40歳の誕生日のときの「本音」

11年前は、性加害について今ほど世間の目は厳しくなく、事件に発展することは多くありませんでした。そもそも、性暴力は「現場」が二人きりの親告罪で、世に出ることが難しい。「まさかあるはずない」という名のもとに、気づかれないことが多いのです。先生から洗脳されて夢中になっていたら、その被害を認識することもできないままであることもあります。

夫は親から譲り受けた不動産を所有しており、働かずとも食べていけるのだそう。
「とはいえ、最初はお友達の塾を手伝ったり、いろいろしていたんですが、どれも長続きせず、今は家にいます。私も先生とずっと一緒にいたいので、ずっと幸せだったんです」

紗香さんは結婚14年間、ずっと専業主婦をしています。夫から「働かなくてもいいじゃない」と言われているのだとか。これまでに何組か問題が起きた教師と元教え子の夫婦の調査をしてきましたが、共通点は妻が働いていないこと。妻の精神的成長や自立を、どこかで阻害し「永遠の教え子」として束縛する気持ちがあるからでしょうか。

「1ヵ月前、私が40歳の誕生日お祝いをしてくれたんです。先生は“あのかわいい女の子が、もう40歳か。ババアになったね”とポツリと言ったんです。それがすごいショックで泣いちゃって、“そんな言い方ひどい!”と言い返したんです」

せっかくのお祝いなのに…Photo by iStock
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最初、夫は「ごめん、ごめん」といなしていたけれど、紗香さんの怒りと悲しみが長引くにつれて、気分を損ねてきた。「実際にもう中年だろ。女としての賞味期限も終わっている」などの発言に発展し、結婚14年間で初めての夫婦げんかに発展。紗香さんは嗚咽を漏らしながら、当時のことを語ってくれました。

「先生は“ああ、もういいよ。口答えをする悪い子はもう嫌いだ”って。その前から、私が赤ちゃんが欲しいと先生に言って、“紗香はバカだから子供は育てられないよ”と叱られて泣くなど、いろんなことがあったんです」

夫の発言を聞くたびに、怒りがこみ上げてきます。夫は紗香さんを支配しています。
「それから、先生は外泊しがちになりました。話し合いをしようとしても“まあ、いいじゃない。俺が悪かったよ”と避けるんです。あと、恥ずかしい話ですが、性交渉も求めてこなくなりました。先生は性欲が強く、3日に1回はそういうことが必要だったんですが、この1ヵ月間は1回もありません」

紗香さんは「このままだと私は、離婚されてしまい家を追い出される」と泣いています。これまでに仕事らしい仕事もしておらず、友達とも実家とも疎遠だそうです。理由を聞くと、「ほかの人と話していると、先生が不機嫌になるから」とのこと。典型的な支配型モラハラ夫です。

周囲との関係を絶たせる、働かせない…典型的なDVのひとつだ Photo by iStock

「山村さんなら助けてくれるんじゃないかと、ここに来ました」と言います。これはしっかりとした証拠をとり、離婚になっても紗香さんが苦しまないようにしたいと決意しました。

◇圧倒的な力を持つ大人が、欲望のままに子供を支配し尊厳を奪う性加害。加害側が魅力的な教師だからといって、許されるものではないし、むしろ紗香さんは、恋心を利用されて操り人形になっているともいえる。性加害に課される刑罰は思ったよりも軽い。直近の裁判の判例を見ると、2023年1月長崎県諫早市の中学校講師が複数の男児に行った性加害事件は、懲役2年6ヵ月、執行猶予3年。2023年2月、神奈川県湯河原町の元保育士が、勤務先の保育園で女児にわいせつな行為と裸体撮影、強制わいせつを行った性加害事件は、実刑こそなったものの、懲役5年6ヵ月。性加害に対して軽んじられているからこそ、卑劣で悪質な性暴力はなくならないのではないか。

紗香さんの夫は、紗香さんのみならず、他の学生にも手を出している。調査でどのような夫の本性が判明するのだろうか。詳しくは後編「「賞味期限が終わってる」15歳年下の元教え子妻に語った元教師の夫、戦慄の本性」にてお伝えする。

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  • 山村 佳子

    探偵事務所代表

    山村 佳子

    横浜生まれの横浜育ち。フェリス女学院大学を卒業し、平凡なOLとして働いていたが、大学時代に経験した探偵の仕事が忘れられず、一度はあきらめた探偵の道に進むことを決意する。5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。お飾りではない、実際の調査経験も豊富な女性探偵として注目を浴び、テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。

    リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/

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