「女性しか雇っていないので」5年間で4回、性別理由に採用拒否された48歳男性…募る悔しさ
男女雇用機会均等法が1985年6月に公布されて40年。働く上で性別を理由に差別しないよう定めた法律は、これまで社会情勢の変化に合わせて改正を重ねてきた。しかし、昇進や配置、採用などを巡り、実質的に性の違いで不利益を被っている人はいまだに後を絶たない。現場の声を紹介する。 【写真】事務職をしていた女性「会社のやり方は隠れた差別。汚いと思う」と憤りを口にした
女性だけ対象の慣習
「まるで昭和の時代のような職場です」 福岡県内の食品会社に勤める女性は、昇進を巡る性差別が職場に根強くあると感じている。総合職と一般職があり、給与の高い総合職は9割以上が男性。女性は数人にとどまる。 10年ほど前、一般職から総合職に昇格できるルールが作られた。所属長の推薦が必要で、女性が推されることはほぼない。数年前には、産休と育休を取った総合職の女性が一般職に降格となった。 女性は入社20年近い。先輩社員に聞くと、女性の管理職は今までゼロという。十数年前までは女性だけを対象に、結婚と同時に退職を迫ったり、総合職に充てなかったりする慣習さえあった。「それに比べれば少しはましになったと思うけど」と女性は苦笑する。 均等法は、性別を理由に昇進で差別的な取り扱いをしないよう定める。能力も実績も十分な女性社員はいるのに、総合職に推薦されないのが歯がゆい。女性は語気を強める。「会社には『もう令和の時代ですよ』って言いたい。法律はもちろん、世の中の状況をもっと勉強してほしい」
男性より低い給与
同県の女性(54)は2年前のことが忘れられない。事務職として30年以上勤めていた会社で、入社4年目の製造職の男性より給与が低いと知った。基本給が数万円も下回っていた。 会社は家具製造を手がけており、職種は営業と事務、製造の3種類。均等法は募集や採用に当たり、「営業は男性、事務は女性」などと性別を限定しないよう定めるが、勤務先では営業と製造は男性、事務は女性だけが採用されていた。 会社の給与規定は、賃金は業務の重要度などで決める-と記している。性別や職種、学歴による区別はない。だが、事務職の別の女性も、後輩の製造職の男性より給与が低かった。 54歳の女性は営業や製造の仕事も手伝っており、「隠れた性差別だ」と怒りが湧いた。会社の枠を超えて加入できる労働組合「連合福岡ユニオン」に相談。女性であることを理由に賃金を低くするのは労働基準法でも禁じられており、ユニオンの担当者は「勤続30年以上なのに、なぜ4年目の男性より給与が低いのか。どう考えても男女差別だろう」と首をかしげる。 女性は昨年、事業所の統廃合に伴い退職。「昼休みの電話や来客の対応も女性がやらされた。結局、そういう意識の会社だったんだなと思う」と漏らした。