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吉屋かめ乃
「 夏希お姉様のもわたくし、拝見していないんです。
手伝いはいいって仰って。」
「 そうなの? まぁ、見ていなさいな」
見せつけるような流し目に、一瞬にして場が奪われる。
背中までの髪を黒いリボンで後ろに束ね、
袖をたっぷりととった白いブラウスの胸元をくつろげる。
黒い細身のズボンと華奢な腰をかざる剣は
鋭い騎士か、剣士を思わせる。
「 夏希さまのお相手は、ねぇ・・・」
「やはり、そうなのね・・」
迷いなく、まっすぐに一年生の彩乃の元へ歩み寄るが
彩乃はどこか怯えたように胸元で手を組んで
不安げな瞳を夏希に投げかける。
「 彩乃、受け取ってください。」
「夏希お姉様・・・・・・」
「 彩乃・・?」
差し出された白いマァガレットの前で、彩乃が揺れる。
「あの、わたくし・・・・・ダンスは・・・・・」
「 大丈夫よ、円舞のステップくらい
曲が始まる前にわたくしが教えてあげますから。ね。」
「・・・大丈夫でしょうか・・」
「わたくしを、信頼なさい。」
「 ・・・はい。」
あまく咲いた彩乃の笑顔をうけて、
安堵を隠さず、嬉しそうにマァガレットをつけてやる。
そうして戸惑う彩乃に円舞のステップを説明しながら
輪の定位置へとすすんだ。
「 あかねさん、次があるわよ。」
「ええ・・・でも・・・。」
出揃いはじめたワルツの主役たちに、安蘭が笑みを向ける。
「お次の、四方目は・・・ 貴城かしげ様。」
花の香りが漂うと、白い貴公子が現れた。
「かしげ様、お綺麗・・・・」
「まぁ なんて麗しい・・・まるでアラビヤの王子様のよう!」
タァバンから流れる金髪が薔薇の笑顔をいろどり、
一歩、亦一歩とかしげが歩み出るたび
その白く華やいだ立ち姿に、セーラー服の少女たちは眩暈を誘われる。
「かしげ、あの子には金髪が似合うでしょ。」
「 流石、ぶんお姉様のお見立てですわ。
あら なにか、そことなく菫のかおりが致しませんこと・・?」
かしげが淳子を追いかけていたことを知る誰もが、
その行く先を興味深く見守る。
そして、観衆の目は驚きとともに見開かれる。
「 まぁ・・・かしげ、お姉様・・ 」
「 受け取って戴けますか、 ひかるさん。 」
かしげ様が、ひかるさんに・・・!
「・・・あの・・・」
ひかるの耳元に唇をよせ、そっと解きあかす。
「 月湖様の代役と思ってください。
わたくしは、貴女のお相手として不足ですかしら? 」
慌てて首を横に振る。
「いいえ、いいえ! ・・・あの、菫のかおりが・・」
笑みを深め、胸の白い花を抜き取る。
「巴里ロジェ・ギャレヱの、ヘリオトロウプですわ。
さぁ、菫の前に、マァガレットを贈らせては戴けませんか?」
わたくしの相手に相応しい、愛らしいひかるさん。
月湖様のいらっしゃらない今くらいしか、機会はないもの。
やさしくひかるの手をひくかしげ。
見目麗しい二人の姿に、緊張と感嘆のためいきが
惜しみなく注がれる。
月湖様は、ひかる様は・・・・・
「 よろしいでしょうか。
お次は・・・ 朝澄佳代子様。 」
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