記号接地問題のなぞ〜『生成AI時代の言語論』 〜 【4月AI本チャレンジ10】
今日は、『生成AI時代の言語論』です。
本書は、大澤真幸氏の著書で第Ⅰ部は対談、そして第Ⅱ部は論文から構成されています。『言語の本質』の著者お二人の名前もあったし、「言語」というトピックには自分としてもかなり気になる部分があるので、飛びついたのはいいけど、なかなか読めていなかった本です。
正直に言いますと、一読してもまったく理解できてはおりません。でもトピックとしては、「フレーム問題」「記号接地」「資本主義」「AI脅威論」「記号論」「中動態」など私が気になっているけど、まだよう分からん! という分野が盛りだくさんでした。
最初の対談は、東京大学教授でAI研究の最先端を走っておられる松尾豊教授です。AIに関する本や雑誌の特集を読むとよく名前を拝見する方です。私も少し以前の本ですが、この本を読んでお名前は知っていました。
次の対談は、本書を買った理由に先ほどあげた『言語の本質』の今井むつみ・秋田喜美両氏との対談です。この『言語の本質』は大ベストセラーとなり、2023年の新書大賞受賞作でもあります。実を言いますと私、この本を買って興味深く読んだはいいのですが、あまりピンと来ていませんでした。
ただ、言葉をあつかう職業でありながら言語学にはとんと無知だったため、「記号接地」がちっとも腑に落ちなかったのです。
通訳者は専門家の発言をさも分かったように口にする非専門家というかなり特殊な存在です。ただ、非専門家といっても概念ぐらいは理解して訳すのがふつうです。それでもまったく分からず、言葉尻だけを訳すという作業になることもあります。ちょうど「記号接地」についてはそんな感じの地に足の着いていない概念、というイメージでした。
記号接地問題とは、記号(言葉)を外部の実在とどのように結びつけるか、という問題です。
私たちが使っている言葉が実際に何を意味しているかという実在した存在と結びついているか、ということですね。東大の松尾教授は、次に出現する単語は何がもっともらしいか予測することで文章を作っている生成AIは、外にある実在的な存在、いうなれば現実には接地していないのは明らかだが、相当推測はできている、といいます。
たとえば、ChatGPTは身体を持たず、現実世界に物理的に存在していないので記号接地はしていない、つまり実体験は持っていないけど、言語空間で予測を行うことによって人間の思考に近い概念もある程度獲得している、というのです。
今月のチャレンジで取り上げた『AIに心は宿るのか』でもAIが身体性を手に入れたとき、どうなるか、という話がありました。
そうなれば、AIも記号接地できるのか。いや、そもそも人間の言語獲得の過程において記号接地できているとはどういうことか。考えて行くと、今の私では考えるにはさまざまな事柄に対する情報が足りず、自分なりの考えも出せません。
赤ちゃんたちはただ対象を記号と結びつけているだけではなくて、ある種の洞察を経験している。つまり、彼女・彼らが行っていることは、記号と対象を対応させながら言葉とは何かをずっと探っていることなのです。
この「記号接地」は最初にも書きましたが、自分としてももっと勉強して理解せねばならないと感じていた分野です。私が興味をもっている分野、言語間の意味の一致・不一致と人間同士の理解に根本的に関わっていそうだからです。
AIという分野は最先端だからか、それともたくさんの分野が重なり合っているからか、ここを起点に思考が各方面に拡散していく傾向があるようです。ここまで手元にあって読めていなかった10冊を取り上げました。残り10冊もまた分野をまたいでいく話になりそうです。
今月のチャレンジは、コチラ↓↓↓
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2月の猫チャレンジは、コチラ↓↓↓
1月仕事・時間術チャレンジは、コチラ↓↓↓



コメント
2「記号と対象を対応させながら言葉とは何かをずっと探って」
これもそうなんでしょうね。近所の五歳児がテレビドラマのセリフ「私とあなたの関係は云々」を耳にしてしばらくしてから「かんけい... かんけい... 」「ぼくとおねえちゃんのかんけいは?」と。
関係、とか概念的な言葉を理解する方法はまさに人間の場合、そんな感じでしょうね。でもAIは?って話になりますねぇ。