表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/188

16-6 新スキルと一撃


「御影ッ!」

「――殴殺、断罪、天誅光。余所見をするぐらいなら、私の聖なる魔法に潰されてついえなさい」


 俺の不利を目撃した皐月が援護に回ろうとするが、長髪の僧侶タークスの魔法が天空より落下してきて皐月の行動を封じた。自由落下してきた電柱大の光の柱が衝突し、土手に直径五メートルのクレーターが生じている。

 やはり僧侶タークスは魔法を使えるようだ。不安はあるが、向こうは三人魔法少女がいるので健闘を祈るしかない。

 俺は俺で、勇者レオナルドの相手で余裕がない。


「仮面を付けたアサシンが、どう勇者と戦ってくれるんだッ」


 勇者レオナルドは構え直した大剣を片手一本で振り上げると、見た目以上に長い間合いで斬り付けてくる。

 ボス戦を何度か経験しているとは言え、武芸者とまともに対戦するなんてナンセンスだ。気持ち多めに後退しつつ、嫌がらせついでの駆け引きをしかけ、銃口を勇者レオナルドに向けてやる。

 本当は撃ってやりたいが残弾はたったの二発。無駄撃ちはできない。


「ハッ、はったりかよ!」


 何故か、勇者レオナルドは銃を恐れずに突進してきた。

 全身鎧と『守』に自信があるだけにしては台詞が奇妙だ。俺がSIGで攻撃しないと看破した、と言っているような。

 完全に隙を突いたはずの初弾を防いだ事といい、勇者の直感が優れているだけだろうか。

 勇者レオナルドの大振りを嫌い、土手の斜面へと逃れる。


「アサシンは『速』重視か。それなりだが、勇者の俺よりは遅――」

「良く動く口だ。閉じてやろう」


===============

“●レベル:22 + 20”


“ステータス詳細

 ●力:34 守:11  速:66

 ●魔:0/0

 ●運:10 + 10”

===============

“『ハーレむ』、野望(色)を達成した者を称えるスキル。


 相思相愛の関係にいる者が視認可能範囲にいる場合、一時的に「対象の人数 × 10」分レベルが上乗せ補正される”

===============


 レベルを倍化させた俺は、時速三百キロの疾風となって勇者のふところに飛び込んだ。

 俺の最高速度を見誤っていたレオナルドは口を閉ざしてしまう。銃口で下あごを無理やり押し上げたのが主要因だろうが。

 相手が人間だろうと、俺は迷わず引き金を引く。機会を逡巡しゅんじゅんで失うつもりはなかった。

 反動と火薬の炸裂音がSIGを握る手を襲う。

 硝煙の向こう側では、動脈から咲き乱れる紅いザクロの花が……ない。



「……お前、生意気だな?」



 ゼロ距離で銃撃したはずなのに、勇者レオナルドはアッパーカットをくらった程度の衝撃に顔をゆがませているだけだった。銃弾で死なないぐらいの非常識を許してやるから、せめて失神して欲しい。


「リリームよりは早いかもしれねえが、俺の半分強が限界だろう。目は慣れていなかったが、避けられない程じゃなかったぜ」


 レオナルドにSIGのバレル握り締められる。

 そのまま折られそうになったため、慌てて『暗器』でSIGを回収してから構え直す。勇者の皮膚すら貫通できない――しかも残弾もたった一発――、実に頼りにできない武器であるが、壊されるのもシャクだった。


「お前の武器の威力を確かめるため、ワザとくらってやった。が、どうやら俺の『守』の方がかなり勝っているらしい。内出血すら起さない威力で暗殺者を語るのは、酷い名前負けじゃねえか」


 不味い。

 酷く不味い。

 ポッと出の『ハーレむ』スキルなんかを頼りにしたのが間違いだった。パラメーター不明の勇者を倒すのなら、スキルを過信する前に、もう少し情報を得てから動くべきだったのだ。

 大剣を上段に構えて、俺を真っ二つにする気満々の勇者レオナルド。冗談ではないが、状況を打破できるだけの策がない。

 そんな無力な俺は無防備過ぎたのだろう。前方の勇者レオナルドが強大だからと、後ろがおろそかになっていたのは確かである。

 だから、俺の背中に鋭い風切りが突き刺さる。


「……エルフの矢、リリームか。全部俺に任せておいても良かっただろうに」


 背骨のやや左側。俺の意思に反して筋肉が緊張し、硬直する。

 振り返ったところで己の背中が見えるはずもない。が、振り返った先に矢の第二射が迫っていたので、遠くにひそんでいた何者かに弓矢で狙撃されたのだと理解できた。

 背中に生える矢は、俺以外の人間全員に見えているだろう。遠くで皐月が叫ぼうとしていて、僧侶タークスに邪魔されているらしき気配がある。

 事実を把握した事で、矢の刺さる速度に遅れていた痛覚も激しい警報を発し始める。

 アサシンが不意打ちをくらうなど、本当に情けない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミックポルカ様にて連載中の「魔法少女を助けたい」 第一巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない  (絶賛、連載中!!)


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。