【限定公開(1)】公野櫻子『ラブライブ!サンシャイン!!』ザ・ファーストインタビュー
14時間前
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公野櫻子『ラブライブ!サンシャイン!!』ザ・ファーストインタビューを期間限定公開!(1)

2025年6月21日(土)、22日(日)に、これまで行ってきた数々のライブイベントの集大成として、9人での最後のワンマンライブ 「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours Finale LoveLive! ~永久stage~」を開催するAqours。それに合わせG'sチャンネルでは、2024年7月に発売された「LoveLive!Days8月号増刊 Aqours 9th Anniversary SPECIAL」より「公野櫻子『ラブライブ!サンシャイン!!』ザ・ファーストインタビュー」を期間限定で公開します。

第1回は、『ラブライブ!』を経て『ラブライブ!サンシャイン‼』を生み出すまでの作品制作・キャラクター造形の考え方のお話をお届け。


これまでに数々の人気読者参加企画を手掛けてきた公野櫻子先生。社会現象となった『ラブライブ!』とμ’sに続き、『ラブライブ!サンシャイン‼』そしてAqoursを生み出すため、何をどのように考えていったのか――。物語とAqoursメンバー(以下、便宜上キャラクター)のお話をお聞きする中で、多彩な知識や経験に裏打ちされたキャラクター造形の考え方、また、ある一人の〝この人〟に向けるような創作スタイルが見えてきました。そんな公野先生の0から1の創作論に、『ラブライブ!サンシャイン‼』9周年の今、迫ります。

 

Profile 公野櫻子(きみのさくらこ)●作家。「電撃G's magazine」にて『ラブライブ!』シリーズを始め、多くの読者参加型企画の原作・執筆を手掛ける。


考えれば考えるほど「原点回帰」しかなかった

――シリーズ2作目となった『ラブライブ!サンシャイン!!』でしたが、作品やキャラクターを形作っていく中、どのような考えで取り組んでいきましたか?

2作目をつくる際に一番やっていけないのは、「1作目とまったく違うことをやる」ことだと考えていました。クリエイターはつい、1作目でやったことはもうできない、違う何かをつくらなければと考えがちですが、支えてくれるファンは1作目がすごくよかったから、同じようなものをまた見たくなって2作目に触れてくださると思うんです。その期待は裏切っちゃいけないと強く思っていました。

――2作目ということで、プレッシャーはありませんでしたか?

1作目『ラブライブ!』は誰も予想だにしないほど大ヒットしたので、それをもう一度狙ったりはしませんでしたし、たとえヒットしなくても私のせいじゃないくらいのつもりでいました(笑)。というよりも、1作目のヒットに続こうという気持ちは、創作する際の邪念になるため、あまり考えないようにしていたかもしれないですね。

ただ、作品の知名度が非常に高くなっているタイミングだったので、外さないことが大事でした。じゃあどうすれば外さないのかと考えれば考えるほど、「原点回帰」しかないなと思っていて。その時の流行りを追いかけすぎたり逆に奇をてらったりしないで、とにかく『ラブライブ!』を好きになってくれたみなさんが欲しいものを誠実に作るというのが〝原点〟だという想いを大事にしながら、作品、キャラクターを描いていきました。

――前作東京秋葉原近辺から一転、『ラブライブ!サンシャイン!!』では静岡県沼津市舞台になりました。

企画の最初期に、都会から一転して大まかに「海」と「山」どちらの環境で次の舞台を選んでいくか、という選択がありました。その時、私自身が海に縁がある生い立ちだったこともあり、海辺の街にしていきたいと思い、取り組んでいった経緯があります。

実は父の実家が静岡県の富士なんです。東京や千葉、神奈川でダイビングスクールを営んでいまして、父方の実家への帰省や親の仕事の都合もあり、伊豆方面はもう何度も何度も行っていたんです。だから、伊豆や沼津方面一帯がどんな土地なのかまったくわからない、ということはありませんでした。もしこの土地にスクールアイドルになりたい女の子たちがいたらどうなるかな、と考えてつくっていきました。

――両親がダイビングスクールをされていた経験まれていますか?

はい、私自身は東京生まれ東京育ちなんですが、夏休みになると親と一緒に城ヶ崎や下田、大島といった海にずっと行きっぱなしだったんです。ダイビングも幼稚園のころからやっていたし、一人で沖に浮かぶボートの上で遊んでいたりもしていました。

『ラブライブ!サンシャイン!! School idol diary』(以下、『Sid』)では果南がお店のお手伝いをするシーンがありますが、私も中学生くらいから臨時の店番をしていましたし、高校生、大学生のころは横浜にあった支店でアルバイトをしたりしていましたね。作品には、そういう自分自身の経験をなるべく入れるようにしています。

――そうして形作っていき、ファンに披露となったのキャッチコピーが「けて、ラブライブ!」でした。(初出20152月28日発売電撃G's magazine」)これにはどのような意味めましたか?

