置の一つ、ローラーのメーカーと、そのローラーで送られるフィルム(セパレーターとして使われるもので、上に活物質を塗布する)の異物を除去する装置のメーカーに話を聞いた。 それによると、ローラーの精度やフィルムの歪みを防ぐノウハウ、フィルム状の異物をエアで飛ばしながら別の部分で再付着を防ぐ除去の仕組みなど、日本のバッテリーの高品質を支える要因の一端が垣間見えた。これらの製造装置は、中国など他国の電池メーカーにも販売されているという。 ならば品質の差はどこで生まれるのか。あるメーカーの説明員は「中国のメーカーは不良品率が10%であれば、100個の製品を送る際に、あらかじめ10個の代替品を追加して納品する」のだという。 日本メーカーであれば、不良品率を1%以下にするよう努力し続けるが、中国のメーカーはそうした努力よりも代替品をサービスして、開発のリソースを次世代製品に注ぎ込もうという考えなのだろう。 合理的ではあるが、現時点での製品のユーザーにとっては「壊れたら交換してくれる」よりも「壊れない製品」こそ必要なのだ。同じ製品保証でも、これほどのスタンスの違いがある。
日本のユーザーは安全性重視
中国のXiaomi(シャオミ)の高性能EVセダン「SU7 Ultra」がドイツのニュルブルクリンク北コースでEVセダンのコースレコードを更新したことが報じられた。今日のモーター技術、バッテリー技術、サーマルマネージメントを駆使すれば、途方もない速さを実現するのはある意味簡単だ。 足回りとブレーキを作り込み、高性能なタイヤを履かせてスキルの高いドライバーに運転を委ねれば、ラップタイムはみるみる縮まるだろう。しかし市販車において重要なのは、そんな一発の絶対的な速さではなく、誰もがいつでも安心して走れる操縦性や信頼性、耐久性を備えていることだ。 障害物を検知して衝突3秒前に警告を出したのちに、運転を突然ドライバーに任せるような自動運転システムを量産車に搭載している時点で、ユーザーの命を軽視しているかのような印象を与えるのは否めない。幸い日本にはまだ上陸していないが、仮に発売されたとしても、販売台数はBYD同様に限られるだろう。今は中国や韓国でユーザーが信頼性や耐久性のテストをしていると思えるような状況だ。 したがって、BYDが軽規格EVを作っても、その品質に対する姿勢がこれまでのEVと変わらなければ、日本市場ではそれほど売れることはないだろう。 いかに高性能でリーズナブルであろうとも、他社には真似できないほどのノウハウがなければ、見えない部分で手抜きをしていることになる。そうでなければ不当なダンピングをしていると考えられる。 外貨を稼ぐために中国政府が補助金政策によって価格競争を仕掛けてきたとしても、日本のユーザーは安全性重視。それを日本の自動車メーカーは十分に理解している。時間はかかるだろうが、海外でも日本ブランドのEVの安全性が評価される時代がきっと来るはずである。 (高根英幸)
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