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「無期転換阻止はむしろ浪費」 東大職組のキーパーソンが憤る理由

佐々木弾・東京大社会科学研究所教授
佐々木弾・東京大社会科学研究所教授

 2013年施行の改正労働契約法(労契法)を受け導入された「無期転換ルール」に揺れる研究職場。東京大は17年、無期転換を阻む、契約の更新上限や雇用と雇用の間に空白期間を設けて通算契約期間をリセットする「クーリング」規定を撤廃した。撤廃させた当時の東大教職員組合執行委員長の佐々木弾・同大社会科学研究所教授に、東大での動きや研究職の雇用の問題点を聞いた。

<前編>教員ら700人超が無期転換直前に契約終了 特に多い国立大学は
<中編>世界的睡眠学者が語る、法改正後も無期転換できぬ学術界の構造的欠陥
<後編>「無期転換阻止はむしろ浪費」 東大職組のキーパーソンが憤る理由

 --法改正を受けた東大の動きは注目されていました。

 ◆「無期転換ルール」が導入される前の話ですが、2004年の国立大学法人化に合わせ、全国の国立大学は就業規則を作りました。東大はそこに有期労働契約の更新上限を5年と盛り込みました。労働判例相場を勘案し、大体5年で雇用契約の「更新期待権」が発生するとして、その前に「切ってしまえ」という意図です。そうして雇い止めした人を雇い直す場合、3カ月のクーリング期間を置くことが慣例化していました。

 その後、13年の改正労契法の施行を受け、当時の人事担当理事がこの期間を「6カ月に延長する」と表明しました。組合は「無期転換逃れではないか」と激しく追及しました。すると大学側は「将来予算が不確実なため」と口を割りました。要するに雇い止めの準備だということです。

 その頃から、大学本部と組合とのせめぎ合いが始まりました。17年6月、一般労働者で最初の無期転換権が発生するまで1年を切るという時期に、私は職組の執行委…

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