「私が見た未来 完全版」。大災害が起こるといううわさの背景にあるとみられる(撮影・風斗雅博)
今年7月に大災害が日本で起こるという科学的根拠のない「うわさ」が、ネット上などで広がっている。香港では7月に日本への旅行を控える動きにつながり、航空会社が減便を迫られた。背景にあったのは1冊の漫画だった-。(上田勇紀)
宮城県によると、香港の航空会社「グレーターベイエアラインズ」は5月9日~7月11日、それまで週4往復だった香港-仙台便を週2往復に減らした。昨年末に就航したばかりの路線だが、同社は経済情勢などに加え、7月に日本で大災害が起こるといううわさが香港で広まっている影響を理由に挙げたという。さらに「香港航空」も6月2日~10月25日の間、週3往復の仙台便を運休。宮城県の担当者は「インバウンド(訪日客)への期待が大きかったので残念」と戸惑う。
「グレーターベイ」は香港-徳島便も5月半ばから10月下旬まで減便。災害のうわさが一因とし、徳島県は「会社の判断なので、やむを得ない」とする。
影響は関西にも。関西エアポートによると、香港の航空会社3社が、関西空港と香港を結ぶ便で、5月は計画の約1割、6月は約2割に相当する減便を実施しているという。
香港出身で米国に住む40代男性によると、香港や台湾の交流サイト(SNS)やテレビなどでは連日、このうわさで持ちきり。有名な風水師が登場して7月の災害発生を予言するものもある。男性は「フェイスブックを見るとこの情報ばかりが出てきて、怖い」と打ち明けた。
情報源の一つが、2021年に出版された漫画家・たつき諒さんの「私が見た未来 完全版」(飛鳥新社)だ。たつきさんが見た夢の内容などを基に描かれ、帯には「本当の大災難は2025年7月にやってくる」とある。100万部の売れ行きを見せ、香港でも発行されている。
本はもともと1999年に別の出版社から出された漫画で、絶版になった。当時の表紙にたつきさんの夢日記がいくつか描かれ「大災害は2011年3月」とあったことから、20年ごろになって「東日本大震災の発生を予言していた」と話題に。完全版では25年7月の新たな「予言」が盛り込まれた。
完全版では夢の内容として「日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂(噴火)した」「太平洋周辺の国に大津波が押し寄せました」などとある。ネット上には南海トラフ巨大地震の発生とつなげるものや、たつきさんが夢を見た日と重ねて「7月5日に発生」とする内容も多い。
気象庁は「現在の科学では地震予知は不可能」とするが、反響は収まらない。旅行の取りやめなどの影響について、たつきさんは飛鳥新社を通じて文書で神戸新聞にコメントを寄せた。「皆様が高い関心をお寄せいただいていることは、防災意識が高まっている証拠であり、そのことについては前向きに捉えております」などとした。
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■たつき諒さんのコメント全文
旅行取りやめなどの影響について、作者のたつき諒さんから飛鳥新社を通じて寄せられたコメントの全文は次の通り。
そのような事象については、私はあくまで客観的に受け止めております。2025年7月5日というのは、私が今回の夢を2021年7月5日に見ており、書籍『私が見た未来 完全版』において掲載している夢日記に「夢を見た日:2021年7月5日4:18AM」と掲載していること等もあり、SNSなどで2025年7月5日が災難の予知の日であるとして拡散されているように推察します。
しかし、私自身は、「2025年7月」に災難が起こるという夢を見たもので、同書籍においても、「その災難が起こるのは2025年7月」と記載させていただいており、2025年7月5日が、予知の日というわけではございません。
ただ、皆様が高い関心をお寄せいただいていることは、防災意識が高まっている証拠であり、そのことについては前向きに捉えております。
災害時には少しでもお役に立てることがあればと考えておりますので、この関心が安全対策や備えにつながることを願っております。私自身も、外出時には特に気を付けなければと考えており、また、災害時に備え、備蓄等も心掛けております。