キャッチコピーはダブルミーニング、トリプルミーニングでつくることが多いんです。「助けて、ラブライブ!」もそうでした。

まず面と向かって「助けて」と言われて冷たくできる人ってあんまりいないですよね。「助けて」と言われて「どうしよう」「どういうこと?」と、みなさんに考えてもらいたかったことが背景の一つです。主人公である千歌からラブライブ!という大会や企画そのものに向けて「私たちの学校を助けて」、というストレートな意味合いの「助けて」。そして、ファンのみなさんに対して『ラブライブ!』という作品自体や行く末を「助けて」、と呼びかける意味合いも込めました。最初の言葉なので、さまざまなニュアンスで受け取ってもらえるといいなと思いつくったキャッチコピーでした。他にもいくつか候補を出しはしましたが、初期からもうこれしかない! とずっと思っていましたね(笑)。

 

土地ならではの要素が奥行きとリアリティを生む

――公野先生にとって、沼津にはどのようなイメージがありますか?

御用邸があったり、別荘が多くある、ややハイソなイメージを持っていました。そういったイメージに加えて、文学者に縁のある土地、という印象も持っていました。私自身、沼津生まれの作家である芹沢光治良の作品にはまっていた時期がありまして。『Sid』の花丸のセリフの中で「人間の運命」という言い回しを何度か出しましたが、これは芹沢光治良のビルドゥングスロマン(教養小説)のタイトルから取っているんです。かなりグッとくる作品なんですよ。花丸を描いていた時は、こういう小説にグッとくる子だといいなと思っていました。

もう1つ、私の好きな小説で、井上靖のビルドゥングスロマンの3部作「しろばんば」「夏草冬濤」「北の海」という作品があるのですが、その2作目「夏草冬濤」の舞台が沼津なんです。軍医の子が主人公で、沼津で旧制中学に通う青春時代を描いた作品です。この3部作は、私が無人島に持っていく本に必ずランクインするくらいマイフェイバリットな本で(笑)、「夏草冬濤」のイメージも沼津には強く持っていますね。ちなみに、「しろばんば」の舞台は修善寺近くでした。

――修善寺当時ロケハンのりにられたといております。

川端康成とか夏目漱石とか、修善寺などの伊豆方面に別荘を構えていたり拠点にしている文豪がたくさんいたんですよね。その中で、沼津が舞台となる作品を執筆した文豪たちは、実際に沼津で青春時代を送った人が多いように感じていました。

――ちなみに、ロケハンで印象的だった場所どこかありますか?

一番印象的だったのは伊豆パノラマパークのロープウェイです。乗った時、ちょうど雨上がりだったんです。靄が晴れて、虹が架かった光景は「あの世に来ちゃったかも」と思うほどきれいな景色で――ここで学生時代を過ごしていたら、めちゃくちゃいい子に育つんだろうなと思いました。あとは、学校(浦の星女学院のモデルとなった長井崎中学校(※2021年3月に内浦小学校・西浦小学校との統合、小中一貫校化により閉校し、現在は長井崎小中一貫学校となる)の近くにみかんの木が生えていて、ちょうど作業されている方からみかんをいただいたのを覚えています(笑)。

――その沼津にはかれましたか?

作品の開始前後で印象が変わらないように努めているので、あまり再取材したりはしないのですが、2回ほど狩野川花火大会を見に行きましたね。

――作品舞台わることで意識したことはありましたか?

一番大事にしているのは、舞台となる土地の雰囲気や、街の成り立ち、現在はどんな街なのかといった、その土地ならではの歴史や背景です。

その場所に女の子が9人いるなら、どんな風に成長していくのか、生活していくのかを考えます。その土地ならではの日常や生活がある中で、そこにしかいない女の子たちが絶対にいるはずなんです。それをきちんとキャッチしてキャラクターを描いていくことを大事にしています。

――それは本作らず、前作からの同様のアプローチなんでしょうか?

はい、μ’sの時も強く意識していました。

Aqoursの場合、沼津は海辺の町で漁師がたくさんいますから、漁師の町ならではの文化やその土地の中での関係性が色濃く残っている場所だと考え創作を進めました。網元を始め、旅館やお寺など、その土地の歴史や文化に根付いていたり、その土地での力関係においてキーとなっている存在を物語に取り込んでいくんです。千歌やダイヤは〝地元に根付いている人たち〟です。

一方で、どこか別の場所から来た異質な存在ももちろんいます。ハーフの鞠莉や転校生の梨子はまさにそんな存在ですよね。この子たちは、〝沼津の外側から来た子〟と言えます。

最後に、沼津の中でも街育ちの子がいますね。ヨハネだったり、実は果南もそうですが、〝その土地にいながら、土地に根差した価値観を持っていない子〟たちという位置づけで考えています。

このように、その土地に根ざしているものを軸にして物語やキャラクターをつくることが重要だと思っています。

――興味深いおです。どのように作品反映していったのですか?

