BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”
安全性が高いバッテリーでも過信は禁物
BYDが採用しているブレードバッテリーはリン酸鉄リチウムイオンだ。リン酸鉄リチウムバッテリーは、高性能な三元系と比べるとエネルギー密度は低いものの、材料コストが低く、安全性が高いといわれている。確かに電極や活物質の違いで熱暴走しにくい特性を獲得しており、サイクル充電回数も三元系の3~4倍はあるのは強みだ。 それでも安全とは言い切れない。有機溶剤を使っている以上、熱暴走しにくいだけで、発火すれば消せないのは同じである。実際、昨年立て続けにBYDのディーラーが火災に見舞われている。出火原因は不明というものもあるが、新しく建設されたディーラーで火事が起きるということは、漏電などが原因である可能性は低い。つまりブレードバッテリーでも車両火災は起こり得るのだ。 EVが火災事故を起こしても「自分のクルマは大丈夫」と根拠のない自信(確率論から、周囲のEVが燃えることで、逆に自分は大丈夫とでも思うのだろうか)でEVを乗り続けるケースも中国では少なくないようだ。自分の身内がEV火災に遭えば心配し、不安になるだろうが、他人のクルマであれば深刻に受け止めないのかもしれない。 世界最大のバッテリーメーカー、CATLの会長が昨年中国で開催された「2024年世界動力電池大会」において、「2023年のEVは、1万台に対して0.96台は火災が発生する可能性を抱えている」と明言した。 これは問題解決を提唱する意図での発言だったようだが、堂々と自社製品の欠陥を認めるようなことは日本メーカーではあり得ない。そのような品質での販売は、日本のメーカーでは通常考えにくい。
国内バッテリー工場の徹底した品質管理
先日、日本のバッテリーメーカーの生産工場を見学する機会に恵まれた。日産/三菱車やホンダ車、マツダ車向けにリチウムイオンバッテリーを供給しているAESCジャパンの座間工場だ。同社は元々、日産自動車がリーフのバッテリーを生産するために設立したオートモーティブ・エナジー・サプライ(AESC)だったが、2019年に中国資本に売却された。 古くからの日産車ファンなら名称から想像できる通り、旧日産座間工場の跡地の一部が所在地だ。ここでは日産車と三菱車のEVとPHEV向けのリチウムイオンバッテリーを生産している。 AESCジャパンの松本昌一CEOの話を聞くと、中国資本になったとはいえ、従来の品質管理を徹底した姿勢を守っていることが伝わってくる。17年間で生産したEV用バッテリーは100万台規模であるのに対し、出火事故ゼロという実績が、高い品質を裏付けている。 その生産工場内はかなりのレベルまで自動化されており、人の手で組み付けや加工する部分は確認できなかった。 であれば、日本で生産しても中国で生産しても変わらないと考える人もいるかもしれない。しかし、実際には同じ生産機械を使ったとしても、品質には差が生じるのである。 また、工場内を歩きながら生産工程の説明を受けた際に知ったのだが、完成したバッテリーセルは1週間はエイジングとして寝かされるという。それによって内部に不純物があれば発見しやすくなるそうだ。日産のEVの安全性の高さは、こうした取り組みが安全性の高さに寄与しているのは確かだ。 他のバッテリーメーカーもエイジングによって特性を安定させることはあるようだが、これほど長く保存することはないという。中国の電池メーカーなどは、寝かせるよりすぐに出荷した方が生産効率が高まると考えるだろう。