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「先延ばしと分かっていた」 キーマンの山中伸弥教授が語る雇い止め

研究者の雇用についてインタビューに答える京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授=京都市の同研究所で2025年2月13日、中村好見撮影
研究者の雇用についてインタビューに答える京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授=京都市の同研究所で2025年2月13日、中村好見撮影

 労働者の雇用を守るはずの法律が、勤続10年を前にした研究者の「雇い止め」を誘発している。きっかけは2013年の改正法施行だが、こうした事態を当時から危ぶんでいた研究者がいた。京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授だ。

 労働契約法の改正によって、労働者の契約期間が5年を超えると、期限の無い雇用に転換できる権利が得られるようになった。大学や研究機関の研究者らはその契約期間が「特例」で10年に延ばされ、そのため23年ごろから雇い止めが相次いでいる。

 山中教授は政府に「5年ルール」が研究現場に与える影響を直訴し、10年特例ができるきっかけとなったキーマンでもある。10年が経過して懸念が現実になった今、何を思うのか。毎日新聞の取材に当時の狙いや、研究をサポートする人を安定的に雇用する重要性を語った。

 <関連記事>
 「10年特例」創設の舞台裏 山中伸弥教授の危機感は生かされたのか

研究支援者の雇用終了を懸念

 ――「10年特例」はなぜできたのでしょうか。国への働きかけの経緯を教えてください。

 ◆当時、本来は労働者を守るための労働契約法の改正が、大学などの研究者や職員にとっては、逆に大きな問題を引き起こすことが懸念されました。

 研究現場は、研究者だけでなく、大勢の研究支援者が支えてくれて成り立っています。iPS細胞を製造する技術員、知財の管理や企業との契約に関わる職員、秘書といった人たちです。研究支援者の多くは、研究者が獲得した競争的資金で、大学などに有期雇用されています。その期間は1年や3年、長くても5年。ただ、5年を超えて無期転換したくても、大学に財源がない。このままだと、結果として5年で雇用契約を終了するという状況になってしまう、…

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