14-3 巡り会う学内
着席し直した俺達は、手書きのスキル一覧から次のスキルを探し出す。
「『暗澹』の次は『救命救急』か。アサシンらしいスキルを取得したと思えば、今度は真逆のスキルか」
『救命救急』の実績達成をしてしまったのは、時期的に見て落花生の心肺蘇生が原因で間違いない。オークに行ったアレは殺す事前提だったので目的が異なる。
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“『救命救急』、冥府に沈む者を現世に呼び止めるスキル。
適切な処置によって、心肺停止者の蘇生確率が増加する。また、蘇生後の後遺症を軽減、リハビリ期間の削減等の後々の社会復帰に対しても影響する。
蘇生確率の上昇値はスキル所持者と蘇生対象の生物の平均値が目安”
“実績達成条件。
心臓が停止している生命を生き返らせる”
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「補助系アサシン志望のお前としては、真っ当なスキルか」
「苦いアイス並みの矛盾存在だな」
「甘口カレーみたいなものだろう」
『救命救急』は用途が限定されるスキルであるが、役立つか役立たないかで言えば、役立つ。戦闘行為で魔法少女達がもし死んでしまっても、俺のスキルで助けられる可能性が高まるのは喜ばしい。
「でも、やっぱり回復スキルじゃない分、使いどころが限定され過ぎているのが難点だけど」
「魔法少女が回復魔法を覚えていたり、回復アイテムを持っていたりはしないのか? 回復と蘇生の両方が揃っていれば、そこそこ役立つと俺は思うぞ」
昨夜の戦闘を見ていた訳でもないのに、優太郎は的確な事を言う。流石は優太郎様です。
楠桂が主様から授かっている『奇跡の葉』なるアイテムがあれば、肉体の損傷はほぼ無視できると言って良い。敵も同じ条件なのが辛いが。
「……はやし立てるつもりはないが、誰の蘇生を行ったんだ?」
「さて、次のスキルを確認しようか」
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“『耐毒』、毒物に対する耐性スキル。
あらゆる毒物に耐え、解毒剤なしに復帰可能”
“実績達成条件。
スキュラ職のDランクで自動取得”
“≪追記≫
スキュラという化物の第一歩が服毒であり、既に毒のステータス異常状態であるため、毒の上書き効果を無視できる。
スキュラであれば、このような追記そのものが無用であるが、本スキル所持者の取得方法が特殊であったため追記された”
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紙に書いてあるスキルの詳細から目を離した優太郎は、疑いの目を俺に向けてくる。友人に対してなんて失礼な奴なのだろう。
「お前、スキュラが化けた偽者か?」
「違う違う。ちょっとの間、同化されてしまっただけだ。たぶん、その時に体が混ざっていたから、スキルの一部が俺に移ったのじゃないかな」
「……一応検査してみよう」
本物のスキュラだったら記憶も同化しているので、本人しか知らない事を訊ねられても確認にはならない。だが、俺は優太郎を友人としている本物なので、無駄な努力にだって付き合う。
「魔法少女で一番怖いのは誰?」
「…………黙秘だ」
「ある惑星に複数の魔法少女がいます。しかし、アサシンは一人です。ここにハーレムという概念を神はもたら――」
「…………黙秘だ」
「ある湖で魔法少女が溺れてしまいましたが、女神が登場して言いました。ここで溺れた魔法少女はCカップですか。それともD以上の巨乳ですか?」
「…………黙秘だ」
「全員Bカップ以下なのか?」
「…………黙秘だ」
「さっきから黙ってばかりで、お前本物か?」
「優太郎が黙れ!!」
優太郎から新たな三つのスキルの感想を聞き終えた。
概ね、俺と優太郎の意見は一致していた。有益なスキルを取得できたのは喜ばしいがやはり火力が足りない。
「お前らしいが、どうする。またグアムに行くのか」
「時間があれば行くけど。とりあえずは街の巡回を優先して、主様の正体を探ってから適した装備を選びたいな」
「それに、今週は諦めておいた方が無難だろうな。期末テストと単位的に」
大学生の日常会話で締め括ろうとしている俺達の会話。
……はたして、いつまで俺は大学生を続けられるだろうか。
「――あの人は、まさか御影さん?」
背の高い女性が廊下から空き教室の内部を確認し、直ぐに壁を背にして身を隠した。美容院で整えたばかりのカールした髪がアクセントの美しい女性だが、酷く不審な行動だ。
「あの背丈、あの後ろ姿……。ああっ!」
大学の建物にいる若い女にも関わらず、女は女学生ではない。
「間違いありませんわ。ようやく、見つけましたわ。御影さん」
女、楠桂は、年下に恋する女性の瞳で、隠れながらも室内の男子学生に微笑んだ。
意中の男子学生が気付いた様子はない。
恒例のスキル考察終了です。
次回ようやく、最後の少女を動かせます。