例えば果南はダイビングショップを営んでいて、一見土地に根付いているように見えますが、実はダイビングショップって昔から続く漁師町で言えば新興勢力なんです。なので、千歌と果南は幼なじみではありますが家の歴史でみると旧勢力と新勢力、みたいな捉え方もできますね。それが果南の自由さ、おおらかさにつながっていったりもします。

他にも、黒澤家は網元の家なので、漁師の町ではトップオブトップです。周囲の人々から家がそう見られている中で、長女であるダイヤはどういう振る舞いをして、どう育っていくか、ということに考えを巡らせていました。そういった土地ならではの文化や歴史、人間関係が、ストーリーやキャラクターの動きに奥行きを与えて、リアリティを帯びていくと思っています。

 

廃校になるかならないかはあまり意識していなかった

――千歌たちが星女学院についておきしたいといます。こちらもロケハンでれたといますが、第一印象はいかがでしたか?

モデルとなった長井崎中学校はロケーションが最高だなと思いましたね。海がきれいに見えて、すごくいい学校だなという印象でした。私、やっぱり海が好きみたいで、海が関係すると何でもいい感じに見えちゃうんです(笑)。開放感もありましたし、作中でいろいろやれそうだなと思った記憶があります。

――学校設定をつくるにあたってポイントにされたことはありますか?

東京と地方では私立学校と公立学校のイメージや捉え方が少し違うと思っているのですが、浦の星女学院は由緒正しい伝統の私立校として成立するようにしたかったんです。そのために、この学校は沼津という土地でどのような成立の仕方をするだろうか、と考えていきました。

昔、沼津には男子しか入れない旧制中学と一緒に、女子の高等学校も存在していました。つまり、ある程度近隣から子どもが教育を求めて集まってくる場所だったんです。であれば、その流れで現代において私立で伝統を重んじるミッション系の女子校ならばここで成立するだろうと。歴史を遡りながら考えるようにしました。

――公立校にするえはありましたか?

公立の女子校自体はありますが、公立の女子校はここにはそぐわないかなと思いました。現代で、公立の女子校があの場所にまだ存在していることがイメージできませんでした。

そもそも、ミッション系スクールは私立校だけなんです。ちなみにミッションスクールの行事や聖歌隊(※雑誌「電撃G's magazine」の連載では、聖歌隊として学校行事に参加する花丸など、浦の星女学院のミッションスクールとしてのエピソードが多数登場する)といった要素は、自分の母校での経験から取り入れました。

――学校廃校危機するは1作目じですが、今回はそれが決定的になっているといういがあります。廃校というではどのようなことをえていましたか?

μ’sの時に学校が廃校の危機に瀕している設定にしたら、こんな都心で廃校なんてあるわけがない、と当時は言われました(笑)。しかし都内での廃校問題は現実に起きていることでしたし、それをきちんと伝えたかったんです。そこから数年が経ち、Aqoursの時には逆に廃校や統廃合がニュースにもならないくらい全国で起きていて、廃校という出来事そのものへのインパクトが下がっていきました。だから東京以外の地方を舞台にした際、廃校の危機だから学校を守ろうと言っても、一般的な感覚では「仕方がない」「無理じゃない?」と反応されるような状況でした。

そんな中で廃校阻止を目指してスクールアイドルが立ち上がるのは、μ’sの時よりも無謀であると言えます。ただ同時に、それを本当に行うならパワフルな勢いがありますよね。よりスポ根っぽいというか、そこが1作目との違いになると思います。

廃校阻止を成し遂げるかどうかは、私にとってはあまり問題ではないんです。私の中では目標に向かってがんばっていくことがテーマであって、今この時もがんばっているから終わりがないんです。そういうつくり方をしているので、廃校になるかならないかという結末は、私はあまり意識していません。

――なるほど。廃校になるのも仕方ないという時代に、それをえようとする千歌たちのいや意志がファンの共感んだようにます。

そうだとしたらとてもうれしいです。本当にAqoursはパワフルで明るいんです。別にパワフルな子たちを生み出そうと思ってつくったわけじゃなく、沼津という土地柄からキャラクターを起こしていった結果、生まれてきたパワフルさなんです。沼津という、日の光で海がキラキラしている土地から出てくる明るさと強さが反映されているんだろうなと思います。それがAqoursの生きるスタイルになっている感じがします。

 

【限定公開(2)】公野櫻子『ラブライブ!サンシャイン!!』ザ・ファーストインタビュー

【限定公開(3)】公野櫻子『ラブライブ!サンシャイン!!』ザ・ファーストインタビュー

 

インタビュー/LoveLive!Days編集部、橋本憲和



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種田未来|2025/06/20 10:40

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